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『キングのメッセージ』感想(ネタバレ)…主演はブラックパンサーのあの人

キングのメッセージ

主演はブラックパンサーのあの人…映画『キングのメッセージ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Message from the King
製作国:アメリカ・イギリス・フランス・ベルギー(2017年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
キングのメッセージ

きんぐのめっせーじ
キングのメッセージ

『キングのメッセージ』物語 簡単紹介

音信が途絶えた妹の身を案じ、ケープタウンからロサンゼルスへやってきたジェイコブ。手がかりは乏しく、わずかな糸口を頼るしかない。妹と知り合いだというトリシュに出会い、自分では全く知らなかった妹のここでの姿を知る。妹は確かにここで生きていた。そしてその人生を汚した存在がどこかにいる。大都会の闇に消えた妹の足取りを探していくうちに、裏社会に巣くう悪と暴力の世界に足を踏み入れる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『キングのメッセージ』の感想です。

『キングのメッセージ』感想(ネタバレなし)

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邦題も中身もシンプルだけど

海外映画の邦題は、ときに素晴らしいセンスを発揮して称賛されたり、はたまた内容とは違うネーミングに映画ファンが激怒したりと、なにかと論争の的になります。

そんななかでもベルギーの“ファブリス・ドゥ・ヴェルツ”監督作品の邦題センスはかなり異色なほうではないでしょうか。

2004年の『変態村』(原題は『Calvaire』)

2008年の『変態島』(原題は『Vinyan)

2014年の『地獄愛』(原題は『Alleluia』)

もう“キャッチーさ”だけで言えばピカイチです。「変態」と聞いたらどんな映画なんだと妄想膨らみますが、まあ、あんまり「変態」要素は…期待すると、アレレとなるかもですが…。

その“ファブリス・ドゥ・ヴェルツ”監督の最新作がNetflixで配信されました。

その気になる邦題は…『キングのメッセージ』

普通だ…すっごく普通だ…。原題の『Message from the King』をそのまま直訳という、全く遊び心のない生真面目さで仕事するNetflix。別に良いのですが、なんだろう、これはこれで物足りない気がする(めんどくさい意見)。

本作の内容は割とシンプルなリベンジ・スリラー。特筆すべきは、主演でしょう。『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』で登場したアフリカ・ワカンダ国の王でもある異色ヒーロー「ブラックパンサー」役に大抜擢された“チャドウィック・ボーズマン”が本作の主人公を演じています。カッコいいアクションも披露するので、「ブラックパンサー」で彼に注目した人は、ぜひ本作も観てみると良いと思います。

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『キングのメッセージ』を観る前のQ&A

Q:『キングのメッセージ』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2017年8月4日から配信中です。
日本語吹き替え あり
飯島肇(ジェイコブ・キング)/ 佐古真弓(ケリー)/ てらそままさき(ウェントワース)/ 石住昭彦(マイク)/ 小若和郁那(ビアンカ)/ 村井雄治(フランキー)/ 冨樫かずみ(トリッシュ) ほか
参照:本編クレジット
↓ここからネタバレが含まれます↓

『キングのメッセージ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):男の目的はひとつ

「ジェイコブ兄さん、追われているの、助けて…」

それは愛する妹・ビアンカからのメッセージ。途方に暮れている悲痛な声は、どう考えてもヤバい状況にあることが推察できます。

「キングさん、ロサンゼルスに滞在する期間は?」「1週間。5日の便でケープタウンに帰る」「滞在先の住所が空欄ですが」「決まっていない」「ロサンゼルスに友人や家族がいるんですか」「ホテルを探す」「たった600ドルしか持っていないのに?」「何とかする」「休暇をそんなふうに過ごすんですか?」「稼ぎが少ない」「職業はタクシー運転手だとか」「そうだ」「不法滞在して働くつもりでは?」「そんなことしない」

こんなやりとりのすえ、やっと空港から出られた男、ジャイコブ・キング。目的は言いませんでしたが、それは明解でした。妹探しです。

バスに乗りつぎ、どこかへ向かいます。モーテルに到着。1泊65ドルを前払いし、宿主は娼婦や同性愛者はお断りで、パーティーもドラッグも禁止だと釘を刺します。

202号室。部屋に入るとすぐに外に出て別の場所へ。ある建物のドアを叩きます。

「ビアンカ?」

返事なしです。そこにちょうど女性がやってきて、「人を探していて…妹です。ビアンカ」と説明すると、そのトリシュという女性は自分を写真で見たらしく、親切にしてくれます。なんでもしばらく話していないらしく、突然いなくなったとか。

アルマンドという男と2人で…と説明を加えます。夫のアレックスはもっと前に出ていったそうで、アルマンドは子ども。「ビアンカに子ども?」と驚くジェイコブ。アレックスの子どもなのだそうです。

アレックスには金銭トラブルがあったみたいだと室内で教えてもらっていると、そこにビルという男は入ってきて、氷がないと怒鳴り散らします。ビアンカから預かっていたという紙袋を渡してくれて、今夜パーティーするからよかったら来てと誘ってくれました。

「家賃の支払いの大家は?」「ラズロ夫人よ」

そのラザロ夫人は家賃を払わないから出て行ってくれてよかったと話します。追い出したのはジーコという髪をオールバックにした地中海人の悪そうな奴だとか。家賃の滞納金はその男の小切手で清算したらしいです。「ビアンカは住み始めたときは奇麗で、でも出ていくときは別人だった。暴力とクスリのせいで」

「ジーコはどこで会える?」

プロスペクト通りの洗車場に足を運んだジェイコブ。たむろしている男たちのもとに行き、「ジーコに会いたい」と言いますが、「そんな奴はいない」と言われ、「ビアンカという妹を探している」と言うと向こうに変な空気が漂います。「力になれない」と突っ返されるだけ。

部屋に戻り、例の紙袋の中身を確認。ビアンカの写真、それにアルマンドらしき白人少年の写真も。ノートにはウェントワース医師という名前が。ヤング・トゥ韓国市場という名前もあったので、そこに行ってみます。

「この女性を知っていますか?」

男性が答えてくれます。男の子は覚えている、と。そして死体安置所には行ってみたかと言われます。

さっそく行くと、ずらっと死体が並ぶ部屋。該当しそうな遺体を見せてもらいます。ごみ置き場で発見されたアフリカ系女性遺体、死因は向精神薬の過剰摂取。「違う」

次は盗難車で発見された、頭部を鈍器で殴られ死亡した遺体。腕にタトゥー。ギャングの仕業だとかで、顔は無残なことに。ジェイコブの目が一瞬動揺。「…違う」

ジェイコブは動揺を完全に押しこらえてその場を離れますが、少し歩くと悲しみが全身に襲いかかり、涙を流して頭を抱えるしかありませんでした。

部屋に戻っても妹の酷い姿が目にこびりついています。あきらかに拷問です。もう妹探しをしなくていい、次です。

金物店に入り、チェーンを購入。ジーコの集団のもとを訪れます。今度は穏やかに話すつもりはありません。一切の容赦なくこちらの目的を果たすのみ。男たちをボコボコにぶちのめし、「誰に頼まれて妹を殺した?」と問い詰めます。

「雇い主に伝えろ、これはキングからのメッセージだ」

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この男は何かが違う

『キングのメッセージ』は説明的なシーンがほとんどなく進行するので、「どういうことなんだろう」と興味の持続が続き、物語のサスペンスに引き込まれやすいつくり。これは“ファブリス・ドゥ・ヴェルツ”監督作品の特徴でもあります。しかし、過去作だと、その舞台が謎の異国の世界だったりしたので、「どういうことなんだろう」というよりは「意味不明な戸惑い」の方が強かったりしたのですが、今回はアメリカの普通の街ですから、わかりやすかったですね。

連絡の取れない妹・ビアンカの身を案じて、はるばる南アフリカのケープタウンからアメリカのロサンゼルスへ単身やってきた男・ジェイコブ。この時点で彼の正体は全く不明。悪者どもをチェーンのようなアイテムでバッサバッサと倒したり、後半は爆弾を製作したりと、どう考えてもただものじゃないのですが、よくわからない。また、妹探しに来たことはすぐ判明しますが、妹との間に何か事情があることを匂わせつつも、これもよくわからない。本当の正体はラストにわかります。

本作で一番輝いていたのはやはりこの謎の男・ジェイコブを演じた“チャドウィック・ボーズマン”。これぞ熱演。比較的無口なキャラということもあり、演技力がいかんなく滲み出ていました。とくに序盤で妹探しのために訪れた死体安置所でとある遺体を目にするシーン。この場面ではセリフと事実が逆転しているという大変難しい演技力を要求されるところですが、“チャドウィック・ボーズマン”の見事な表情演技でした。アクションも迫力があって、やっぱりアメコミ映画に抜擢される男は違うなぁ…。

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歯は雄弁だ

対する悪役側である面々。『キングのメッセージ』には何人かいますが、悪のブレインという位置づけともいえる歯医者ウェントワースがいいキャラでした。演じるのは、実写『美女と野獣』で二枚目悪役を好演した“ルーク・エヴァンズ”。ほんとこういう役が似合うなぁ。「歯は雄弁だ」と語るウェントワースの、ジェイコブの歯を診ただけでただものじゃないことを悟るという見識力は、ギャグなのか!?と困惑でしたが、でも面白いので良し。ただ、退場があっさりだったのが残念。もっと知能戦を見たかった…。

本作はこのウェントワース以外にも、結構あっさり片付く展開が多くて、そこは気になるところ。巻き込まれてしまった売春婦ケリーとその娘の一件は、良い話風に収まってましたが、あれで良かったのかな。終盤も急ぎすぎかなとの印象も受けました。

細かい部分だと、妹の残したメモリーカードを発見したジェイコブが、韓国市場の男の元に行き、パスワードがかかっていると判明する場面。その場で対処して、謎の%バーとともにあっさり音声だけ聞けたのは、さすがにあっさりすぎでは…。

そういう気になる欠点は多々ありますが、個人的にはジェイコブのキャラが魅力的でプラスマイナスゼロでしょうか。ラスト、ケープタウンに戻ったジェイコブは、刑事だということが判明。しかも、仲間からの歓迎ぶりからそれなりのキャリアがある人っぽい。

このジェイコブの本場、南アフリカでの刑事ドラマが見たい…

『キングのメッセージ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 33% Audience 51%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 ©Netflix メッセージ・フロム・ザ・キング

以上、『キングのメッセージ』の感想でした。

Message from the King (2017) [Japanese Review] 『キングのメッセージ』考察・評価レビュー