師匠と呼ばせてください…映画『キックボクサー リジェネレーション』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2017年2月4日
監督:ジョン・ストックウェル
きっくぼくさー りじぇねれーしょん
『キックボクサー リジェネレーション』物語 簡単紹介
『キックボクサー リジェネレーション』感想(ネタバレなし)
ジャン!クロード!ヴァン!ダム!
皆さん、カッコいいと思う名前の俳優は誰ですか?(カッコいいと思う“俳優”ではなく“名前”です)
海外の俳優には中二病心をくすぐる響きの名前の人がたくさんいます。そのせいか、演じている役名より本人の名の方が印象に残ることが多い気も。私的には「イーサン・ホーク」や「キーラ・ナイトレイ」とかがカッコよさげなネーミングとして挙げたくなりますね。
そんな「個人的に思うカッコいい名前俳優」のなかでも筆頭なのが、格闘家兼俳優「ジャン=クロード・ヴァン・ダム」。「ジャン=クロード」で「ヴァン・ダム」ですよ!? 名前だけでもカッコいいに決まってる(断言)。ちなみに本名は「ジャン=クロード・カミーユ・フランソワ・ヴァン・ヴァレンバーグ」というそうで、もう本名さえも神々しい。
ちょっと頭の悪そうな文章を書いちゃいましたが、今回、感想をあげる映画『キックボクサー リジェネレーション』はこんなノリで観賞してください。
別に名前だけがカッコいい人ではないのです。一時は本当に大きな話題の人になりました。でもなんだか廃れてしまって…。
1990年代に活躍のピークを迎え、最近はすっかり主演作も少なくなり『エクスペンダブルズ』や『カンフーパンダ』でのゲスト出演くらいしかなくなってしまっていたジャン=クロード・ヴァン・ダム(一応、主演作はあるにはあるけど…)。そんな彼の記念すべき初期主演ヒット作『キックボクサー』(1989年)がリブートされたのが『キックボクサー リジェネレーション』です。
『キックボクサー』は以下のようにシリーズ化されています。
『Kickboxer 2: The Road Back』(1991年)
『Kickboxer 3: The Art of War』(1992年)
『Kickboxer 4: The Aggressor』(1994年)
『Kickboxer 5: The Redemption』(1995年)
そのほとんどがビデオ映画であり、扱い的にはB級格闘映画。私も「1」以外は観ていません。「キックボクサー」と名前だけがついている、他人の空似なのかと…。
一方で本作『キックボクサー リジェネレーション』はリブートなので、過去作を知らずとも問題なし。ただ、リブートといってもメタ的続編ともいえるようなつながりがあって、「1」で師から格闘技を学んでいく主人公を演じたジャン=クロード・ヴァン・ダムが、本作では師として格闘技を教えるという、『ロッキー』から『クリード チャンプを継ぐ男』のようなシルヴェスター・スタローン的役回りになっています。これだけでファンには胸をうつものがあります。
じゃあ、さぞかし活躍しているんだろうな…(純粋な期待の眼差し)。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムなんて知らないという人は、これを機にカッコいいのは名前だけじゃないことをぜひ確認してください。
共演は、“デヴィッド・バウティスタ”、“アラン・ムーシ”、“ジーナ・カラーノ”、“ダレン・シャラーヴィ”、“サラ・マラクル・レイン”などです。“サラ・マラクル・レイン”は『シャークトパス』にでていた女優ですけど、わかる人にしかわからないな…。
なお、『キックボクサー リジェネレーション』は日本では「未体験ゾーンの映画たち2017」での限定公開ですが、「青山シアター」にてオンライン上映も行っているほか、3月初めにはDVD・BDも発売されるので、すぐ観れます。
『キックボクサー リジェネレーション』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):復讐のために
タイ。ひとりの男がこの異国の地にやってきます。ある建物のドアを叩き、「ポー師の弟子になりたい」と頼み込みます。なんとか中に入れてもらうと、腕試しだといきなり対戦を要求されます。相手の格闘に圧倒され、華麗な身のこなしに翻弄され、たじたじ。しかし、しだいに自分の調子を取り戻していき、相手を蹴り飛ばします。
別の相手が登場。そのロン毛の男は余裕そうな表情で、地面にねじふせてきます。
こうしてカート・スローンはここで弟子修業をできるかたちになりました。修行仲間は大勢います。全員が屈強な男たちです。
「宇宙は粒子で構成されている。心を鎮めて集中することで粒子を制御できる力が手に入る」
その力さえあれば堅い岩さえも砕ける。男たちはこのパワーが欲しくて努力をしています。
武器を投入した本格的実践を始める仲間たち。負ければ死にます。師はそんな弱さに目もくれません。
夜、カートは銃を手に、ポー師のもとへ。師は起きて待っていました。「お前の兄は勇敢な戦士だった」と語る師。実はカートは兄であるエリックの復讐のためにここに潜入したのでした。
3カ月前。ヴェニス。エリックはキックボクシングの全米チャンピオンとなり、調子に乗っていました。カートもそんな兄が誇らしいです。ある日、マルシアという女性から「タイに行かないか」と誘われます。そこでルール無用の闇試合が行われており、無敗のムエタイ王者のトン・ポーに勝てば大金と名声が手に入ると言われます。大儲けのチャンス。このカネがあればジムを立派にできます。
カートはあのマルシアというプロモーターらしい女は信用できないと警戒しますが、エリックは「どうせいプロモーターなんて全員悪党だ」と言い放ち、この提案に乗り気です。「ひとりでも行くぞ」とエリックは出発してしまいました。
数日が経過し、エリックから封筒が送られてきます。そこには手紙があり、1週間後に試合があると書かれていました。航空券も封入されており、さっそくタイに向かいます。
その試合会場は熱気に包まれていました。エリックは大柄の相手と闘っています。しかし、やられっぱなしであり、ボロボロになり、血を吐いていました。カートは声援を飛ばしますが、目の前でエリックは首を折られて死んでしまいました。何も躊躇なく、誰も止めることなく…。
そのとき、警察が突入。観客たちは散り散りに逃げます。カートはエリックの亡骸に駆け寄り、悔しさと悲しさを爆発させます。これでは殺人と同じじゃないか…。
黙っていられない。復讐をしなければ…。
ヴァン・ダムの同人誌
『キックボクサー リジェネレーション』は一文で言ってしまえば、「師匠になったジャン=クロード・ヴァン・ダムを愛でるだけの映画」だったなと思います。
格闘技映画として期待すると肩透かしを食らいます。というか、劇中でやってることはキックボクサーやムエタイのような純粋なる格闘技ではなく、ルール無用の殺し合いですから。
そういう意味ではジャン=クロード・ヴァン・ダム演じるデュランドが一体何の師匠なのかさっぱりでしたが、まあ、教える内容よりもジャン=クロード・ヴァン・ダムであることに意義があるんでしょう。鍛錬シーンも、「ジャン=クロード・ヴァン・ダム」好きのためのファンサービス以外の何物でもなかったです。「俺もジャン=クロード・ヴァン・ダムから教わりたい!」なんて思っている人には夢のシチュエーションでした。
そう、本作はファンの妄想です。同人誌です。
だからか、地獄のようなリアルな特訓というよりは、ふわっとした空想の世界みたいになっています。
そのため、デュランドは萌えキャラ化が著しいです。『クリード チャンプを継ぐ男』のシルヴェスター・スタローンもそうでしたけど、人は師匠になるとお茶目になるんですかね。「ココナッツ!ココナッツ!」です。カッコいいというよりは可愛かった…。いや、カッコいいけれども。
デュランド以外だと、トン・ポーを演じたデビッド・バウティスタが良かった。相変わらずのボス感が凄い。倒しがいがあります。
対して、主人公があんまり…。アクションがダメというより、キャラが地味。でも、これは主人公は観客を投影させたいがゆえの無個性なのかもと思ったり。ジャン=クロード・ヴァン・ダム級の主人公を見つけてくるなんて無理でしょうしね。それにしたって個性が薄いのですが…。
このように同人誌的な楽しさがあるのは良いんですが、正直、一流のアクション作品が観たかったな…。最終的なあの決着の仕方は「キックボクサー」というタイトルの映画としていかがなものか…とも思いますし。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムはこれに納得しているのでしょうかね。そもそも映画製作においてどこまで関与しているのだろうか…。そのへんはあまり気にしない人なのか。確かに気にしている雰囲気はこれまでもあまり感じなかったのですけど…。
早くも続編の『Kickboxer Retaliation』が2017年に公開されることが決定済み。この同人誌シリーズは続けるべきなのか、微妙な気持ちです。
それよりも、ジャン=クロード・ヴァン・ダムがCIAの潜水艦に監禁された潜入捜査官を演じ、同じく格闘家俳優であるドルフ・ラングレンと共演する『Black Water』(2018年)の方が楽しみです。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 42% Audience 43%
IMDb
4.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★
作品ポスター・画像 (C)2015 by ACME Kick LLC All Rights Reserved キック・ボクサー
以上、『キックボクサー リジェネレーション』の感想でした。
Kickboxer: Vengeance (2016) [Japanese Review] 『キックボクサー リジェネレーション』考察・評価レビュー