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『ブラック・ミラー<シーズン7>』感想(ネタバレ)…ver7にアップデート

ブラック・ミラー(シーズン7)

更新は無料です…アンソロジーシリーズ『ブラック・ミラー』(シーズン7)の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Black Mirror
製作国:イギリス(2025年)
シーズン7:2025年にNetflixで配信
原案:チャーリー・ブルッカー
自死・自傷描写 性描写 恋愛描写
ブラック・ミラー(シーズン7)

ぶらっくみらー しーずん7
ブラック・ミラー(シーズン7)

『ブラック・ミラー(シーズン7)』物語 簡単紹介

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この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ブラック・ミラー(シーズン7)』の感想です。

『ブラック・ミラー(シーズン7)』感想(ネタバレなし)

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テック・オリガルヒはアンインストールしたい

2025年1月の2度目の“ドナルド・トランプ”の大統領就任式の日、再び王座に返り咲いたことにご満悦の本人の後ろには、ズラっとテクノロジー大企業のトップの人たちが並んでいました。

その光景の様子がメディアを通して世間に流れ、一部の人は寡頭政治の到来を予感しました。そして国家権力者と一体化しようと企むテクノロジー大企業のトップを指して「テック・オリガルヒ」と皮肉を込めて揶揄もされました。

テクノロジーへの信頼はかつてないほどに低下していると思います。一方で信頼していないにもかかわらず利用せざるを得ないという歪んだ状況が慢性化してもいます。こうなってくるとテック企業は「信頼を得る」ことに注力しなくなります。信頼されなくても利用してくれるのですから。あとはどう依存させるか、そこを突き詰めれば儲かります。

本作『ブラック・ミラー』シーズン7はそんな2025年に私たちのもとに帰ってきました。

『ブラック・ミラー』が何なのかわからない初心者の人向けに簡単に紹介すると…

この『ブラック・ミラー』は、2011年から「Channel 4」で放送されたイギリスのアンソロジー・シリーズです。

テクノロジーを主題にしているのですが、「未来のテクノロジーって素晴らしいんですよ。科学技術はあなたに夢を与えます。ワクワクしますね」みたいな万博の論調で語ってくれはしません。

本作はテクノロジーの怖さ・危険性・不安…そうしたものを土台にしつつ、近未来のテクノロジーが人間社会に何をもたらすのかを痛烈に風刺したダークなSFが基本となっています。テクノロジー楽観主義者には不向きな作品です。

風刺作家の“チャーリー・ブルッカー”が原案と脚本を手がけ続けています。

『ブラック・ミラー』は瞬く間にカルト化するほど人気を博し、2016年のシーズン4からはプラットフォームを「Netflix」に変え、シリーズが継続していきました。2019年のシーズン5から少し停滞しましたが、2023年にシーズン6が再開し、再び勢いが増しています。

そして2025年にシーズン7となったわけです。

アンソロジーなのでオムニバス形式で1話1話独立しています。物語は繋がっていないので、どのシーズンのどのエピソードから見ても問題ないです。気に入ったエピソード1話だけを観るのでも全然OKです。

ただし、今回のシーズン7のうちの第6話だけは過去のエピソードの続編になっており、少々特殊な立ち位置ですが…。

シーズン7も選り取り見取り。恐ろしいエピソード(第1話・第2話・第4話)もあれば、切ないエピソード(第3話・第5話)もあるし、クィアなロマンス(第3話)も届けてくれます。

シーズン7は全6話(1話あたり約45分~75分)。1話1話が一本の映画並みにクオリティが高くて見ごたえがあるので、じっくり楽しんでください。

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『ブラック・ミラー(シーズン7)』を観る前のQ&A

✔『ブラック・ミラー(シーズン7)』の見どころ
★クオリティの高いテクノロジー・ストーリー。
✔『ブラック・ミラー(シーズン7)』の欠点
☆もっと観たくなる。
日本語吹き替え あり
志村知幸(マイク)/ 園崎未恵(アマンダ)/ 武田華(マリア)/ 渋谷はるか(ヴェリティ)/ 藤田奈央(ブランディ)/ 清水理沙(クララ) ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本 自死の描写や大切な人との死別の描写が含まれます。
キッズ 2.0
性行為の描写があり、残酷な暴力描写もあります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ブラック・ミラー(シーズン7)』感想/考察(ネタバレあり)

ここから『ブラック・ミラー(シーズン7)』のネタバレありの感想本文です。

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第1話『普通の人々(Common People)』

初っ端からエグイほどにテクノロジーの狂気をみせつけてくる第1話『普通の人々(Common People)』。まさにテクノロジーが家庭・人間関係を侵食していき、やがて崩壊させるという怖さを嫌というほどに物語で味わうことになります。

このエピソードでは、フリーミアムというビジネスモデルが取り上げられます。フリーミアムというのは、最初は無料で、プランなどが分かれていて、有料のプランだとより機能が多くなるというもので、今やありとあらゆるサービスが採用している形式です。「Netflix」も無料はないですが、複数の金額の異なる有料プランを用意してますね。

こういうのってサービス側は極めて善意に満ち溢れた宣伝文句を駆使し、「アップグレードは任意ですし、私たちはユーザーに選ぶ自由を与えていますよ」と吹聴するのですが、実際はどうかと言えば、サービス依存を高めて人質にとるような戦略だったりするわけで…。

本作のアマンダ(演じるのは“ラシダ・ジョーンズ”)とマイク(演じるのは“クリス・オダウド”)の夫妻は新興企業「リヴァーマインド」の口車に乗せられ、「脳のバックアップをコンピュータ上で作り、腫瘍のあった脳組織を人工組織に置き換え、脳の機能は企業のサーバーから無線で配信する」という技術に人生を託してしまいます。

副作用で睡眠時間が減り、移動制限がかかり、さらには広告配信に利用され…。この広告がまたゾっとしますよ。「広告は自然に会話に溶け込んでいるからいいですよね?」というさも良質な広告でしょうと言いたげな態度が余計に…。「あなたの脳データを他のサーバーを動かすのに利用させてもらいますね?」というのは、AI学習と同じような構図だし…。

こういうのって対価を払えばいいとかそういう問題じゃないんですよね。テクノロジーが主導権を持ってしまい、弱い立場の人たちが搾取されることが問題視されるのであって…。「リヴァーマインド・ラックス」という“感覚を高める”新プランはテクノロジーが人間をコントロールする方法の到達点ですね。

このエピソードの何が怖いかって、フィクションではあるけど、今のテクノロジー企業ならこれくらいのことを普通に「良いアイディアだね!」って笑顔で実現しそうなことですよ。

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第2話『ベット・ノワール(Bête Noire)』

第2話『ベット・ノワール(Bête Noire)』は、「私は本当のことを言っているはずなのに、まわりのみんなは信じてくれない! なんで!?」という定番のサイコロジカル・サスペンスです。

その真相は、ヴェリティ(演じるのは“ロージー・マキューアン”)という高校時代のイジメられっ子が大人になってから自分をイジメていた子に復讐を実行していたのでした。それも量子コンピュータで微かに異なる並行現実に移動させてどんどん孤立させて自殺へと誘導するという、なんとも陰湿なやりかたで…。

アレルギーが存在しない並行現実とか、嬉しいんですけどね…。

人は復讐に憑りつかれると、どんなテクノロジーでも悪用できてしまうということ。それは既存のSNSとかでも何も変わらない光景です。

ターゲットとなったマリア(演じるのは“シエナ・ケリー”)ですが、彼女もイジメられたくないばかりにイジメの主導者に従って取り巻きとなっていたわけで、日和見主義に陥る人の弱さが露呈していました。

ラストはマリアが例の技術のコントロール権を握り、自分が世界を支配する女王となった世界に変えます。この「女王(クイーン)」になるというオチは、英語圏では学校内の派閥においてトップに立つ女子生徒を「クイーン」と呼ぶので、それと重ね合わせた演出です。

その世界のマリアもいずれは虚しさの味を噛みしめるのでしょうか。美味しいチョコレートを食べる仕事のほうがまだ楽しそうなのにな…。

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第3話『ホテル・レヴェリー(Hotel Reverie)』

第3話『ホテル・レヴェリー(Hotel Reverie)』テクノロジー(AI)と映画業界の話です。と言っても以前の『ブラック・ミラー』でやった生成AIの恐ろしさみたいな方向にはいきません。

このエピソードは、過去に悲劇を背負わせてしまった者に対して現代の人間はテクノロジーで何ができるか…という誠実な姿勢を問う話だと思いました。

「リドリーム」という、映像データをAIで空間化し、その中の登場人物まで自我を生成し、実在の人間の意識をその空間に没入させて登場させられる…というテクノロジーが主題となります。これなら確かに俳優はちゃんと演技できます(でも脇役とか他の美術とかの仕事が無くなるので絶対に業界から反発されまくると思うけど…)。

今回のその舞台は『ホテル・レヴェリー』という名作クラシックの白黒男女ロマンス映画(『カサブランカ』や『逢びき』風)。

その中でヒロインのクララ役を演じたドロシー・チェンバース(演じるのは“エマ・コリン”)という名女優の埋もれた人生が浮かび上がります。どうやらドロシーは裏方の女性に恋愛感情を抱くクィアな当事者だったようで、しかし、それは易々と表に明かせない当時の風潮だったので、そのまま苦悩を抱えたままに命を絶っていました。

本作はそんなドロシーを歴史を変えて救うことはできません(第2話の技術があればできるけどたぶん破滅的なことが起きそう…)。

では救いはないのかと言えば、それこそ「現代の人間はテクノロジーで何ができるか」に関わってくる部分ですが、この『ホテル・レヴェリー』のリメイクが異性愛から同性愛のロマンスに変わったことがひとつの救済になりうるかなと思います。

黒人女性のブランディ(演じるのは“イッサ・レイ”)がオリジナルでは白人男性だった主人公の役に起用されたことで、図らずもドロシー本人の埋没したクィアネスが世間に提示されうる糸口となりました。同性愛者を異性愛者として歴史上で語るのは屈辱ですからね。

ブランディが思わず俳優名で「ドロシー!」と呼んでしまうシーンが「覚醒」のきっかけですが、これは「ドロシーの友達」が「ゲイ」であることを仲間内で密かに表すコードワードだったという歴史を踏まえた仕掛けにもなっているのが気の利いた演出です。

レズビアン・ロマンスは映画内では儚く散るも、ラストは電話でインタビュー映像内のドロシーと会話でき、今度は現代を生きるクィア当事者の心を癒す存在になったドロシー。こういう役目のほうがドロシーも嬉しいでしょうね。

『ブラック・ミラー』はシーズン3でも『サン・ジュニペロ』というサフィックなロマンス・エピソードを提供していましたが、また新たに心に残る1話が追加されて良かったです。

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第4話『おもちゃの一種(Plaything)』

第4話『おもちゃの一種(Plaything)』は邦題がちょっとわかりにくいですが、「plaything」は「オモチャ」という意味で、同時に「thing(モノ/生き物)」「play(ゲームプレイ/遊ぶ)」することで起きる人類の顛末を描いた、ショッキングなエンディングが待つエピソードです。

シリーズのインタラクティブ映画『ブラック・ミラー バンダースナッチ』にも登場したゲーム会社の「タッカーソフト」のコリン(演じるのは“ウィル・ポーター”)が再登場し、キャメロン・ウォーカーという冴えない若者が不可思議なゲームを盗むことから終わりが始まります。

今作のモノなのか生き物なのかわからない「thing」は『スロングレット』というゲームにて増殖していくスロングというキャラ。なんか『たまごっち』みたいに育成でき、『ピクミン』みたいに群衆化していく中で、ある目的を持ち始め…。

「争いを無くすにはこの世の全てが同一化すればいいのだ」という発想はろくなものじゃないですね。

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第5話『ユーロジー(Eulogy)』

第5話『ユーロジー(Eulogy)』は、第3話の『ホテル・レヴェリー』と少しトーンが似ていて、悲劇を癒すためのテクノロジーという方向性により特化しています。テクノロジーが悲しみを引き起こすのではなく、悲しみのプロセスを緩和的に助ける方法を探求する…そういうエピソードで、これまでの『ブラック・ミラー』の中でも最も温かみがある物語でした。

しかも、会話劇が主軸です。主人公のフィリップを演じた“ポール・ジアマッティ”の名演が堪能できます。

任意の写真のデータを取り込んでその中を探索できるテクノロジー。これはもう近いうちにVRと合わせて実現しそうですけどね。ただ、本作で興味深いのは、使い捨てカメラで撮った写真のような旧時代のアイテムが、最新のテクノロジーによってその価値が再発見されるというところにあると思いました。やっぱりこの視点も第3話に似ていますが…。

フィリップは自分の中では記憶を封印するほどに物悲しい喧嘩別れとなった元恋人キャロルの思い出を、彼女の死を聞かされたことで追想することになります。視覚的体験が記憶を呼び覚まし、音楽がさらに思い出を繋げ、最も大切な人の顔を思い出すに至る…。その過程が実にドラマチックに紡がれていました。

こういうテクノロジーをみてしまうと、古い写真は捨てるものじゃないなと思いますし、生成AIで作られた画像がいかに精巧な写真のように思えようとも、そこに記憶を宿らせるのは生身の人間なんだということを実感しますね。

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第6話『宇宙船カリスター号:インフィニティの中へ(USS Callister: Into Infinity)』

やってきました、第6話『宇宙船カリスター号:インフィニティの中へ(USS Callister: Into Infinity)』。『ブラック・ミラー』のシーズン4の人気エピソード『宇宙船カリスター号』の続編です。もうこれだけ別個でドラマシリーズにすればいいじゃないかと思ってましたけど、続編としてむやみに間延びさせないエピソードを披露してくれました。

前作は、カリスター社のロバート・デイリー(演じるのは“ジェシー・プレモンス”)というキャラクターを通してゲーム業界のインセル的な女性蔑視な有害な男らしさ社会体質を皮肉たっぷりに映し出し、その中で性的にも労働者的にも搾取されて孤軍奮闘するナネット・コール(演じるのは“クリスティン・ミリオティ”)を描き出していました。

今作は、その続きで、ナネットはまたしても面倒な男2人と、そして無数の収拾のつかない自己中心的なゲームユーザー(彼らはプレイを楽しんでいるだけなんですが)を相手にすることになります。

またもデイリーが再登場し、今回は善人なのかと思わせてゾワっとする恐怖が襲ってきたり、現CEOジェームズ・ウォルトン(演じるのは“ジミー・シンプソン”)はどうしようもないクズだし、ストレス過多で労働災害状態ですが(ほんと、災害だよ…)、ナネットは頑張った…。ボーナス報酬20年分くらいあげるべき。

ナネットはなんだかんだあって最後は『インサイド・ヘッド』みたいになってたけど、あれ、絶対に心身が疲弊しそうです…。

ウォルトンはデジタル人権侵害で逮捕されたようですけど、今度は彼がデジタル刑務所に収監されてそこで大騒動を起こすエピソードとかも見たいですよ。

『ブラック・ミラー(シーズン7)』
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)

作品ポスター・画像 (C)Netflix ブラックミラー

以上、『ブラック・ミラー(シーズン7)』の感想でした。

Black Mirror (2025) [Japanese Review] 『ブラック・ミラー(シーズン7)』考察・評価レビュー
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