その結末は…「Amazon」ドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』(シーズン5)の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
シーズン5:2026年にAmazonで配信
ショーランナー:エリック・クリプキ
セクハラ描写 児童虐待描写 LGBTQ差別描写 ゴア描写 性描写 恋愛描写
ざぼーいず

『ザ・ボーイズ』(シーズン5)物語 簡単紹介
『ザ・ボーイズ』(シーズン5)感想(ネタバレなし)
2026年に最終シーズンを迎える運命だったのか
2026年にこのドラマシリーズがフィナーレを迎えるとは…。一体どこまで現実とシンクロする気なのか…。
そのドラマとは本作『ザ・ボーイズ』です。
“ガース・エニス”と“ダリック・ロバートソン”が2006年に創作したコミックが原作となっており、この原作は当初はDCコミックスの出版レーベルが取り扱っていたものの、あまりの内容ゆえにDCすら手放したといういわくつきの代物。
その内容というのがまずアンチ・スーパーヒーローというか、このジャンル自体を徹底的にこっぴどく自虐的風刺で皮肉るセンスです。
そんな原作がドラマ化されたのが2019年でした。この2019年というのが絶好のタイミングで、DCでは『ジョーカー』が特大ヒットし、マーベルではMCUの『アベンジャーズ エンドゲーム』が映画史に刻む功績を残した年です。まさにスーパーヒーロー映画の絶頂期と言えたでしょう。
しかし、ここからはスーパーヒーローのジャンルへのバックラッシュも激しくなってしまって…。やれ「スーパーヒーロー疲れ」だ、オーバーワークでCGIが雑だ、AIだ…と、あれこれ批判も殺到し…。別にこれらはスーパーヒーロー・ジャンル特有の問題ではないのですが、なんだか「とりあえずスーパーヒーロー作品を槍玉にして叩いておけばいい」という安直な空気感になってるところがありますね…。
そんなスーパーヒーロー・ジャンルが頂点から陥落していく時勢に『ザ・ボーイズ』は期せずして乗っかれたわけですね。
けれどもこれだけではありません。『ザ・ボーイズ』が開幕した2019年に起きたもうひとつの出来事。それが“ドナルド・トランプ”です。2016年の大統領選挙で勝利し、2017年から2021年までアメリカ大統領の座についた“ドナルド・トランプ”。
『ザ・ボーイズ』はエンタメや企業風刺だけでなく、政治風刺の要素も色濃い作品であり、トランピズムによってアメリカの政治が過激化した世相にもがっちりハマったわけです。
おまけに、本作を「エログロをみせる単純な露悪作」(“コンプラ”という言葉を誤用して“コンプラを気にしない!”と評してしまうパターン)だとしか思っていなかったらしい層、もしくはどういうわけか「ポリコレを批判する作品」だと勘違いした層から、「このドラマは急にトランプ批判し始めた。Wokeの思想に染まったんだ! きっとディズニーの脚本家を雇ったに違いない!」と、もう「お前はこのドラマのモブキャラか」と呆れるレベルの頓珍漢主張を連発する連中に本作自体が絡まれたりもして…。
スーパーヒーロー・ジャンルの盛衰と、底なしに過激化する政治(と意味不明な有害なファンダム)…ドラマそのものがその渦中に巻き込まれる…。こんな時代と一体化する作品、早々ないですよ。
その『ザ・ボーイズ』もスピンオフ『ジェン・ブイ』を挟みつつ、2026年に最終シーズンとなりました。
この2026年は、スーパーヒーロー映画が再び巨大ブロックバスター作を用意する年であり、有罪判決もなんのそので2024年の大統領選挙に再び勝利して2025年から2期目の大統領に突入した“ドナルド・トランプ”が、十八番の関税政策を封じられ、支持率低下のまま中間選挙を前に、戦争を仕掛けまくって大暴走している年でもあり…。
あまりにも…あまりにも世の中が『ザ・ボーイズ』と同じ世界になりすぎている…。
『ザ・ボーイズ』が終わっても、この政治が終わるわけじゃないんだよな…と思いながら、大企業「Amazon」の配信サービスにアクセスする2026年の私なのでした。
『ザ・ボーイズ』(シーズン5)を観る前のQ&A
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Q『ザ・ボーイズ』(シーズン5)を観る前に観たほうがいい作品は?
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A
『ザ・ボーイズ』のシーズン1~シーズン4までの鑑賞はほぼ必須です。スピンオフのドラマ『ジェン・ブイ』は観ていなくてもそこまで困ることはありません。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | あらゆるトリガーアラートが必要と思っていいです。 |
| キッズ | 低年齢の子どもには不向きです。 |
『ザ・ボーイズ』(シーズン5)感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
ヴォート社の年次株主総会が開幕します。「USA!」の声とともに熱狂的な聴衆の大喝采に迎えられ、ステージに降り立ったホームランダー。
「過激化するスターライトとその信者スターライターに我々は勝ち、アメリカで勝手は許さないことを突きつけた。そして黄金の夜明けを手に入れた。もはやスターライターはテロ組織に認定されている。対応する軍を支えるのは新統合参謀のジェネラル・メイヘムだ。今やこの国は、より安全で神と繋がる国家になった」
そんな演説に支持者はうっとり。
実はその会場の裏ではスターライトことアニー・ジャニュアリーが潜入し、ステージの映像をホームランダーがかつて37便の飛行機の乗客を見捨てたときの隠し撮りのものに切り替えていました。その流出映像にホームランダーは一瞬固まるも、今やホームランダーのブレインとなっているシスター・セージはその怒りを抑え、後に「あれはAIのフェイク映像だ」と動画で発表してすぐに論争にならないうちに鎮火させます。
副大統領となったアシュリー・バレットも報道会見であらゆるホームランダーや政府に不利な情報はマルクス主義者によるデマだと言い切ります。オー・ファーザーの能力もあって、メガチャーチの支持も勢いを増しています。
しかし、当のホームランダーは自分に不都合な報道をする大手メディアがなおも気に食わない様子でイライラとセージにボヤいていました。政府機関は多くが閉鎖し、外国人労働者や性的マイノリティも排除しましたが、今度は自分をバカにするネットミームも違法にすべきとぶちまけ、そのうえ最も嫌いな相手を処刑しろと命じます。それはブッチャーの一味です。
現在、コンパウンドVによる超人を壊滅させようと目論むウィリアム・“ビリー”・ブッチャーたち。その仲間のうちに、ヒューイ・キャンベルとフレンチーとMMは、反体制の人間を閉じ込めるための強制収容施設「フリーダム・キャンプ」に閉じ込められていました。
一方の、指名手配中のブッチャーはロンドンの実家に気楽に寄り、憎き父を殺めたのち、フィリピンのマニラに潜伏する同じく一味のキミコに再会します。
ところかわってホームランダーの一味であるファイアクラッカーは自身の陰謀論番組『真実の爆弾』で活躍。同じく一味のディープはマノスフィアのインフルエンサーとしてブラック・ノワールとポッドキャストをしていました。
ブッチャーたちの切り札は能力者を殺せる秘密のウイルス。これがあればホームランダーにも勝てるはずですが、地球上の全能力者も死んでしまいます。
それでもこれしか手段は思いつきません…。

ここから『ザ・ボーイズ』のネタバレありの感想本文です。
シーズン5:現実を風刺しきれたか
スーパーヒーロー・ジャンルが一定の政治社会風刺をともなうのは昔からそうでした。しかし、『デアデビル:ボーン・アゲイン』の感想でも触れたのですが、昨今は「現実がフィクションの風刺を凌駕してしまっている問題」が否が応でもつきまとう状況なのが困った話で…。
『ザ・ボーイズ』のショーランナーである“エリック・クリプキ”もこの問題に常に頭を悩まされてきたことをよく吐露してきました。
『ザ・ボーイズ』のシーズン4はアメリカ大統領選挙のあった2024年に配信されたこともあり、1期目以上に過激化をみせる“ドナルド・トランプ”と、彼への暗殺未遂事件も起きたことで、本作がフィクションと言い切れなくなってきました。
そして最終であるシーズン5。ホームランダーは“ドナルド・トランプ”のカリカチュアになれたかと問われると…うん…どうだったんだろう…。現実では、“ドナルド・トランプ”は自分の黄金像を作り、自分をスーパーマンや教皇やイエス・キリストと同一視したAI生成画像を嬉々として公開し(Snopes)、聖戦として異教徒(イスラム教徒)の国(イラン)に攻撃を仕掛け…。それに相変わらず事あるごとにトランスジェンダーを敵視する話題をふっかけてくるし…。
ただ、私は今作のシーズン5でホームランダーに関する描写で良かったなと思ったのは、その内面の描きかたです。
結局のところ、ホームランダーは「真に愛されていない」と劣等感を抱き続け、永遠のレガシーになりたいと望みます。でも人の愛を全く理解できません。ホームランダーは本当に正真正銘のサイコパスとして描かれています。
よくこういう悪役の人物に対して「こいつにも苦しさがあるんだよね」と同情心を抱いてしまう人がいますが、本作はその反応も隙なく風刺していましたね。作中でホームランダーに同情して近づこうとする人たちが何人かでてきます。でもいずれも無残に殺されるか、無視されるかです。ホームランダーみたいな人には同情は効果がないのです。
ホームランダーって、実際のところ、無敵の殺戮パワーがあるから怖いのではなく、その存在に既存の接しかたが通用しないから恐怖を感じるのだと私は思います。スーパーパワー自体はそれこそ風刺です。
じゃあ、どうしたらいいのかと言うと…。そこが難問で…。
本作は最終的にホームランダーは無能力化され、残酷に殺害されます。私刑を与えたかたちです。
このオチは、同じく2026年にシーズン2でひとつの結末を迎えた『デアデビル:ボーン・アゲイン』とはかなり差があります。少なくとも『ザ・ボーイズ』は社会のシステムを信用しないエンディングでした(エドガーも「不滅の資本主義には勝てない」と言っていて、そのとおりになったし)。そういう意味では、非常にシニカルで、この作品らしいと言えばそうです。
シーズン5:どの国にもある「一線」
一方でこの『ザ・ボーイズ』は単純な「暴力の肯定」で終わるのではなく、このシーズン5の中で「いかにこの最悪の世界で希望を持ち続けるのか」という精神論を訴え続けていたとも感じました。これは『キャシアン・アンドー』に通じるアプローチです。
要するに「絶望して諦めるな」ということ。「他者との絆で未来を繋ごう」ということ。
シーズン5の序盤から絶望にかなり染まっていたのはアニーで、希望と絶望の狭間で自分が試されていくのはシーズン1の頃からこのアニーのテーマでした。シーズン5ではそんな再び地に落ちたアニーがヒューイという光に照らされ、最後はヒーロー活動に取り組む…。とても真っすぐなメッセージでした。
ブッチャーのように憎悪による排除の正当化に走ってはいけない…。セージのように自分とタコベルがあればいいと虚無主義&反出生主義に引きこもってもいけない…。
印象的だったのは、『ザ・ボーイズ』もキリスト教が最後の要になっている点です。これは最近の『サウスパーク』との共通点でもありました。
つまり、アメリカにとって善良さの最後の防波堤は「宗教」が説く「愛」なんですね。
ホームランダーは国家も宗教も私物化し、「アメリカ民主主義教会」という新たな国教を創り、自分が唯一神として、「私が主だ、あなたたちの神だ」と全国放送で演説します。
でもその言葉はさすがのあの世界のアメリカ国民の心にも届かない…。そこが一線なわけです。譲れない一線。そういうものが国にはあるのです。
この宗教の要素は日本には関係ないと思うかもですが、私は本作を観ていてこの部分がすごく日本と重なると思いました。とくに今の日本での憲法改正をめぐる世論の反応です。
今の高市政権含めた一部の改憲支持政党は「憲法は時代に合わせてアップデートしたほうがいい」と正当化します。これ、作中でホームランダーが「聖書を時代遅れなところがあるのでアップデートすべき」と言っているのと全く同じです。
けれども日本では今の政治家たちの考える憲法改正に猛反発が起こっており、抗議活動は拡大し続けています。右とか左とか、そんなの関係なく、普段は政治について意見しない人でさえも、さすがにその憲法改正だけはダメだと拒絶する人は少なくありません。これは一定の日本人にとって「憲法」は聖書と変わらない、すごく大切な「日本が日本であるための欠かせないもの」だからなのでしょう。
アメリカだろうが日本だろうが、どの国にもそういう「一線」がある。それをスーパーパワーという名の権力で強引に踏み越えようとすると、権力者が想像もしなかった強烈な反応が起きる…。本作を観て、そんなことを痛感したのでした。
今の世の中だと政治社会風刺も本当に大変ですが、そこに果敢に挑戦し続けたこのドラマの健闘を忘れることはないでしょう。
フランチャイズとしては、VCU(ヴォート・シネマティック・ユニバース)というのかなんだか知りませんが、まだ次のドラマが企画されていますし、ヴォート社も健在ですので、世界観は続くようです。
しかし、『ザ・ボーイズ』ほど今を複写したフィクションを作れるのか…「結局、後にも先にも『ザ・ボーイズ』が一番風刺を攻めていたね」と評価されないようにするのが、このシリーズの今後の最大の課題じゃないでしょうか。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『ザ・ボーイズ』(シーズン5)の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Amazon MGM Studios ザボーイズ5
The Boys (2026) [Japanese Review] 『ザ・ボーイズ』考察・評価レビュー
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