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『BLAME!』感想(ネタバレ)…拡散し、成長せよ、日本のアニメ映画コンテンツ

BLAME

拡散し、成長せよ、日本のアニメ映画コンテンツ…映画『BLAME!』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:BLAME!
製作国:日本(2017年)
日本公開日:2017年5月20日
監督:瀬下寛之
BLAME!

ぶれいむ
BLAME

『BLAME!』物語 簡単紹介

過去のある「感染」によって無秩序に無限に増殖し続ける階層都市。ここでは既存の常識はもう通用しない。人類は防衛システムの「セーフガード」によって駆除・抹殺される対象になっていた。殺されないためになんとか安全圏を見い出すしかなく、過酷な環境が常態化する。そんな中で生き延びたわずかな人々は、霧亥という、世界を正常化する鍵となる「ネット端末遺伝子」を求めている謎の男と出会う。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『BLAME!』の感想です。

『BLAME!』感想(ネタバレなし)

Netflixは日本のアニメの味方?

映画業界とNetflixとの間に亀裂が目立ち始めています。

その大きなひび割れは今年の5月に開催されたカンヌ国際映画祭で起きました。劇場で公開せずにネット配信だけしかしないNetflix作品が出品されることに対して、一部の有力な映画人が異を唱えたことに端を発します。「劇場公開されない作品は“映画”といえるのか」…私のこのブログはNetflix独占配信作品も、ドラマのようにシーズンで続かない限り、普通に“映画”というくくりで扱っていますが、気にする人はすごく気にするのです。その裏には、劇場公開という昔ながらの在り方が淘汰されるのではないかという恐怖があるのは言うまでもなく…。今後ますます勢いを増すであろうNetflixのような動画配信サービス(VOD)と伝統的な映画界との軋轢はしばらく続きそうです。

一方で、Netflixのような世界規模のVODは、映画などのクリエイターにプラスの影響も与えていると思います。なにより作品を観てもらうチャンスが増えます。既知のとおり、劇場というのは残酷なくらい商業第一の世界です。2016年に『君の名は。』が半年以上映画館のスクリーンを占拠し続けていたように、売れる映画が優先されます。当然、小規模もしくはマイナーな作品が日の目を浴びるのは難しい。

こうした持たざる作品の味方としてはこれまでYoutubeなどの動画サイトがありましたが、コピーされたりと無法地帯でした。世界規模のVODの存在は、ちょうど動画サイトと劇場の中間に位置しており、上手くハマったのでしょう。

前置きが長くなりましたが、そんな世界規模のVODを駆使して世界市場にアピールを試みた日本作品も登場してきました。それが本作『BLAME!』です。

本作は日本の3DCG制作会社「ポリゴン・ピクチュアズ」が手掛けたアニメーション。このスタジオの作品は、CGといっても2Dのアニメに近く、絵柄もいかにも日本のアニメという感じです。設立から30年以上経っており、アニー賞を受賞した作品もあるほど実績はじゅうぶん。しかし、大作映画ほどではないニッチな作品ではあります。

そんな「ポリゴン・ピクチュアズ」の最新作である本作は、日本では劇場公開していますが、Netflixで世界同時配信されました。これはとても意義深いことだと思います。私は日本コンテンツの弱点のひとつは奥手な部分だと思っていて、今まではコアなファンによる口コミに頼るしかなかったし、有名作じゃないと世界に出してもらえない業界体質でした。そこで登場したNetflixは大きな武器です。ちゃんと世界で勝負しうる力を持ったコンテンツは、勝負させてもらえる…良い仕組みではないでしょうか。

世界に挑戦する日本アニメをぜひ観てみてください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『BLAME!』感想(ネタバレあり)

何言ってるか、全然わかる!

最初に言っておくと、私は本作『BLAME!』の原作漫画も読んだことなく、普段アニメをみるほうでもないような人間です。そんな私が本作を観た感想としては、想像していた以上にわかりやすく、万人が楽しみやすい作風になっていたと思いました。

本作は見てのとおり、科学技術が行き過ぎた発展を遂げたことでディストピアともとれる世界となった近未来を描くSFです。よくあるやつですね。

この手の世界観は、好きな人はドハマりするぐらい好きなんですが、わからない人にはとにかく取っつきにくいもの。専門用語も多いし、これに哲学的なストーリーが加わると余計に…。

対して、本作は劇中の言葉を借りるなら「何言ってるか、全然わかんねぇ」ことにはなってません。主人公たち電基漁師側にとってのSFが私たちの世界になっているので、主人公たちがわからなくとも、私たち観客にはある程度すんなり理解できます。それにお話しの主軸も、“大事な物を取って帰ってきて守る”というシンプルさなので、子どもでも飲み込めます。

一方で、映像は安っぽくなく、アクションも重厚で、無駄にカメラがグルグル動いて何が何やらな状態になることなく、きっちり見せていたのは好印象。暗めな世界観ながら光の表現も上手く駆使しており、見にくいことはないのも良かったです。SF的ガジェットや敵であるセーフガードの造形はさすがのこだわりですね。

個人的には実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』よりは全然観やすかったです。

世界に見られることで

ただ、2Dアニメ風の3DCGによる映像表現としては、まだまだ成長の余地を感じさせます。

『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』のように徹底的にリアルに進化する方向性もありますが、別に本作はそっちに進む必要はないでしょう。今のままでもじゅうぶん他にない魅力がありますし。今後は細かい感情演出など、さらに技術に磨きがかかっていくのが楽しみです。

脚本についても、もっと一皮二皮むけてほしかった。SFにしては親しみやすいとは書きましたが、やっぱりそれでも観ない人をどう惹きつけるか、作り手は悩んでいるはず。世界では、マニア向けの需要と一般向けの需要を当たり前のようにひとつの作品内で両立している強豪が数多く闊歩していますから、それらと渡り合うにはもっと進化が必要なのかもしれません。

話は戻りますが、そうした課題解決においても世界規模のVODは役に立つでしょう。芸術的視点からの評価はどうしても海外のほうが盛んです。日本だとどうも興収とか視聴率とかそういうのばかりでしか見られませんから。きっと作り手側は自分のスキルを売り上げじゃなくて、芸術的視点から見て欲しいはず。
世界規模で配信されれば、さまざまな価値観による批評にさらされますし、それが作品のクオリティを高める刺激にもなるのではないでしょうか。

日本のアニメ界の「ネット端末遺伝子」を探す旅はこれからです。

『BLAME!』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

以上、『BLAME!』の感想でした。

BLAME! (2017) [Japanese Review] 『BLAME!』考察・評価レビュー