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『プロジェクト・パワー』感想(ネタバレ)…Netflix;こんなのテッポウエビじゃないよ!

プロジェクト・パワー

こんなのテッポウエビじゃないよ!…Netflix映画『プロジェクト・パワー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Project Power
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2020年にNetflixで配信
監督:アリエル・シュルマン、ヘンリー・ジュースト

プロジェクト・パワー

ぷろじぇくとぱわー
プロジェクト・パワー

『プロジェクト・パワー』あらすじ

ニューオーリンズの街に新たな火種が蔓延する。それは摂取した者に5分間だけ超人的な能力を与える謎の薬「パワー」。神出鬼没な未知の能力に警察はお手上げで、欲に溺れた犯罪者たちにとっては切り札になっていた。その「パワー」による治安悪化の元凶を一掃すべく行動するひとりの地元警官は、謎の男と売人の少女とともに、このミステリアスな薬の正体を探っていく。

『プロジェクト・パワー』感想(ネタバレなし)

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Netflixアクション映画大作、連発中!

こうも猛暑ばかりだとエネルギーを一発で注入できる方法が欲しいものです。そうじゃないとやってられません。でも、日本の栄養ドリンクのCMとかを見ていると、「エネルギーを得る=精一杯労働しよう!」と変換されてしまっているのがなんとも同意しがたい。別にエネルギーを遊びに使ったっていいじゃないですか…。

まあ、目的はともかく生命力という意味でのエネルギーを簡単にリチャージできるクスリとかが欲しい…なんて言ったら、ちょっとドラッグを求めるヤバい奴扱いされかねないですが、それはともかく本当にそんなクスリがあったらどうするか。

いや、エネルギーどころか、何かしらの特殊能力が開花するクスリがあるとしたらどうするでしょうか。でも、何の特殊能力が会得できるかはその薬を服用してみるまでわからないとしたら…。ちょっとした“超人”ガチャみたいなもんですね。

今回紹介する映画はそんなイチかバチかの方法て能力者が出現しまくってしまった世界を描くファンタジー要素のあるアクション映画です。それが本作『プロジェクト・パワー』

とくに原作があるわけではないのですが、でも似たような設定は世の中にはいっぱい転がっています。超人的能力が一発で発動できるクスリ…ありきたりと言えばそのとおり。

しかし、この『プロジェクト・パワー』はNetflix製作ということもあって非常に予算がかかっており、映像面での迫力があります。やはり超人的能力を描くならビジュアルのクオリティはどうしたって大事になってきますからね。このへんはVFXをガンガン駆使して盛大に派手にやってくれるので期待してください。

そして『プロジェクト・パワー』は表面上は痛快なアクション・エンターテインメントですが、その背景には社会に広がるドラッグ問題とオーバーラップするように作られており、このあたりもアメリカ映画ならではの土台です。

ここ最近のNetflixはそれなりの予算を投入したアクション映画にも力を入れており、2019年は『6アンダーグラウンド』がありましたが、2020年は『スペンサー・コンフィデンシャル』『タイラー・レイク 命の奪還』『オールド・ガード』ともう上半期だけでこれだけの作品を連発。なんだかどれがユーザーのヒットを引き出せるか、あれこれ試して実験している感じさえします。

『プロジェクト・パワー』はファンタジー要素強めのアクションなので、2017年のNetflixオリジナル映画『ブライト(Bright)』に通じるところもありますね。

『プロジェクト・パワー』でも俳優陣もしっかり客を惹きつけるメンバーを用意しています。共演するのは“ジェイミー・フォックス”“ジョセフ・ゴードン=レヴィット”。アカデミー主演男優賞歴のある“ジェイミー・フォックス”は最近だと『黒い司法 0%からの奇跡』で素晴らしい演技を披露していましたが、今回はコテコテのエンタメ作に帰ってきました。“ジョセフ・ゴードン=レヴィット”は最近は見かけていないなと思った人もいるかもですが、『7500』など実は案外と主演作もあります。この二人がどんなアンサンブルを見せるのか、ぜひお楽しみに。

本作はこの二人のバディもの…に見えつつ、ここに『ヘイト・ユー・ギブ』の“ドミニク・フィッシュバック”演じる少女が混ざり、三角関係でドラマが展開していきます。

監督は“アリエル・シュルマン”“ヘンリー・ジュースト”のコンビで、これまで『パラノーマル・アクティビティ3』『4』や『ヴァイラル』、『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』を手がけていました。

脚本は“マットソン・トムリン”で、彼はマット・リーヴス監督のもとで製作進行中の『ザ・バットマン』の脚本も手がけているようです。

ちなみにこの“アリエル・シュルマン”&“ヘンリー・ジュースト”監督と“マットソン・トムリン”脚本の組み合わせで、あの日本のカプコンを代表するゲーム「ロックマン」の実写映画『Mega Man』も企画されている…という話もありますが、現在も企画続行中なのかはよくわかりません。

暑さと感染症のせいでなかなか外に出ずらい日々が続いていますし、家で暇をつぶすなら『プロジェクト・パワー』はちょうどいいのではないでしょうか。

『プロジェクト・パワー』はNetflixオリジナル映画として2020年8月14日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(気軽な暇つぶしに最適)
友人 ◯(適度なエンタメがお望みなら)
恋人 ◯(エンタメで気分転換に)
キッズ ◯(そこまで残酷描写はない)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『プロジェクト・パワー』感想(ネタバレあり)

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そのパワーが欲しいか?

港湾都市として栄えてきたニューオーリンズ。夜、この街に「ジェネシス」と書かれた巨大な船舶が停泊し、大きなコンテナを積んだトラックが続々と船から降りて街に消えていきます。

その一つはある場所に停車。そこには街の各所を縄張りとするドラッグディーラーたちが集まり、サプライヤーと思われる男から説明を受けます。「これをやろう」と言って見せてきたのは不思議なピル状の“何か”。「お前らはこれを流行らせろ」と語り、この“何か”の名前は「パワー」だ、と。

そしてそれから時間もたたないうちに、街の警察には通報が相次ぎます。友達がおかしくなった、異変が起きた…こうしてこの街は変わっていきました。予測不可能な変貌に…。

6週間後。寂れた遊園地。自転車の二人の男の前にひとりの少女がやってきます。彼女はロビンという名で「パワー」を売っていました。ところが「よこせ」ともうひとりが出現し、根こそぎ奪われそうになります。

そこへバイクに乗った男が登場。「ひざまずけ、警察だ」と銃を突きつけます。それに対してその「パワー」を飲もうとする相手。しかし、バイク男は「あたりかハズレかどっちだろうな」と恐怖を煽り、結局、少女を襲った男たち3人は退散していきました。

そのバイク男、フランクはロビンと仲良さそうに話します。「パワー」を買い、バイクまでくれました。フランクは地元の警官で、この「パワー」を自分でも試そうとしていたのでした。

一方、スラム街のアパートの一室に、コワモテなサングラス男がやってきて「ニュート、いるかい?」と居場所を問いただします。遠慮なく部屋に侵入。ショットガンを手に室内を物色すると、逃げだすニュートを発見。「情報が欲しい」「出所は?」「誰が元締めかだけ教えてくれ」とドラッグディーラーであるニュートの背中に質問をぶつけますが、ニュートは例の「パワー」を飲みました。

するとニュートはちまち発火。全身が燃え上がって突撃してきます。火だるま男から逆に逃げるそのサングラス男。ニュートはさらにピルを飲み、炎上が継続。しかし、サングラス男は炎上男を水責めにして「白状しろ」と問い詰め、結局、ビギーから入手したことを聞きだします。すると炎上男は突然爆発。なんとかサングラス男、アートは一命をとりとめて、現場を去りました。

ロビンは病気がちな母を家に置き、学校へ向かいます。授業も上の空で、生活費と医療費を稼ぐために今日もドラッグディーラーのニュートとスマホでこっそりやりとりしようとしていると、先生に怒られます。ロビンはラップに自信がありましたが、人前でそれを披露する勇気はありませんでした。

フランクは銀行強盗発生現場に到着。しかし、スーツ姿の奴らが仕切ることになり、警察はサポートだと言われます。それに従うのにうんざりだったフランクは自ら「パワー」を飲み、時計を5分間にセットし、裏口から建物に単独で突入。そこにいたのは姿をカメレオンのように周囲に溶け込ませることができる犯人。おそらく「パワー」の力です。逃げる犯人を追跡し、街を駆け巡ると、犯人に銃を奪われ頭に発砲されます。けれども銃弾はフランクの頭部の皮膚に弾き返され、フランクは反撃。犯人を逮捕しました。

そのフランクの功績も虚しく、「あの薬を飲んだな」と警部上司に叱責され、「銃とバッジを出せ」とクビを宣告されますが、頼み込んだ結果、ある写真を見せられます。そこに映っている男が「パワー」の出所だと言われ…。

そしてロビンは夜にニュートに会おうとしたところ、アートに誘拐されます。アートは娘のトレイシーを探しているようで、「パワー」とも関係があるようでした。

こうして運命が交差し始めた3人。「パワー」の源には何があるのか。そして黒幕は…。

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能力者のド派手さが爽快

『プロジェクト・パワー』は“能力者バトルもの”としてなかなかにド派手にやってくれるので痛快で楽しいです。

まず最初にインパクト絶大で登場するバーニングマンになるニュート。てっきりファイアボールを放つマリオくらいの炎の使い手になるのかなと思ったら、あんな制御不能な大炎上を見せるとは思わなかった…。ニュートを演じるのは“マシン・ガン・ケリー”というラッパーで、彼が長身で細身なのでそれが燃え上がって迫ってくると凄い恐怖感があるんですよね。その炎上男に対して創意工夫で撃退するアートの戦法も良いです。

お次に登場するのがカメレオン男。たぶん全裸なのでしょうけど、そいつが肌の色を周囲に溶け込ませながら(人種を答えられない警察がちょっと面白い)、街中を全力疾走するという図からしてシュール。こういう能力者のリアルを考えると実はかなりヘンテコな光景になるのをあえてしっかり映像化してくれるのも嬉しい本作のポイントです。

そのカメレオン男に対してフランクは銃弾も防げる硬質化で対抗。ここで初めて能力者vs能力者のバトルが見られる。この小出し感もいいですね。

今作のこの「パワー」は一見するとチート級の特殊能力ばかりでデメリットがないみたいですが、でもそもそも何の能力が発現するかもわからず、発現しても5分だけで、下手すると爆発四散したり、能力を使いこなせないままに死んでしまう人もいるわけで、そう考えると相当にリスキーです。さすがにここまでオーバーリスクな代物はそう簡単に普及しないのではないかと思わなくもないですが、それを言ったらおしまいなので…。

でもあの氷結能力の女性が文字どおり凍死したり、作中でも『アナと雪の女王』に言及されていましたが、世間一般で和やかにファンタジーとして親しまれているものが実際にあったとしたらここまで凄惨になるという、悪趣味な映像表現は私も好きです。リアル・エルサの末路…。

あえて本作に“能力者バトルもの”として苦言を呈するなら、後半の展開に勢いが落ちたかなと思える部分ですかね。軟体人間との戦闘や、巨体人間との戦闘、ブレード男との戦闘は楽しいのですが、最後のアートの能力発揮はもうちょっとなんとかならなかったのか。

そもそもこの「パワー」は動物の能力を基に製造されていると説明があって、アートは「テッポウエビ」だと言われていました。テッポウエビは小さなエビで基本的に無力な生き物ですが、餌を捕まえる時に自分のハサミで衝撃波を発生させて獲物を気絶させます。無力だからこそこんな方法を会得したわけです。

ただ、アートのあの能力は明らかにテッポウエビのそれを凌駕しているというか、完全に別物で謎の魔法的な波動を全方位に放っているので、もう意味不明ですよね。あれじゃあ、スカーレット・ウィッチみたいですよ…。

もう少し本来のテッポウエビ的なスタイルにした方が演出としても面白かったのでは…と思ったりも。

能力者バトル映画としては楽しい一作と評せるけど、テッポウエビ映画としては酷評になりますね(なんだその新ジャンル)。

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ドラッグ問題としては…

『プロジェクト・パワー』は単純明快な“能力者バトルもの”でありつつ、アメリカ社会で蔓延するドラッグ問題を下地にしている作品です。

舞台になったニューオーリンズはもともとアフリカ系アメリカ人が多くを占める街とされ、ドラッグも身近に問題化してきた歴史があります。

ロビンが売人として生きざるを得ない事情、そして彼女の本来のパワー(素質)としてラップの才能が認められない世界というのもリアリティがあります。

結局はこの「パワー」の一件が、街全体を利用した大規模な実験であり、大企業の既得権益に翻弄されているだけというのも現実に迫るものがあるでしょう。

しかし、本作はそれを土台にするのはいいものの、そこへの踏み込みはそれ以上はなく、かなり希望的観測によるあっけない楽観エンディングで終わってしまうのは、ちょっとガッカリではありました。

ロビンの売人としての歪んでしまった人生への引きずる過去もなく、そんな少女の非行を半ば利用したフランクへの制裁もなく、なんだか最後に一発ぶちかましたアートもケロっとしていて元気そうだし…。

どうせドラッグ問題を素材にしているのだから、もっとこう副作用や依存症を描くとか、「パワー」が消えたことで通常のドラッグの人気が復活してそれはそれで厄介なことになるとか、善悪では片づけられない問題の遺恨を残してしっかり向き合ってほしかったですね。

だいたい本作は能力者というものをドラッグとして描いてしまったことで、そのセンシティブな問題からは否が応でも逃げられない宿命を背負ってしまっているのですから。同じく特殊なクスリで身体強化された『キャプテン・アメリカ』とはその点が全然違います。見方を変えれば、白人は能力者になるとその大いなる力の責任を問われるだけだけど、黒人となるとそもそも是非になってしまうという、この時点で明確な人種的スタートラインの格差がハッキリして複雑な気持ちになりますけどね…。

黒人を描くからと言って無理にドラッグに絡めずとも良かったのでは…というモヤモヤもなくはない。『オールド・ガード』のようにもっとプログレッシブに新時代を描く作品もあるのだし…。

そんなことを思ったり、思わなかったりな、私の『プロジェクト・パワー』感想。

とりあえず私は映画を1日にたくさん鑑賞しても疲れることのない能力が欲しいです。

『プロジェクト・パワー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 69% Audience 65%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

Netflixオリジナルのアクション映画の感想記事の一覧です。

・『オールド・ガード』

・『タイラー・レイク 命の奪還』

作品ポスター・画像 (C)Screen Arcade, Netflix プロジェクトパワー

以上、『プロジェクト・パワー』の感想でした。

Project Power (2020) [Japanese Review] 『プロジェクト・パワー』考察・評価レビュー