レゴの意外な強敵あらわる…映画『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年9月30日
監督:チャーリー・ビーン
れご にんじゃごー ざむーびー
『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』物語 簡単紹介
『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』感想(ネタバレなし)
第3作も勢いに乗れるか!?
「レゴ映画シリーズ」が勢いに乗っています。
『LEGO ムービー』(2014年)は単なる玩具映画だと思っていた世界の批評家や観客の度肝を抜き、続く『レゴバットマン ザ・ムービー』でも不調が続いていたDC実写映画を嘲笑うかのような気持ちの良い物語を見せて再び高評価を獲得したことで、「レゴ映画シリーズ」は大成功軌道に入ったと言っていいのかもしれません。
この「レゴ映画シリーズ」の生みの親こそ、最近、スター・ウォーズのスピンオフ『ハンソロ』から創造性の違いを理由に監督を降りたばかりの“フィル・ロード”&”クリストファー・ミラー”。
彼らが生み出した「レゴ映画シリーズ」、よく考えるとただの人気シリーズ以上のとんでもない発明だったように思います。そもそもこの一連の作品は“シリーズ”と呼ぶには従来のシリーズとは全く異なる特徴があります。それは「LEGO」という題材を盾にメタ的展開さえも何でも許される“ハチャメチャ”さ。メタ的描写が満載の映画といえば第4の壁を超える『デッドプール』がありますけど、あちらはあれでも「マーベルコミック」という元の世界観からは外れないようになっています。でも「レゴ映画シリーズ」は本当に何でもあり。他社の作品であろうがお構いなしだし、根本的に作り物の世界なので世界観設定さえもいくらでも作り放題。超自由展開です。
これはもう今の映画界で流行りの「ユニバース」よりもさらに先を行っているのじゃないでしょうか。幸いというかなんというかこれは「LEGO」にしかできないので他でマネが乱発することはないのが良かったかな…。ちょっと反則技ですからね…。
そんな「レゴ映画シリーズ」の第3作となる映画が本作『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』です。
監督はこれが長編映画監督デビュー作となる“チャーリー・ビーン”。
本作の原作「レゴ ニンジャゴー」は忍者を題材にしたレゴ玩具で、すでにTVアニメーションがシーズン7まで作られています。つまり世界観がカッチリできている作品で、知っている人はよく知っているし、一定のファン層もできています。
ところが私はTVアニメ「レゴ ニンジャゴー」を一切見たことがない…なので「本作を楽しめるのか?」とやや不安だったのですが、心配無用でした。
「レゴ映画シリーズ」過去2作と同様の“ハチャメチャ”は相変わらず、知識ゼロでなんとなく観ているだけでも楽しい一作です。
あとオリジナルでは声優で“ジャッキー・チェン”が参加しているのですが、あんまり書くとネタバレになるので言えませんが、予想以上に「ジャッキー・チェン映画」になっています。彼のファンはぜひ一見の価値あり。
さらに猫好きは必見ですね。なぜ? それは観ればわかります。
『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):パワーがある!
とある店。そこには不思議な品々がたくさん置いてありました。
その店にふらっと入ってきた少年は、やたらと身のこなしが軽い店主と出会い、自分は友達に馬鹿にされると愚痴を言います。少年はレゴの人形を見せます。「ファイターのようだな」と店主は虫眼鏡で分析しますが、少年は「ただの子どもだよ」と素直に口にします。
「そう見えても実はすごいことができる」
そういうと普通の人形がカッコいい見た目に一瞬で変わりました。そして店主は師匠の人形を見せて、ニンジャゴーの伝説を語りだします。
ニンジャゴーシティではガーマドンが大暴れして悪さをしており、そんなガーマドンを常に監視する「Good Moring NINJAGO」という番組が人気でした。今日の攻撃確率は95%。でもニンジャ軍団が倒してくれるので安心。
ファイヤー・ニンジャ、アース・ニンジャ、アイス・ニンジャ、ライトニング・ニンジャ、ウォーター・ニンジャ、グリーン・ニンジャ。正体は不明です。
そんなニンジャ軍団は大人気でしたが、ブラックガーマドンの息子ロイドを見る世間の目は厳しいものでした。父も息子に興味なさそうです。誕生日なのに…。
ロイドは学校に行きますが、みんなに今日も露骨に嫌われます。どことなくロボットっぽいゼン、熱血なハグをしてくるカイ、バイクを乗りこなすニャーは親しく話しかけてくれます。
ある日、街にガーマドンが攻めてきます。このままではニンジャゴーシティは征服されてしまいます。学校でも警報が鳴り、ロイドたちはロッカールームで地下の秘密基地に。
実はこの6人がニンジャゴー軍団の正体でした。ロイドはグリーン・ニンジャです。
一斉出動して街を襲う敵を一掃していきます。ロイドはスクールバスを救い、喝采を浴びます。そして自分の父の前に向かい、「なぜ攻撃するんだ」と聞きます。父は相変わらずの息子無視の最低な奴でした。
ブチ切れたロイドは全力の攻撃をぶちかまします。シールドで助かったガーマドンは爆弾を投げ、それをキャッチできないグリーン・ニンジャを笑います。父とキャッチボールなんてしたことがないロイドは「僕の人生から失せろ!」と個人的なことを叫んでしまいます。
逃げたガーマドンは本拠地に帰ります。配下の将軍たちを怒鳴りつけ、気に入らない発言をした将軍をどんどんとクビにします。いいアイデアはないのか…。
一方、ニンジャゴー軍団の前にウー先生が現れ、「お前たちはニンジャゴーではない」とエレメント・パワーを使えるようになるべきだと語ります。
ロイドのパワーは…グリーン。ん? グリーンってなに?
ネコ映画だった
今年公開された映画『パワーレンジャー』を観たときの感想で、作品の特徴である“巨大メカ”大暴れが乏しく、やや退屈だなぁなんて思ったのですが、まさか本作『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』でその要素を思う存分体験できるとは思わなかった…。
序盤から主人公組がメカを乗り回し派手なアクションを連発。痛快な映像を見せてくれます。
このメカに立ちはだかる敵は…なんと猫。本作が「ネコ映画」だったとは…。猫は、本作でも製作に回っている“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”の作品(『くもりときどきミートボール』『LEGO ムービー』)には毎度のように登場しており、フリー素材化していたのですけど、本作ではついにリアル猫が登場。ガーマドンの手にするレーザービーム(本物)につられて、レゴの街にリアル猫が乱入、レーザーの光点を追いかけわしつつ街々を破壊していく光景は実にアホらしくて楽しいです。
しかも、単なる一発ネタではなく、終盤までずっと猫が出ずっぱりとは。空気を読む猫でした…。
このゴチャゴチャしたアクションと、アホなギャグの乱れ撃ちが実にレゴらしいです。
ジャッキー・チェン映画だった
それにしても前述しましたが本作『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』は紛れもなく「ジャッキー・チェン映画」でした。
映画冒頭から「あれっ」となる展開でしたけど、“ジャッキー・チェン”で始まり“ジャッキー・チェン”で終わってました。でも“ジャッキー・チェン”と「レゴ映画シリーズ」、なんか気が合ってますよね。無邪気な感じがとくに。
ストーリーは父子の絆を描くベタなもの。まあ、王道ながらしっかり描けていたと思いました。あれはダメな父親すぎるけど…。
父と息子の和解が猫の腹の中にいる父に向けた対話で繰り広げられる映画なんて、この作品くらいかもしれない…。
それでも過去の「レゴ映画シリーズ」2作と比較すると、マンネリは言い過ぎかもしれませんが、ストーリー面の新しさは不足してきましたね。映像は愉快で楽しいのですけど、「レゴ映画シリーズ」も次は正念場かな?
忍者映画ではなかった…
ただ、ひとつ残念に思ったのは、本作『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』というか原作自体なんですけど、忍者映画ではないんですね…。
本作のわかりやすい忍者要素は主人公組の恰好くらいで、あとの舞台はもろに中国だし、アクションも完全に少林拳や太極拳といった中国武術。『カンフー・パンダ』と全く同じじゃないですか。本作を観て中国人とかどう思うのだろう…。
こういう日本の文化と中国の文化をごちゃまぜにするのって、やはりこの東アジアは植民地支配の歴史がある以上、もっと描写には気を使わないといけないはずだけど…。
欧米人は日本も中国も韓国も同じアジアとして大して区別していないのがあらためてよくわかり、やや心が痛む…。多様性だ何だと叫ぶ欧米の方々も、いつになったらアジア人の文化の区別をつけるようになるのだろうか。その日が来ることを期待しています。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 56% Audience 46%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
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以上、『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』の感想でした。
The Lego Ninjago Movie (2017) [Japanese Review] 『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』考察・評価レビュー