時を超えてケーキをドカ食いする…「Disney+」ドラマシリーズ『グリッド』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:韓国(2022年)
シーズン1:2022年にDisney+で配信
脚本:イ・スヨン
グリッド
ぐりっど
『グリッド』あらすじ
『グリッド』感想(ネタバレなし)
「Disney+」も韓国ドラマばかり
すっかり韓国ドラマは世界的なコンテンツとなり、今やどの動画配信サービスも韓国ドラマを扱うようになりました。ちょっと昔は韓国ドラマを揃えているというだけでも他にはない特色として挙げられたのですけど、現在は韓国ドラマがありふれすぎているので、右向いても左向いても韓国ドラマ、韓国ドラマ、韓国ドラマ…。すごい時代になったもんだ…。
そのムーブメントに乗っかっているのは「Disney+(ディズニープラス)」も同じ。主力コンテンツとして期待度も高いのか、ここでしか見れない独占配信の韓国ドラマを2022年は大量投入してきています。
『スノードロップ』『キミと僕の警察学校』『サウンドトラック#1』などの韓国ドラマが「STARオリジナル」作品として「Disney+」のラインナップに続々と加わる中、今回紹介する作品はこちらです。
それが本作『グリッド』。
韓国ドラマ『グリッド』はSFサスペンスで、『シーシュポス The Myth』とかと同じジャンルの肌触りです(制作予算は『グリッド』の方がだいぶ低いと思いますけど)。
物語は、異常な太陽活動で地球に深刻な太陽風が吹き荒れて人間社会が脅かされている地球が舞台で、その危機を打破したのが「グリッド」と呼ばれる装置。これで地球全体に防御膜のようなものを張り巡らせて太陽風をシャットアウトして、無事に世界は救われた…というのが前提。
そうです、これは世界観の前提。問題はここからで、そんな世界となっている中、韓国で不審人物が目撃されます。その人物はなぜか神出鬼没で、警察も手に負えず、殺人事件を起こした男のそばに出現。しかも、この謎めいた人物を追っているこれまた謎の組織。それは「グリッド」を管理している機関と関係があり、この「グリッド」誕生をめぐる知られざる裏が解き明かされていく…そんな感じの話です。
上記のざっくりしたあらすじ説明でわかるように、全体的にミステリー要素が濃く、全容は簡単には掴めません。話数が進むごとに徐々に明かされていくのでそのサスペンスを楽しめるかどうかですね。でも別に超難解というわけではないです。
監督は、死闘すぎる囲碁の戦いを手に汗握るノワール風に描いた『鬼手』(2019年)という映画を生み出した“リ・ゴン”、そして“パク・チョルファン”。
また、脚本を手がけるのは、ドラマ『秘密の森』を執筆した“イ・スヨン”。『秘密の森』は韓国で最大の傑作ミステリーと評されるなど話題騒然となり、こちらも謎で埋め尽くされる展開に魅了された人は多いはず。今回の『グリッド』は思いっきりSF要素全開となり、同じミステリアスさでも色は全然違います。『グリッド』の方がSFなので思い切った展開を連発できるというメリットはあるものの、リアルな緻密さみたいなものは薄くなりがちかもしれませんが、このへんは好みですかね。
俳優陣もこのノンストップなサスペンスに欠かせない魅力のひとつ。主人公は群像劇スタイルで複数います。
ひとりは謎めいた組織である目的のために黙々と仕事をこなしている男、演じるのはアイドルグループ「5urprise」のメンバーで、『キミはロボット』『ウォッチャー不正捜査官たちの真実』の“ソ・ガンジュン”。2021年11月に兵役義務で入隊すると発表があったので、この『グリッド』はその前に撮った作品のひとつになるのかな。
二人目の主人公は事件を懸命に追う実直な刑事、演じるのは初主演作『カンナさん大成功です!』が大ヒットして一気に話題になり、その後もドラマ『サイン』『パンチ~余命6ヶ月の奇跡』『ウォンテッド~彼らの願い~』などで活躍する“キム・アジュン”。今作『グリッド』では凛々しい刑事姿がカッコいいです。
その“ソ・ガンジュン”演じる主人公の組織に所属して先輩ポジションにある男を熱演するのは、ドラマ『未成年裁判』でも目立っていた“キム・ムヨル”。なんかまた振り回される役ですね。
そして物語の最重要人物としてカギを握る謎の女性を演じるのが、ドラマ『セレブの誕生』『乱暴なロマンス』『Sweet Home 俺と世界の絶望』などの“イ・シヨン”。本人はボクシングで鍛えられていることでも有名ですが、この『グリッド』でもそのせいか強キャラ感がでており、タダモノじゃないオーラがあります。
他にも、『詩人の恋』『探偵ホン・ギルドン 消えた村』の“キム・ソンギュン”、ドラマ『愛の不時着』の“チャン・ソヨン”、『あいつがそいつだ』の“ソン・サンウン”などの実力派俳優も合わさっての豪華な顔触れです。サプライズなゲスト枠もいます。
韓国ドラマ『グリッド』はシーズン1は全10話(1話あたり約50分)。ややペースが遅いストーリー展開でもあるので、最初は3話目まで観ることで自分の好みに合っているかチェックするといいと思います。3話目になってやっと物語の方向性が見えてくる感じだと考えてください。まあ、でも一番面白いのは最終話です(元も子もない感想)。
SFサスペンスとしてはそこまでヘビーなシリアスさもないので気軽に観やすいのではないでしょうか。
オススメ度のチェック
ひとり | :SFサスペンスが好きなら |
友人 | :韓国作品好き同士で |
恋人 | :気軽に観やすい |
キッズ | :殺人描写などあり |
『グリッド』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):グリッドはこうして生まれた
2005年6月。灼熱の太陽の活動はかつてないほどに活発化し、太陽風が地球を容赦なく襲う事態が目前に迫っていました。それは地球の危機です。
韓国のとある工場では女性たちが労働していましたが、そのうちのひとりはセハという子に電話していました。そのとき停電が起きます。家にいたセハも外が騒がしいのに気づき、窓から見ると空の色がおかしいことに…。校庭にいたチョン・セビョクという子も不穏な空模様の下に取り残され…。
同時期、ある施設で局長と呼ばれる男は、横に女性が立ちながら、管理室のような部屋でモニターを見つめていました。世界中が固唾を飲んで見守る中、グリッドシステムの連結プロセスを稼働。太陽風がすぐそこに迫り、もうおしまいかと思われた瞬間…空は元通り。グリッドが正常に起動し、地球は防護膜に覆われました。
ミッション完了を確認し、ひとり席につく女性は「あの女性の言ったとおりね」と呟きます。
2021年10月30日。とあるコンビニにキム・セハが車で買い物に来ます。店内には誰もおらず、奥から出てきた愛想の悪い帽子の店員がレジに立ち、ゴミ袋を買います。しかし、車に戻るとその袋についた血に気づきました。あの愛想の悪い帽子の人間は店員ではないのか…。あの店員は外に出た後でした。車を降り、また店内に。その奥で見たのは従業員の遺体…。
通報を受け、ソンジェ警察署は監視映像を確認。セハも一緒です。店内にあった犯人が食べたと思われるカップ麺からも指紋はとれません。セハは帰ろうとするも警察のチョン・セビョクに呼び止められ、読心術ができることを指摘されます。そして監視カメラに映った被害者が犯人に対して何を言ったのかわかるかと聞かれます。「どんな教育を受けていたんだか」…そう言っていました。
セハは帰宅。そこには寝たきりの母がいました。しばらく後、セハはあのコンビニ殺人の容疑者が建物から逃げたというニュースを見ます。
セハは出社します。そこは厳重なセキュリティで、管理局と呼ばれていました。セハはその事務局で働いており、同僚のジョンイや先輩のオジンと勤務。上司は副局長のチェ・ソヌルです。セハはパソコンで例の警官であるセビョクの装備品破損等事由書を閲覧し、あの後の捜査で何が起きたのかを調べます。
警察は容疑者はキム・マノクだと特定。セビョク含めた捜査課は居場所と思われる建物に突入するもマノクは逃走。窓から逃げ、なぜか急にロープが降りてきます。協力者がいるのか。壁を登るマノクをセビョクは追いかけ、屋上へ。それでも逃げられてしまいます。
けれども車の下に隠れていたマノクを発見。ところがフードを被った別人に突き飛ばされ、セビョクの目の前でその謎の人物は長い髪の女性だとわかりましたが、幽霊のように忽然と消えてしまいました。
その女性こそ管理局が追っている人物、グリッドの創始者だとは知らずに…。
シーズン1:情報過多につき整理が大変
韓国ドラマ『グリッド』は、あの人類を救ったテクノロジー「グリッド」がどのようにして成し遂げられたのかを探っていく、偉大な技術者の軌跡をたどる『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』みたいな作品…ではなく、早い話が「タイムトラベル」ものです。
「幽霊(ゴースト)」と呼称される謎の女性の行方を追う警察と管理局。その人物はなぜかキム・マノクの周辺にばかり出現し、しかも謎の装置で瞬間的に現れたり消えたりできる。それは単なる瞬間移動装置ではなく、タイムトラベル装置でした。そこで明らかになってくるのは、あの謎の女性は2091年生まれで、1997年の管理局の前身となる電波研究所に出現して、グリッドの開発のきっかけとなるということ。グリッドを開発できたのはこの謎の女性のおかげです。
けれども韓国政府は愛国主義を満たす手柄が欲しかったのでこれを「韓国の発明」と世界にアピール。一応はそのグリッドが2004年に開発展開され、1年後の太陽風到達までになんとか間に合って世界は救われました。それでも今の科学でも解析不能なテクノロジーなので、焦る韓国政府は管理局を動かして密かにあの謎の女性を追いかけていた…というのがそもそもの出だしです。
これだけでもややこしいのですが、ここから各登場人物の裏の事情が複雑に絡み合うので余計に混乱します。
まず管理局で独断行動をとるセハは本名はクォン・セハであり、実の父があの電波研究所のクォン・スグン科長でした。ゆえにあの謎の女に恨みを抱いていました。しかし、自分もタイムトラベルして1997年に戻ったところ、謎の女の行動を止めるとグリッドが完成しなくなることを知り、壁にぶちあたります。
一方でセビョクにも衝撃の事実が発覚。DNA検査の結果、セビョクと幽霊は近親者と分析され、マノクが父系でセビョクが母系なのかという疑いが浮き彫りに。そのマノクは本名がイ・シウォンであり、あの電波研究所で謎の女に全身灰化された清掃員の子でした。謎の女は自分の未来での存在を守るためにマノクはもちろんセビョクも守っていたのか…。セビョクも過去を変えてしまうと元夫のオジンが爆発で死ぬことを知ってしまい、こちらも壁にぶちあたります。
やたらと回りくどい紆余曲折で物語が進行していましたけど、要するに「過去を変えたら大変なことになるよ」という事実が証明されたというのがシーズン1の最終回答のひとつだったのですが…。
シーズン1:誰にもわからん…
このサスペンスは確かに畳みかけてくるものがあってそれなりにスリルもあるのですが、韓国ドラマ『グリッド』の不満点と言えば、やはり風呂敷を広げまくっているわりにはSF設定は弱いということかなと思います。リアリティラインがイマイチわからないのも困りもの。
肝心のグリッドがどういう代物なのか観客には詳細は全く提示されませんし、タイムトラベルもシーズン1を見ただけだとさっぱりです。何ができて何ができないのかというルール説明が乏しいので、ほぼ作り手側の「こんな設定があるんです!」という新情報をひたすらにどの話数でもガンガン見せられる一方的な語り口だけで終わってしまいます。
あのタイムトラベル含む基本説明と、謎の女性側の世界観をもっと早い段階で語っておいて、それ以降のひっくり返しをメインで描く方が良かったのではないかなとも思ったり…。
これだと全部後出しじゃんけんを観客は味わい続けることになってしまうので、さすがに続編ではもっと趣向を変えてくるのかな。ラストで管理局も吹っ飛んでいたし…。
実際、全然謎は明かされていないですからね。10の謎を答え合わせしたら新たに100の謎がでてきた…みたいな感じ。謎の女の目的、別のタイムトラベラーの存在、「時間は流れていない」という言葉の真意…全ての時間軸からグリッドを消すことになんの意味があるのか…。
第10話のラストではセハ死亡から1年後となり、セビョクは地方に転勤となって赤ん坊のピョリを育てていました。そこに現れるオジン、そして平然と存在しているセハと謎の幽霊女。
ここまでやったならシーズン2もさすがに作らないとダメだと思うのですけど、制作する気はあるのかな…。俳優の事情からすぐには作れそうにないけど、その間はみんなでケーキでも食べていようか…。
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2022 Disney
以上、『グリッド』の感想でした。
Grid (2022) [Japanese Review] 『グリッド』考察・評価レビュー