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『サタデー・ナイト NYからライブ!』感想(ネタバレ)…番組はみんなで作る!

サタデー・ナイト NYからライブ!

ゴタゴタするけど!…映画『サタデー・ナイト/NYからライブ!』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Saturday Night
製作国:アメリカ(2024年)
日本では劇場未公開:2024年に配信スルー
監督:ジェイソン・ライトマン
サタデー・ナイト NYからライブ!

さたでーないと にゅーよーくかららいぶ
サタデー・ナイト NYからライブ!

『サタデー・ナイト NYからライブ!』物語 簡単紹介

1975年10月11日、午後11時30分。この瞬間、あの伝説の番組『Saturday Night』は始まる。その放送の90分前、スタジオは慌ただしく大勢の人たちが動き回っていた。新米プロデューサーのローン・マイケルズにとってこの番組の成功が自分の命運を決めることになる。誰も観たことがないエンターテインメントを届けるために賭けにでるが、トラブルは後を絶たず、放送できるかも怪しかった。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『サタデー・ナイト NYからライブ!』の感想です。

『サタデー・ナイト NYからライブ!』感想(ネタバレなし)

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『SNL』の精神を今こそ

2025年2月、アメリカの伝説的なコメディバラエティー番組『サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live;SNL)』の50周年記念特番が放送されました。

そこで“ドナルド・トランプ“支持者から勝手に猛烈に嫌われている“トム・ハンクス”が出演し、しかも赤いMAGAの帽子を被っての登場The Mary Sue。しかし、このコメディに当のMAGA当事者の一部はいつもながら激怒し、自分たちと同じ帽子を被ろうとも“トム・ハンクス”が大嫌いだということをあらためて教えてくれました。

そもそも最近はトランプ本人もトランプ支持者も『SNL』という番組に敵意剥き出しです。例えば、選挙期間中に『SNL』に“カマラ・ハリス”がカメオ出演したことなど、事あるごとに突っかかってきていますDeadline

『SNL』だけではありません。アメリカ国内の放送通信事業の規制監督を行う連邦通信委員会(FCC)の新委員長にして、トランプの手先である”ブレンダン・カー”は、テレビ局にどんどんと介入をみせていますFair

2025年以降のアメリカはかつてないほどの報道の自由&表現の自由の危機に立っています。政権を批判的に報じたり、政治をネタにすることが難しくなりつつあります。

だからこそこのご長寿番組として長年にわたってアメリカの政治や文化をこっぴどくネタにしまくってきた『SNL』の精神を今まさに握りしめて手離さないでいってほしい…。

そんな気持ちを再燃させてくれる原点に立ち返る映画が本作『サタデー・ナイト NYからライブ!』です。

本作は1975年10月11日に記念すべき初回放送を迎える『SNL』(当時はまだ『NBC’s Saturday Night』という番組名でした)の放送約90分前のスタジオでのドタバタを描く伝記業界裏側モノのコメディです。映画時間も90分で本当にカウントダウンしていくようにリアルタイムで進行します。

当然、準備されている番組内容も実際のもので、番組の誕生に立ち会った大勢の実在の人物が総出演します。ものすごくたくさんの登場人物が入り乱れるので、わちゃわちゃになっていて、ちょっと何が何だかわからない鑑賞体験になりそうですけども、そこまで難解でもないです。

『SNL』を全く知らない人はとりあえず「ローン・マイケルズ」というプロデューサーと「ロージー・シュースター」という脚本家…この若いカナダ人の夫婦がこの番組を中心で作り上げたということだけわかっていればいいです。映画でもこの男女2人が実質的には主人公です。

ローン・マイケルズを演じるのは、『フェイブルマンズ』で主役を演じた“ガブリエル・ラベル”。そしてロージー・シュースターを演じるのは、『ボトムス 最底で最強?な私たち』で主役兼脚本を手がけた“レイチェル・セノット”

共演は、『リコリス・ピザ』“クーパー・ホフマン”『メイ・ディセンバー ゆれる真実』“コーリー・マイケル・スミス”、ドラマ『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』“マット・ウッド”『アナと世界の終わり』“エラ・ハント”『ラブ&モンスターズ』”ディラン・オブライエン”『ブラッドショット』“ラモーネ・モリス”、ドラマ『メディア王 華麗なる一族』“ニコラス・ブラウン”など。“ウィレム・デフォー”“J・K・シモンズ”などのベテランも。まだまだ他にもいっぱいいます。

『サタデー・ナイト NYからライブ!』を監督するのは、『タリーと私の秘密の時間』『フロントランナー』など多彩な映画を手がけている“ジェイソン・ライトマン”『ゴーストバスターズ アフターライフ』みたいな大作よりも、こういう小粒な映画のほうが合っていると思います。ただ、『サタデー・ナイト NYからライブ!』はその作中の登場者からして『ゴーストバスターズ』と縁深いですけどね。

『サタデー・ナイト NYからライブ!』はアメリカのエンタメ史においても非常に大きな出来事を扱っていて、それでいてエモい中身の映画なのですけども、日本では劇場未公開で配信スルー。まあ、日本では『SNL』は有名じゃないけど…だけどさ…。

気になる人はぜひ見逃さずに! 「Live from New York, it’s Saturday Night!」

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『サタデー・ナイト NYからライブ!』を観る前のQ&A

✔『サタデー・ナイト NYからライブ!』の見どころ
★放送直前のドタバタ劇がコミカルに映し出される。
✔『サタデー・ナイト NYからライブ!』の欠点
☆観終わった後は登場人物を調べて掘り下げるとなお良し。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 3.0
低年齢の子どもにはわかりにくいネタも多い。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『サタデー・ナイト NYからライブ!』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

1975年10月11日。午後10:00。ニューヨーク・シティのNBCスタジオは緊張で張り詰め、いつも以上に慌ただしくなっていました。『NBC’s Saturday Night』の初回放送が間近に迫っていました。全てが決まる夜です。

新米プロデューサーのローン・マイケルズはビルの前に到着したアンディ・カウフマンをスタジオに案内します。早く連れて行かないといけないので大忙し。もう放送まで90分を切りました。

エレベーター内で上司のディック・エバーソルが合流し、デイヴ・テベットが全国から幹部を連れてきて放送を見に来ていると警告します。失敗できないということです。大勢の前で恥をかくだけでなく、キャリアもおしまいです。

どうやらあちらは表向きは応援している素振りですが、いつでもジョニー・カーソン主演の『トゥナイト・ショー』のエピソードを再放送するという非常手段を用意しているようです。つまり、放送直前まで本当に放送されるかは上層部の判断しだいです。

スタジオではさまざまな小道具やセットがひっきりなしに移動して、一方では出演者たちが化粧室でメイクを整え、とにかく騒然としています。

ジョン・ベルーシギルダ・ラドナーがソファに座るセットで、ダン・エイクロイドギャレット・モリスが突入するコメディ寸劇を試していると、照明が落下するハプニングが発生。もう滅茶苦茶です。

最初からプロ意識が高すぎるゆえに気難しそうに孤立ぎみだったジョン・ベルーシは激怒し、一方のギルダ・ラドナーは楽しそうに自由奔放。

暇ができたギャレット・モリスはマペットを見つけて銃で撃つ仕草で調子に乗っていると、人形を準備していたジム・ヘンソンが文句を言います。

ビリー・プレストンの演奏は準備OK。番組を盛り上げる音楽は欠かせません。

脚本家のロージー・シュースターはベルーシに蜂の衣装を持っていき、なだめます。

きどったチェビー・チェイスは別室で集っているスーツでタバコをふかす大物たちを前にわざわざ立ち、余裕の立ち振る舞い。ローン・マイケルズもたどたどしく言葉をつなげて番組の凄さを伝えようとしますが、やっぱりチェイスの勢いの強さに流されます。

10:24。時間だけが過ぎていきます。誰も観たことがない新しい番組は無事に放送できるのか…。

この『サタデー・ナイト NYからライブ!』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/03/06に更新されています。
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これは本当に実際に起きたこと?

ここから『サタデー・ナイト NYからライブ!』のネタバレありの感想本文です。

『サタデー・ナイト NYからライブ!』は冒頭からノンストップで凄まじい情報量を観客に流し込んできますが、これも現場のてんやわんやを観客に疑似体験させるためなのでしょう。

もう誰も「この番組がどういう完成形になるのか? そもそも何を目指しているのか?」という共有ができていません。それぞれがとりあえず自分の仕事をこなすのに精いっぱいです。でもこういう現場ってテレビ業界だけでなくいろいろありがちですから、何かしら同じような状況を経験したことがある人も少なくないと思います。

これだけあれやこれやと現場で起きまくっているのを観ると、観客としては「これは本当に実際に起きたことなの?」と次々気になってきます。

さすがに作中の全ての出来事の解説はできませんが、本作は事実どおりのものもあれば、全くのフィクションもあり、さらには後々の実際に起きたことを反映して取り入れた若干の創作というのも混ざっています。

一番ハラハラさせてくれるのは、ジョン・ベルーシでしょうか。番組開始直前まで契約書にサインしていなかったというのは事実で、もうあからさまに現場で不貞腐れるように孤立して佇んでいるだけで(でもマルハナバチの格好はしているので絵面は楽屋の時点で既に面白い)、「大丈夫か?」という心配になる最大の爆弾でした。

作中では、スタジオを飛び出し、あのマルハナバチのコスチュームのままスケートリンクでシュールに滑っているところをローン・マイケルズが見つけ、そこでようやくサインできるわけですが、あれはフィクションです。ただし、似たような構図のコメディが後に実際の番組内で登場しました。

ジョン・ベルーシはこの7年後の1982年3月5日、33歳の若さで亡くなってしまうので、本作は彼への追悼も合わせて敬意を持って扱っている感じでしたね。

あと、ギャレット・モリスの行動もなかなかにびっくりさせます。当時の番組出演者の中では唯一の黒人コメディアンで、こちらもこちらで「自分はここにいていいのか? ここで何をしろって言うんだ?」とキャリアへの自問自答を繰り返しています。

そんなギャレット・モリスが作中ではサウンドチェックで「ショットガンで白人をみんな殺そう」というとんでもない歌でギョっとさせますが、あれはフィクション。でもこちらも後の実際の番組内で披露されるコメディのひとつです。

ジョン・ベルーシもギャレット・モリスも、そして他のコメディアンたちも、それぞれの反骨精神があり、ローン・マイケルズはそれに手綱をつけながら才能を発揮させないといけないという大変さが滲み出ていました。

あらためてあの番組は60年代・70年代の反体制的なカウンターカルチャーの中で生まれたあの時代らしいエンターテインメントだったんだなと思いますね。

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出演者だけではない、伝説の功労者

他にも勘弁してくれというほどに問題が連発する『サタデー・ナイト NYからライブ!』。とくにテレビ業界の構造的な問題もしれっと素直に描いているのも印象的です。

最大の壁はやはりテレビ業界の重鎮たち。新米若造のローン・マイケルズにとってはデイヴ・テベットらがズラリと並ぶあの空間はさぞかし威圧的で怖かったはず。ただでさえこの番組は反体制的なものなので、まさにこのテレビ業界にこそ真っ先に喧嘩を売らないといけません

そこでだんだんと助太刀が入っていき(チェビー・チェイスだけでなく、終盤にはアンディ・カウフマンも助け船でくるのがなんか妙にアツい)、それが番組のチーム力になっていく。この展開が良かったです。

検閲にも挑んでいく姿も同時並行で描かれてもいました。

また、大物コメディアンのミルトン・バールなんて結構嫌な奴として描かれていますけど、ここもトーンを変えてもっとシリアスに職場のセクシャル・ハラスメントを告発するような方向に持っていくこともできなくはありません。

しかし、本作はそこは『SNL』流であり、しっかり女性コメディアンやその他の女性の仕事人たちの存在感を持って描くことで、その抵抗のパワーにさせています。どうしても「か弱い」か「やたら真面目」かという二極的な女性像がビジネスものには付きまといがちですが、こういうコメディの力というのは女性の武器にもなることが示されていたのではないでしょうか。

さらに『サタデー・ナイト NYからライブ!』でいいなと思ったのは、さまざまな仕事をしている人たちを映し出してくれるところです。

有名な出演者はもちろんですが、全然無名な働き手もいっぱい裏にはいました。

個人的にピックアップしたいのは、舞台デザイナーのレオ・ヨシムラ。『SNL』の初回から50周年を迎えた今までずっと番組に継続して関わり続けている唯一の人物というThe Wall Street Journal、最も地味ながら最も過小評価されてきた真の偉人ですよ。放送直前にみんなでガーっとレンガを敷き詰めて一緒に作業していくシーンが最高です。

「Live from New York, it’s Saturday Night!」というお決まりのセリフでこの映画が終わるのだろうなということは観る前から察せていました。でも…それでもあのラストの高揚感は感動しますね。

『サタデー・ナイト NYからライブ!』
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)2024 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II LLC. All Rights Reserved. サタデーナイト

以上、『サタデー・ナイト NYからライブ!』の感想でした。

Saturday Night (2024) [Japanese Review]サタデー・ナイト NYからライブ!』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2024年 #ジェイソンライトマン #ガブリエルラベル #レイチェルセノット #クーパーホフマン #テレビ業界