続編は解凍方法で質も変わる…映画『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年3月29日
監督:ギル・キーナン
ごーすとばすたーず ふろーずんさまー
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』物語 簡単紹介
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』感想(ネタバレなし)
ゴーストバスターズ、2020年代に2本目!
2024年で40周年を迎えるもの…。それは「コアラのマーチ」です!
美味しいお菓子ですよね、コアラのマーチ。
はい、でも今回はもうひとつの40周年のコイツが本題です。それは1984年に公開された映画…『ゴーストバスターズ』。
1984年に“アイヴァン・ライトマン”監督によって作られたこの映画は、公開されるとその軽妙でハイテンションな幽霊退治が話題となり、たちまち社会現象になりました。この時代にSNSがあったら絶対にインターネット・ミームがいっぱい作られていたでしょうね。
その『ゴーストバスターズ』ですが、2016年にリブート版『ゴーストバスターズ』が作られた後、2021年には今度はリブートではなく正式なタイムラインの続編となる3作目(フランチャイズとしては4作目)の映画『ゴーストバスターズ アフターライフ』が公開されました。
そしてさらにあまり間を開けずに次の続編も公開です。
それが本作『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』。
2020年代もまだ前半ですでに2本目と、いきなり勢いが加速しましたが、映画IPを保有しているソニーとしてはフランチャイズ化を定着させたいのでしょう。
なお、原題は「Ghostbusters: Frozen Empire」なのですが、邦題には「サマー」が入っています。確かに舞台の時期は夏ですから間違ってないのですけど、劇場公開日は全然夏でも何でもないという…。映画界の季節感ってそんなものか…。
物語は前作『ゴーストバスターズ アフターライフ』から引き続きますので、あのままです。舞台がニューヨークに戻ってきたので、オリジナルの『ゴーストバスターズ』に近くなり、旧キャラクターも大勢揃って、従来のファンには懐かしい雰囲気が漂っています。ほぼ同窓会ですね。
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』の監督は、前作の“ジェイソン・ライトマン”から前作で脚本を手がけていた”ギル・キーナン”にバトンタッチしました。”ギル・キーナン”は、2006年にアニメーション映画『モンスターハウス』で長編映画監督デビューし、『エンバー 失われた光の物語』(2008年)、『ポルターガイスト』(2015年)、『クリスマスとよばれた男の子』(2021年)を監督してきました。
俳優陣はほぼ前作から続投。
新世代キャストは、『アナベル 死霊博物館』の“マッケナ・グレイス”、『IT/イット』シリーズの“フィン・ウルフハード”、『アントマン』の”ポール・ラッド”、『ボストン・キラー 消えた絞殺魔』の“キャリー・クーン”、『マダム・ウェブ』の“セレステ・オコナー”、ドラマ『ウォーキング・デッド: デッド・シティ』の“ローガン・キム”など。
さらに新規追加キャストとして、『エターナルズ』の”クメイル・ナンジアニ”、新ドラマ『ゴシップガール』の“エミリー・アリン・リンド”、イギリスのコメディアンである“ジェームズ・エイキャスター”など。
懐かしの旧世代キャストは、“ダン・エイクロイド”、“ビル・マーレイ”、”アーニー・ハドソン”、”アニー・ポッツ”です。こちらの面々はもう過去作を知っている人には言うまでもない顔ぶれ。
かなり同窓会の空気が濃いので『ゴーストバスターズ』シリーズを一作も観たことがない人は居心地が落ち着かないかもですが、単純なエンターテインメントですし、そんなシリーズの繋がりを気にすることもないのかなと思います。
とりあえずゴーストをバスターすればいいんです。
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』を観る前のQ&A
A:特にありません。前作『ゴーストバスターズ アフターライフ』を観ておくと、キャラクターをより知れます。どちらかと言えば、事前に観るなら1作目の『ゴーストバスターズ』の視聴のほうがオススメかもしれません。
オススメ度のチェック
ひとり | :旧作ファンも |
友人 | :気楽なエンタメ |
恋人 | :軽めの暇つぶしに |
キッズ | :子どもも楽しめる |
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
1904年、ニューヨーク。ニューヨーク市消防局の消防員が馬車で建物から飛び出し、出動します。到着したのは上流階級の紳士たちが集まる社交クラブ。何かの気配を感じる扉。それに手を振れたひとりの消防員の手は張り付き、凍りそうになるほどに冷たいです。
扉を斧で破壊して中に入ると、机を囲んでいる人たちもろとも全てが凍り付いていました。異様な光景に言葉を失う消防員たち。他には蓄音機から何か変な音が流れているだけです。奥には謎の球体を握りしめた鎧を着た人物がいて、目を見開くと、凍った人が粉々に砕け散ります。
現在、ニューヨークの街並みを疾走する1台の奇妙な装備の車。運転しているのはゲイリー・グルーバーソン。隣にはゲイリーと交際中のキャリー・スペングラー。後部座席にはキャリーの子のトレヴァーとフィービー。4人は「ゴーストバスターズ」という幽霊退治の専門業者です。昔に「ゴーストバスターズ」をしていた面々から仕事を引き継ぎました。
前方に勢いよく飛び回るゴーストを視認。落ち着いているフィービーは車外に出てゴーストを補足する装備で動きを抑えます。さらにドローンを駆使して、空中でゴーストを捕獲。車は派手に歩道に突っ込みましたが、とりあえず一件落着。
ニュースでもまた街に舞い戻った「ゴーストバスターズ」は注目のまと。ただ、市長は騒ぎばかりの「ゴーストバスターズ」に不満なようです。
4人は以前のニューヨーク市消防局の建物に住んでいて、拠点でもあります。フィービーが一番使命感に燃えていましたが、成人ではないという理由で危険な行為に参加させられないため、仕事から外されてしまいます。
一方、過去に初期「ゴーストバスターズ」の一員だったレイモンド・スタンツは今は小さなオカルト品を集める店を経営していました。フィービーの友人であるポッドキャストはここで手伝い中。
そこに暇を持て余すフィービーがやってきます。店には常連のナディームが何かを持ってきており、それは不思議な球体。祖母が持っていたものらしいです。どれくらいのオカルトなものなのか、計測しようとすると機械が壊れてしまいます。
なおも仕事から外されているフィービーはひとり寂しく夜の公園でチェスをします。ところが勝手に駒が動きだし、一緒に遊んでくれます。その正体はメロディという名の幽霊でした。フィービーはもう幽霊に慣れっこなので驚きません。2人は密かに友達になります。
また、ゲイリーたちはウィンストン・ゼドモアの紹介でゴースト研究所を案内してもらいます。そこでは最新の科学でゴーストたちを収集し、研究を行っていました。
あのレイモンドが引き取った謎の球体もこのゴースト研究所で解析してみることにしますが…。
同窓会の二次会(次は楽しく)
ここから『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』のネタバレありの感想本文です。
前作『ゴーストバスターズ アフターライフ』は、初代「ゴーストバスターズ」のメンバーが揃う同窓会でありながら、初期メンバーであるイゴン・スペングラーを演じる2014年に亡くなってしまった“ハロルド・レイミス”への追悼集会でもありました。
今作の『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』は、同窓会の延長であり、二次会みたいなものですが、しんみりしたムードはもう無し。次は一般のファンも集まって盛大に打ち上げしている感じです。まあ、日本も葬儀の後は普通に飲み会のノリに移行したりしますからね。
ということで本作はノスタルジー強めです。あのキャラクター、あのアイテム、あの演出、あの展開。「ニューヨークにゴーストバスターズが戻ってきました~」という凱旋になっています。エンディングで強調されますが、今も「ゴーストバスターズ」はニューヨークの宝として愛されてますね。
ただ、“シガニー・ウィーバー”はいないのだけど…。
個人的にはノスタルジーは前作でじゅうぶんだったので、また繰り返すのはあんまりノれないなのですが、でもニューヨークで「ゴーストバスターズ」が活動しているところを見たいという気持ちもわかるので…。
その一方で、新世代「ゴーストバスターズ」も絡んでくるので、かなりドラマ過多です。これは本作のごちゃごちゃ感を悪化させており、同窓会に専念させてはくれません。同窓会の会場で成人となった子どもの家族が走り回っている光景に近い…。
ゲイリーたち家族の物語としては、ウェルメイドなファミリー映画ですよね。無難に普通の映画になったのは、私としては少し残念。私は『ゴーストバスターズ』というのはもっとヘンテコな映画だと思っているので、普通になってほしくはないのですが…。
もちろんこの狙いもわかります。1984年の『ゴーストバスターズ』は文化的アイコンとなり、それは親世代から子へと語り継がれるという、家族継承がなされています。その現実のファンダムの変移を映画内でも描きたいということなんだと思います。それはそれで『ゴーストバスターズ』の本質ではあるでしょう。
「子どもに幽霊退治なんて危ないことをさせるのはなぁ…」みたいな親心を滲ませるエピソードもあり、本作はわりと大人目線です。
エンドレスな同窓会の呪縛なのか…
『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』で私がもう少し頑張って踏み込んでほしいなと思ったのは、フィービーのストーリー。
フィービーは実質的にこの新世代「ゴーストバスターズ」の主役で、かなり目立った活躍のポジションが与えられています。
“マッケナ・グレイス”演じるフィービーはオタクらしさ全開ながら中性的な容姿で次世代オタクというレプリゼンテーション。このフィービーにどんな成長を用意するのかなと思いましたが、今作にあったのはメロディという幽霊との切ない友情物語でした。
これもこれで悪いものではないです。前回で幽霊を全然信じない科学頭だったフィービーがすっかり「ゴーストバスターズ」に馴染み、誰よりも一生懸命で、ついには幽霊と交流したりするようになったのですから。
『屋根裏のアーネスト』のように人間と幽霊が友好を深める話は定番です。それだけでじっくり一本の映画が作られます。しかし、『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』はキャラクターが詰め込まれているので、フィービーにじっくりと取り組む時間はあまりなかったです。
なんかこの『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』、ノスタルジーな大人勢の描き方は丁寧ですけど、若者たちの物語はそんなに上手くない感じがする…。
第1作の『ゴーストバスターズ』が1980年代の文化的アイコンになったのであれば、当然、次に今の時代に映画化するとなれば、同窓会だけに依存せず、2020年代の文化的アイコンとして刷新することは求められると思います。
けれども、この映画を見るかぎり、今の最新の文化を織り交ぜて描き直す洗練さはないという…。やっぱりあの第1作の『ゴーストバスターズ』って奇跡的な登場だったな…。あの時代だから成り立っていたノリってものがある…。
でもそうは書きましたけど、今の最新の文化を織り交ぜてホラー・エンターテインメントとして成功させた他の映画って全然ノリが違うので、『ゴーストバスターズ』シリーズはこのままフランチャイズを拡張しようにも同窓会から離れることはできないのかもしれない…。同窓会の呪縛です。
あと、もともとはヘンテコな映画だって書きましたけど、今作のヘンテコ要素は、“クメイル・ナンジアニ”演じるナディームのファイアマスターに丸投げしているところはありました。めちゃくちゃ「なんじゃそりゃ」という設定ですけど、昔の『ゴーストバスターズ』ってこういうアホなテンションで押し切ってたのは確かにある…。
ちょっと宣伝負けしているのは、ガラッカという今作の巨悪ゴーストに関して、ニューヨークを凍りつかせると言っても、そんな異常自然災害ディザスターほどド派手な映像スケールで見せてくれるわけではないという点。予算の問題もありますけど、私はどうせ何かニューヨークに大異変を起こすなら、もっとバカバカしい設定で良かったと思いますよ。例えば、街中がスライムで覆われるとか…。
たぶん儲けたい企業としては次回作をすでに考えているはずですが、同窓会をただ連発していても意味ないので、あとはどう拡張させるかですね。グローバルに世界各地に舞台を移動させていくのが一番やりそうなアプローチですけども、そうするにしてもどこまで続くかな…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 43% Audience 84%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
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・『ホーンテッドマンション』
作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures ゴーストバスターズ フローズンサマー
以上、『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』の感想でした。
Ghostbusters: Frozen Empire (2024) [Japanese Review] 『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』考察・評価レビュー
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