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『KARATE KILL カラテ・キル』感想(ネタバレ)…空手とシスコンは最強だった

KARATE KILL カラテ・キル

空手とシスコンは最強だった…映画『KARATE KILL カラテ・キル』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Karate Kill
製作国:日本(2016年)
日本公開日:2016年9月3日
監督:光武蔵人
性描写
KARATE KILL カラテ・キル

からてきる
KARATE KILL カラテ・キル

『KARATE KILL カラテ・キル』物語 簡単紹介

寡黙でストイックなケンジは、女優を夢見てロサンゼルスに留学した妹マユミが音信不通になったことで不安を募らせ、居ても立っても居られないので単身で渡米する。ケンジは右も左もわからないような状況であったが、異国の地でも止まる気はない。マユミはその頃、テキサス州エルパソ郊外の辺境を根城にするある謎のカルト組織「キャピタル・メサイア」に捕らえられていた。そして、ケンジは殺人空手を炸裂させる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『KARATE KILL カラテ・キル』の感想です。

『KARATE KILL カラテ・キル』感想(ネタバレなし)

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B級だけどアクションはSSS級

2020年に開催されることが決まっている東京オリンピックでは、新しい追加種目が存在します。そのひとつが「空手」です。

格闘技に疎い私、これを機に空手について調べてみると、起源には諸説があるみたいですが、沖縄拳法、中国武術、日本武術などが混ざり合ったなんともモザイク状の歴史を有した格闘技なんですね。そういう重層的な歴史があれば、当然スタイルも予想以上に複雑。空手なんて「瓦割り」のイメージしかなかった私は愚かでした。

ということで空手映画を観ましょう。紹介するのは『KARATE KILL カラテ・キル』です。

本作はマメゾウピクチャーズによる長編映画第2弾と銘打たれており、この映画製作会社は公式ウェブサイトからそのまま引用すると「国際的なマーケットを視野に入れた新しいスタイルの作品を作り出す」ことに全力。監督は、『サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼』『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』を手がけたロサンゼルス在住の日本人映画監督“光武蔵人”。撮影はほぼ全編アメリカで行われたとのこと。
要するに海外の「NINJA」とか「SAMURAI」が好きな日本オタクにクリティカルヒットするように狙いを定めた、バイオレンス・グロ・エロ満載のジャンル映画なわけです。わかりやすい、これ以上ないほどに本当わかりやすい。

そんな映画ならどうせトンデモ空手であり、格闘もしょぼいのでは?と疑心する人もいて当然ですが、ところがどっこい違います。

主演の“ハヤテ”という俳優は、なんと空手の師範であり、しかもパルクールのプロ中のプロ。映画自体は低予算のB級だけど、やってるアクションはSSS級なのです。よくあるエンタメ系アクションじゃない、もはやこれは純粋なる格闘文芸映画といっていいのではないでしょうか。格闘技好きであればあるほど唸る、素晴らしいマニア魂が込められています。

あなたの知らない空手がそこにあるはずです。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『KARATE KILL カラテ・キル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):妹はどこだ!

ケンジという男は悩んでいました。妹・マユミに電話しても繋がらないのです。それだけなら別にとくに慌てることではない気もします。しかし、1か月も連絡が取れないのです。いや、でもそれでもそこまで動揺することもないように思うのですが、このケンジにとっては一大事なのです。完全な音信不通というのは彼の人生における最大級の緊急事態。

マユミの留学費を払うためにいくつもバイトを掛け持ち、日々働いてきました。ケンジという人間にすれば人生を妹に捧げるのは当然なのです。妹は命よりも大切な存在。自分の心臓です。

こうなってしまっては落ち着いて日常を過ごせません。マユミがいるはずのロサンゼルスに向かうことを決意します。とりあえずバイト代の前払いを頼み込み、ロサンゼルスへ直行。

到着したケンジは聞き込みによって地道に手掛かりを探します。たどり着いたのはとある家。ボロボロな室内を進んで、階段をのぼった2階。「日本人は?」

そこには女のケツを貪る日本人がいました。「てめえ、俺の女のケツをみて勃起してるんじゃねぇだろうな」…と小物臭たっぷりにいちゃもんをつけてくる相手。一瞬でそのケツ男をぶっ倒します。「俺の前の前に住んでいた奴のルームメイトだ」と血まみれで白状する男。それでも歯向かってくる男をボコボコにし、いたとされる店の名を聞き出します。娼婦の女性が盾にされているのを目撃し、全く動じることなく敵を撃退。

その頃、ボコボコにされたケツ男は「やべぇ奴がそっちにいくかもしれないぜ」と誰かに電話していました。

両親を幼い頃に失った兄妹にとって絆は絶対。マユミは絶対に守らないといけない。

怒りに燃えるケンジはシークレット・トレジャーというキャバクラ店へ(こんな店、アメリカにあるの?)。「マユミという女に会いたい」と頼むも、「当店にマユミという方は在籍しておりません」と追い返されます。

駐車場で従業員とボディガードに暴行され、戦闘モードにチェンジ。店内でヤンチャに立ち向かってきた半裸男の耳をもぎとり、集団で挑んできたその他大勢も完全圧勝。

事情を話そうとした男の脳天をぶったぎるバーコード頭の男が乱入。「やるねぇ、初めて見たね、あんな空手、何流?」とマユミのことを口にするので、一瞬の隙をついて攻撃してくるところを回避し、相手の木刀を折ります。「真剣だったらこんな折れねぇんだよ」となおも惨めに強気ぶる男の髪をむしりとりました。

なんでもキャピタル・メサイアというサイトの動画を見せてくれ、それが真相のようです。そこにはライフル武装で店にやってきて、リーダーらしき男は女たちを物色し、マユミに目をつけ、連れ去っていく映像が映っていました。

カルト集団で、リーダーに金を借りていて、返せなかったので拉致されたとバーコード男は言い、本物の殺人やレイプ映像を配信している奴らなのだとか。

動画ではマユミは全裸で男を殺す儀式に参加させられています。「キャピタル・メサイアに栄光あれ」…これは確かに危険すぎます。

バーコード男は顔を洗うといって隠していた銃を取り出し、後ろから発砲。銃弾を回避したケンジは、銃口を相手に向けさせ、頭を吹っ飛ばしました。

一方、マユミは捕まった同僚の女性と脱出し、隠れ潜むも、発見されます。マユミはパンツ1枚の状態にされ、野外で磔に。その光景を見ながらリーダーの男は自分の腕に刃物をたて、狂気に酔っていました。

敵の存在はわかりました。あとは殺るのみ。凶器の肉体を唯一の武器に、ケンジは異国の地を闊歩していきます。愛する妹を取り戻すために…。

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本物を映画におさめるのは大変

『ジェイソン・ボーン』や『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』などの昨今のハリウッドのエンタメ系アクション映画は、カット割りを駆使してスピードと派手さを出した、いわばデフォルメされた格闘術です。

一方で、余計な物がない純粋な本物の格闘武術を映画で観る機会はなかなかありません。例えば、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』『トリプルX 再起動』に出演し、素晴らしい体技を披露している“ドニー・イェン”は、実際はもっと素早く動いているのに映画撮影用に遅く演技しているといいます。もっと本物が見たい!という欲求はなかなか満たされません。

その点、『KARATE KILL カラテ・キル』は正統的な武術をじっくり堪能させてもらいました。

無論、殺人カラテなんていうのは架空です。でも、主人公ケンジを演じる“ハヤテ”がその分野のプロなため、ひとつひとつのアクションに言い知れぬ説得力を感じました。部屋でひとり演武をして精神統一を図るシーンは、未知の格闘技を見た新鮮な感覚です

トレーラー内での剣豪との真剣vs手刀バトルも、狭い空間を利用した一進一退の攻防が良かったですし、終盤のパルクールでの逃走シーンも、変にカットを挟まずそのまま見せてくれるので動きの綺麗さがよくわかって見ごたえがあります。

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アメリカっていう狂った国なもんでねぇ

そういうリアルな格闘武術を鑑賞させてくれると同時に、ケレン味ある演出も適度に挟まれ、エンタメとしても楽しいのが嬉しいところ。

まず、アメリカ狂いすぎだろ!と言いたくなるほどの、立ちはだかる悪役たちが魅力的。どの悪役たちも往生際が悪いのがいいですね。そして、どのバトルも最後のオチの付け方がGOODです。髪を気にしすぎるバーコードハゲ男の髪ごと吹き飛ばすとか、眼帯女の場合はもう片方の目をえぐってあげるとか。

加えて、主人公は最強なんですが、それでも律儀に銃を持った相手と戦う術を教えてくれと訓練して学んでいく謙虚さがまた日本っぽいというか。最終的に銃弾を前転で避けられるまでに成長する…。狂った奴らに対して、主人公はとことん誠実。この対比も印象的でした。

もっと欲を言うなら、ポスター絵くらいのケレン味あるパワーアップが見たかったですけど…。

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シスコン最強説

完璧超人ケンジですが、“紗倉まな”演じるマユミのベッタベタな妹演技もあいまって主人公がとんでもないシスコンに見えるのがあれでしたが…。妹の留学のためにバイトを4つも掛け持ちして、1か月連絡が取れないというだけで探しにいくような男ですからね。マユミのメッセージ動画を見つめるケンジは、“紗倉まな”のディープなファンしか見えないけれども。まあ、海外の日本オタクはこれくらい気にならないでしょう。

2020年の東京オリンピックに向けて、日本映画界は空手映画をどんどん作っていってください。

『KARATE KILL カラテ・キル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2016 TORIN, INC.

以上、『KARATE KILL カラテ・キル』の感想でした。

Karate Kill (2016) [Japanese Review] 『KARATE KILL カラテ・キル』考察・評価レビュー