もしくはワニの里帰り…「Amazon」ドラマシリーズ『デッドロック 〜女刑事の事件簿〜』(シーズン2)の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:オーストラリア(2026年)
シーズン2:2026年にAmazonで配信
原案:ケイト・マッカートニー、ケイト・マクナレナン
動物虐待描写(ペット) LGBTQ差別描写 人種差別描写 性描写 恋愛描写
でっどろっく おんなけいじのじけんぼ

『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)物語 簡単紹介
『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)感想(ネタバレなし)
ろくでもない世の中をワニの餌にして
まだ始まって3ヶ月しか経過していないのに、2026年は「ろくでもなさ」がすでに想定のピークを大幅に上回っている気がする今日この頃。2020年代は2020年が最も悲惨な1年で、それを超える年はないと思っていたけども、その私の考えは甘かった…。2026年は悪化の一途をたどっていて、底が見えないあたりが絶望感半端ないですね…。
そんな世の中ゆえに、不安・怒り・失望がごちゃまぜになって、どうしようもなくなっている私たちのために、このドラマのシーズン2はこのタイミングでやってきてくれた…のかもしれません。
それが本作『デッドロック 女刑事の事件簿』。
本作は2023年にシーズン1が「Amazonプライムビデオ」で配信されたオーストラリアの犯罪刑事ドラマで、オリジナル作品ということもあり、かなりマイナーで全然目立っていませんでした。
しかし、ひとたび鑑賞すれば、他の凡百の犯罪刑事ドラマか霞むほどの強烈な作品性がクリティカルヒットしてきて、ドハマりする人が発生。かくいう私もその年のドラマシリーズのBEST10にこの作品をランクインさせたわけで…。
最大の魅力は、そのストーリーテリングとキャラクター構築の巧妙さ。女2人のバディものですが、ベタな型どおりの展開を絶妙にブラックユーモア満載でいじりながらひっくり返し、最後には怒涛の伏線回収で一気にカタルシスへと持っていく。あの手際は圧巻です。非常にクィアな作品でもあり、そのクィアネスを物語に組み込むセンスも見事なもの。
その『デッドロック 女刑事の事件簿』のシーズン2が2026年3月20日に到来です。
今回も、あの長身で生真面目だが不器用な女刑事と、ガサツで口汚い女刑事の、前回で最高のバディとなった2人が、複雑に絡みまくった事件に挑みます。周りには前と同じように、癖のある女たちが揃い、差別心丸出しの男たちも群がっています。もちろんクィアのエッセンスも欠かしていません。それらが混線するようにやかましく情報量過多でぶちこまれていくのはシーズン2でも同様です。
前回のシーズン1はタスマニアの「デッドロック」という架空の町を舞台にしていましたが、今回のシーズン2は舞台がガラっと変わります。じゃあ、タイトルの「デッドロック」は関係ないじゃないかという話ですけども、まあ、「loch(湖や入り江などの水域)」が舞台なのでね…。
これは事前に言ってもいいと思うので書きますけど、今回は「ワニ」がでまくりです。やっぱりオーストラリアと言えばワニですよ。最近は川でサメが襲ってくるオーストラリア映画(『ディープ・ウォーター』)も観たけどね…。オーストラリアならワニのほうがテンションあがる…。ワニのいないオーストラリアなんてつまらない…。
『デッドロック 女刑事の事件簿』のシーズン2は前回よりも短めの全6話(1話あたり約50~60分)。どんどん先が気になる急展開をみせるので、なるべく一気に視聴したい作品です。
『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 人種差別や性的マイノリティへの差別の描写があります。 |
| キッズ | 死体や性行為の描写があります。 |
『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
オーストラリア北部のノーザンテリトリー、バラ・クリーク。地元では有名なドン・ダレルを家長とする家族のワニツアーのボートが威勢よく出発し、濁った大きな川を進んでいます。ドンの娘であるアンバーが威勢よく観光客に説明し、船長は夫のグレント。気弱そうな助手はアンバーの弟のトロイです。
さっそくワニが接近し、吊り下げた肉で挑発すると、ダイナミックな動きをみせてくれます。「あれはまだ小さい小娘だ」とアンバーは饒舌。
そのとき、ライバル業者の別の大きなワニツアー船が現れます。それはジェイソン・ウェイドというエンタメ業界では名の知れた著名人が経営する「ワニ王国」というテーマパークの船で、最近になってこの地で観光ビジネスを始め、すっかり一大勢力となっていました。
ダレル家にとっては真新しい憎き商売敵であり、アンバーは威勢よく喧嘩を吹っ掛けにいこうとします。
しかし、観光客のひとりが巨大なワニがひっくり返って浮いているのを発見。しかも、その口には…。
ところかわって、ダーウィン。波の野外プールでダルシー・コリンズは妻のキャス・ヨークと楽しんでいましたが、そこにエディ・レッドクリフがいつもの調子で乱入。進展があったようです。ダルシーは以前はタスマニアのデッドロックで刑事をしていましたが、前に起きた難事件をエディと解決し、今や休暇をとってキャンピングカーで旅行しながら、エディの過去の事件を調べるのを手伝っていました。
その事件とは本部所属の時期にエディの相棒だったマイケル・ブッシュマン(ブッシュ)が死亡した出来事です。どうも何か事件性があるらしいのでした。
本部に就任したばかりの警視正のコル・カルキンに例のブッシュマンについて話す機会を得て、再捜査してもらおうという魂胆で2人でテリトリー警察に向かいます。
ところが、あれは本人の拳銃を使った自殺だったと説明され、精神的に苦しんでいたことも診断書で明らかで、遺書すらあったとのこと。エディは頑なに認めたがりませんが、ショックを隠せません。遺書には「自分を責めるな」とエディにむけた言葉もありました。
さっそくやることがなくなりましたが、ダルシーはタスマニアに戻る気はなく、最近オーストラリアでメディアを賑わせている失踪したスウェーデン人の事件を警視正に訊ねます。エバ・エ-ルリンクとアストリッド・アルバーグという2人のバックパッカー女性が忽然と姿を消したのです。
そのスウェーデン人失踪事件はブラント刑事が担当しているらしく、ダルシーの出番はなさそうです。肝心のエディはもうここで関係は解消だと開き直り、自暴自棄。
そのとき警視正から電話があります。なんでもバラ・クリークでワニの死体から人間の腕が見つかったとのこと。
ダルシーはやる気のないエディを引き連れて、地元の警察のサポートに行きます。ここで長年警官をしているパット・ヘファーナンが親身に対応してくれます。
そしてこのバラ・クリークがエディの地元だと明らかになり、さらなる意外な秘密も…。

ここから『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)のネタバレありの感想本文です。
シーズン2:I love them(自分とあなたとワニと)
『デッドロック 女刑事の事件簿』のシーズン1からシーズン2へ、舞台も様変わりしました。単にタスマニア(わりと涼しい)からオーストラリア北部(蒸し暑い)に移動した地理的変化だけではありません。
レズビアンによるクィア・フレンドリーな楽園から、ガサツな人間の男とワニがうじゃうじゃいる獣臭い河沼へとチェンジです。ただでさえ部外者に冷たい排他的な空気で、同性愛嫌悪な言動がごく当たり前に飛び交い、気候の鬱陶しさもあって、さすがのダルシーも精神的に滅入っていきます。
だからといってクィアネスの出番がないわけではないです。むしろそんな空間だからこそ輝く瞬間があります。前回はジェンダーの対立をひっくり返す仕掛けがありましたが、今回はそういうのはないのかなと思いきや、しっかり練り込まれています。
今回も少々しつこい社交性でクィア仲間探しにがっつくダルシーの妻のキャスは、そのお節介レズビアンおばさんっぷりが功を奏して、レズビアンの性欲の直感でホットスポットとみなした滝がまさに例の失踪したスウェーデン女性2人を発見する場に。そのスウェーデン女性2人もなんてことはないお騒がせレズビアン・カップルでしたし…(まあ、あの2人は2人で元カレからの逃避とかいろいろ大変な事情があるにせよ)。
とくに大きなドラマがあるのはエディですね。今回はエディの里帰り編。家族と険悪で、ワニのトリプル・ペットくらいしか話し相手がいなかった地元。己の出自に向き合い、自己を再構築することになります。そしてクィア当事者にとっても里帰りはアイデンティティ・クライシスと表裏一体。シーズン2ではエディは自分のクィアネスに自覚することになり、アイデンティティを確立していきます。たどたどしく、おぼつかなくても、一歩一歩…。
まずレンジャーのミキにひとめ惚れしつつ、ぎこちなくも関係を深めていきます。オシャレなレズビアン・トークなんてできなくても、下ネタで話題が合えばそれでいいんです。
さらに記者でノンバイナリーのリオにも触発され(リオを演じるのは、数々のクィアな劇を手がけてきた実績を持つ“ジーン・トング”)、自身のジェンダー・アイデンティティも揺らぎ、エディは最終的に「she/they」の代名詞を使い始めます。この終盤の展開は、エディが「they」の代名詞を唐突に自分に使い始めたことで「今のはどっちの話?(人かモノか)」と自分と周囲が混乱する一方で(日本語字幕に訳するの大変そうでしたが…)、エディが自分の肯定感を得ていって一気に絶好調になっていくカタルシスもあり(それが事件の解決へのエネルギーにもなる)、最高にアガる流れでしたね。
エディのことがますます大好きになるシーズン2だった…。
シーズン2でも、「緑の党」支持者で鳥好きでクィア・フレンドリーな警視正のコル・カルキンが権力不正の中心核だったり、悪役のちゃぶ台返しでたっぷり遊ばせてくれました。
シーズン2:ワニの正義
『デッドロック 女刑事の事件簿』のシーズン2の主題となる事件は、当初はワニ観光勢力の派閥争いに絡んだ同業者排除かのようにみえます。「有力者の男が殺される」というのもシーズン1のときを彷彿とさせますが、今回のドン・ダレルは殺される理由になりうるものがあまりに多いです。
そして真相はシーズン1と同様、複数の事件が絡まって複雑化しているのですが、結局、根本にあるのはやはり先住民差別と商業化にともなう植民地主義を強く浮き上がらせるものでした。
このノーザンテリトリーのバラ・クリークでは、軍の元所有地であったダークス・リバー保護地(DRR)にて、実は密かにジェイソン・ウェイドが運営する「ヘリの上からワニを撃つ違法なトロフィーハンティング・ツアー」が行われており、それは警視正のコル・カルキンも連絡係となり、公権力の汚職で不正が黙認されていました。コルはルーク・ファーガソン警部補(ブーツ)を駒にし、かつてマイケル・ブッシュマンを殺害し、エディに罪をなすりつけようとするほどに狡猾。ブッシュのコースターにあった「LISA」は女性でもノンバイナリーでもなく、「Luxury International Safari Adventures」の略…違法組織の名でした。
ロジャーら陰謀論者のグループは「DRRでの飛行物体の目撃例」をSFオカルトに解釈し、子どもたちは危険な場所として近寄りませんでしたが、ドン・ダレルはその真実に気づき、口封じで葬られた…というのが今回の事件の始まり。
それに加え、この地では先住民ルーツの人たちもそれなりに住んで働いていますが、あの地元の警官の(白人の前では人の良さそうな)パットが子ども相手に最後に滲ませたように、まぎれもなく先住民差別が存在し、そのこともあの不正の隠れ蓑になっていたのでしょう。
ドンの妻コリーンや息子のDJ(ドン・ジュニア)は例の不正密猟に関与し、同じ家族でもアンバーやトロイ、エディの父のフランクはそれに従属せず、白人コミュニティの正義も内部で分裂しつつ試されていました。それに先住民ルーツの人たちも搾取されるしかない立場に置かれていたり、苦悩が色濃く描かれていました。
白人のダルシーはコルから「仲間にならないか?」と誘われますが、もちろん断ります。今作ではダルシーの正義の真価を問われます。一時は(まんまと踊らされて)エディを疑い、キャスから「有色人種のエディをシステムに委ねることは何を意味するかわかってるの?」と叱責され、目を覚まします。
『デッドロック 女刑事の事件簿』はハチャメチャにユーモア満載ですが、芯にあるテーマは誠実です。正義だけは忘れるな、と。その正義は地道な検証で成り立ちます。「どうせこうだろう」という決めつけではないです。どんなにふざけてもいいけど、それだけはワニのように食らいついて放さないで…。
ラストに吹っ切れたように遠くの嵐を眺めるダルシー。混沌もまた格別な人生の味わいです。ダルシーとエディの正義パートナーシップも最高級に熟成されたし、アビーとリオの新しい関係性も構築されたし、もうこれで終わりなんて…もったいない…。
シーズン3、作ってくれてもいいんですよ…。いや、作ってください。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
◎(充実/独創的)
以上、『デッドロック 女刑事の事件簿』(シーズン2)の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Amazon デットロック デッドロック2
Deadloch (2026) [Japanese Review] 『デッドロック 女刑事の事件簿』考察・評価レビュー
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