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アニメ『わんだふるぷりきゅあ!』感想(ネタバレ)…プリキュア動物愛護の1年!

わんだふるぷりきゅあ!

プリキュア動物愛護の1年!…アニメシリーズ『わんだふるぷりきゅあ!』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Wonderful Pretty Cure!
製作国:日本(2024年~2025年)
シーズン1:2024年に各サービスで放送・配信
シリーズ構成:成田良美
恋愛描写
わんだふるぷりきゅあ!

わんだふるぷりきゅあ!

『わんだふるぷりきゅあ!』物語 簡単紹介

人間と動物が仲良く暮らしているアニマルタウン。パピヨン犬の女の子である「こむぎ」は、フレンドリィ動物病院とペットサロンを経営する両親に囲まれて元気に過ごす犬飼いろはに飼われている。私立湾岸第二中学校に通う犬飼いろはのことが大好きなこむぎだが、人間ではないので彼女といつも一緒にいたり、会話できないことに寂しさを感じてもいた。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『わんだふるぷりきゅあ!』の感想です。

『わんだふるぷりきゅあ!』感想(ネタバレなし)

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「プリキュア」はペットをわんだふるで語る

親の人は子どもにおねだりされることはしょっちゅうでしょうが、こんなお願いもあったかもしれません。

「ペットが欲しい」と。

犬が飼いたい…。猫が飼いたい…。

子どもが生まれたときからペットを飼っていた状態の家庭を除けば、物心ついた子供の「ペットが欲しい」というお願いが飛び込んできたとき、どうすればいいのでしょうか。

当然、ペットは動物です。です。欲しいオモチャを買うことや、欲しいゲームをインストールするのとはわけが違います。おカネの問題以上に、どう飼育責任を果たすのか、考えないといけません。

でも子どもには「責任」なんて難しい概念です。大人も全うするのに四苦八苦ですから。

そんな責任をちょっとずつ理解する手助けをしてくれる、子どもの頼もしい味方、それが「プリキュア」。2024年から2025年1月にかけて放送されたシリーズが力強く手を引っ張ってくれるのではないでしょうか。

それが本作『わんだふるぷりきゅあ!』です。

「プリキュア」は毎シリーズでそれぞれのコンセプトがありますが、前作『ひろがるスカイ!プリキュア』は「ヒーロー」が題材になっていました。今作『わんだふるぷりきゅあ!』は「ペット(動物)」です。

従来の「プリキュア」シリーズでも、ちっこい動物っぽいキャラがコンパニオンのように傍にいましたが、今回は本当に愛玩動物としてのペットです。子犬や子猫を飼っている子どもたちが主人公になります。

しかも、それだけでなくこの子犬や子猫まで人間の姿になってプリキュアに変身するという…。最近のプリキュアは可能性を切り開きまくってます。

本作ではこの人間とペットとの関係を主軸に、さまざまなペットとの喜び、悩み、悲しみなどをデフォルメして描きつつ、いつもの「プリキュア」らしさ全開で世界観を広げています。

ペットの他にもいろいろな動物(野生動物含む)を登場させており、さながら「プリキュア」と動物番組を合体させたようなノリです。

ペットや動物なんて子どもが好きなもの筆頭なので、今までの「プリキュア」がそれをテーマとして選択してこなかったのは意外ですが、実際に観てみると現代に見合った良いタイミング立ったのかもしれないなと思います。日本でもビッグなフランチャイズ&IPである「プリキュア」が少しずつ現代を意識しながらアップデートを試みる中、このペットを題材にした本作もこれまでの培ってきたバランス感覚が上手く活かされています。

タイトルが全部ひらがなですが、別にいつもよりも低年齢向けに変更されたわけではないです。ペットを飼育した経験のある大人でもグっとくるエピソードもあります。

今回の『わんだふるぷりきゅあ!』は動物好きな子どもと大人にとくにオススメできる一作です。

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『わんだふるぷりきゅあ!』を観る前のQ&A

✔『わんだふるぷりきゅあ!』の見どころ
★ペットや動物のテーマにプリキュアらしい回答をする。
★新しいプリキュアの挑戦の数々。
✔『わんだふるぷりきゅあ!』の欠点
☆話数が多いので鑑賞はやや大変。
日本語声優
長縄まりあ(犬飼こむぎ)/ 種﨑敦美(犬飼いろは)/ 上田麗奈(猫屋敷まゆ)/ 松田颯水(猫屋敷ユキ)/ 寺島拓篤(兎山悟)/ 植田佳奈(ニコ)/ 立花慎之介(メエメエ) ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本 ペットとの死別が描かれます。
キッズ 5.0
子ども向けの作品であり、安心して楽しめます。
セクシュアライゼーション:なし
↓ここからネタバレが含まれます↓

『わんだふるぷりきゅあ!』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

気持ちのいい朝、とある家の部屋。1匹の犬がベッドから飛び起き、元気に駆け回って、そのままベッドでまだ寝ている飼い主の上に乗っかります。「わん!わん!」と吠えると、犬飼いろは「こむぎ~」とまだ眠そうに体を起こします。犬のこむぎは楽しそうです。そんな愛嬌ある姿を目にして「おはよう」と犬飼いろはは笑顔を向けます。1人と1匹は玄関から外に出て散歩へ。

外には鳥やカメなどたくさんの動物たちが伸び伸びと生活しています。ここは人間と動物が一緒に平和に暮らすアニマルタウンという町です。

犬飼いろはとこむぎが散歩が終わって家に帰ってきます。実家は「フレンドリィ動物病院&サロン」。父の犬飼剛がエプロン姿で得意の料理をしていました。母の犬飼陽子は庭で洗濯物を干しており、もう学校の時間だと教えてくれます。

中学2年生の犬飼いろはは急いで登校するために出ていきます。犬のこむぎはついていくことはできません。いつも一緒にはいられないのです。

寂しがりますが、こむぎは窓から見送るのみ。こむぎは眠っているとなんだか自分がいろはに置いていかれる不安な悪夢を見ます。いろはは人間同士じゃないとダメなのか、でも自分は人間じゃない…。

そうこうしているうちに、いろはが学校から帰ってきます。全力で甘えるこむぎ。

また散歩にでると、町のシンボルになっている大きな鏡石の前で同級生の兎山悟とそのペットのウサギの大福と遭遇します。兎山悟は動物に詳しく、犬飼いろはと仲がいいです。兎山悟いわく、何も反射して映らないこの鏡石に自身が映れば願いを叶えてくるという逸話があるそうです。

ところかわってアニマルタウンに引っ越してきた中学2年生の猫屋敷まゆは飼い猫のユキに窓辺で話しかけていました。新しい生活に人付き合いが苦手な猫屋敷まゆは不安だらけ。

そこに散歩中の犬飼いろはとこむぎが通りかかります。しかし、猫屋敷まゆは恥ずかしくて隠れてしまいます。

犬飼いろはは綺麗な石を見つけて拾います。そのとき、こむぎは何か異変を感じて吠えます。さらに森から謎の怪物が出現。いろはは逃げ遅れた幼い子のためにこむぎを安全な場に置いて駆けだし、囮になります。

ピンチのいろはを助けたいこむぎ。こむぎは思い切っていろはのもとへ駆け出すと、突然光に包まれます

襲われそうになった犬飼いろはの前にひとりの少女が立って守っていました。その少女はプリキュアに変身。怪物を倒してしまいます。その後に犬飼いろはにハグしてきてじゃれます。普通に喋っていますが、何か知っている感じがする…。

そして犬飼いろはは目の前の子がこむぎだとやっと理解するのでした…。

この『わんだふるぷりきゅあ!』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/02/08に更新されています。
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暴力ではなく動物愛護でケアする

ここから『わんだふるぷりきゅあ!』のネタバレありの感想本文です。

「プリキュア」シリーズは毎度そのテーマに真摯に向き合い、「プリキュア」らしいアプローチをみせてくれますが、今回の『わんだふるぷりきゅあ!』もペット(動物)との関係を丁寧に解きほぐして、子どもにもわかりやすく表現していました。

要するに「動物愛護」ですね。『わんだふるぷりきゅあ!』は「プリキュア with 動物愛護」。動物愛護の精神を伝えています。

例えば、今回はガルガルガオガオーンといった怪物と毎話で戦いますが、動物が変化した敵ということで、非暴力的な対応策をとります。その個々の動物の生態などの知識に基づいて安全な対処法を見つけ、説得と抱擁で穏便に解決します。

登場する動物は、馬、鹿、豚、熊、狐、リス、(サンタの)トナカイ、オコジョ、アライグマ、ハムスター、アルパカ、パンダ、ゴリラ、ラクダ、ゾウ、ライオン、トラ、シマウマ、キリン、カンガルー、ハリネズミ、コウモリ、ペンギン、アヒル、フクロウ、鶏、インコ、白鳥、トビ、ウミガメ、カメレオン、カエル、カニ、はたまた絶滅動物のティラノサウルス、さらにはUMAの蛇(ツチノコ?)まで…日本に限定されず多種多様。

それら動物を解放すれば一部はキラリンアニマルの力としてその生態に基づいたスキルを駆使して戦いに応用できるというのも、どこかゲーム的に面白くなっており、より平和になった『ポケモン』みたいなシステムです。

他にも、獣医、ペットサロン(トリマー)、動物カメラマン、嘱託警察犬、酪農家、アジリティなど、ペットや動物に絡んだ仕事がたくさん紹介され、もはやペットや動物関係の仕事がしたい子どもの進路案内みたいになっています。

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非動物化は現実逃避ではなく…

『わんだふるぷりきゅあ!』で個人的に興味深かったのは、本作の「de-animalization」に対する向き合い方です。

「de-animalization」とは『ウマ娘』の感想でも説明したので細かい話は割愛しますが、動物の本来の性質を無効化・低減して非動物化(人間化)する作用のことです。

『わんだふるぷりきゅあ!』では、子犬のこむぎと子猫のユキが飼い主と同年代の10代の人間の子どもの姿となる力を得ます。こうして関係性をより深めるのですが、この設定は非常に人間中心的でご都合的です

しかし、『わんだふるぷりきゅあ!』はそれが「願い」の成就によるご都合的なものであると受け止めたうえで、それを真正面から描いています

その「願い」は作中で随所に現れています。人間とペットは根本的には違うもの。話せもしないし、いつも一緒の場所に行けるわけもないし、寿命も違う。でも、“もし”同じ景色を、同じ歩幅で走って、同じ時間を共有できたら…。それは愛するペットを飼っている人なら誰しも思い願ったことかもしれません。

本作においてはその「願い」こそが「プリキュア」そのものであり、こむぎ(キュアワンダフル)の変身シーンの「一緒にあそぼ!」と、いろは(キュアフレンディ)の変身シーンの「あなたの声を聞かせて!」のセリフが印象的に響きます。猫屋敷まゆ(キュアリリアン)と、まゆアライ過激派のユキ(キュアニャミー)との関係性も、特別感が深まります(女性同士が強調され、なんだか百合っぽくなっていましたが)。

作中では高齢のペットの死別が描かれ、現実も直視させられます。最終話でこむぎとユキが人の言葉を話せない通常の動物の姿に戻ったとき、寂しさと同時に動物のままでも心を通わせられることのほうが魔法のようでステキであるという感覚さえ残ります(最後はまた喋れるようになるのはシリーズ継続の大人の事情ですが…)。

なので本作の「de-animalization」は現実逃避のためというよりは、現実と向き合わせるための答え合わせみたいな感じでした。

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描かれていない現実も…

一方で『わんだふるぷりきゅあ!』は「de-animalization」とは関係なしに、ちょっと現実逃避している側面もあって、そこは構造上の欠点でもありました。

とくにペット産業の有害性をわりと不問にしているところですね。

本作はガオウ(正体はスバル)との対立の中で、かつて日本がニホンオオカミを絶滅させてしまったことへの軋轢が浮かび上がります。それを「わんだふる!」な人間と動物の絆を証明することで未来の希望を提示してひとまず納得させるのがオチです。『もののけ姫』っぽい構図ですね。

ただ、ペットというのは産業であり、残念ながら現実のペット産業はどちらかといえば自然や野生動物を脅かしており、破壊している側です。ペットの犬や猫だって(人間のせいで)自然破壊の加害者になってしまいます。

そういう紛れもなく実社会に存在する現実性を一切描いていないので、「ペットと人間の関係こそ理想である」と非常にペット業界に都合のいいメッセージになっている部分は否めないところではありました。個人的にはペット業界の資本主義とかを象徴する敵を設定するほうが良かったんじゃないかなとも思いました。

あとは、ペット以外のところに着目するなら、昨今の「プリキュア」らしく、今回もやたら男らしさを脱ぎ捨てたエプロン父だったり、ステレオタイプなジェンダーロールの解体はかなり手慣れていました

羊をケアできる男である兎山悟と空気読めるウサギの大福もサプライズで「戦う側」に回りますし…(今回はプリキュアであるとは明示されていないようですが)。それよりも主人公女子が男子と恋愛関係になることを真っすぐ描いたことのほうが新しい一歩だったのかな。

また、猫屋敷まゆのトラウマにも繋がっている「集中すると周りが認識できなくなる」という性質。あれは表象的にはディサビリティみたいな捉え方もできるものになっており、本来ならばもっとがっつりそういうキャラクターとして設定できるとも思うのですが、やはり現状の「プリキュア」としてはあれが限界なのか…。いつか明確に障害者であるメインキャラクターのプリキュアが登場してほしいものです。当事者の子どもたちのためにも。

まだまだテーマを掘り下げられる余地がある『わんだふるぷりきゅあ!』。高校生編や社会人編に突入してもネタには困りませんので、いろいろ次なる挑戦を見たくなるシリーズでした。

『わんだふるぷりきゅあ!』
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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関連作品紹介

「プリキュア」シリーズの他の作品の感想記事です。

・『デリシャスパーティ プリキュア』

作品ポスター・画像 (C)ABC-A・東映アニメーション ワンダフルプリキュア

以上、『わんだふるぷりきゅあ!』の感想でした。

Wonderful Pretty Cure! (2024) [Japanese Review] 『わんだふるぷりきゅあ!』考察・評価レビュー
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