2026年の「CPH:DOX」で取り扱われたドキュメンタリー映画を紹介する記事の「PART2」です。
「PART1」は以下のとおり(まずはそちらから読むといいです)。
- 長編映画
- 『Elon Musk Unveiled – The Tesla Experiment』
- 『Enough is Enough』
- 『Everybody to Kenmure Street』
- 『Everyone Is Lying To You For Money』
- 『Fantasy』
- 『Finding Connection』
- 『Fire, Water, Earth, Air』
- 『Flying Scents』
- 『Fuck the Polis』
- 『Fukushima』
- 『Gaza's Twins, Come Back to Me』
- 『Ghost Elephants』
- 『Hell's Army』
- 『Hex』
- 『I Want Her Dead』
- 『If Luck Will Come』
- 『In Defense of Self』
- 『In Full Agreement』
- 『Intelligence Rising』
- 『Jaripeo』
- 『Jason's Box』
- 『Just Look Up』
- 『Kabul Between Prayers』
- 『Knife: The Attempted Murder of Salman Rushdie』
- 『Landmarks』
- 『Last Movies』
- 『Let Our Mountains Live』
- 『MARIINKA』
- 『Materia Prima』
- 『Matter of Britain』
- 『Menopause Mystery』
- 『Molly vs the Machines』
- 『One in a Million』
- 『Our Land』
- 『Powwow People』
- 『Qajaq Man』
- 『Scarlet Girls』
- 『Silenced』
- 『Stormbound』
- 『The AI Doc: How I Became an Apocaloptimist』
- 『The Arctic Circle of Lust』
- 『The Cord』
- 『The Great Experiment』
- 『The Lives of My Father』
- 『The Peace Particle』
- 『The Phantom Pain of Rojava』
- 『The Secret Reading Club of Kabul』
- 『This is Not a French Film』
- 『To Hold a Mountain』
- 『Traces』
- 『While the Green Grass Grows: A Diary in Seven Parts』
- 『Whispers in May』
- 『Whispers in the Woods』
長編映画
『Elon Musk Unveiled – The Tesla Experiment』
イーロン・マスクのことなんてネット上でいくらでも目に入ってくるので、もう嫌なのですが、このテスラの不正を暴く“アンドレアス・ピヒラー”(Andreas Pichler)監督のドキュメンタリーは必見かもしれません。壮大なビジョンと金銭的利益が安全よりも優先される企業はろくなものではないです。ほんと、イーロン・マスクにオートパイロット機能をつけてくれよ…。
『Enough is Enough』
2025年1月にコンゴ民主共和国はある歴史の到達点を迎えることになりましたが、それはその国の人々にとって何を意味するのか。その内情を“エリーゼ・サワサワ”(Elisé Sawasawa)監督はこのドキュメンタリーに整理。世界が長年見て見ぬふりをしてきた歴史的な不正義を記録した一作とのことです。
『Everybody to Kenmure Street』
「移民は敵だ」と思っている人たちばかりではありません。“フェリペ・ブストス・シエラ”(Felipe Bustos Sierra)監督は、ある日のグラスゴーで移民取締局の白いバンに対して市民がとった抗議運動を記録。排外主義に対する最大の抵抗方法は、排除できないほどの庶民の意思をみせること。それはどこの国でも同じでしょう。
『Everyone Is Lying To You For Money』
資産を上手に運用するなら仮想通過を駆使するのが賢い人間の答えだよ。そんなことを言う人がいたら、“ベン・マッケンジー”(Ben McKenzie)監督のこのドキュメンタリーの出番。最も著名な仮想通貨詐欺師たちに接近し、その技をみせてもらう(?)といろいろな裏がみえてくるかも。少なくとも騙されない人間になれるはず。
『Fantasy』
“イザベル・パリアイ”(Isabel Pagliai)監督が静止画とローファイな手持ちカメラ映像の折衷的な手法で主人公の内面を独自に映し出す作品とのこと。あまり情報がないので、推察するにストーリー性やテーマ性よりも人物表現としてのアートの観点でドキュメンタリーとフィクションを採用しているのかな。
『Finding Connection』
AIと恋愛するなど、親密な関係を築く人がこれほどまでに急速に出現する時代になるとは予想のできなかったと言えば、私は嘘になります。しかし、そういう人をどう受け止めるかを真剣に考えてこなかったのは事実じゃないでしょうか。“フロリアン・カルナー”(Florian Karner)監督のこのドイツのドキュメンタリーは、そのテーマの足掛かりになるかもしれません。
『Fire, Water, Earth, Air』
もう今さら「地球温暖化なんて嘘だよ!寒いし!」なんてレベルの低い話をする人はいないと信じたいですが、北欧から気候変動の現実をあらためて突きつけるこのドキュメンタリーは4つの物語で自然の変化を巧みに映し出しているようです。北欧は環境の変化が最も可視化されやすい地域。まず見たままのものを理解することから。
『Flying Scents』
植物は積極的にコミュニケーションをとっているって知ってましたか? これはスイスのチューリッヒの中心部で女性主導の研究チームが解き明かす植物の神秘。“アントシ・フォン・ムースト”(Antshi von Moost)監督は、植物がさまざまな香りを放つことで、それぞれ異なる方言でささやき合っている世界へといざなってくれます。
『Fuck the Polis』
『変ホ長調のトリオ』などの今話題のポルトガル映画監督“リタ・アゼヴェード・ゴメス”の新作。ギリシャの島々を巡り、人生を見出していく旅日記。映画のタイトルはアテネの壁に書かれた落書きからとったそうで、私が書いた!と名乗り上げたい人は監督に連絡してください。
『Fukushima』
『Antidote』の“ジェームズ・ジョーンズ”(James Jones)と『J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル』の“メグミ・インマン”(Megumi Inman)の両監督が、福島第一原子力発電所事故で壊滅的なメルトダウンを防ぐために現場に従事した当事者を取材。海外の視点からこの事件をどうまとめるかは気になるところ。
『Gaza’s Twins, Come Back to Me』
“モハメド・サワフ”(Mohammed Sawwaf)監督は、爆撃を受けるガザで、双子の子どもと離れ離れになった女性に、16ヶ月もの間、密着取材。あまりに現在進行形すぎるのでドキュメンタリーでも観るのがツラいこともあるのですが、今観ないといけない気もする。ガザの作品はいつも複雑な気分…。
『Ghost Elephants』
おなじみ“ヴェルナー・ヘルツォーク”の2025年の新作は、アンゴラのジャングルにいるとされる謎めいたゾウを追うらしいです。薄々察せはしましたが、単純な自然ドキュメンタリーとはいかないようで、いつもの“ヴェルナー・ヘルツォーク”らしい切り口をじっくり楽しめるのではないでしょうか。
『Hell’s Army』
ある反体制派のロシア人ジャーナリストが傭兵部隊「ワグネル」の実態を暴いていくドキュメンタリー。“リチャード・ローリー”(Richard Rowley)監督は、複雑に入り組んだペーパーカンパニーの網を潜り抜け、何をみせるのか。戦争は正義と正義のぶつかり合い…なんて薄っぺらい話をする前に、こういう関与者の存在を知らないとね…。
『Hex』
ノルウェーの若い女性3人が結成したフェミニスト・ブラックメタルバンド「ウィッチ・クラブ・サタン(Witch Club Satan)」に迫る“マヤ・ホランド”(Maja Holand)監督のドキュメンタリー。こんなバンド、初めて知りました。今回のドキュメンタリー紹介で知れて、それだけでもラッキーだった…。
『I Want Her Dead』
すごい物騒なタイトルですが、題材が戦争とかではなく、とある村の2人の義理の姉妹の確執と聞いて、どういうこと?となる…。“ジャンルカ・マタレーゼ”(Gianluca Matarrese)監督のイタリアのドキュメンタリーは、自身の家族で10年間続いた確執を基に崩壊寸前の南イタリアの家族を私たちにみせてくれるそうです。
『If Luck Will Come』
タリバンが政権を握った後のアフガニスタンで子ども時代を過ごすということはどういうことなのか。“カミーユ・ビルソー”(Camille Bildsøe)監督は、外部の目からは可哀想な子たちで片づけられやすいその対象について、素朴な姿をそのまま映し出してくれている様子。もちろん政治とは無縁でいられませんが…。
『In Defense of Self』
“リン・ヘレン・ローケン”(Linn Helene Løken)監督は、精神科治療施設への入退院を繰り返していたある人物がノルウェー警察による正当防衛で射殺されるまでに至る経緯を解き明かし、精神医学と公権力の歪を突きつけているようです。このテーマは日本でも全く他人事ではなく、センシティブだからこそ、論点を見誤らないことが大切だと思いますが…。
『In Full Agreement』
圧政が常態化するプーチン政権下のロシアにて全く異なる見解を持つ3人のロシア人女性の対立模様を映し出す、“パヌ・スローネン”(Panu Suuronen)監督によるフィンランドのドキュメンタリー。保守か、自由か、そういう単純な対立でもない、人と人の複雑な軋轢。どういうバランスで扱っているのかは気になりますが、フィンランドもあれじゃないか…。
『Intelligence Rising』
AIは人間の味方か、敵か。この問いはもう古いかもしれないけれど、古いと言っている人間は考えたくないだけなのかもしれない…。少なくとも“エレナ・アンドレイチェワ”(Elena Andreicheva)監督は、ユヴァル・ハラリのような識者をとおして、実はかなり昔からあるこのAI論争をゼロサムゲームを超えて追いかけています。
『Jaripeo』
“エフライン・モヒカ”(Efraín Mojica)と“レベッカ・ツヴァイク”(Rebecca Zweig)の2人の監督が映すのは、メキシコのロデオショーにおける男らしさの儀式の裏にあるクィアなサブカルチャー。やっぱりロデオはクィアネスとマッチョイズムの交流の場なんだろうな…。この作品であらためて確認しておきたいです。
『Jason’s Box』
どこぞのならず者国家のドナルドさんはグリーンランドを我が物にしたいと言い放っていましたが、その当のグリーンランドでは、一流の気象科学の専門家たちがこの地で気候変動の謎を解明しようと革新的なプロジェクトを立ち上げているようです。“ミヒャエル・シュトラスブルガー”(Michael Strassburger)監督のこの作品を観よう、MAGAさん。
『Just Look Up』
F:ACT賞 受賞作
気候変動対策運動組織「Climate Defiance(クライメート・ディファイアンス)」の創設者である若き活動家マイケル・グリーンバーグをとおして、その活動に迫るドキュメンタリー。有名なハリウッド俳優の何人かもこの団体に資金提供していることで話題ですが、そのあたりのマネタイズも個人的には知りたいですね。
『Kabul Between Prayers』
『Kabul, City in the Wind』の“アブーザール・アミニ”(Aboozar Amini)監督の新作はまたもカブールの世界を覗き込むドキュメンタリーで、今回は典型的なタリバンの戦士にみえる男の心の内を浮き彫りにさせていく内容のようです。イデオロギーは本質ではないとしたら、何が本質なのか…。自分はなぜ今の自分なのか…。
『Knife: The Attempted Murder of Salman Rushdie』
2022年8月12日にニューヨーク州で、カシミール系イスラム教徒の家庭に生まれたイギリス系アメリカ人小説家サルマン・ラシュディが講演の場で暗殺されそうになった事件。名ドキュメンタリー作家の“アレックス・ギブニー”監督がその背後にある混沌を整理しつつ、言論の自由を紡いでいく一作。
『Landmarks』
“ルクレシア・マルテル”(Lucrecia Martel)監督はデビュー作で新植民地主義に挑み、アルゼンチン北西部で起きた先住民の地が奪われそうになり、結果的に殺されるに至った事件を主題に。こんな出来事があったとは知らなかったのですが、かなり陰惨な内容のようですけども、どうやってドキュメンタリーにまとめているのか…。
『Last Movies』
“スタンリー・シュティンター”(Stanley Schtinter)監督のアイディアは斬新奇抜で、「著名人が死ぬ前に観ていた映画は何?」という着眼点で構成するというもの。これ、名作を観ていたらそれだけで感慨深いけど、そうじゃないときのことを考えると、映画を普段たくさん観ている身として、ちょっと気恥ずかしさもあるのだけど…。
『Let Our Mountains Live』
先住民であるサーミ人の土地に対する権利よりも、グリーンエネルギーと経済的利益を優先させたノルウェー政府。“ハーバード・バストネス”(Håvard Bustnes)監督はその緊張を映している様子。先住民の権利がしっかり取り上げられるだけでも羨ましいなと思ってしまうのは、日本に住んでいると致し方ないところか…。
『MARIINKA』
“ピーター=ジャン・ド・ピュー”(Pieter-Jan De Pue)監督は、侵攻に見舞われる前からウクライナの若者たちを10年の歳月をかけて撮影。どこかのお偉いさんの政治的対立が、小さなコミュニティの若い世代を引き裂き、翻弄する。ウクライナのその光景は、きっとどこの国にとっても起きうる未来でしょうが…。
『Materia Prima』
世界最大のリチウム鉱床がボリビアのアンデス山脈にある。その資源を世界各国が欲しがり、母国は経済発展に欠かせないと採掘を推進。でも地元の人はどう考えているのか。レアメタルやレアアースを語る前に、この“イェンス・シャンツェ”(Jens Schanze)監督のドキュメンタリーを観るべきなのかもしれません。
『Matter of Britain』
TYPE-MOONの聖杯戦争の話ではありません。イギリスのある村全体が1年かけてアーサー王の騎士たちの聖杯伝説を再現する姿を追う“ピーター・トレハーン”(Peter Treherne)監督のドキュメンタリーらしいです。すごく楽しそうだけど、誰がどの役をやるんだ、これ…。収拾つくのだろうか…。
『Menopause Mystery』
更年期は病理化されるべきなのか? この現在進行形の論争に触れるきっかけとして、“ルイーズ・アンマック・ジェルセン”(Louise Unmack Kjeldsen)監督のドキュメンタリーは最良かもしれません。多くの女性たちはサポートを欲しているだけなのに、偏見のリスクを一度通さないと、自分の状態を知ってもらえない…。いつもやるせないこのジレンマ…。
『Molly vs the Machines』
未成年のSNS利用を制限する動きが加速する中、『3 1/2 Minutes, 10 Bullets』の“マーク・シルバー”(Marc Silver)監督のこのドキュメンタリーは、ごく普通の14歳のイギリス人少女が命を絶った責任を問います。今もソーシャルメディアのアルゴリズムはろくでもないコンテンツばかり表示し続けていますが…。
『One in a Million』
“イタブ・アザム”(Itab Azzam)と“ジャック・マッキネス”(Jack MacInnes)の監督らが映すのは、シリアで戦争が勃発し、アレッポからドイツへと逃れる一家。10年の歳月をかけて撮影されたこの作品は、ひとりの少女の目線で難民の生きる姿を伝えるもののようです。難民を非人間化する言説が蔓延る世の中、こういうドキュメンタリーはなおも必要ですね。
『Our Land』
土地の出入りの許可は土地所有者が決める。当たり前だと私も思っていたけど、それは本当に当たり前なのか。森は公共の地としてみんなが足を踏み入れる権利がある? “オルバン・ウォレス”(Orban Wallace)監督は、貴族の歴史的な権力が根強いイングランドの土地の伝統を整理しつつ、「自由通行権」の概念を紹介してくれるようです。
『Powwow People』
ネイティブ・アメリカンのコミュニティにとって欠かせない祝祭である「パウワウ」について、“スカイ・ホピンカ”(Sky Hopinka)監督のこのドキュメンタリーは入門になってくれそうですね。男女二元論に当てはまらないジェンダーの文化も含めて、内側からその世界を届けてくれる貴重な案内人といった感じでしょうか。
『Qajaq Man』
イギリス人シェフで冒険家のマイク・キーンが、グリーンランド西海岸沿いの3000kmをカヤックで旅し、自然の恵みでグリーンランド料理を調理し、イヌイットの食習慣を学び、全身で体験していく旅路を映すドキュメンタリーとのこと。グリーンランドはあげないけど、カヤックで旅するならどうぞご自由に!
『Scarlet Girls』
性暴力であろうと命に危険があろうと例外なく中絶が一切禁止されているドミニカ共和国。その国で生きる女性たちの強制的な母体としての宿命を、自国を分析するように“パウラ・キュリー・メロ”(Paula Cury Melo)監督がドキュメンタリーで見つめているとのこと。SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の一作ですね。
『Silenced』
“セリーナ・マイルズ”(Selina Miles)監督のこのドキュメンタリーは、性暴力に対して声を上げた女性たちに対して、名誉毀損法が「黙らせる武器」として悪用されるようになっている実態を直視させるとのこと。「#MeToo」の後も被害者には不利な時代が続いていることを嫌でも実感させる作品なのでしょう。
『Stormbound』
アメリカ沿岸で発生するあらゆる巨大ハリケーンを追い求め、そのありのままの美しさをカメラに収めてきたストームチェイサーの姿を追う、“ミコ・リム”(Miko Lim)監督の二重観察ドキュメンタリー。エンターテインメント性を誇張されたディザスター映画よりも生々しく、ドラマのある映像がそこにはあるのでしょうか。
『The AI Doc: How I Became an Apocaloptimist』
『ナワリヌイ』の“ダニエル・ロアー”(Daniel Roher)監督は今度はAIの是非を自分なりに思案しているようです。こういう作品の存在から察するに、やっぱりジャーナリストのような人たちの間でも、AIは世界にとって良いものなのか、悪いものなのか…この疑問に対しての態度は揺らぎの真っ只中にあるようですね。
『The Arctic Circle of Lust』
50歳になった夫がバイセクシュアルをカミングアウトし、男性と付き合う意欲をみせたら…。これはセクシュアリティをセンセーショナルに捉えるものではないそうで、“マルク・ヘイキネン”(Markku Heikkinen)監督は、フィンランドの地元のクルージングやデート文化をユニークなラブストーリーとして映し出しているようです。
『The Cord』
DOX賞 Special Mention
“ノルウェン・エルヴェ”(Nolwenn Hervé)監督は、女性たちが身体の自己決定権と安全な出産環境を求める闘いの先頭に立っているベネズエラの女性活動家を追いかけるドキュメンタリーを製作。崩壊した医療制度に頼れず、自らケアモデルを築こうとする試みに安寧はあるのか。こういう活動のドキュメンタリーは基本的に全部観ておきたいところ。
『The Great Experiment』
F:ACT賞 Special Mention
今や世界で最も信用が急落し、自由民主主義の国とすらみなされなくなったアメリカ合衆国。“スティーブン・メイン”(Stephen Maing)と“エリック・ダニエル・メッツガー”(Eric Daniel Metzgar)の監督らは、かつて「民主主義における最後の偉大な実験」と呼ばれたアメリカの2017年から2020年までの4年間にわたる政治的激動を記録し、内省と考察を提供するとのこと。
『The Lives of My Father』
事実は小説よりも奇なり。自分の父親は平凡なノルウェー人だと思っていたら、屋根裏部屋からとんでもない父の過去が明らかになる…。まさかCIAのスパイ…? こういうことってやっぱり映画の中だけでなく、現実でもあり得るんだな…。“マグナス・スカットヴォルド”(Magnus Skatvold)監督のドキュメンタリーもなかなかに仰天させてくれそうです。
『The Peace Particle』
欧州原子核研究機構(CERN)を拠点とする科学者たちを取材しながら、その組織の科学への貢献、そして政治に翻弄される現実を、“アレックス・キール”(Alex Kiehl)監督は整理。リアルな『三体』のような人間模様なのでしょうか。科学と政治の関係性が掘り下げられるのは大歓迎です。科学を絶賛するだけよりは全然いいですから。
『The Phantom Pain of Rojava』
HUMAN:RIGHTS賞 受賞作
シリア北部のクルド人自治区にて傷ついたクルド人ゲリラ兵士たちの姿を追い続けた、“マリアム・エンブラヒミ”(Maryam Embrahimi)監督のドキュメンタリー。舞台となっているロジャヴァは、女性革命の発祥地だそうで、社会の解放は女性の解放なくして不可能という信念が実践されている稀有な場所になっているとのこと。
『The Secret Reading Club of Kabul』
NORDIC:DOX賞 受賞作
読書するのはいいものです。でも、タリバンが女性の読書や教育を禁じているアフガニスタンで読書会を開くのは相当に危険な行為。それでも読書をすること自体が抵抗になる世界で、“シャキバ・アディル”(Shakiba Adil)監督は、読書への行為のヒューマニズムのパワーをみせてくれる模様。本がもっと読みたくなる作品ですね。
『This is Not a French Film』
NEXT:WAVE賞 Special mention
ベルギーとベナンの二重国籍を持つ“トム・アジビ”(Tom Adjibi)監督は、ステレオタイプな役の仕事しか俳優業では貰えないので、自分で非白人俳優のみを起用し、映画を作ることに。でもいろいろ予想していないことが起きていくドキュメンタリーらしいですが、何が起きるんだ…。まあ、でも映画作りは常に予測不可能だからね…。
『To Hold a Mountain』
“ビルヤナ・トゥトロフ”(Biljana Tutorov)と“ペタル・グロマジッチ”(Petar Glomazić)の両監督が題材にしたのは、NATOの訓練区域になる危機に瀕しているモンテネグロの山岳地帯で暮らす放牧暮らしをする人々。叙情的な語り口らしいので、全体的に見せ方が上手いのかな。2026年のサンダンス映画祭でワールドシネマ・ドキュメンタリー部門の審査員賞受賞作です。
『Traces』
戦争の武器は戦車や銃弾、爆弾、ドローンだけでなく、性暴力も同様で…。最前線で兵士として過ごした“アリサ・コヴァレンコ”(Alisa Kovalenko)監督は、ロシアとの戦争中に性的暴力の被害を受けたウクライナ人女性たちの沈黙を拒否する姿を映像に記録し、次なる闘いに挑む困難さを映し出しているようです。
『While the Green Grass Grows: A Diary in Seven Parts』
独自の感性で高い評価を得ている“ピーター・メトラー”(Peter Mettler)監督の2025年の新作は、哲学的な自己発見の記録のようで…。そして何よりも420分(7時間)もあるということが特筆されます。とにかく長い映画を観るのが好きだという変わり者なシネフィルはこれだけでも惹きつけられるかもしれません。
『Whispers in May』
DOX賞 受賞作
“ドンナン・チェン”(Dongnan Chen)監督が光をあてたのは、涼山イ族自治州の女の子たち。ここでは初潮を迎えれば伝統的な成人儀式の到来を意味し、子どもではなく、結婚や労働といった社会的な義務を負う女性として扱われるそうで、そんな世界で生きる当事者の最後の子ども時代を映し出す作品とのこと。
『Whispers in the Woods』
野生動物写真家でもある“ヴァンサン・ムニエ”(Vincent Munier)が監督し、故郷であるフランス北東部のヴォージュ地方に戻り、息づく生命を撮ったこのドキュメンタリーは、2025年のフランス国内で異例の大ヒットを記録したそうです。心に残るサウンドトラックも高い評価を得ているそうで、そんな自然ドキュメンタリーのヒット作なら気になります。
前述したとおり、作品数が多いので一部しか紹介していません。他の作品も気になる人は、公式サイトを確認してみてください。
●Films – CPH:DOX
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