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アニメ『ユーレイデコ』感想(ネタバレ)…サイエンスSARU的なマイノリティの描き方

ユーレイデコ

サイエンスSARU的なマイノリティの描き方…アニメシリーズ『ユーレイデコ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:You0 DECO
製作国:日本(2022年)
シーズン1:2022年に各サービスで放送・配信
監督:霜山朋久

ユーレイデコ

ゆーれいでこ
ユーレイデコ

『ユーレイデコ』あらすじ

現実とバーチャルが重なり合う情報都市・トムソーヤ島。「らぶ」と呼ばれる評価係数が生活に必要不可欠になったこの世界で「0現象」という「らぶ」消失事件が巻き起こる。たまたまその場に居合わせた少女・ベリィは、「ユーレイ」と呼ばれる住人のハックたちと出会い、0現象の謎を突き止めるためにユーレイ探偵団に参加。いろいろな出会いを重ねるうちにトムソーヤ島に隠されたある真実に近付いていく。

『ユーレイデコ』感想(ネタバレなし)

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サイエンスSARUはネットをどう描く?

「Twitter(ツイッター)」などのSNSは私もやっていますが、どんどん新機能が追加されてもたいていは全く使いこなせておらず、「よくわからん」状態で放置気味です。もともとSNSを多用するタイプの人間ではないというのもありますが、あまり自分にフィットするような機能は見かけないですね…。

私がSNSに欲しい機能はあれです、どれくらい「いいね」されたかなどの数の表示をOFFにする選択機能かな。別に「いいね」する仕組みはあっていいのですけど、その「いいね」された数を自分だけでも見たくない…。

でもこんな機能は追加されないでしょう。なぜならどんなSNSも基本的にこの数字によって成り立っているからです。「より多くの“いいね”を集めたい」という感情を刺激することで、サービスに熱中させ、ユーザーの行動を本人の無意識でコントロールする。それがSNSの根幹の仕組みです。

ただ、この数字でユーザーを喚起する仕組みは残念ながらネガティブな効果を発揮している部分が否めず、多くの人々は「いいね」を集めたいばかりに、より過激な言動をとり、嘘の情報でも拡散させてしまっています(ドキュメンタリー『グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダル』も参照)。

「いいね」の数なんて気にしていないと考える人であっても、どうしてもSNSをしていると目についてしまうものなので、自分でも無自覚に行動への影響を受けているかもしれません。だから私はOFFにしたいのですけど…。

そんな私の心情にどこかシンクロするようなアニメシリーズが今回紹介する作品です。

それが本作『ユーレイデコ』

『ユーレイデコ』は、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)が日常で当たり前に一般化してリアルとネットの垣根が無くなった世界を舞台にしています。『竜とそばかすの姫』みたいな近未来デジタル・ワールドのドラマをアニメーションで特色を出しながら描くタイプの作品ですね。

『ユーレイデコ』の場合はもっとポップなデザインになっています。そして多くの人は「らぶ」という数値を上げることに夢中になっており、要するに私たちの世界でいうところのSNSの「いいね」です。「らぶ」の数字が高ければ高いほど、色々なできることが増えていき、注目も集めれます。ところがその「らぶ」が突如として「0(ゼロ)」になるという現象が発生。その秘密を解き明かしていくのが物語の主軸です。

既存のインターネット社会へ風刺を土台にしつつ、あくまで敷居の低い世界観になっており、そんなにかしこまらずに観れます。

この『ユーレイデコ』を手がけるのは世界的に知名度がある“湯浅政明”が立ち上げた「サイエンスSARU」『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』『きみと、波にのれたら』と独自の個性が際立つ映画を次々と生み出し、2022年は『犬王』を公開しました。アニメシリーズとしては、『DEVILMAN crybaby』『映像研には手を出すな!』『平家物語』などを作り上げ、最近は『スター・ウォーズ: ビジョンズ』でも変わらぬクリエイティブを発揮。

『ユーレイデコ』では“湯浅政明”は原案のみ。『交響詩篇エウレカセブン』でおなじみの“佐藤大”が原案に加えてシリーズ構成を担当し、監督は『SUPER SHIRO』でチーフディレクターを手がけた“霜山朋久”が抜擢されています。脚本は『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』などの「クレヨンしんちゃん」劇場版シリーズの脚本を多く手がけた経験のある“うえのきみこ”、キャラクターデザインは『日本沈没2020』の“本間晃”です。

サイエンスSARUは毎回作品ごとに独自の座組を用意してくるので面白いですよね。

それにしてもサイエンスSARUもインターネット・ワールドを題材にする日が来たのか。相性良さそうだけど、案外と今まではそんなに手をつけていない題材でしたね。

2022年の夏アニメとして始まった『ユーレイデコ』は全12話。気楽に観れるアニメがいいなら、ぴったりではないでしょうか。

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『ユーレイデコ』を観る前のQ&A

✔『ユーレイデコ』の見どころ
★ポップな世界観で気軽に観れる。
✔『ユーレイデコ』の欠点
☆そこまで強烈な個性は無い。
日本語声優
川勝未来(ベリィ)/ 永瀬アンナ(ハック)/ 入野自由(フィン)/ 佐藤せつじ(ハンク)/ 定岡小百合(マダム44)/ 釘宮理恵(スマイリー) ほか
参照:本編クレジット
作品を観れます!
『ユーレイデコ』
Amazonで視聴
※上のボタンをタップするとAmazonの『ユーレイデコ』商品ページへ移動します。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:暇つぶしにでも
友人3.5:アニメ好き同士で
恋人3.5:ロマンス要素は無い
キッズ3.5:子どもでも観せやすい
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『ユーレイデコ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ユーレイデコ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):この出会い、らぶい!

昔々あるところに100の目を持つ巨人が住んでいました。巨人の100の目はそれぞれ交替して眠るので巨人は生まれてから1度も眠ることができませんでした。巨人はいつでも全てを見ることができたので世界は巨人に全てを見守る役目を与えました。巨人は喜んで人々に仕えました。

あるとき、巨人は裏切りを行う人を見つけたのでそれを人々に報告しました。すると巨人は裏切りの人からだけでなく全ての人から怒りを受けて殺されてしまいました。人々は全てを見ている巨人を恐れました。

後にそんな巨人を哀れに思ったある人が彼の100の目をクジャクの羽に美しく飾ることにしました。そして巨人はやっと安らかに眠ることができたのです。

情報都市トムソーヤ島。ここでは視覚情報デバイスであるデコレーション・カスタマイザー、略して「デコ」が普及して生活に欠かせないものになっています。このデコを用いることで、デコに映る現実空間に仮想空間が重なり、さらに「超再現空間」と呼ばれる独自の仮想世界にダイブして、仕事や授業を受けることもできます。人々は他の人から「らぶ」という評価を獲得でき、この数を増やすことで、アバター作成などデコでできることが広がっていきます。今や「らぶ」をたくさん集めることがステータスであり、多くの人は「らぶ」集めに必死でした。

ベリィは自室から接続して仮想空間で授業を受けていましたが、隣にいる友達とのお喋りに興じていました。

「出たんだって、怪人0」と言われ、興奮を抑えられないベリィ。「お前、本当0が好きだな」

この島では以前に突然みんなの「らぶ」の数が0になる「0(ゼロ)現象」と呼ばれる異常事態が発生したことがあり、その現象を引き起こす「怪人0(ゼロ)」の噂が広まっていました。正体は誰にもわかりませんが、関心はいまだに消えません。

ベリィは右目のデコの調子が悪いのでログアウトし、それを見かねて母が眼科を勝手に予約。ベリィはいやいや出かけることにします。

街をふらふら歩いていると、怪しげな花っぽい何かを発見。そこには謎の子どもがおり、透明な姿のようですが、なぜかベリィにだけは片目なら見えるのでした。その子は人を騙して「らぶ」を手に入れており、あの子こそが怪人0ではないかと疑い、ベリィは捕まえようと追いかけます。でもすばしっこいので逃がしてしまいました。

帰宅するもアイディアを思いつきます。そしてあの謎の子の隠れ家を突き止め、超再現空間に追い詰めて問いただすことに成功。するとその子はベリィの部屋のベランダにやってきました。

ベリィのことを「ガジガジ」と呼んでくるその子、名前はハック

「あなたが怪人0なら…らぶい! どうしてゼロは嘘、ゼロ以外の非ゼロは真実なんて言われているの?」

全く怯えることもなくベリィは早口で質問します。

そのとき、みんなの「らぶ」が急速に減り始めます。「これは0現象? あんたがやったの?」「違う、ギンギラだ」

2人は超再現空間を逃げることにしますが、ベリィは「よくわからんないけど、らぶい!」と大興奮。

そこに謎の人物が宙に現れ、ハックは「怪人0!」と言い放ちます。

これはこの島の秘密を解き明かす始まりとなり…。

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マイノリティっぽさを持つユーレイ

『ユーレイデコ』のデジタル・ワールドの描写はいかにもサイエンスSARUらしい遊び心いっぱいです。現実的な機能性などのリアリティよりも、完全にビジュアルのポップさに全振りしていますね。まあ、ARなどはデザイン・テーマを切り替えられるらしいので、作中のあれはあくまでベリィの好みを反映したものなのでしょうけど。

物語としてはこのインターネットの次の形態とも言える世界の謎が解かれていくという定番のやつです。

ただ、それはさておき、この『ユーレイデコ』で注目したいのは、死を偽装したベリィが身をおくことになる「ユーレイ探偵団」の面々です。このキャラクターたちはいわゆるマイノリティな立ち位置に近い存在になっています

そもそもユーレイとはカスタマセンターが感知できない非登録者のことであり、ワケあってそういう状況になっています。いわば社会の規範的な枠から外れてしまい、可視化されない人間です。システムに基づくサービスの大半を受けられませんが、それでもこの社会の片隅で生きています。

そしてあのユーレイ探偵団のメンツはそれぞれがディザビリティを抱えているような設定があります。

まずベリィはデコが目に埋め込まれており、片目の調子が悪いです。病院で治すつもりでしたが、その不調が怪我の功名のようにハックと引き合わせます。能力の不調が別のスキルを開花させる…そんなきっかけでこの物語は始まります。

ユーレイ探偵団を立ち上げたフィンは“デコ”アレルギーであり、デコが使えないというこの世界ではかなりのハンデを背負っています。超再現空間を操る「ワールディング」を得意としながらも常に傍観者でいるというジレンマです。

ミスターワトソンは喋らず筆談で会話しますし、マダム44は介護施設に入居している高齢者(でもすごいロボットで動ける)、スマイリーは素顔が特徴的で普段はガスマスクで隠しています

また、ハックは過去を決して語ろうとせず、詮索も嫌がりますが、終盤のシーンでハックの過去のような描写があり、そこでは両親との不自由ない幸せな生活を送る金髪少女が映ります。今のハックはアニメにありがちな少年声で見た目も中性風…なんとなくそこにジェンダーアイデンティティの揺らぎを示唆している感じです。

『ユーレイデコ』はこうした当人たちの事情をあえて深く解き明かすことはせず、サラっと流しています。そんなユーレイたちに居場所を与える…ここにもサイエンスSARU的なマイノリティへの寄り添い方がある気がしました。

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表層的で牧歌的に閉幕してしまうのは…

『ユーレイデコ』は終盤に忙しく風呂敷が広がって、街のバックアップデータや、マークトゥエイン開発の人工知能エンジニアであるアナリティカなど、諸々のヒントが積み重なり、最終話でインジャンクションジョーと呼ばれる怪人0との対峙に移行します。

この展開はかなり大雑把で視聴者にはわかりにくいです。インジャンクションジョーの「怪人0という名をあなたに譲りましょう」という提案も、そもそも怪人0は神に等しい存在とは言いますが、何ができて何ができないのか、さっぱり不明なので、どれくらいオオゴトなのか判断不能です。

ここであんなに怪人0に夢中だったベリィが怪人0相手に厳しめの態度をとったり、最も管理などの作業を嫌いそうなハックにその後継者の役割が与えられたり、なんだか釈然としないままに物語は畳んでしまいます。

もっとこのキャラクター同士の構図を明確にして、それにカスタマーセンターという実際の実効的な権力を持つ管理者との関わりもきっちり明らかにしてほしかったですね。

物語上は現代社会のインターネット文化を否定せず、適正や不適正といった検閲をしない、それでいて誰かを傷つけない世界を作ろうというメッセージの投げかけなのはわかります。「不適正を隠さず、良くないことには良くないとちゃんと伝える」というコンテンツモデレーターの仕事の変化もそれを象徴しています。

とは言え、本作で描かれる新自由選択主義の謳歌は、やや理想論的であり、牧歌的な着地です。少しそこは子ども向けアニメとは言え、甘い気もします。

この手の題材は表層的であればあるほどフワっとした中立論者的な終わりになってしまいます。私としてはこの題材ならやっぱり自己批判的な要素は入れるべきだと思います。例えば、アニメ文化を享受するクリエイターだって無関係ではありません。インターネット文化とファンダムを題材にした『シュガー・ラッシュ オンライン』では、その自身も関与する有害性ときちんと向き合っていましたし、『ユーレイデコ』も日本のアニメ文化の問題点を踏まえてもっとできたのではないかと思います。

質としては満腹といきませんでしたが、『ユーレイデコ』はガパオライスを食べたくなるアニメなのは間違いなかったですけどね。

『ユーレイデコ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

サイエンスSARUの制作したアニメーション作品の感想記事です。

・『平家物語』

・『きみと、波にのれたら』

・『夜明け告げるルーのうた』

作品ポスター・画像 (C)ユーレイ探偵団

以上、『ユーレイデコ』の感想でした。

You0 DECO (2022) [Japanese Review] 『ユーレイデコ』考察・評価レビュー