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『ライダーズ・オブ・ジャスティス』感想(ネタバレ)…試されるマッツ・ミケルセン(復讐)

ライダーズ・オブ・ジャスティス

マッツ・ミケルセンは復讐に飲まれる…映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Retfaerdighedens ryttere(Riders of Justice)
製作国:デンマーク・スウェーデン・フィランド(2020年)
日本公開日:2022年1月21日
監督:アナス・トマス・イェンセン

ライダーズ・オブ・ジャスティス

らいだーずおぶじゃすてぃす
ライダーズ・オブ・ジャスティス

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』あらすじ

アフガニスタンでの任務に就いていた軍人のマークスは、列車事故による妻の死という報せを受ける。悲しみに暮れる娘の元に帰国するも、その心の傷は癒えない。そんなマークスのもとに数学者のオットーが訪ねてくる。妻と同じ列車に乗っていたというオットーは、事故は「ライダーズ・オブ・ジャスティス」という犯罪組織が、殺人事件の重要証人を暗殺するために計画された巧妙な事件だと説明。マークスの心はざわつく。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』感想(ネタバレなし)

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マッツ・ミケルセンのクリスマス映画です

私は好きな俳優を露骨にゴリ推ししないように自分なりに抑えているのですが、それでも好きなものはしょうがない。溢れ出るファン愛がたまに突然の歴史的な海底火山大噴火のごとくドカン!と爆発するときだってあります。

例えば、“マッツ・ミケルセン”の出ている映画をその年の私の映画ベスト10にランクインさせてしまったり…。うん、『アナザーラウンド』、良い映画だったもんね…。“マッツ・ミケルセン”が主演じゃなくても良作だったと思うしね…。いや、でも“マッツ・ミケルセン”を一滴加えているから酔えるのも事実だし…。ああ、困った人だ、“マッツ・ミケルセン”…。

そして2022年も早々と“マッツ・ミケルセン”警報が発令。なんだ、これも気候変動が原因なんですか?

それが本作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』です。

といっても本作『ライダーズ・オブ・ジャスティス』は2020年に本国デンマークで公開された映画です。つまり、『アナザーラウンド』と同じ年に公開だったわけで…。デンマークのアカデミー賞とも言われる「ロバート賞」ではその年の主演男優賞にノミネートされたのは『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の“マッツ・ミケルセン”と『アナザーラウンド』の“マッツ・ミケルセン”。“マッツ・ミケルセン”と“マッツ・ミケルセン”が競い合うという、ここはマルチバースなのか?というシチュエーションが発生し、結果は『アナザーラウンド』の“マッツ・ミケルセン”が勝ったのですけど、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の“マッツ・ミケルセン”も惜しかったですよ。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の“マッツ・ミケルセン”はどう魅力的なのか。今作では軍人の役ですが、妻に不幸があり、帰国。娘とも上手くコミュニケーションができず、悲しみと怒りに苛まれる中、妻の死の裏には悪者がいるという情報を耳にし、この“マッツ・ミケルセン”、復讐に立ち上がってしまうのです。ええ、今回の“マッツ・ミケルセン”はバイオレンスです。狂気に染まっている“マッツ・ミケルセン”もほんといい…(恍惚)。

こんなあらすじを聞くと、よくあるリベンジものに思えるでしょうけど、変化球になっていきます。これは日本では全然宣伝されていないですし、公開時期がそもそも場違いなのですが、実は『ライダーズ・オブ・ジャスティス』はクリスマス映画なのです(本国では11月中旬に公開)。物語も外面からはわからないですが、しっかりクリスマスらしいテーマが現れてきます。“マッツ・ミケルセン”のクリスマス映画なんて…最高すぎる…。

監督は、デンマークで最も有名な脚本家であり、『ある公爵夫人の生涯』(2008年)、『未来を生きる君たちへ』(2010年)、『真夜中のゆりかご』(2014年)、『悪党に粛清を』(2015年)、『ある人質 生還までの398日』(2019年)などを手がけ、『ダークタワー』(2017年)ではハリウッドでも仕事をした“アナス・トマス・イェンセン”(アナス・トーマス・イェンセン)。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』は長編監督5作目で、『ブレイカウェイ』(2000年)、『フレッシュ・デリ』(2003年)、『アダムズ・アップル』(2005年)、『メン&チキン』(2015年)に続いた一作ですが、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』で監督キャリアも一気に頂点ですね。

共演は、『チャイルド44 森に消えた子供たち』『真夜中のゆりかご』の“ニコライ・リー・コース”、『博士と狂人』の“ラース・ブリグマン”、『特捜部Q カルテ番号64』の“ニコラス・ブロ”、『ある人質 生還までの398日』の“アンドレア・ハイク・ガデベルグ”、『罪と女王』の“グスタフ・リンド”、『ブラッド・レッド・スカイ』の“ローラン・ムラ”、『きっと、いい日が待っている』の“アルバト・ルズベク・リンハート”など。

“マッツ・ミケルセン”のファンは絶対に観るでしょうから今さら言うこともないのですけど、ヘンテコなクリスマス映画を観たい人にもオススメです。遅れてきたクリスマス・プレゼントですから。

オススメ度のチェック

ひとり4.5:俳優ファンは鑑賞リストに
友人3.5:俳優ファン同士で
恋人3.5:ロマンス要素はほぼ無し
キッズ3.0:暴力描写が複数あり
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『ライダーズ・オブ・ジャスティス』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):事故じゃない

エストニアの首都タリン。白いひげの年老いた祭司が少女にクリスマスプレゼントに欲しいものについての話をします。赤い自転車がいいかと語ると、少女は「赤いのは嫌、青がいい」と要望。

またある日、電柱に駐輪されていた青い自転車を、チェーンを切って持ち去る白いバンが1台…。

別の場所。ここはアフガニスタンです。軍事基地にて険しい顔のマークス・ハンセンは電話をかけます。相手は妻のエマ。電話に出たエマは、娘のマチルデが駅で自転車を盗まれたといった近況を話し、今は車に乗るも動かないそうです。マークスはずっと任務ゆえに家族をおろそかにしており、マチルデの顔は暗いまま。家族の時間を作りたいのですが…。電話は終わり、しょうがないのでエマとマチルデ駅まで歩いて行くことにします。

一方、オットー・ホフマンレナート・ガーナー・ニルセンは皆の前でプレゼンをしていました。自分たちが開発した最新のアルゴリズムの利点を熱弁しますが、反応は薄いです。結局はお払い箱となり、荷物を片付け、箱を両手に抱えて職場を後にするオットー。

電車に乗り、オットーは椅子にぐったり座って意気消沈。そのとき、なんとなく乗車している人たちが気になります。いかつい男、それにジュースとサンドイッチをそのまま食べずにゴミ箱に捨てる男も…。

そのとき、エマとマチルデも乗車してきました。オットーの目の前に立つので席を譲り、エマが座ることに

すると急に電車は激しく揺れ、車体の側面がえぐりとられ…

気が付くと酷い状況の電車の残骸の中、オットーが先ほどまで座っていてエマに譲った席はぐしゃぐしゃになっていました。母を呼びかける声が聞こえ…。

オットーは病院にいました。自分は平気です。しかし、別室には母を失って茫然と座るマチルデの姿が…。自分が席を譲らなければ、あの子は絶望せずに済んだのに…。

マークスのもとにも上司から悲しい知らせが伝えられます。マークスは帰国し、マチルデを抱きます。葬儀では、泣く娘の隣で佇むしかできないマークス。

オットーは家に帰り、テレビでニュースを見ます。そこに映る男。「イーグル」と呼ばれるそいつは、「ライダーズ・オブ・ジャスティス」というギャングに関する重要な証人らしいですが、そう言えばあの事故の電車で見覚えがある…。証人の死亡もあり、組織のボスのカート・“タンデム”・オーレセンは有罪にならなかったようです。

オットーは警察に行き、これは事故ではなく証人を殺すための計画的な殺人だと自分の考えを語りますが、警察は全く相手にしてくれません。レナートにも話すも自分たちだけではどうにもできないことでした。

オットーとレナートはマークスを訊ねます。あれは事故じゃないと説明。さらに顔認証のプロフェッショナルであるウルフ・エメンタールを引き連れ、3人でマークスのもとに再度訪問。

独自の調査で怪しい自分を割り出し、所在を突き止めます。そしてその自分の家に4人で行くのですが、銃を突きつけられ、追い返されます。ところが感情的になってしまったマークスがなんとその人物を殺害してしまい、状況は深刻化。

こんな野蛮な復讐がしたいわけではなかったのに…。しかし、憎しみに火がついたマークスは暴走していき…。

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男たちが集まるとやっぱり…

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』、序盤は本当にリベンジもののサスペンスアクションです。あまりにも凄惨な電車事故。それが意図的な事件だとしたら…。もともと軍人ということで、異様に強すぎるマークスはひとたびスイッチが入るとバイオレンス・モードが止まりません。

ユニークなのはそんなマークスをそそのかしてしまうことになるあのボンクラな3人の男たち。優秀は優秀なのかもしれませんが、その才能は社会でそれほど認められておらず、頼りがいがあるのかないのか、微妙な存在感。マークスとの関係性もなんだかコメディみたいになってきます。

本作はそんな後悔を抱える男たちが社会の悪を打ち倒すことで無念を晴らし、社会に認められる…人生リベンジ・ムービーなんだ…そう観客の誰もが途中までは思ってしまう。でもそれは脚本家である“アナス・トマス・イェンセン”監督の策略で…。

映画では後半に思いがけない事実が判明。電車事故を起こした犯人と思っていた「ライダーズ・オブ・ジャスティス」というギャングは無関係でした。つまり、列車事故は単なる偶然であり、計画された殺人ではなかったということ。まあ、事故には何かしらの原因があるでしょうが、少なくとも悪意のある犯人はそこにいません。完全に見当違いの人間を追い、手を汚してしまった…。

本作のこのオチ。単なる意外性ありきの展開ではなく、しっかり社会批判が込められています。

例えば、顔認証技術の危うさだったり、アルゴリズムの怖さだったり、要するに現在問題視されているテクノロジーのよる情報の偏向。偶然なのに偶然ではないかのように思えてしまう。人種などのバイアスが容易に結論を書き換える。デマやフェイクニュースが氾濫する社会への風刺です。統計学者のオットーでさえもその落とし穴にハマる。気になる人は『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』というNetflixのドキュメンタリーもぜひ参照してほしいです。

そしてもちろんホモ・ソーシャルへの批判も忘れるわけにはいきません。男たちが集まり、どんどんと自分の持論に陶酔していき、行動が過激になっていき、やがては破滅に進んでいってしまう。このあたりは『アナザーラウンド』とテーマ性は同じですね。自分が認められない、非難されていることを受け入れられず、他人のせいにしてしまう“男らしさ”のどん詰まりです。

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偶然を受け入れて男同士でケアをしよう

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』はそんな失態を犯してしまった男たち、劣等感と猜疑心に憑りつかれてしまった男たち、彼らオッサンたちが自分を見つめ直し、男同士で互いを適切にケアしようと心機一転する、そういう物語にチェンジしていきます。

偶然ですけど『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』に似ている…(そしてあの作品もクリスマス映画でした…)。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』ではオットーたちはマークスと接触して以降に復讐計画を密談していく際に、マチルデにはマークスのカウンセリングのためという嘘をついていますが、実際に本当にセラピーをしないといけなくなる…というかそうするべきなんだという物語でした。

これはとてもクリスマス映画らしいタッチで最後は終わります。自分の罪を見つめ、善き人になろうという努力をしよう…。思えば、「ライダーズ・オブ・ジャスティス」という名称はつまるところ「サンタクロース」を暗示していますし、マークスが髭面なのもサンタ風ということなんでしょうか。

まあ、でも結果的に人が死にすぎではありますけどね。こんな殺戮に満ちたクリスマス映画を映画館でお届けして、それが大ヒットしているデンマークの社会がなんかスゴイよ…。

ここでラストはさらに寓話的なオチがつくのも良いところ。冒頭の青い自転車を欲しがる少女の話。そして青い自転車を盗まれたというマチルデの話。エンディングではマチルデに赤い自転車が贈られ、あの冒頭の少女は青い自転車をプレゼントされ、雪の街を元気に走り回る。一見するとこれも関連性があると決めつけてしまいたいくらいに出来すぎたこと。でもこのエピソードだって偶然の一致に過ぎないのではないか。単にこうやって立て続けに見せられるから繋がりのある出来事だと錯覚するだけでは…。

偶然の奇跡か、偶然の悲劇か、なんにせよそれを私たちが素直に受け入れるのは難しい時代になってきている。そんな世界に贈られる現代御伽噺。それが『ライダーズ・オブ・ジャスティス』でした。

2022年の“マッツ・ミケルセン”祭りは終わりません。次は『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』という大作も待っています。“マッツ・ミケルセン”との出会いも偶然の産物ですが、私はもう“マッツ・ミケルセン”でケアされていますから。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 96% Audience 88%
IMDb
7.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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関連作品紹介

マッツ・ミケルセン出演の映画の感想記事です。

・『残された者 北の極地』

・『カオス・ウォーキング』

・『ポーラー 狙われた暗殺者』

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作品ポスター・画像 (C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS & Zentropa Sweden AB. ライダーズオブジャスティス

以上、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』の感想でした。

Riders of Justice (2020) [Japanese Review] 『ライダーズ・オブ・ジャスティス』考察・評価レビュー