ゲームへの賛歌、もしくは豪華な宣伝動画…シリーズ『シークレット・レベル』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
シーズン1:2024年にAmazonで配信
原案:ティム・ミラー
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『シークレット・レベル』物語 簡単紹介
『シークレット・レベル』感想(ネタバレなし)
- 『シークレット・レベル』物語 簡単紹介
- 『シークレット・レベル』感想(ネタバレなし)
- 『シークレット・レベル』感想/考察(ネタバレあり)
- S1-1「女王の揺りかご」(The Queen’s Cradle)
- S1-2「命が果てるまで」(It Takes a Life)
- S1-3「過去と未来の王」(The Once and Future King)
- S1-4「ザン」(Xan)
- S1-5「恐怖を知らざる者に」(And They Shall Know No Fear)
- S1-6「サークル」(Circle)
- S1-7「好敵手」(Good Conflict)
- S1-8「アセット・マネジメント」(Asset Management)
- S1-9「大切な友達」(The Company We Keep)
- S1-10「始まりの物語」(Start)
- S1-11「オデッセイ」(Odyssey)
- S1-12「冒険の数々」(Tally)
- S1-13「インプラカブル号の物語」(Tale of the Implacale)
- S1-14「万物の道」(The Way of All Things)
- S1-15「プレイタイム」(Fulfillment)
贅沢なゲーム映像化セットの贈り物
その1年間の間にリリースされた優れたゲームを表彰する世界最大級のゲームの賞である「The Game Awards」。2024年の「Game of the Year」に輝いたのは『アストロボット』でした。
他にノミネートされていたのは、『Balatro』、『黒神話:悟空』、『ELDEN RING ; SHADOW OF THE ERDTREE』、『ファイナルファンタジーVII リバース』、『メタファー:リファンタジオ』。
もちろんこの賞にノミネートされていなくても、たくさんの個性豊かな面白い新作ゲームがありました。ゲーム好きな人は自分のイチオシの新しいゲームに出会えたでしょうか。
ちなみにこの「The Game Awards」では、その年で最も優れたゲームの映像化作品も選出しており、2024年は『フォールアウト』が選ばれていました。確かに脚色が上手かったですね。
そんな中、2024年は1年の終わりである12月にゲーマーには見過ごせない贅沢なゲーム映像化作品が、サンタクロースからのプレゼントのごとく贈られました。
それが本作『シークレット・レベル』です。
本作は、もともとCGアニメの畑の人で、『デッドプール』で長編映画監督デビューを果たし、『ターミネーター:ニュー・フェイト』も監督した“ティム・ミラー”が率いています。“ティム・ミラー”は実写映画の『ソニック・ザ・ムービー』シリーズも製作総指揮で引っ張り、あの違和感ソニック状態からの脱却で成功のルートを走り抜けてみせた人物。
2019年には『ラブ、デス&ロボット』というCGアニメーションのアンソロジーシリーズも手がけていました。
そして今度はゲームの映像化作品のアンソロジーとしてこの『シークレット・レベル』を実現しました。中身は本当に豪華で、なんとシーズン1だけで15タイトルのゲームを映像化しています。ひとつのエピソードが約10~15分(各話で約30秒が共通オープニングで、そのうえ最後の1~2分がスタッフクレジットなので、実質的な全体の本編時間はわりと少ない)とは言え、企業の枠を超えて15タイトルもあるのは異例です。
どのゲーム・タイトルがあるのかは観てのお楽しみとしましょう。日本のゲームもいくつか含まれています。
「ゲームへの賛歌」ということなのかなと思いますが、まあ、見方によっては気合の入った映像による宣伝動画…と言えなくもない…。『シークレット・レベル』は「Amazonプライムビデオ」での独占配信なのですけど、中にはAmazonが制作しているゲーム『New World』もありますからね。これなんか完全にPR案件でしょう。
最近はゲームの映像化をすると、その出来不出来に関係なく、ゲームが連動して売り上げが増えるということは実証されていますからね。各ゲームメーカーもゲーム単体でなかなかビジネスを成立させづらくなっている中、ゲームの映像化の権利を売って儲けをだし、さらに映像化作品の宣伝パワーで追加の売り上げアップを狙う…これが常套手段になっている感じもあります。
でもゲームを知らない初見の人向けの宣伝というよりは、コアなゲーマー向けにそのゲーム熱を活性化させるような宣伝ではあるけど…。
映像自体は基本はCGアニメーションです。しかし、かなりフォトリアルな作品もあるので、実写みたいな味わいのものもチラホラと…。このあたりも近年のゲームは映像技術が高くなりすぎて、「これは映像化作品なのか、ゲーム内映像なのか」とよくわからない状況もそれなりに起きますよね。
『シークレット・レベル』を鑑賞して、ゲーム熱が復活したら、家でのんびりゲームを楽しんでください。寒い日は家でくつろげる趣味がやっぱり格別です。
『シークレット・レベル』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | 大人向けのゲームの映像化が多めです。暴力描写がいくつかあります。 |
『シークレット・レベル』感想/考察(ネタバレあり)
S1-1「女王の揺りかご」(The Queen’s Cradle)
原作ゲームはRPGの原点『ダンジョンズ&ドラゴンズ』。2023年に『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』として実写映画化されましたが、そちらはコミカルだったのに対し、このエピソードはダーク&シリアスです。「クレリック」というのは聖職者のことで、この世界観においては回復・防御・攻撃もこなせる魔法の使い手。ついに理想の5人パーティが揃い、ティアマトに挑む!というところで終わり。もったいぶりすぎなのと、画面がやや暗すぎるのがちょっと残念かな…。
S1-2「命が果てるまで」(It Takes a Life)
原作ゲームは『師父(Sifu)』。私はこのゲームを全然知らなかったのですけど、中国が舞台で、主人公は父親を殺した者への復讐に燃える武術学校の師匠の子どもで、死ぬたびに魔法で復活して年齢が増え、より強力な攻撃を利用できるようになる代わりに、体力が減少し、死にすぎると高齢で寿命が来る…という設定らしいです。このエピソードはまさにそのゲーム設定をナラティブに表現しているのですが、設定を知らないとかなり「?」ってなりますね。
S1-3「過去と未来の王」(The Once and Future King)
原作ゲームは『ニュー・ワールド(New World)』。やられてもまた繰り返して試行錯誤する…それがゲーム体験の醍醐味ですが、その体験をユーモアたっぷりに表現した物語でした。あの脳筋アホな王がついに己の浅はかさに気づき、他者への献身に目覚める。だいぶ時間はかかりましたが、愚鈍な人間でも成長するものです。そう信じたい…。それにしてもあの王を演じているのが“アーノルド・シュワルツェネッガー”だというのもまた二重のギャグになっていてナイスです。
S1-4「ザン」(Xan)
原作ゲームは『アンリアル・トーナメント(Unreal Tournament)』。やられても学んで繰り返して試行錯誤する…そのゲーム体験の醍醐味をこちらも描いているのですが、アドレナリン大噴出でカタルシスたっぷりに物語化していました。私はロボット大好きですが、このロボットたちにテンションが上がらないわけありません。娯楽として囚人と決闘させられていたのに、観衆の下層民すら熱狂と共にまとめて瞬く間に反逆のリーダーにのし上がったロボットの雄姿。お前こそ、真のグラディエーターだ! 個人的にはシーズン1で一番好きなエピソードでした。
S1-5「恐怖を知らざる者に」(And They Shall Know No Fear)
原作ゲームは『ウォーハンマー40000』。元々はミニチュアゲームで、大人気でマニアもたくさんいます。Amazonで実写化されることも決定したそうで、実現すればかなり規模の大きい作品になる予定だとか。ただ、今回の映像化は本当に背景説明がまるで無いので、わかる人にはわかればいいという雰囲気でひたすらに押し切っていましたね。この作品の顔ともいえるパワーアーマーの部隊がかっこよく描かれていれば、とりあえすはそれでいいか…。
S1-6「サークル」(Circle)
原作ゲームはナムコの『パックマン』。でも…あれ、パック…マン? 私の知っているパックマンじゃない…。このアンソロジーの中でも最もツッコミ上等の映像化でした。狂暴生物のサバイバルデスゲームにしちゃったか…。いや、パクパクするという一点においては間違ってはいないけど、こんなパックマン、絶対に人気にはならないよ…。食うか食われるか。今日もあなたの傍にパックマン。背中をとられたらグロテスクなゲームオーバーを迎える最恐難易度ですね。とかそんなこと思ってたら、12月13日に『SHADOW LABYRINTH』という新作のパックマンのゲームが発表され、このエピソードのようなダークな雰囲気…。なんだ、やっぱり宣伝なんじゃないか…。
S1-7「好敵手」(Good Conflict)
原作ゲームは韓国のスマイルゲート開発の『クロスファイア』。テロ鎮圧傭兵部隊(民間軍事会社と、国際テロリスト部隊との熾烈な戦いを描いた現代戦ゲームですが、この映像化では都市部での軍事作戦がフォトリアルに表現されており、普通に実写映画の出だしのような緊迫感です。映像は相当にしっかり作りこまれていましたが、題材が題材なだけあって(現実の国際関係を反映させるのに限界があるので)、設定がフワっとしすぎている欠点はあったかなと思います。
S1-8「アセット・マネジメント」(Asset Management)
原作ゲームは日本のフロム・ソフトウェアの『アーマード・コア』。知る人ぞ知るこちらもコアなファンが多いゲームですが、今回はなんとパイロットの声を演じるのは“キアヌ・リーブス”。“キアヌ・リーブス”がアーマード・コア(AC)に乗ってくれる時代が来るとはね…。それにしても操縦状態の“キアヌ・リーブス”が完全にハイになっているシチュエーションなので、アーマード・コアのヤバさというか、ゲームのやりすぎておかしくなっちゃった人みたいだったな…。
S1-9「大切な友達」(The Company We Keep)
原作ゲームは『アウター・ワールド』。植民地主義的な大企業の支配に抗う物語なのですが、このエピソードでは正直者すぎる男エイモスがフェリシティという旧知の女性に会いたいがために非道な実験の被験者として健気に犠牲になり続けるという、ダークユーモアたっぷりでちょっと切ない話になっていました。嘘か真実か、それでも大切な人を見送るその背中がたくましかったです。まあ、でもこのゲーム自体もろくでもない大企業に支配はされてしまっているのだけど…。
S1-10「始まりの物語」(Start)
原作ゲームはカプコンの代表作『ロックマン』。ゲーム名は英語では「Mega Man」なのですが、今回のエピソードでは主人公の名前が「Rock」になっていました。実は1994年にアメリカと日本の合作で、カートゥーンアニメ化したこともあるのですが、今作はフルCGでエピソードゼロが描かれました。わりとほど良いバランスの映像化だったのではないでしょうか。願わくばもう少し続きが見たかったし、このデザインで他のキャラクターも楽しみたかったですね。
S1-11「オデッセイ」(Odyssey)
原作ゲームは『Exodus』。知らないゲームだなと思ったら、まだリリースされていなかった…。ほんと、宣伝じゃないか…。相対性理論に基づく時間の遅れがテーマらしく、このエピソードでも描かれるように星々を渡るトラベラーが数日を過ごすあいだに、故郷では数十年が過ぎ去ってしまうという現象が起きるんだとか。ストーリーは超骨太で圧巻の映像でもありましたが、ゲーム性がわからない以上、これをゲームにしてどう楽しいのかイマイチ釈然としない気にもなったけども…いつプレイできるんですか?
S1-12「冒険の数々」(Tally)
原作ゲームは『スぺランキー(Spelunky)』。フリーゲームからの登場で、あの『スペランカー』に影響されたダンジョン探索ゲームです。ローグライクゲームというプレイするたびにダンジョン構造が変わってしまうというゲーム性を人生観に当てはめたようなストーリーでした。私にはあそこまでの達観した領域に到達できるか、ちょっと自信ないですが…。死にまくっていたら絶対に気持ちが挫けると思う…。ましてやリアルで死んでいるならなおさら気分が悪くなりそう…。
S1-13「インプラカブル号の物語」(Tale of the Implacale)
原作ゲームは『コンコード(Concord)』。このゲームはソニーが巨額の開発費を投じて2024年8月にリリースされるもそれから2週間後にサービス終了するという衝撃のニュースで世間を賑わしました(最近のソニーはSSUの件といい、企画へのビジョンがダメダメすぎる…)。この映像化はそんなことになるとは知らずに製作陣は作っていたのでしょうけど(結果的に唯一宣伝になっていないエピソードになった)、非常に魅力的な世界観を構築していました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のテイストですね。税金を払う必要もない宇宙に行きたいよ…。
S1-14「万物の道」(The Way of All Things)
原作ゲームは中国の『王者栄耀(Honor of Kings)』。やっていることはただの囲碁なのに、超壮大な映像で間をつないでいく大胆な映像化。それにしても、全知全能の人工知能だかなんだか知りませんけど、対局中に煽ってくるのは卑怯でしょうよ。あれは反則負けにしてもいいし、さすがに囲碁の天宮に偉そうに君臨する資格もないだろう…。しかし、この主人公は人徳がある人だった…。別のゲームのプレイヤーだったら殴り殺していたところだよ…。
S1-15「プレイタイム」(Fulfillment)
原作ゲームは…こちらにはありません。ソニーのゲーム機「プレイステーション(PlayStation)」をイメージしたCM…じゃなかった映像です。なのでそのプレステで遊べるいくつかのゲームのキャラクターもゲスト出演していて、ごちゃごちゃしています。利用規約を読まなかったとかそういうことじゃなく、最近の値上がりが尋常ではないゲームハード事情とか、そっち方面に向き合って風刺してほしかったですけどね。ゲームは楽しいけど、高価な趣味になりつつあるよね…。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
作品ポスター・画像 (C)Amazon シークレットレベル
以上、『シークレット・レベル』の感想でした。
Secret Level (2024) [Japanese Review] 『シークレット・レベル』考察・評価レビュー
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