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『スカイライン 奪還』感想(ネタバレ)…進化しすぎです

スカイライン 奪還

進化しすぎです…映画『スカイライン 奪還』(スカイライン2)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Beyond Skyline
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2018年10月13日
監督:リアム・オドネル

スカイライン 奪還

すかいらいん だっかん
スカイライン 奪還

『スカイライン 奪還』あらすじ

突如出現した謎の地球外生命体により、人々は無残に襲われ、次々と地上から吸い上げられていった。その結果、地球はわずか3日間で征服される。息子のトレントとともに宇宙船に吸い込まれたロサンゼルス市警の刑事マークは、この危機的な状況を打開するために動き出す。

『スカイライン 奪還』感想(ネタバレなし)

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愛すべきバカ映画の傑作

最初に書いておきますね。私はこの映画が好きです(突然の告白)。「Like」じゃなくて「Love」のほうで。

初めてこの映画作品に出会ったのは2011年。アメリカではその前年に公開でしたが、その第一印象はそこまででもなかったのでした。案外、面白いやつだな…くらい。友達の付き合いでじゅうぶん満足していました。ところが2作目となる本作『スカイライン 奪還』を目にした私は「あぁ…あれは恋だったんだ」と確信するまでに至ったのです。運命の出会いというのは気づかないうちに起きているものなんですね。もう今ではすっかり夢中。人生がいつもより数倍は華やかに見えます。

そんな気持ち悪い文章はもうこれくらいにして、もう少し真面目に語ると、この『スカイライン』シリーズは、たいていの人は「えっ、なにそれ…」という反応が返ってくるぐらいの知名度の低い映画です。それもそのはず。予算1000万ドルクラスの低予算映画ですから。ただ、超低予算というほどではないあたりが重要です。

というのも、本作はストラウス兄弟が設立した「Hydraulx」というVFX会社が制作したものです。このVFX会社はこれまで『アバター』や『アベンジャーズ』、最近だと『ランペイジ 巨獣大乱闘』やドラマ『ストレンジャー・シングス』など、幅広いCG多用が特徴の大作を支えてきたクリエイターです。

しかし、一般的にこういうVFX会社はあくまで下請け。基本は表に出ません。ところが『スカイライン』シリーズはこの「Hydraulx」が主要制作会社なんですね。つまり、「普段は下働きしている俺たちが好き勝手作りたいもの作ってやるぜ!」の精神で生まれたのが『スカイライン』シリーズなのです。だから、映像表現は大作に負けないクオリティがあります(本職ですから)。

そして、このシリーズのもうひとつの特徴は作中でジャンルが大きく変わるということ。

1作目の『スカイライン 征服』は、いかにも低予算SF映画にありがちな「シチュエーション・スリラー」風な展開から始まります。高層マンション敷地内で物語がずっと進むので、壮大な映像を期待していた人は「地味だな…」とがっかりしたかもしれません。私もこの点に関しては「まあ、想定範囲内」と偉そうに思ってました。ところが、終盤になると超低予算映画ではありえないなかなかド派手な映像でジャンルが変わり始め、最後には意外過ぎるオチが待っているのです。「えっ、そこに着地するの?」という、このジャンルの様変わりっぷりが魅力だと私は思っています。

それで2作目となる本作は、さらなるジャンルの大変化が待っています。もう、よくぞやってくれたな!と個人的には拍手を送りたい。頭で妄想することはあっても実際に具現化させるとは…これだから技術力を持ったアホたちは嫌いになれないよ…。

あらかじめ言っておきますが、基本的に勢い任せの作品です。カルト的な一部の熱狂者を生むタイプです。全編1人称視点の『ハードコア』とか、忍者要素が吹き飛ぶ『ニンジャバットマン』みたいな立ち位置の作品だと思ってもらえればいいでしょう。だから、「え、全然面白さがわからないのだけど」と思ってもそれが普通なので気にしないでください。

基本的に1作目からそのままつながる話といっても主人公は違うので本作から鑑賞しても構わないと思いますが、前作を観た方がいいのは確かです。ジャンル変化の全容もわかりますし。

『スカイライン 奪還』、マニアと語りたい一作です。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『スカイライン 奪還』感想(ネタバレあり)

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なんかコイツ、やべえぞ…

「人類再吸引」というキャッチコピーがまたアホっぽくて好きになる本作『スカイライン 奪還』。そのフレーズのとおり、前作と同時期から物語がスタートし、街の人々が襲われていく姿が描かれます。前作ではマンションの部屋から外の光景を見ているだけでしたが、今作ではその外が舞台で、実際にこんなことが起こってましたと見せる構成で、前作を観ていた観客としては嬉しい映像です。まあ、ちょっと前作映像の使い回しがあるのは気になりますけど。そこは大目に…。

ところが、このまま1作目と同じひたすらエイリアンに襲撃される人類の無力さを描く…わけではないのが2作目。それを象徴するのが主人公。前作は名もない普通の若い人間という感じでしたが、今作は“フランク・グリロ”ですよ。ウサギとトラぐらい違いますよ。

エイリアンも思ったでしょうね、「なんかコイツ、やべえぞ…」と。エイリアンから発せられる青い光を見ておかしくなる人間が次々と上空へ“吸引”されていくなか、同じ状況になった息子のトレントをなんとか抑えて吸引を防ぐ“フランク・グリロ”演じるマーク。掴んで抑えれば吸引に対抗できることにまずびっくりですが、まだ序の口。人間の脳みそを回収する触手エイリアン「ドローン」を何の躊躇もなくショットガン連射で撃退するマーク。控えめに言って、強い…。

そのあとなんだかんだあってエイリアンの宇宙船「マザーシップ」に囚われた一行。ここで船外に落ちそうになり、マークは脚をグサッと怪我しますが、基本、負傷はどうでもいい感じの扱いなのでスルーしてください。ここで前作の主人公で脳みそをエイリアンに使われるも強い意志で逆にエイリアンの体を乗っ取ったジャロッドが登場。半ばバディを組んで船内を探索、マークはエイリアンらしいアーム・ウェポンを手に入れます。なんでこれ以上、彼を強くするんだ…エイリアン圧倒的不利じゃないか…。

しかし、人類にとっては朗報(エイリアンにとっては死の宣告)。さらなる最強の人間がこのあと仲間になるのでした。それも複数人…。

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エイリアンが泣いている

マークたちが船内で暴れた結果、船は墜落。そこは紛争が絶えないラオスでした。この「落ちたらそこはラオスでした」という物語展開の強引さも凄いですが、それは置いときましょう。

そこにいたのは、もともと民兵と対立している反政府組織のリーダー「スア」。コイツがまた強い。強すぎる。「シラット」という東南アジア伝統の武術を駆使して戦っているようですが、とにかくエイリアンをフルボッコにしていく。ここまで一方的にぶちのめされていく侵略エイリアンはなかなか映画で見られないです。しかも、最終戦で、マークはスアに例のアーム・ウェポンを渡しますからね。どう考えてもいらないだろと思うのですが、さらに凶悪性が増して、エイリアンはただの雑魚と化していました。たぶんエイリアン視点でこれを見たら、さぞかし地獄ですよ。こいつら、どんどん化け物を仲間にしていきやがる…!ってな感じで。

その超人的攻撃能力を有するスアを演じるのは“イコ・ウワイス”。そこにこれまた人間を超越した強さを見せる長髪の謎男を演じる“ヤヤン・ルヒアン”が加わり、完全に『ザ・レイド』のメンバーが揃うわけです。『ザ・レイド』は知る人ぞ知るカルト的人気のアクション快作ですが、『スカイライン 奪還』はこのトッピングを加えたことで「あ、これは最高になるな」と事前にある程度予想はしてました。でも、やっぱりその強さを目の当たりにして、そのバランスブレイカーっぷりに驚愕です。“エイリアンもの”と混ぜたら危険すぎる二人だったな…。正直、この二人の俳優にはもっといろんな映画に出てほしいのですが…出たら出たで存在感が強すぎていろいろ大事なものを盛大に壊しそうで怖いですね…。

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さらに本気を出してみました

ところが、『スカイライン 奪還』の衝撃はまだ終わらない。

脳みそを抜かれて絶命したトレントでしたが、最終的にジャロッドと同じく覚醒(ここまでのフラグ立ても前作を踏まえたうえでのハラハラがあって上手いです)。なんと巨大ゴリラ風エイリアンに乗り込み、敵の乗り込んだ巨大人型エイリアンと対決するという、完全な特撮展開が繰り広げられるのでした。どうしてこういうクリエイターはいつも特撮に終着するんだ…はい、とても良いと思います。

地上ではマークやスアたちが、『アベンジャーズ』よろしく勢揃いしてカッコいいカメラワークとともに激闘していくなか、巨大がぶつかりあう迫力バトルも勃発。これは…アベンジャーズ、超えたな…(過大評価)。「戦え、トレント!」という父マークの声で戦闘を始めるトレント(エイリアン)にこっちの気持ちまでテンションMAXですよ。こういう2作目が観たかった(あなたのことです、『パシフィック・リム アップライジング』さん…)。いや、こういう2作目になるとは想定していなかった。この「映画のジャンルは従うものじゃない、ジャンルが俺たちに従うんだ」の精神、最高だと思います。

ツッコミどころだらけなのに久々に脳みそがフリーズしてしまった…。冷静になってみれば、さすがにあのぐんぐん成長していくローズと名づけられた女の子は無理があるとか、色々思うのですけどね。地雷原に敵をハメて倒すという戦術も、あんな巨体が歩いたら衝撃でそこらじゅうの地雷が発動しそうだし…。この映画シリーズはもうそういう野暮な苦言はどうでもいい次元に到達している気がする。本来は『シャークネード』のような超低予算映画組がやっている突拍子もないストーリーを、確かな技術を持った精鋭クリエイターが本気出してしまったら、こうなるよねと。

ラストは、大人のローズがエイリアン船の支配権を獲得し、宇宙へ行き、月の周りの敵の本拠地を攻撃して終わってましたが、3作目に期待せざるを得ない。『スカイライン』…お前は進化しすぎたんだ…。

『スカイライン 奪還』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 65% Audience 38%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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関連作品紹介

続編の感想記事です。

・『スカイライン 逆襲』

(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

以上、『スカイライン 奪還』の感想でした。

Beyond Skyline (2017) [Japanese Review] 『スカイライン 奪還』考察・評価レビュー