神がでてくるので…「Disney+」ドラマシリーズ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年~2024年)
シーズン1:2023年にDisney+で配信
原案:リック・ライアダン ほか
イジメ描写
ぱーしーじゃくそんとおりんぽすのかみがみ
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』物語 簡単紹介
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』感想(ネタバレなし)
今度こそ原作ファンも大満足!?
いきなりですが、ギリシア神話(ギリシャ神話)検定の初級の問題の始まりです。
「オリュンポス十二神」を全て答えられますか?
…はい、正解は…
ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、アプロディーテ、アレス、アルテミス、デーメーテール、ヘーパイストス、ヘルメス、ポセイドン、ヘスティアー。この12神。
まあ、答えられたからって人生での実用性はほとんどないとは思いますよ。まだギリシア料理の美味しいお店を見つけておくほうが役に立つでしょう。
でも親が神様だったら知っておかないといけないのです。親戚やご近所さんみたいなものだからね…。
そんな立場にいる子が今回紹介するドラマシリーズの主人公です。その作品とは『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』。
本作はアメリカの作家“リック・リオーダン”が2005年から2009年にかけて生み出したファンタジー小説「パーシー・ジャクソン」シリーズを映像化したものです。1997年から始まった「ハリー・ポッター」によるファンタジー児童文学の一大ブームの波に乗っかり、アメリカでは「パーシー・ジャクソン」シリーズも大人気となりました。
1巻が「盗まれた雷撃(The Lightning Thief)」、2巻が「魔海の冒険(The Sea of Monsters)」、3巻が「タイタンの呪い(The Titan’s Curse)」、4巻が「迷宮の戦い(The Battle of the Labyrinth)」、5巻が「最後の神(The Last Olympian)」と続きました。
物語は、ギリシア神話の神々やモンスターが人間の現代社会に普通に密かに溶け込んでいる世界で、ある日、主人公である少年が自分は神と人間のハーフ(半神半人)であると知らされ、大きな運命に直面することになります。
そんな「パーシー・ジャクソン」シリーズの映像化…あれ、前に映画にならなかった?と思ったあなた…それは合ってます。この小説は2010年に『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』というタイトルで“クリス・コロンバス”監督のもとで映画化され、2013年には『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々/魔の海』という続編も公開されました。
監督の選出からしてあきらかに『ハリー・ポッター』に続けと考えたのでしょうけど、残念ながら上手くいきませんでした。なぜなら、原作からかなり大幅に改変されてしまったからであり、ファンの間でも賛否両論で、原作者の“リック・リオーダン”からも不評という結果に…。
しかし、2023年にリベンジとなったのがこの『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』で、今度はゼロからリブートしてドラマシリーズとしてたっぷり映像になりました。
しかも、原作者の“リック・リオーダン”もがっつり参加し、製作総指揮のみならず脚本にも手をつけており、ファンが待っていた「パーシー・ジャクソン」シリーズの世界を映像で次こそは届けます!という意気込み全開。
VFXの映像は「Industrial Light & Magic」が中心で制作しており、「StageCraft」で撮影されているので、高品質なビジュアルを堪能できるのも魅力。前回は20世紀フォックスによる映像化でしたけど、今回はディズニー主導の映像化となります。
当然、映画版のキャストは続投できないので、俳優陣は新顔で揃えています。主人公に抜擢されたのは、『アダム&アダム』の”ウォーカー・スコーベル”。
その主人公と一緒に行動する仲間の子を演じるのは、『ビースト』の“リア・ジェフリーズ”と、2022年版『Cheaper by the Dozen』の“アーリアン・シンハドリ”。主人公と合わせたこの3人は今作では可愛いです。
ドラマ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中。シーズン1は全8話。
映画版を見たことがない人でも本作から新鮮に楽しめます。
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』を観る前のQ&A
オススメ度のチェック
ひとり | :原作ファンでも |
友人 | :初見の人も誘って |
恋人 | :気軽に見やすい |
キッズ | :子どもでも大丈夫 |
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):父親は神様!
パーシー・ジャクソンは12歳。幼い頃から普通ではない問題児として学校では扱われてきました。実はパーシーは他の人には見えないものが見えると感じており、それは神話にでてくるような動物たちでした。もちろん周囲に言っても信じるわけがありません。
学内でも孤立していましたが、グローバーという友人ができます。彼も学校ではバカにされていましたが、気が楽な相手です
ところがわずかな穏やかな日々は突然一変します。
それはメトロポリタン美術館での出来事。神話の神々の銅像を前に解説を聞いていたパーシー。母サリーと来たことがあります。この自分の名前の由来であるペルセウスの像の前で「英雄らしい人が英雄とは限らない。怪物っぽい人が怪物とも限らないのよ」と母は説明していました。
ぼーっとしていると、車椅子のブラナー先生がペンをくれます。昼食時、グローバーといじめっ子にどう向き合えばいいか話していると、またそのいじめの主犯格のナンシーが絡んできたので、怒って両手で押し出そうとすると、自分が触れる前にナンシーが吹き飛ばされて噴水に落ちてしまいました。わけがわかりません。
さらに急に手に持つペンが震え、同時にドッズ先生の姿が変化し、翼のある化け物のように変身。しかし、手に持っていたペンが変化した剣のようなものに貫かれて消えてしまいます。
気が付くと倒れていたパーシーですが、「ドッズ先生は?」と聞くとそんな名前の先生はいないと言われます。学校に戻って校長室に呼び出し。グローバーがパーシーの味方をしなかったこともあり、パーシーは学校から退学となってしまいました。
こうしてパーシーは義父ゲイブと母親サリーのいる家に戻ってきます。義父は相変わらずぐうたらで口が悪いです。
それでも落ち込むパーシーに母は耳を傾け、パーシーは恐怖を打ち明けます。自分にしか見えないものがいる…と。それを聞いた瞬間、母はやけに急いでパーシーをニューヨーク州モントークのコテージへ連れて行きます。
嵐の夜です。パーシーはこの世界がしっくりこないと吐露。サリーは息子にギリシア神話の神々や怪物は本物だと告げてきます。さらに父に初めて会った話をします。その父は神だったと言うのです。「あなたは半神半人なの」
作り話だ信じないパーシーでしたが、グローバーがいきなりやって来てもっと驚くことになります。やけに慌てており、パーシーは別のところに目がいきます。グローバーの下半身はヤギになっているのです。
グローバーは自分がサテュロスであることを明かし、守護者だそうで、わざとパーシーを退学にさせたと語ります。
3人は訓練所とやらに向かうことに。車で移動中、凶暴なミノタウロスに襲われ、クラッシュしてしまいます。
母は人間なのでこれ以上は一緒に行けないそうで、「あなたはおかしくない」と言い残し、ミノタウロスと対峙。パーシーの目には遠くでミノタウロスに捕まれ、散り散りに消えてしまう母の姿が…。
激昂するパーシーでしたが、持っていたペンが剣に変化。ミノタウロスを倒すことに成功するも、気絶してしまいます。
目を覚ますと、自分を迎え入れる声がし、そこには自分の知らない世界が広がっていました。運命はここから始まる…。
神話解説の授業です
ここから『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のネタバレありの感想本文です。
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』はギリシア神話が基盤にあるので、それにまつわる神様や怪物がご近所さんのように頻繁にひょっこり顔を出してきます。「超有名な神話だし、当然、皆さん、名前くらいは知ってますよね?」というノリであまり説明されずに登場しまくるので、あらためて簡単に整理しましょうか。
まずはパーシーを支えてくれる仲間たちから。
パーシーの信頼できる親友の2人、ひとり目のグローバーは精霊のサテュロス。2人目のアナベスは、オリュンポス十二神の一柱であるアテナの娘です。
パーシーの通っていたヤンシー学園のブラナー先生の正体はケンタウロスのケイロンでした。人間時は車椅子利用者の姿で、半人半獣のケンタウロスと重ねる印象深い描かれ方となっています。演じているのは“グリン・ターマン”です。
落ち着いていて頼もしいケイロンと違って、飲んだくれで頼りないのが半神半人(デミゴッド)のキャンプを一応は運営しているミスターDことディオニューソス。酩酊の神なのですが、ほんと、ただの飲んだくれです。
旅の道中では、パーシーの実父ポセイドンと同じく海に縁が深い海の女神ネレイド(ネーレーイス)が要所要所で助けてくれ、水中で呼吸できるなどを教えてくれます。ネレイドはいっぱい姉妹がいるので、あちこちにいるのかな。
そのポセイドンですが、不器用な父を演じたのは“トビー・スティーブンス”でした。
トップの神様クラスはパーシーの素直な味方というよりは、もっと大人の事情で動いています。
例えば、神話の頂点に立つゼウス。今回のゼウスは“ランス・レディック”が演じており、カッコよかったですね(2023年に亡くなったので遺作のひとつになりました。もう姿が見れないのが残念…)。
ロータス・ホテルで時間の流れの速さに翻弄されていたのがヘルメス。オリュンポス十二神のひとりです。“リン=マニュエル・ミランダ”が演じているせいか、音楽が上手そうにしか見えない…。
一方、パーシーたちに立ちはだかる存在も強敵揃い。
第1話から教師に化けて襲ってくる復讐の女神たちであるフューリーのひとりアレクト。猪突猛進してくるミノタウロス。冥界で犬のようにあしらわれるケルベロス。
中でもインパクトがあるのは、第3話で登場の、見た者を石化させられるメデューサ。ゴルゴーン3姉妹の1人で、首を切られても石化能力は有効。オチにも使える便利さです。今回で演じていたのは“
ジェシカ・パーカー・ケネディ”でした。
第4話で列車で襲ってくるのは、怪物の母を自称するエキドナ。神話上ではケルベロスなどいろいろな怪物を確かに生んでます。このエピソードではキマイラ(キメラ)を仕向けてきます。今回は“スザンヌ・クライヤー”が不気味に演じていました。
シーズン1:ゆっくりと自分を受け入れる
ドラマ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は基本的に原作に忠実に進んでおり、とくに原作者の“リック・リオーダン”が欠かせないと考えていたのがパーシーたちの年齢。映画版ではかなり年上のティーンになっていたのですが、今回はしっかり12歳程度のプレティーンから始まります。
原作の時点から、この半神半人(デミゴッド)の子たちは非定型発達(いわゆる発達障害)のように表現されており、人間社会で疎外感を感じています。
冒頭のパーシーはまさにそれで、学校からも手に余るように扱われ、たらい回しにされる感じは、実際の当事者の体験と一致する部分も多いでしょう。本人も何か違和感を感じているし、同年代の他人とどうしてこうも異なるのかと疑問を膨らますけど、それを上手く言葉にもできない…。もどかしい子ども時代を過ごしています。
本作はそういう子たちの物語であり、「君たちは実はデミゴッドで、それは悪いことではなく、君たちのアイデンティティなんだよ」と告げられ、それをゆっくりと受け止め、自分の中で理解していく。そんな旅路が本作のプロットの根幹にあると言えます。
本作は主人公の年齢も含めて、作品のテーマ性をブレさせずに貫いたからこそ、再現が丁寧で、それでいてきっちり現代的にアップデートも施しているという、非常に良い原作者主導の映像化の手本となったと思います。
シーズン1は全8話を通してかなりゆっくりしたペースですが、確実な地盤固めができたでしょう。
雷撃を盗み、さらに闇の兜も盗んで、ゼウスとハデスとの戦争勃発を仕掛けて、神々の世界の崩壊をもくろんだのは、いまだ正体を見せないクロノスと戦争の神であるアレス。ヘルメスの息子のルークと、アレスの娘のクラリサも共謀していました。
パーシーたちはひとまず奪われた物を取り返し、騒動を治めますが、企みは消えていません。
3人で再会を誓い合い、グローバーはパンを探すために海で捜索したいと言っていたように、ちゃんと次回作も原作どおりいくことが作中で提示されています。
このまま最後まで映像化して、ファンがしばらく語れる作品を世に残してほしいです。
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 97% Audience 82%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
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神話を題材にした作品の感想記事です。
・『ソー ラブ&サンダー』
作品ポスター・画像 (C)Disney パーシージャクソン・アンド・ジ・オリンピアンズ
以上、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の感想でした。
Percy Jackson and the Olympians (2023) [Japanese Review] 『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』考察・評価レビュー