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『ゴジラ×コング 新たなる帝国』感想(ネタバレ)…コンビ名はGK!

ゴジラ×コング 新たなる帝国

コンビ名はGKです!…映画『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Godzilla x Kong: The New Empire
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年4月26日
監督:アダム・ウィンガード
ゴジラ×コング 新たなる帝国

ごじら こんぐ あらたなるていこく
ゴジラ×コング 新たなる帝国

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』物語 簡単紹介

怪獣の存在を無視することはできなくなった人類は、未確認生物特務機関「モナーク」を中心に怪獣の研究が進められていた。ある日、異常なシグナルを察知したことを発端に、ゴジラが君臨する地上世界とコングが生きる地底世界の2つが脅かされる危機が露わになる。ゴジラとコングの激突よりも恐ろしい事態は目前に迫っている。人類にとってさらなる未知の脅威は怪獣たちの歴史と起源にも関わってくるもので…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の感想です。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』感想(ネタバレなし)

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あれ、本当にBLになった?

2021年の『ゴジラvsコング』の私の感想で「濃厚なBLだった…」みたいなことをべらべらと呑気に書いていたら、まさかその続編がこんなBL全開なタイトルになるとは思わなかった…

はい、本作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』のことです。

とりあえず映画の立ち位置を説明しておくと、ハリウッドが東宝と協力して「モンスター・ヴァース(モンスターバース)」というシェアード・ユニバースのシリーズが展開中。2014年に『GODZILLA ゴジラ』、2017年に『キングコング 髑髏島の巨神』、2019年に『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、2021年に『ゴジラvsコング』と、計4本の映画が公開されました。

今作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』は5作目です。

シリーズとしては怪獣プロレス映画への特化に爆速進行しており、ハリウッドの予算を使ってやりたい放題やってる感じ。これができているのも中国での興収に支えられているからかな。まあ、製作の「レジェンダリー・エンターテインメント」も中国資本で成り立っているし、このフランチャイズは実質半分は中国依存とも言えますけど。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』はその方向性が前作以上に極まっています。ハッキリ言っちゃえば怪獣が戦っているだけです。人間模様のドラマはほぼありません。

タイトルでわかるとおり、前作でゴジラとコングが戦いましたが、今回は共闘します。ということは、ゴジラとコングが力を合わせて倒さないといけない怪獣がでてくるってことですね。どんな敵の怪獣かは見てのお楽しみ。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の監督は前作に続いて“アダム・ウィンガード”。前作と今作を合わせて鑑賞してわかりましたけど、“アダム・ウィンガード”監督は完全に怪獣プロレス好きな怪獣オタクですね。怪獣同士が揉み合いへし合いして「俺が一番!」みたいな頂点を決める展開がお気に入りで、怪獣を人間臭く描くのが好みみたいな…。怪獣を神話的に描く『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の“マイケル・ドハティ”監督とは正反対のクリエイティブです。

俳優陣は、『PASSING 白い黒人』を監督した“レベッカ・ホール”『その道の向こうに』”ブライアン・タイリー・ヘンリー”は継続。デフ(聴覚障がい者)当事者でもある”ケイリー・ホトル”は前作よりも出番が増えて重要性が上がっています。

追加キャストは、『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』“ダン・スティーヴンス”『シャン・チー テン・リングスの伝説』”ファラ・チェン”など。

前作よりも登場人物数は減っていて、そこからも本作の人間ドラマの少なさが察せると思います。

ちなみに、今回は日本人枠はないんですよね。なんでだ…。

なお、直近で映画だけで続いていたシリーズがさらなる拡張をみせた一歩を踏み出したドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』も配信されましたが、本作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』を観るうえで、そのドラマを観ておかないといけないということはないです。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』で、ゴジラとコングと一緒に無邪気に駆け回りましょう。

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『ゴジラ×コング 新たなる帝国』を観る前のQ&A

Q:『ゴジラ×コング 新たなる帝国』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:最低でも『ゴジラvsコング』を鑑賞しておくとベストですが、いきなり本作から観てもそこまで問題はないです。
✔『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の見どころ
★怪獣が暴れる。以上です。
✔『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の欠点
☆怪獣が暴れている。以上はないです。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:頭を空っぽに
友人 3.5:怪獣オタク同士で
恋人 3.5:趣味が合うなら
キッズ 3.5:怪獣好きの子に
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

地球の内部にある地下空洞の世界。そこは時空の歪みによってどこまでも広大で、地上では見られない大自然が繁栄し、獰猛な巨大生物もうじゃうじゃいます。そんな場所で、コングは駆けまわっていました。

以前に住んでいた手狭な髑髏島とは違います。しかし、捕食者の群れに狙われても、強力なパワーで威圧すればたいていは逃げていきます。

ここに移り住んでからコングはひとり。昔は心を通わせた人間もいましたが、今ははるか遠くの距離。咆哮が聞こえた気がして、懐かしくなり、探してみますが、それは聞き違いでした。コングにとっての好敵手だったアイツの声に似ていた気がしたのです。

一方、地上で繁栄する人間たちは怪獣(タイタン)の発見によって大きな社会変化が起きていました。地上に君臨し続ける怪獣の王であるゴジラは各地に現れては、他の怪獣を倒し、頂点の座を譲っていません。

怪獣の研究機関「モナーク」は忙しいです。すでに地下空洞に行き来する手段も獲得し、地上でも地下でもやることはいくらでもありました。

ある日、地下空洞に駐留してコングの観察をしていたモナークの観測前哨基地にて未確認の信号を受信しました。コングが暴れた地面が崩れ、大きな穴が開き、そこからノイズが漏れ出しており…。

一方、モナークを引っ張る研究者のアイリーン・アンドリューズは忙しさに翻弄され、養子のジアと少し距離ができている気がして心配でした。

ジアは今は学校に通っています。ところが授業中に幻覚やフラッシュバックを経験し、いつの間にか机に変な模様を描いてしまっていました。アイリーンは教室に呼ばれ、迎えます。ジアはコングが懐かしいようです。以前はジアはコングと手話でコミュニケーションできるほどに親密な関係を築いていました。

アイリーンはそのジアの書いた模様が、最近観測された信号と一致すると気づきます。これは何か起きている。でも何が起きているのか詳細がわかりません。

そこでアイリーンはバーニー・ヘイズを訪ねます。少し前にゴジラとコングが戦った出来事のとき、その場に居合わせた怪獣陰謀論好きなアマチュアです。今も相変わらずポッドキャストで好き勝手に喋りまくっているようです。彼に声をかけ、とりあえずついてきてもらいます。

ローマで休息していたゴジラは移動を開始しました。同時にコングも地上に現れました。どうやら歯が痛いようです。アイリーンは知り合いのトラッパーに頼み、コングの歯を抜いてあげます。そこでジアはコングと再会し、久しぶりに顔を合わせます。

アイリーン、ジア、バーニー、トラッパーたちはみんなでコングと一緒に地下空洞へ降りることにします。地下空洞世界にあったモナークの基地は破壊されていました。近くの岩肌には巨大な手のひらのあと。コングのものではありません。

コングも自分の住処のそばに今まではなかった陥没した裂け目があるのに気づき、さらに降りてみることにします。

人間もコングも知らなかった未知の世界がそこにはあり、知られざる歴史が明らかになることに…。

この『ゴジラ×コング 新たなる帝国』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/04/27に更新されています。
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その一線を超えてしまったのか

ここから『ゴジラ×コング 新たなる帝国』のネタバレありの感想本文です。

最初に感想の結論を言うと、個人的には『ゴジラ×コング 新たなる帝国』はタイトル負けしているなとも思いました。というのも、ゴジラとコングを並列に並べていますけど、実質、コングが主役の映画になっているからです。

もうこれは巨大版『猿の惑星』ですね(副題もそれっぽい)。地球は地下で巨大猿の惑星が築かれていたのです。もう人間は蚊帳の外です。

コングとスカーキングの対立構図は完全に『猿の惑星』をなぞってます。他にも、冒頭のコングの1日の風景といい、コングとミニコング(スコという名らしい)の交流といい、スカーキングの支配するコミュニティといい、人間臭さが過去一番に増してました。『猿の惑星』との違いは、人語を話さないことと、身体のデカさくらいでしょうか。

ただ、コングが主役すぎるという欠点では終わりません。本作はこの「モンスター・ヴァース(モンスターバース)」というシェアード・ユニバースにおいて、結構決定的なことを描いてしまったようにも思います。

今作にて、スカーキングは冷凍怪獣(シモという名らしい)を鎖で繋いで使役しています。決着後にあの巨大猿コミュニティをコングが従えることになっても、あの冷凍怪獣はコングを乗せていますし、案外と従順です。

つまり、怪獣の間に序列が作られてしまっているのです。少なくとも本作にてコングの種族は怪獣を従えさせる知能があるという設定になりました。

怪獣プロセス映画の基本は怪獣たちの取っ組み合いにあり、各怪獣で能力や個性はあっても、全ての怪獣が対等に殴り合います。そういうエンターテインメントです。

しかし、『ゴジラ×コング 新たなる帝国』はコングの種族の優位性を示してしまったことで、その一線を超えたのではないでしょうか。『猿の惑星』はそもそも人種や植民地主義の社会風刺作品です。その『猿の惑星』を安易になぞったことの弊害で、怪獣に社会性をもたらし、その社会特有の悪い部分も持ち込んだにもかかわらず、それを風刺するまで受け持っていないような…。

私の好みとしては、怪獣映画にその社会性の概念は要らなかったのではないかな、と。単純にバトルで優劣を決めるエンタメではなくなってしまうので…。怪獣が怪獣として特異に機能するのは、その怪獣が「人種」とかそういう人間的な社会属性を背負っていないからだと私は考えていたので、本作は怪獣を人間的に描きすぎてしまったのがマズかった…。

いや、別に怪獣に人間社会属性を背負わすのは良いんですよ。けれども、やるにしても相当にそれなりの社会を描く上手さが求められるじゃないですか。本作はそこまでの丁寧さはないのです。やっぱりこれまでのノリどおりなので…。

スカーキングのデザインも露骨に悪者っぽさを詰め込んだステレオタイプな感じで、これは明らかにレイシズムが滲んでいるので、どうなんだろうと思いますし…。

それと関連して、本作で地下空洞世界にもいることが明らかとなったイーウィス族も扱いはあれだったかな…。最近は先住民のレプリゼンテーションもちゃんとしてきている作品もある中、今回の『ゴジラ×コング 新たなる帝国』は消費一辺倒すぎました。

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一緒に殺ろうぜ!…なのはいいけど

そんな『猿の惑星』を表面的に模倣しただけの『ゴジラ×コング 新たなる帝国』にて、一方の今作のゴジラは何なのかというと、もう地上を徘徊するデカい猫です。

本作のゴジラは行動がなぜか猫っぽく、ローマのコロッセウムで丸まって寝ながら、自分がウザいと思った怪獣をときおり追っ払います。放射線を吸収するのも、もはやペットの日常の水受け皿からの摂取とそう変わらないいつもの光景。

本当に『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』にでてきたゴジラと同じなのかと疑いたくなるくらい…。

1954年の初代『ゴジラ』にあった(そして『ゴジラ−1.0』もやろうとして保守的に傾きすぎた)戦争に絡めた社会風刺としての役目は綺麗さっぱりありません。

そんなゴジラがコングと絡みだすのは終盤になってようやくですが、「穴に入ってくれ」と促すコングを無視して、いきなりの喧嘩モード。爪切りを嫌がる猫のごとく、己のやりたいように暴れます。タイトルのわりには2人の親密性が前作より薄い…(というかリセットされてる)。

そんなゴジラとコングのエジプト大迷惑な乱闘を「いい加減にしなさい」と諌めるのがモスラです。なんか既視感あるなと思ったら、スーパーマンとバットマンの喧嘩に割って入ったワンダーウーマンみたい…。

ただ、このモスラもオリジナルのようなモスラっぽい背景も皆無に近いです(先住民ぽい人たちに囲まれているくらいで…)。それもそのはず、本作のモスラ、もともと初期の構成ではモスラではなくオリジナルの怪獣だったそうで、それが不評でモスラに急遽変えたらしいです。だから当初からモスラのエピソードをじっくり描こうみたいな姿勢はなく…。

それは権利料の問題だと思うんですけど、本作は全体的に予算も前作より低めで、VFX頼みなシーン作りも大量と、製作を簡略化している感じが随所で伝わってきます。いかにコストカットしながら、それでもあの怪獣プロセス映画スタイルを絵面だけでも届けるか…その量産性に5作目にして比重が置かれてきたかな。

ネットミームにもなった「一緒に殺ろうぜ!」的なゴジラとコングの並走からの半重力状態のカオス戦闘、それがひと段落すると、やっとリオデジャネイロを舞台にビル街での怪獣映画らしい図が見られます。そうは言っても、市民の描写はほぼなく、人命はどうでもいい感じですが…。

「モンスター・ヴァース」シリーズはこの『ゴジラ×コング 新たなる帝国』をひと区切りに、あらためて怪獣映画をどう描きたいのか、再検討した方がいいように思います。このままハチャメチャなままに怪獣をプロレスさせる絵だけあればいいと考えていくのか、もっと新しい挑戦をするべく高みを目指すのか。

『キングコング 髑髏島の巨神』のように怪獣一体に絞って丁寧に描く作品を積み重ねるのもいいと思うのです。怪獣乱戦のお祭り映画は10年に1回とかでもいいし…。

私はまだまだ怪獣映画には可能性があると思っています。既存の雑なスケールアップではなく、未知の新鮮な世界が見たいですね。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 55% Audience 93%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0

作品ポスター・画像 (C)2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. ゴジラコング ザ・ニュー・エンパイア

以上、『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の感想でした。

Godzilla x Kong: The New Empire (2024) [Japanese Review] 『ゴジラ×コング 新たなる帝国』考察・評価レビュー