子どものライアン・レイノルズもウザかった…Netflix映画『アダム&アダム』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にNetflixで配信
監督:ショーン・レヴィ
イジメ描写 恋愛描写
アダム&アダム
あだむあんどあだむ
『アダム&アダム』あらすじ
『アダム&アダム』感想(ネタバレなし)
子ども時代も変わらない
今やハリウッド一番のお調子者俳優として立ち位置を確立している俳優、“ライアン・レイノルズ”。2022年も絶好調です。以前は『白い沈黙』(2014年)みたいなシリアスな路線もやっていましたが、やっぱりコミカルを漂わす方が性に合っていると本人も自覚したのか、2016年の『デッドプール』の大成功以降は完全にそっちに舵をきりました。
そんな“ライアン・レイノルズ”にも若かりし頃があります。彼は(忘れそうになりますが)カナダ人であり、俳優デビュー作もニコロデオンで作られたカナダのティーンエイジャー・ソープオペラのドラマシリーズでした。それが1991年の『Hillside』(アメリカでは『Fifteen』というタイトル)という作品。この作品は15人の架空の学校の生徒を主役にしており、そのうちのひとりが“ライアン・レイノルズ”演じるビリーという子。当時の“ライアン・レイノルズ”の年齢は15歳くらい。でもすでに“ライアン・レイノルズ”らしさ全開で、口調といい、仕草といい、小生意気さといい、何もかも“ライアン・レイノルズ”。10代の頃からあんな感じだったのですね。「Hillside Ryan Reynolds」とかで検索すれば、そのドラマのシーン動画などはいくらでもでてくると思うので、ちょっと見てみてください。今の“ライアン・レイノルズ”と同じ顔の10代のクソガキが映っているから。
その『Hillside』を少し意識している…のかもしれない、セルフパロディ的な“ライアン・レイノルズ”主演映画が2022年に誕生しました。
それが本作『アダム&アダム』です。
本作は、こちらも愉快痛快なエンタメ作であった『フリー・ガイ』でコンビを組んだ“ショーン・レヴィ”監督と“ライアン・レイノルズ”のタッグ2度目の映画となります。
今度はタイムトラベルSFになっており、2050年から半ば事故で時間旅行してきた“ライアン・レイノルズ”演じる中年の主人公が、2022年の時の12歳の自分と出会い、大きな陰謀に巻き込まれていくという物語。要するに“ライアン・レイノルズ”が子どもの“ライアン・レイノルズ”に遭遇するようなものです。
ジャンルとしては『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなジュブナイルSFですけど、まごうことなき“ライアン・レイノルズ”果汁100%の映画になっていて、今回はその子どもも“ライアン・レイノルズ”っぽさ満載のキャラクター性になっていますからね。
“ライアン・レイノルズ”は基本は自虐でアプローチするんだなぁ…。
その子役をつとめるのは、“ウォーカー・スコベル”という子ども俳優なのですけど、なんか“ライアン・レイノルズ”本人よりもフォーマルなイケメン顔な気がする…。ちょっと“ライアン・レイノルズ”、ズルしてない…?
共演陣もわりと豪華。『ライリー・ノース 復讐の女神』『YESデー 〜ダメって言っちゃダメな日〜』の“ジェニファー・ガーナー”が母親を演じ、『アバター』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の“ゾーイ・サルダナ”が妻を熱演し、アクションも魅せます。そして父親役として『アベンジャーズ』のハルクでおなじみの“マーク・ラファロ”も登場。なんだかすっかりアメコミ出演歴のある俳優ばかりですが、そもそもアメコミ映画が隆盛を極めるこの時代、どうしたってそういうフィルモグラフィーを持つ俳優が相対的に増えちゃうのですけどね。
『アダム&アダム』においても随所にパロディなどのネタが盛り込まれており、“ライアン・レイノルズ”はそのギャグをしないと死ぬのかというくらいには高頻度でぶっこんできます。まあ、無理して付き合わずテキトーに流してください。
『アダム&アダム』は子どもでも大人でも楽しめるSF映画です(やや大人向けなギャグが多いのは確かだけど、これは“ライアン・レイノルズ”作品にはよくある話)。Netflixでの独占配信なので、家でゆっくりくつろいで鑑賞するのがいいでしょう。未来から自分がやってきて映画鑑賞を邪魔することがない限りは…。
『アダム&アダム』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2022年3月11日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :SF家族モノが好きなら |
友人 | :気軽な暇つぶしで |
恋人 | :恋愛要素はそれほどでも |
キッズ | :子どもでも観れる |
『アダム&アダム』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):これが大人の姿です
2050年。宇宙空間を高速のジェット機で飛ぶひとりの男。その男、アダム・リードは歯を食いしばって耐えており、出血しているようです。「停止しないと撃ち落とします」と警告音声が飛んできても、アダムは気にしません。ワームホールを生成させ、そこに猛スピードで飛び込むのでした。しかし、その直前に追撃者の攻撃を受け、機体のバランスを崩してしまい…。
2022年。ひとりの少年が学校でいじめっ子に追われていました。そのいじめっ子に追い詰められ、ガンガンに殴られるも軽口だけはやめないその子。名前は…アダムです。
母のエリーが来て、顔から血を流す我が子を椅子に座らせ、校長に文句をつけます。父は亡くなったばかりでいろいろあるのに、なぜいじめられた方の子にも罰を与えるのか、と。
帰りの車。喧嘩で停学するのは3度目なアダムに母は困っていました。なぜ相手に歯向かおうとするのか。これでは埒もあかない。「未来を考えなさい」と母は言いますが、アダムには通じません。
母は同僚のデレクと食事するそうで、そのオシャレな格好からさすがにアダムもデートなのだろうと察します。不機嫌になるアダム。減らず口がまた飛び出します。
夜、ビデオゲームで一人遊んでいると、急に停電し、犬のホーキングが吠えて、森の中へダッシュしてしまいました。アダムもしょうがないので追います。
何か燃えたように火の粉が舞っており、樹が不自然に途中でいくつも折れているような…。気配を感じてライトで照らすも、ヤバそうなので走って帰るアダム。
しかし、家の車庫の中から物音が聞こえ、バッドを持ってゆっくり中へ。そこには大人の男が座り込んでいました。血を流しています。
「何歳だ?」といきなり質問され、「12歳」と咄嗟に答えてしまうアダム。
その男はパイロットっぽい見た目で、男はバッドを容易く受け流し、横を通り過ぎて家を物色。腹に深い傷があり、事情はよくわかりません。
そしてその大人の男はなぜかアダムの名前を知っていました。誕生日も正確に答えられ、家庭の事情までよく知っています。「なぜ犬の名前も?」「俺が名付けた」
ここで察します。喘息の落ち着かせ方もわかっていて、何よりもパパの時計を付けている…。
ここにいるのは未来の自分だ…。
飲み込みは早い少年アダムは「時間旅行の方法は?」と遠慮なしに疑問をぶつけ、中年アダムをいらつかせます。そして墜落したタイムジェットのもとまで行き、それは搭乗者のDNAに反応することを教えてもらいます。透明化していた機体が出現し、確かに2人とも同じDNAの持ち主のようです。
乗り込むと感激する少年アダム。「このことは体験したの?」とまたもや疑問がいっぱい思い浮かびますが、「マルチバースじゃない。映画とは違うんだ」と中年アダムは説明し、時間軸はひとつで「フィックス・タイム」と呼ばれていると教えてくれます。
どうやら中年アダムは父であるルイス・リードが時間旅行のテクノロジーを生み出してしまうことを食い止めたかったようです。その理由は妻のローラが時間旅行で帰らぬ人となってしまうから。
少年と中年のアダムはこの事態を乗り越えることはできるのか…。
自分がウザいという大問題
将来の自分は『グリーン・ランタン』で主役をしたり、ピカチュウの声をやっていたりすると知ってしまったら、さすがに困惑するだろうな…。
いや、これはそっちの話ではなかった。『アダム&アダム』の“ライアン・レイノルズ”演じるアダムはパイロットでした。ただ、本作はそんなにパイロットの部分に強くスポットがあたるわけでもない。というか、あのアダムはあの少年時代からどうやってパイロットになったのかもイマイチ説得力はありませんでしたが、そんなことはどうでもいいのです。
この映画は“ライアン・レイノルズ”が好きなことをやれればそれでいいというスタンスです。
「ライアン・レイノルズvsライアン・レイノルズ」という構図は『フリー・ガイ』でもやったのですけど、今作『アダム&アダム』は「中年vs少年」という年齢差で対峙しており、どちらもウザく口だけ達者なので、いがみあっても終わりが見えない。この堂々巡りのシュールなやりとりを楽しむのが前半のメイン。
今回の少年アダムはちょっと俳優デビュー作『Hillside』のキャラクターに近い部分もあって、あちらは家庭に問題を抱え、イジメに関与していました。このアダムもいじめられまくりなのですが(かなりパンチがえぐいのが本作のノリ)、そのイジメっ子を中年アダムが大人げもなくイジメ返すという脅しのくだりは完全に『Hillside』のあれだったのではないか…。
あと、少年アダムが中年アダムの半裸の筋肉に見惚れて(文字どおりの自惚れなのですが)、しつこく「いつ頃トレーニングしたらそうなれたの?」と絡んでくるシーンがありますが、ああいう場面がどことなくゲイっぽさを醸し出しており、これも昨今の“ライアン・レイノルズ”作品のクセなのかな(でも最終的には異性愛関係しか目立たないのですけどね)。
ともあれ自分がウザいという大問題に直面する“ライアン・レイノルズ”は面白かったです。
後半は父親との確執と向き合うことになりますが、中年と少年のアダムが両方で父と対峙するので完全に情報過多であり、よくあの父ルイスもわりとあっさり受け入れられたなと…(まあ、殴り合ってたけど)。
“ショーン・レヴィ”監督はこういういかにもアメリカ的な王道のファミリー映画をいくつも手がけてきましたが、本作もその流れに沿っており、さすがにこなれていますね。3人でキャッチボールするとか、あのラストも超ベタだし…。
そんなにライトセーバーが使いたいのか
『アダム&アダム』は土台はタイムトラベルSFですが、そのSFのデティールとしてはかなりいい加減です。
2050年の未来は何やら『ターミネーター』の方がマシに思えるくらいにディストピアになっていると冗談なのか本気なのかわからないくらいに語っていましたけど、その詳細は結局は描かれず、誤魔化されてしまっています。そもそもタイムトラベル技術という、おそらく未来においてとんでもなく重要になるであろう発明を無かったことにする影響力とか、そういうあれこれの事情については本作は「考えないことにする」という超強引な姿勢でクリアしています。
ローラの扱い方もなかなかに雑で、結局は時間リセットが起きるも同然なので、ああいう自己犠牲的なシーンもそこまで悲壮感なくスルっと挿入して、次に進んでしまう。ここはこういうお気楽タイムトラベルSFの弱点ではありますね。
『トゥモロー・ウォー』みたいな地球の命運を賭けた壮大な戦争があるわけでもないので、『アダム&アダム』のこの軽さは利点にも欠点にもなる部分。
でもやっぱりいいんですよ、“ライアン・レイノルズ”にとっては。ほら、ライトセーバーみたいな武器を振り回せればそれでだいたい満足しているのが伝わってくるじゃないですか。最近の“ライアン・レイノルズ”は「スター・ウォーズ」に出たいと事あるごとに言ってますからね。その欲望がすでに駄々洩れて映像になっている…(たぶん彼が「スター・ウォーズ」に出演して本物のライトセーバーを振るうことはないんじゃないかな…)。
終盤の戦闘は少年アダムもライトセーバー(風の武器)を手にしてヒーロー着地もできたし(ヒーロー着地ネタは『デッドプール』でもイジっている)、今回は子どもになっても遊びまくろうというその無邪気さだけで突っ走っていました。
エンディングはロマンチックなムードで終わるのもいつもの“ライアン・レイノルズ”か。あのオチもロマンチックではあるけど、運命が一点に強制集中しすぎていてあれはあれで怖いとも思うけど…。
“ショーン・レヴィ”監督と“ライアン・レイノルズ”のタッグの3度目は、なんと『デッドプール3』になるそうで、ついにこの2人がその最強の何でもありな世界観で暴れたらどうなるのやら。この2人の出会いこそ時間旅行でも変わりそうにありません。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 69% Audience 83%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
ライアン・レイノルズ出演の映画の感想記事です。
・『6アンダーグラウンド』
・『レッド・ノーティス』
作品ポスター・画像 (C)Netflix アダム・アンド・アダム ザ・アダム・プロジェクト
以上、『アダム&アダム』の感想でした。
The Adam Project (2022) [Japanese Review] 『アダム&アダム』考察・評価レビュー