3作目は敵陣に殴り込みだ!…映画『スカイライン3 逆襲』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:イギリス・スペイン・リトアニア(2020年)
日本公開日:2021年2月26日
監督:リアム・オドネル
スカイライン 逆襲
すかいらいん ぎゃくしゅう
『スカイライン 逆襲』あらすじ
地球は謎の侵略者に襲われた。その襲撃者であるエイリアン「ハーベスター」の目的は、人類を資源として利用することだった。捕らえられた人々は脳をサイボーグに移植され、奴隷として酷使される。ハーベスターの宇宙船が放つ青い光の影響で特殊なDNAを持つことになったローズは、抵抗軍を結成してハーベスターと戦い、彼らを一度は撃退するが、運命はそれで終わらない…。
『スカイライン 逆襲』感想(ネタバレなし)
「スカイライン」はひと味違う!
映画のタイトル(邦題)で「逆襲」とついていた場合、どんな内容を思い浮かぶでしょうか。
『ミュウツーの逆襲』とか『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』とか『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』とか『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』とか…。
とにかくどれも主人公側と対峙する存在が逆襲してくるものじゃないですか。一般的な映画の逆襲というのはそういうものです。
しかし、この『スカイライン』シリーズは違った…。
まず『スカイライン』シリーズの説明から。これは2010年に『スカイライン 征服』という映画が誕生したことからそもそもが始まります。この映画は“グレッグ・ストラウス”と“コリン・ストラウス”という兄弟が監督したもので、2人はVFXアーティスト。いかにもB級が漂う雰囲気ですし、実際に話としてはよくある「地球にエイリアンが侵略してきた」というものなのですが、CGは本格的に作りこんでいるし、まさかの勢い任せな展開の連続で一部のマニアに大ウケ。ファンを獲得します。
続く2作目が作られることになり、そこで『スカイライン 奪還』が2017年にお目見え。これがまた1作目を上回るマニアご褒美の大サービス映画になっており、さらに熱狂者も続出。かくいう私もこの2作目で『スカイライン』シリーズの臆面もないジャンル特化っぷりにテンションがあがってしまいました。
この『スカイライン』シリーズの特徴は、侵略される人間側がなかなかの反撃を見せてくるという部分。普通は未知のエイリアンになすすべもなく蹂躙されていき、最後の最後でようやく奇跡的に勝てた…という感じだと思います。『インディペンデンス・デイ』とかもそうですね。
ところがどっこいこの『スカイライン』シリーズは「え?そんな対抗できるの?」「え?そうやって攻撃するの?」「え?案外と勝ててるじゃないか!」という怒涛の反撃展開のオンパレードでそこが楽しかったりするのです。人間って意外と強いんだなっていう…(アホっぽい感想)。
VFX畑の人たちによる「普段は下働きしている俺たちが好き勝手作りたいもの作ってやるぜ!」の精神で生まれたせいか、世間体とかを気にしていない奔放さがプラスになっているのでしょうかね。
その『スカイライン』シリーズもついに3作目に突入。それが本作『スカイライン 逆襲』です。
今度は何が起きるか。それは「逆襲」です。でもエイリアン側が逆襲するのか…と思いきや、なんと人間側がエイリアンの本拠地の惑星に殴りこんでいくのです。逆襲に対して逆襲で被せていくアグレッシブなスタイル。『インデペンデンス・デイ リサージェンス』や『トランスフォーマー』シリーズなどの強豪の大作ですらもやらなかったことを平然とやってのける。『スカイライン』シリーズ、怖いもの知らずです…。
監督は2作目と同じく“リアム・オドネル”。ストラウス兄弟率いるVFX制作会社「Hydraulx(ハイドラックス)」のクリエイターです。
俳優陣ですが、今回は2作目で大暴れした“フランク・グリロ”や“イコ・ウワイス”は登場しません。そこは残念ですけど、その代わりに新キャラクター目白押し。まず主役は2作目のラストで豪快に攻め込んでいた“リンゼイ・モーガン”。そして“ジョナサン・ハワード”や“ダニエル・バーンハード”、“アレクサンダー・シディグ”など意外といろいろ出ている男性陣も脇を固めています。もちろん“ローナ・ミトラ”などの女性陣もしっかり揃っていますし、ドラマ『ダーク・マテリアルズ 黄金の羅針盤』でおなじみの“ジェームズ・コスモ”というおじいちゃん枠も完備。加えて前作でもバイオレンスに大暴れしまくっていた“ヤヤン・ルヒアン”も続投。まさか今回もバトルに参入してくれるとは…。
このコロナ禍では何も考えずに脳内に流し込めるエンターテインメント映画が不足気味ですからね。『スカイライン 逆襲』は不足を補う栄養ドリンクみたいなものです。
シリーズものですが、とくに過去作を絶対に鑑賞しないとついていけないわけでもないです。時間があれば観ておく感じで構いませんし、3作目を鑑賞後に1作目・2作目を観ると前日譚として楽しめると思います。
オススメ度のチェック
ひとり | :シリーズのファンは注目 |
友人 | :気楽に鑑賞するならば |
恋人 | :恋愛している場合じゃない |
キッズ | :やや暴力的ではあるけど |
『スカイライン 逆襲』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):15年ぶりの大逆襲
始まりは突然でした。青白い光。それが恐怖の象徴に…。
ロサンゼルスのペントハウスでのんびりとしていた人たちもその異変にすぐに気づきました。部屋のブラインドから差し込む青白い光を目にした友人が一瞬で吸い込まれるように消えたのです。跡形もなく。
窓の外を見れば事態の異常さがひと目でわかりました。形容しがたい巨大な宇宙船のようなものが空に浮かび、一帯をパニックに陥らせていました。地上から人間を次々と吸い上げたかと思えば、巨大なエイリアンが街を破壊していきます。人類が侵略されるまで3日間。時間はそこまで必要ありません。
もはや絶望的…そう思った矢先、予想外の現象が起きます。あのエイリアン「ハーベスター」は人間を捕獲してその脳を別のサイボーグに移植し、「パイロット」という手駒として利用するのが狙いだったのですが、捕獲された人間のひとりだったジャロッドはパイロット化しても意思を失わず、抵抗してみせたのです。こうしてエイリアンのパワーを手に入れた人類が誕生しました。
ロサンゼルス市警のマークは、息子のトレントと共に吸い込まれた宇宙船で人間の心を残したジャロッドと出会います。そして協力することであの宇宙船を破壊することに成功。それは内戦が続くラオスに墜落し、ジャロッドは死亡しましたが、船内で生まれたジャロッドの娘であるローズを連れて脱出することができました。さらに人間たちは一致団結してエイリアンを撃退。トレントはエイリアン化してしまいますが、こちらも自我を失わず、人類側に加勢。
しかも生まれたばかりのはずのローズは急激に成長し、3歳程度の姿に。実は彼女にはエイリアンの血が流れ込み、特殊な体質となっていたのでした。
そして10年後。ローズは人間側のレジスタンスのリーダーとしてエイリアンの宇宙船を乗っ取り、月の周辺にいた敵のマザーシップを破壊します。青い光のパワーの源「コアドライブ」を積んだアルマダ艦を打ち破って見事にエイリアンを殲滅したのです。しかし、ローズは多くの犠牲を払ったことに心を痛め、軍から身をひき、どこかへ行ってしまいました。
そんな昔話を語る眼帯の老人・グラント。あれからさらに5年。ここロンドン周辺はエイリアンの侵略で昔の姿ではなくなっており、自我を取り戻したエイリアン化したパイロットと普通の人間が歪に共存する世界となっていました。
ローズの消息はわかっていない…ことになっていましたが、実はここの浮浪者が集まるキャンプに隠れていました。
ローズは、医者であるマルのもとへ。体はいまだにエイリアンの影響があるようで定期的に診てもらっています。ベッドにはエイリアン。目が青や赤にチカチカしており、様子がおかしいです。
そこに軍が乱入。狙いはローズです。ローズは追っ手を華麗な動きでかわすものの、銃を突きつけられます。しかし、そこに青目となったエイリアンが襲ってきて、撃退するもローズは逮捕されてしまいました。
連行されたのは秘密基地。オーエンス大佐に連れられて、ラドフォード将軍のもとに立たされます。彼女をここに引っ張ってきたのには事情がありました。5年前に破壊したと思っていた「コアドライブ」。実は敵の惑星である「コバルトワン」に移送されていたというのです。しかも、敵は反撃の準備を整え、地球で暮らす30億もの「パイロット」を再び操りはじめる危険があるとか。残された時間は72時間。一刻の猶予もないです。
レオン伍長やジーといったチームに加わることを余儀なくされます。ルームメイトだと紹介されたのが、パイロットにされたマークの息子トレントで、久しぶりの再会に心が躍ります。しかし、何かとチームと対立気味のローズです。それでもやるしかない。
そしてここで想像していなかった強襲を受けることに…。
人間側が征服してません?
『スカイライン』シリーズを振り返ってみると、1作目の『スカイライン 征服』は低予算の企画らしくシチュエーション・スリラーとして堅実に始動していました。狭いペントハウスという空間で、何が起きたのか全容も掴めないままに、どんどん繰り広げられる異次元の緊急事態。情報の小出しと、ときおり衝撃を与える映像の挿入のコンボがいい感じでした。
続く2作目の『スカイライン 奪還』はガラッと雰囲気を変えて、割とアクションに特化し、ひたすらにエイリアンをぶっ倒していく人間を描いています。もう人間側が強すぎるんですよね。ロス市警ってエイリアンも制圧できるんですか?と思うぐらいの戦闘能力を持つ男にエイリアンらしいアーム・ウェポンを与えてさらにパワーアップさせたかと思えば、ラオスでは内戦でいつのまにやらエイリアン以上に強力な武術を使い手へと進化した人間がわんさかいるし。かと思えばエイリアン化をコントロールして暴れる奴もいれば、DNAレベルでエイリアンと合成して超イレギュラーな存在へと高みに到達した幼女もいるし…。ああ
あ
その流れで3作目はどうなってしまうのか、ハラハラだったのですが、今作では敵の惑星の乗り込んでいくという、オーソドックスなスペース・オペラの第1章みたいな様相になっていました。冷静に宇宙船を操って敵の本拠地惑星にあがりこんでいますけど、この人間たち、たぶんエイリアン侵略前は今の私たちと同程度の宇宙探索技術しか持っていないような存在だったはずです。たかだか15年でこの飛躍ですよ。ヤバいよ、人類。なんてものを与えちゃったんだよ、エイリアン…。
こうやって人類って宇宙へ踏み出すのか…。
それにしてもバイオレンスな動機ですよ。『スター・トレック』なんかとは真逆ですからね。友好とか対話とか、そんなの関係なしにガンガンと殴りこんでいってます。
『スカイライン 逆襲』っていうけど、ほぼ「スカイライン 征服(人間のターン)」みたいなものじゃないですか。
こうなってくると逆にエイリアン「ハーベスター」側が何も怖くないという…。むしろ可哀想なんじゃないかという気持ちも抱かないでもない。
実際、今作ではエイリアン側の敵っぷりは減退しており、その代わりラドフォード将軍といういかにも初登場時から悪そうな顔をしている奴が黒幕として、隠す気もなく墓穴を掘ります。エイリアンでも勝てない主人公に勝てるわけもないのに…。
ファッキン・エイリアン!
ただ、その勢いは良しとしても、中身は平凡になったかなとも思います。前作にあった「え?そうやって反撃するの?」という怒涛のお見舞いが今回は少ないですからね。
そもそも主人公のローズがすでにチート級に強すぎる状態をリミット超えしてます。手から謎の攻撃とか出せるようになってしまい、もはや『キャプテン・マーベル』状態。空を飛ぶんじゃないかとヒヤヒヤしました。
この主人公の一強だと、他のキャラクターはどうしても霞みますよね。レオンとかもそんなにいる意味なかった気がするし、もっと言うなら地球のパートは必要だったのかな、と。マル博士たちのエイリアン攻防は場繋ぎとしてもそこまで効果的ではないですし、グラントの死もそんなに観客としては悲しくもない。でもなぜか生き生きと暴れるフアナは見ごたえがある。
というか、なんでこいつを宇宙への旅に連れて行かないのか。前作でエイリアンに有効なのはシラットなどの格闘術だって判明したのに。フアナは今作では腕を魔改造して平然と暴虐のかぎりを尽くしていましたから、きっと終盤の宇宙船でのバトルも一発で制圧できましたよ(それは困るのか)。後半にローズがタンカー(大型のエイリアン)に乗り込むシーンも、もうちょっと見せ場があると良かったですね。
唯一、本作の新しい味になっているなと思うのは、パイロット化したトレントとのやりとり。異種間コミュニケーションは楽しいものですが、今作のトレントも妙に愛嬌があっていいです。言葉は字幕で表示されるのですが、しっかり汚い言葉を使っていたり、割と自由奔放です。
この『スカイライン』シリーズは基本的にそこまでの社会派テイストもなく、SF的考証もありません。『囚われた国家』みたいにエイリアンに侵略されてしまった人類社会が地道に活動して反撃の狼煙をあげるというカタルシスもありません。
とにかく「すげぇ映像」を見られればいい、パッと頭に思いついた映像を具現化したい、そんな短絡的すぎる本能のままに作られている映画です。
私は全然それでいいと思います。このシリーズに関しては。
今回の3作目は確かにややハイテンションがダウンした感じもありましたけど、ほら、たまたま3作目だけちょっと波が下がることもあるじゃないですか。これが10作続くと考えれば、それくらいの乱高下はあるものです(勝手に決めつけ)。
とりあえずまだまだここで終わらせはしない、もっとやっちゃうよ!という指針表明があったし、私はこのシリーズをなんだかんだで追っかけてると思います。
あのエンディングのNGシーン集を見ていたら、全部OKになっちゃうものです。
人類とエイリアンは仲良し!(強引な和解)
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 52% Audience 46%
IMDb
4.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2020 MPP-Cobalt Limited. All rights reserved.
以上、『スカイライン 逆襲』の感想でした。
Skylin3s (2020) [Japanese Review] 『スカイライン 逆襲』考察・評価レビュー