ヴィン・ディーゼルは映画とバカで世界を繋ぐ…映画『トリプルX 再起動』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年2月24日
監督:D・J・カルーソ
性描写
とりぷるえっくすさいきどう
『トリプルX 再起動』物語 簡単紹介
『トリプルX 再起動』感想(ネタバレなし)
俺が稼いで俺が作る
ナイスハゲ俳優のひとり“ヴィン・ディーゼル”は俳優業だけでなく、ゲーム製作などマルチな才能を持っている器用な男ですが、自分の映画製作会社も持っています。その名も「One Race Films」。
1995年に“ヴィン・ディーゼル”によって創立したこの会社は、これまで“ヴィン・ディーゼル”主演の数多くの映画に携わってきました。初期の頃は、“ヴィン・ディーゼル”が監督した短編作品『Multi-Facial』(1995年)や長編映画『ストレイ・ドッグ』(1997年)といったあくまで個人的な映画製作会社という感じでしたが、『ワイルド・スピード』シリーズのヒットによって急成長(『ワイルド・スピード』シリーズには4作目から関わっているようです)。今では個人の映画製作会社と侮れない存在感を発揮しています。
「One Race Films」の主要な稼ぎ手はもちろん『ワイルド・スピード』シリーズ。今年も『ワイルド・スピード ICE BREAK』がアホみたいに世界で爆発的に超特大ヒットしたのが記憶に新しいです。
“自分で稼いで自分で作る”…これが個人映画製作会社の最大の強み。当然、それだけ稼げば、これまで日の目を浴びていなかった他の作品も作れる余裕が生まれるわけで。
そして、製作されたのが本作『トリプルX 再起動』。1作目『トリプルX』(2002年)と2作目『トリプルX ネクスト・レベル』(2005年)から実に12年ぶりとなる3作目です。とくに2作目の評価が低かったので普通なら続編は作られないのですが、そこを強引に推し進められたのは「One Race Films」の資金力があるからこそ。
あとは企画としては『ワイルド・スピード』アプローチを流用すればヒットするだろうという算段もあったのでしょう。結果、本作は『ワイルド・スピード』シリーズとすごく似た作風になっていて、兄弟作品といっても過言ではないくらいです。
違いと言えば、本作は『ワイルド・スピード』から“車”要素を無くした豪快なチーム・ミッションものという内容。一応、エクストリームスポーツ(Xスポーツ)の要素があるにはあるのですが、そんなに重要な縛りではない。要するに、好き勝手にやりたい放題なんですね。
アクションはシリーズ一番にキレがあるのでそこは期待をしてください。なにせ“ドニー・イェン”や“トニー・ジャー”といった一流のアクション俳優を加入させているのですよ、今作は。なんだそこだけ本気モード出しているんだ…たぶん“ヴィン・ディーゼル”が彼らの出演作を見てすっかり気に入ったから仲間入りにさせたんだろうなという気がしかしない。
ただでさえバカ映画だ脳筋映画だとネタにされる『ワイルド・スピード』シリーズから、さらに歯止めをなくしたらどうなるか。もうハチャメチャなのは言うまでもない。個人的にはこういうクレイジー度合いを増量させていく方向に吹っ切れた続編は嫌いじゃないです。
“ヴィン・ディーゼル”が楽しめればよいのです。一緒にバカ騒ぎしましょう。
『トリプルX 再起動』を観る前のQ&A
A:前作は『トリプルX ネクスト・レベル』ですが、そこまで無理をして観る必要性もありません。一応は過去作との繋がりはありますが、それほどでもないです。
『トリプルX 再起動』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):またなのか!?
「トリプルX」の創始者であるオーガスタス・ギボンズは中華料理店でトークに花を咲かせていました。お相手は天才サッカー選手のネイマールJrです。テロとの戦いの重要性、だからこその「トリプルX」なのだと力説。「トリプルX」とは、秘密のエージェントで構成される特殊な組織です。まあ、ネイマールJrは興味ないようですが…。
しかし、強盗をひと蹴りで倒したその腕に惚れ込み、さっそく勧誘しようとした瞬間、宇宙から墜落した人工衛星の一部が近くの建物に落下。炎が2人を巻き込み…。
一方、ニューヨークのCIA本部。謎の男女が建物に侵入します。
何も知らない会議室では、衛星を落としてギボンズを殺した装置「パンドラの箱」について説明がされていました。衛星の最後の通信元はマイアミ。これさえあれば戦術ミサイルのように衛星を落とせるので、万能の平気です。敵の手に渡れば危険なのは言うまでもありません。
そこに窓ガラスをぶち破って侵入した男がひとり。圧倒的な体技で集団を全滅させます。仲間と合流した男はそのまま退散。
あっさり重要な装置を盗まれた本部では、こちらも有能なエージェントが必要だという結論に達します。ギボンズのエージェントが今こそ…。
その頃、ザンダー・ケイジは相変わらず危険すぎるエクストリームスポーツのスリルを楽しんでいました。電波を開通させ、地元住民はワールドカップをテレビで見れるようになって大喜び。
ドミニカ共和国が今のザンダー・ケイジの居場所ですが、世界中を転々としていました。ベンチに座っていると男性が話しかけてきて、意味深なことを呟き、立ち去ります。足元にはバックだけが残されています。慎重に開けると中身は爆弾でした。
すぐに武装部隊が駆け付け、ザンダー・ケイジは「またか」という態度で圧倒します。ギボンズの仕業だろうと思っていましたが、登場したのは女性。CIAのジェーン・マルケです。そして事情を話します。
ゴーストのような謎の集団が今回の敵です。ザンダー・ケイジは愛国者なんて興味ないですが、「トリプルX」という肩書は捨てきれません。まずは会うべき相手がいます。
天才ハッカーのエインズレーから情報を聞き出し、チーム・ゴーストの居場所を絞ります。フィリピンにいるようです。ハイテクの貨物飛行機で任務開始。そこにはザンダー・ケイジの大ファンでオタクトークが止まらないベッキー・クリアリッジがいました。これで武器も揃います。
フィリピンのビーチではゴーストたちがくつろいでいました。セレーナ・アンガーはジャンに計画とは違うのではないかと不満を言います。ジャンは世界を敵に回してもいいと言い切ります。
この勝負、勝つのはどっちなのか。
バカで、グローバル
“ヴィン・ディーゼル”が楽しめればよいとか、バカ映画とか色々と作品を下に見ているかのような書き方をしましたが、ごめんなさい。本作『トリプルX 再起動』は世界の映画業界においても先進的な試みをしている素晴らしい映画だと断言しておきたい。たぶん本作の感想を書いている他のサイトではバカ映画部分ばかりに言及していると思うので、今回はあえて真面目に書きますね。
本作が先進的な理由。それは出演する俳優陣がとにかく国際色豊かだということ。
ザンダー・ケイジ率いる主人公チームのキャストに注目すると、“ドニー・イェン”と“クリス・ウー”は中国、“トニー・ジャー”はタイ、“ディーピカー・パードゥコーン”はデンマーク出身のインド国籍、“ルビー・ローズ”はオーストラリア、“ニーナ・ドブレフ”はブルガリア、“ロリー・マッキャン”はイギリス…と、もうオリンピック状態。『ワイルド・スピード』シリーズはアジア系にフレンドリーなのが売りでしたが、本作はそれ以上です。
逆に敵役がアメリカ人の俳優だったりします。
加えて、終盤ここぞというときに助けてくれるのが、2作目の主人公で、演じるのは“アイス・キューブ”。これはもちろん黒人です。
まあ、“ネイマール”を出演させる必要があったのかはいささか疑問ですが…。
これは通常の既存のハリウッドの常識では考えられないことです。それなりにビッグバジェットの大作で、ここまでアメリカ(とくに白人)に気を使ってない作品は珍しいでしょう。最近も大作映画が「ホワイト・ウォッシュ」だなんだと騒がれるのに。
しかも、ヒットしているのですから凄い。確かにアメリカでの批評や興収は低いです。でも、8500万ドルの予算に対して、世界で3億4600万ドルの興収を叩きだしています。
もうこれは完全にアメリカ市場なんて眼中にない、「俺たちは世界の人のために映画を作ってるよ」という“ヴィン・ディーゼル”のワールドクラスな姿勢の表れだと思います。反トランプのメッセージを掲げたりしてはいるものの、今のアメリカ映画界はまだまだ保守的です。著名な白人俳優を揃えないと、大作の企画が通らないですから。そんななかで本作は光るものがあると私は感じました。
さらに、ここが一番凄いと思うのですが、それでいてバカ映画であることには変わりないという点がとても良いんじゃないでしょうか。優等生気取りは一切してない。むしろ「赤信号で止まると石油会社が儲かる」とか「グー、チョキ、パーよりグレネードだろ?」とか「デカイくそは2回流せ」とか、アホ丸出し。バカで、グローバルなんですよね。
“ヴィン・ディーゼル”の「バカ・グローバル」方針、私は支持したいです。これに続け、ハリウッド!(いや、皆が皆バカになったら困るけれど…)
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 46% Audience 37%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
作品ポスター・画像 (C)2016 Paramount Pictures and Revolution Studios. All Rights Reserved.
以上、『トリプルX 再起動』の感想でした。
xXx: Return of Xander Cage (2017) [Japanese Review] 『トリプルX 再起動』考察・評価レビュー