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『ゴーストバスターズ(2016)』感想(ネタバレ)…幽霊はいます!

ゴーストバスターズ

幽霊は女にも見えてます!…映画『ゴーストバスターズ(2016)』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Ghostbusters
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年8月19日
監督:ポール・フェイグ

ゴーストバスターズ

ごーすとばすたーず
ゴーストバスターズ

『ゴーストバスターズ』物語 簡単紹介

コロンビア大学の素粒子物理学者としてまさに意気揚々とキャリアを開始したエリン・ギルバートは、その現実にやや凹みつつ、学生時代に心霊現象の研究に夢中だった過去を封印していた。ところが、学生時代の友人のアビーがエリンと共著で心霊現象に関する本を勝手に出版したことで、せっかくの職場である大学をクビになってしまう。そんなエリンとアビーのもとに幽霊の目撃情報が舞い込んでくる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ゴーストバスターズ』の感想です。

『ゴーストバスターズ』感想(ネタバレなし)

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いろんなことをバスターしよう

2014年、ある研究グループがSTAP細胞の発見という画期的な研究成果を発表しました。新発見なんて科学界では頻繁にありますが、この一件は特に一大注目を集めることになりました。その理由は、研究グループの主要メンバーのひとりが若い女性だったから。研究内容よりもこの女性研究者の経歴や生活といったことばかりが取り上げられて報道も過熱を極めます。ところが、研究に不正が発覚。その後も、女性研究者ばかり報じられる状況は変わりませんでした。なかには「女だからダメなんだ」という意見さえも飛び交う始末…。

前置きが長くなりましたが、これと同じ状況が本作『ゴーストバスターズ』でも起きました。

本作は1984年に公開された人気映画『ゴーストバスターズ』のリブート。オリジナルとの大きな違いは、主人公チーム全員が女性になったこと。これに対し、予告動画が公開されるやいなや批判が連発、映画批評サイトも公開前から極端な低評価がつけられまくる状況になりました。そのネガティブな反応の主要な理由は「主人公が女性なのが気にくわない」。役者個人のSNSへの攻撃さえも行われるほどの異常性。肝心の映画の内容を真摯に議論する動きは消沈です。

しかし、本作は挫けなかった。公開前から大炎上した本作ですが、本作はその批判の声さえも巧みに活用し、作品に新たなオリジナリティを追加させることに成功しています。

なにより現実と映画の世界のシンクロ具合が面白い。劇中の主人公たちも女性という部分を最大限に物語に活かしてあの手この手でおちょくり、ときにバカにされ、逆にバカにし返します。

オリジナルとなる1984年のアイヴァン・ライトマン監督の『ゴーストバスターズ』には当然そんなジェンダーをキーワードにした要素はありません。元祖はあくまでダメ研究者の男たちが未知の存在である幽霊と戦うというシンプルで奇想天外なコメディです。

それにジェンダー要素を追加するのは邪道というか、蛇足だと考える人もいるかもしれません。でも少なくとも私はそれもこの作品の理にかなっていると思います。なぜなら、ジェンダーにおける偏見や差別もまた幽霊と同じように目に見えないもので、なかなか世間は信じてくれないから。どうしても「え、そんなの考えすぎでしょ?」とか「いやいや、きみ、ちょっとオーバーだよ」などと、差別反対を訴える声を嘲笑う人は残念ながらいっぱいいるじゃないですか。

つまり本作では主人公である女性たちは幽霊と同時に女性への偏見も“バスター”していくことになる。それは社会で仕事をする女性を描くなら避けられない必然のテーマですし、決してウケを狙ったものではないのです。

といってもこの作品はジェンダーだけを題材にした映画ではありません。

例えば、メインの主人公・エリンはコロンビア大学の素粒子物理学者として永久雇用の座につくことにこだわります。でも、本音は幽霊の研究をしたい。つまり、自分の本心を犠牲にしてキャリアを選ぶ人生を送ろうとするわけです。それに対して、好きなことに人生を捧げている友人からそんなのでいいのかと問われます。これは男女関係なしに悩む問題でしょう。無論、女性の方がそのジレンマはより一層根深く壁となって立ちふさがるでしょうけど。

いろいろ書きましたが、説教臭い映画じゃないので安心してください。

基本はコメディですし、純粋なエンターテイメント映画なので、難しく考えず見れます。オリジナルの本家を観ていなくても全然構いませんが、明らかにオリジナル版を踏襲したネタやパロディがあちらこちらに散りばめられているので、それらも含めて100%楽しむなら、オリジナル版も鑑賞すると良いでしょう(なお、オリジナル版には続編となる2作目がありますが、それは…まあ、別にいいです)。

幽霊も、偏見も、差別も、ウザイ上司も、無能な政治家もバスターしましょう。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ゴーストバスターズ』感想(ネタバレあり)

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プロモーションがお見事

映画の内容を語る前に本作『ゴーストバスターズ』のプロモーションについて言及したいのですが、本作のプロモーションがほんとに上手いです。

前述した予告動画の低評価騒動も、劇中で主人公たちが幽霊の映像をYouTubeにアップしても全く信じられず、女性蔑視コメントばかりがつくという場面とシンクロさせるあたりも巧みです。こういう炎上を逆手にとる戦略は素晴らしいと思います。配給のソニー・ピクチャーズの自作自演なんじゃないかと疑いたくなるくらいです(いや、本当に自作自演か?)。

また、映画で物語のきっかけとなるエリンとアビーが書いた本がちゃんとアマゾンで買えるのも楽しい。 劇中にも実際登場した幽霊を信じないブラッドリー市長、コロンビア大学のフィルモア学長、マーティン・ヘイスといった面々による批評コメントがついていてまた笑えます。

こういった現実と虚構をいいバランスで混ぜこぜにしたプロモーションは、まさに本作の作品性に合致しており、「ソニー・ピクチャーズ、やるじゃないか」と感心します。

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最高の4人のチーム

本作『ゴーストバスターズ』の一番の腕の見せどころであり、ここができていないとダメになってしまうポイントが、主人公となる4人のメンバーのチーム性。「ゴーストバスター“ズ”」ですからチームワークとしても魅力的に成立していないと話になりません。

その点において本作は最高の4人が揃ったのではないでしょうか。

エリン・ギルバートは、いわゆるキャリアコースをたどり、真っ当な研究者人生を歩もうとしているベタな女性。でも本心では自分の一番好きなことを無かったことにして、ある種のお行儀良い女性像に当てはまろうとしています。それが友人アビーのなかば強引な巻き込みによって、幽霊の存在を確信する現象に遭遇。あの序盤の阿鼻叫喚のハイテンションさは、彼女が真の意味で自分らしさを取り戻した瞬間であり、あの時点で私は非常にカタルシスを感じました。

そのエリンの目を覚ますアビー・イェーツは、エリンとは逆で自分のやりたいことを貫こうとずっともがいてきた女性。もちろん現状には不満だらけ。変人扱いですし、邪魔者としか見られていません(実際、職場を追い出されてしまいますが)。でも文句をハッキリ言って自分の感情を表に出すことをためらいません。

ジリアン・ホルツマンは、ゴーストバスターズの装備開発を担い、奇妙キテレツなアイテムを次々と開発。この手腕を観ても、相当な科学的技術能力の持ち主で、スキルもあるのでしょう。でも彼女もまた弱小な底辺で細々と自分の才能を持て余してしまうだけ。

パティ・トランは、ニューヨーク市地下鉄の職員という地味な仕事をしていましたが、ゴーストバスターズの活動を見かけてノリで参入。彼女の場合、科学的な技能は持っていないのが特筆できるところ。要するに本作は理系だけの人間がいればいいという狭い視野にはなっていないんですね。

4人が“四者四様”で現代社会の女性の立場を戯画化しながらも的確に表しているのが素晴らしいです。
この4人が集結してその社会で認められなかった才能を全開にする。このキャラクターのバックグラウンドからの大活躍という流れだけで、私はもう本家を超えるチームだなと感無量。

“クリステン・ウィグ”、“メリッサ・マッカーシー”、“ケイト・マッキノン”、“レスリー・ジョーンズ”…演じた4人のアンサンブルは最高で、ずっと見ていたい気分です。

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見てくれている人はちゃんといる

本作、エンターテイメント映画としては勢いに最後まで持続性がなかったのが残念ではあります。勢いまかせな部分も目立ちました。基本は1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』とストーリーの流れが同じなので、展開が読めるのもマイナスポイントでした。アメリカ映画定番の核兵器解決オチもいい加減やめてほしいところ。

ただ本作の魅力は1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』にはなかった、現代的問題(もちろんそれにはジェンダーも含みます)で新たなに料理し直したことにあるのでしょう。こういう新要素の導入は私は正解だったと思います。正直、1984年オリジナル『ゴーストバスターズ』をそのまま現代の映像技術でリブートしてもイマイチだったのではないでしょうか。

とくにさすが“ポール・フェイグ”監督、ジェンダー・ギャグは御手の物。同監督作品の『SPY スパイ』でも同じでしたが、決して女性をおだてる、もしくは男性を咎めるだけの映画になっているわけではないのが上手いです。男も女もバカに描くし、男でも女でも嫌な奴もいれば良い奴もいる。基本は平等です。

バカの極みである“クリス・ヘムズワース”演じるケビンは、個人的に一番楽しかったキャラでした。あそこまでギャグに徹したキャラは、今のコメディ映画のなかでもそう多くはないですが、気楽に見れます。まさに観賞用の存在。そんな彼にも「顔がいい」という身も蓋もない評価点でちゃんと雇用してあげるあたり、主人公のゴーストバスターズは人を平等に評価できているということがわかります(しかも体を乗っ取られてヘマした後も雇用し続ける親切心)。たぶん、彼も表面上バカだからわからないけど、相当世間から嫌われ蔑まれてきた悲しい過去を抱えてきたと思うんです。ケビンの居場所がやっとできたわけであり、彼のエピソードとしてもハッピーエンドだと思います。

もちろんケビンのキャラクターは、従来のステレオタイプな映画に見られた女性像を男性に転換したものでもあります。だからケビンをバカにしすぎだと思ったのだとしたら、それはこれまでの男性が女性にしてきたことと同じなんだよと理解してほしいところ。そのための自覚を促しているのが、本作なわけですし。

ラストのビルに現れる「I Love Ghostbusters」のライト文字はまさに「世間から嫌われていても見てくれている人はいるよ」というメッセージで、本作の立ち位置がよく表れていました。

『ゴーストバスターズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 74% Audience 51%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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関連作品紹介

「ゴーストバスターズ」シリーズ関連の映画の感想記事です。

・『ゴーストバスターズ アフターライフ』

作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures

以上、『ゴーストバスターズ』の感想でした。

Ghostbusters (2016) [Japanese Review] 『ゴーストバスターズ』考察・評価レビュー