まず男性監督の数を増やさないとね…「Netflix」映画『レディース・ファースト?!』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年)
日本では劇場未公開:2026年にNetflixで配信
監督:テア・シャーロック
セクハラ描写 性描写 恋愛描写
れでぃーすふぁーすと

『レディース・ファースト?!』物語 簡単紹介
『レディース・ファースト?!』感想(ネタバレなし)
視聴は別にレディース・ファーストでなくてもいいです
日本の初の女性首相がアメリカの男性大統領を前に飛び跳ねてじゃれつき、夫婦で同姓にするか別姓にするか自由に選択できる制度も実現の見込みなく、多くの女性たちはパートや非常勤の職に偏重し、女性の市長が育休をとると怒りだす人が現れ、子どもを産める身体を大切にしましょうという取り組みが自治体によって推進され…。
国家や社会に染み込んだ女性差別がこれほどまでに明確に可視化されているんだから…と思うのですが、理解してくれない人はいつまでも理解してくれません。
もうそういうものなのでしょうか。ジェンダーの壁は壊せないのでしょうか。
SFというフィクションでは、男性と女性のジェンダー役割を逆転させた「架空の世界」を描くことで、その不条理な力学を物語として提示してみせてきました。例えば、1977年の“ゲルト・ブランテンベルク”の小説『Egalia’s Daughters』や、1994年の“アーシュラ・K・ル=グウィン”の小説『The Matter of Seggri』などは、そのサブジャンルの古典です。
映画でもそのSF的なアプローチを採用する作品がいくつもみられてきましたが、2026年にはまた新しい映画が加わりました。
それが本作『レディース・ファースト?!』。
本作はアメリカの映画で「Netflix(ネットフリックス)」のオリジナル独占配信作なのですけど、実は2018年のフランス映画『軽い男じゃないのよ』のリメイクであり、こちらも日本含め、Netflix配信でした。
物語としては、ある女性蔑視な横柄なひとりの男が主人公で、ひょんなことから「現実と瓜二つだけど、男女のジェンダー役割が反転した世界」に迷い込んでしまう…というもの。この世界では、家父長制ならぬ家母長制が当然とされ、女中心の社会で、多くの女は下劣な男性蔑視な振る舞いをし、企業の上層部を独占しています。一方の男たちは女に性的にしか見られず、家事や育児を担わされ、職場では冷遇されます。
『レディース・ファースト?!』は元の映画と世界観はほぼ同じですが、細かな流れやキャラクターの背景は違っています。一番に明らかな特徴は、よりハリウッドらしい典型的なオフィス・コメディになったことかな。
『軽い男じゃないのよ』の公開時からハリウッド・リメイクの話はあったのですが、だいぶ企画が漂流したのか、今になってやっとのお披露目です。
『レディース・ファースト?!』を監督したのは、『リトルハンプトンの怪文書』を手がけた“テア・シャーロック”。
脚本は、『ブロークン・ハート・ギャラリー』の“ナタリー・クリンスキー”、ドラマ『シュミガドーン!』の“シンコ・ポール”、『ドント・ウォーリー・ダーリン』の“ケイティ・シルバーマン”の名がクレジットされています。私の勝手な想像だと、これは脚本がいろいろなライターの間でたらい回しにされたパターンではないだろうか…。
俳優陣は、『ボールズ・アップ』の“サシャ・バロン・コーエン”、ドラマ『ホイール・オブ・タイム』の“ロザムンド・パイク”、『木曜殺人クラブ』の“リチャード・E・グラント”、『ジェイ・ケリー』の“エミリー・モーティマー”、『フランケンシュタイン』の“チャールズ・ダンス”、『エコー・バレー』の“フィオナ・ショウ”、『スランバーランド』の“ウェルチェ・オピア”、『ヘッダ』の“キャスリン・ハンター”、『パディントン2』の“トム・デイヴィス”など
後半の私の感想では、わりと酷評気味な感想を書いているのですが、よければ続きをどうぞ。
『レディース・ファースト?!』を観る前のQ&A
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Q『レディース・ファースト?!』は日本ではいつどこで配信されていますか?
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A
「Netflix」でオリジナル映画として2026年5月22日から配信中です。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 企業内でのセクシャル・ハラスメントの描写があります。 |
| キッズ | 露骨に性的な話題が多々あります。 |
『レディース・ファースト?!』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
広告大企業「アトラス」の重役を務める50代のダミアン・サックスという男は人生を謳歌していました。富と女、何でも揃っています。交友があるのはみんなビジネス界の大物の男たちだけ。彼らが所有する島で、贅沢なバカンスを過ごし、一夜限りの女に別れを告げ、またのんびりくつろぐ。そんな日々です。
しかし、アトラス社に女性の重役がいないという話になります。取引相手はそういう男女のバランスに欠ける企業とは契約しづらいようです。
そのとき、その場にいたダミアンは「大丈夫。実は先週に優秀な女性をひとり昇進させました」「実力があったので。フェミニズムは数の問題ではありませんよ」と自信たっぷりに告げます。
上司のフレッドはそれがダミアンのデマカセだと見抜き、そのお茶目に満足。そして、自分は引退するので次期CEOとして取締役会に推薦すると言ってくれます。
これは最大のチャンスです。ダミアンは部下のルビーという女性にすぐさま電話し、昇進候補の女性を見つけろと言います。このまま嘘で済ますとさすがにバレたときにマズイので、表向きだけでも女性を配置しておこうという策です。
手頃な女性として名が挙がったのは、アレクサンドラ(アレックス)・フォックスでした。ただABC順で名前検索したときに、最初に表示されたのが彼女だっただけです。
何も知らないアレックスは会議に呼ばれたと知り、20年働いて自分の企画がやっと認められたと感じ、涙ぐみます。
ダミアンが実家に帰宅すると、父と母、妹のサニーとその夫クリス、サニーとクリスの子どもである元気な男の子2人がいました。ダミアンは独身です。
翌日、アレックスが出社すると、ダミアンが迎えてくれます。すっかり自分の企画が始まると思い込んでいます。ダミアンは、秘書のフェリシティ、掃除員のグレンダなど女性たちに上から目線で声をかけつつ、自分のオフィス・ルームに。
さっそく商品宣伝を検討する会議が始まります。けれども、男性社員がどんどん発言しまくり、アレックスの存在は無視されます。女装した男が登場する宣伝の案が男たちだけで盛り上がり、アレックスの関与する隙もなく、決定してしまいます。
さらに今回の自分の起用は「女性」ゆえのお飾りだとアレックスは知ります。それを問うと、ダミアンは「今の世の中は、ストレート男性に厳しく、君のような女性には甘いだろ?」「不都合はすべて差別のせいにされる」と言ってのけます。
侮辱されたアレックスは辞めるとその場で言い放ち、エスカレーターを降ります。ダミアンはそんなアレックスを追いかけている最中、電柱に頭をぶつけてしまい…。
目が覚めると、女性警官が傍にいて「ピルを服用していますか?」と心配されました。
意味もわからず、オフィスに戻ると、社員全員にじろじろ見られ、自分のオフィスがアレックスの部屋になっていて、フレッドはアシスタントに、フェリシティがCEOに、グレンダはアトラスの取締役会長になっていました。
これは一体どういうこと…。

ここから『レディース・ファースト?!』のネタバレありの感想本文です。
期待をはるかに下回る風刺
『レディース・ファースト?!』、私は観る前は「2026年に配信される新作なのだから、2018年の元の映画よりも風刺は現代的かつ独創性があるものになっているよね」と思っていたのですが、その期待をはるかに下回る出来栄えでしたね…。これだけ豪勢な俳優が揃っているのに、なんでこんなにも無駄遣いで終わっているのか…。
いや、もちろん「男女逆転世界」はちゃんと描けてはいます。いかに現実では普段から女性が構造的差別に晒されているのか、これならダミアンみたいな男でも嫌でもわかるだろうというクドさです。このクドさは元の映画から引き継いでおり、そのわざとらしさも含めて意図的なので、そこは別に構いません。
しかし、作中ずっとその男女逆転ネタが続くだけ。「ハリー・ポッター」じゃなくて「ハリエット・ポッター」とか、「私の身体、私の選択」じゃなくて「私の精子、私の選択」とか、「アーメン」じゃなくて「アーウィメン」とか、そういう言葉遊びから、睾丸ブラジャーのような珍アイテムまで。その合間に、男性差別の小粋なジョークが飛び交い、どれも下品なノリです。
さすがに食傷気味になってきます。これはもうわかったから、そこからどんな次なる風刺のステージをみせるのかとこちらは期待するのに、あまりその先に進みません。
“サシャ・バロン・コーエン”が起用された理由だけはよくわかりましたけどね。彼が普段からやっている持ちネタのジェンダーのギャグをそのまま流用している感じです。
結果、待っているのは、「嫌な男が改心しました」という『ハート・オブ・ウーマン』のエンディングです。でもそんなオチはみんなわかっているじゃないですか。せっかくこんな手の込んだSFをやるなら、もっと踏み込んだ風刺はないのか、と。
別に元の映画もそこまで革新的だったわけではないのですけど、『レディース・ファースト?!』は元の映画よりも挑戦しなくなっており、無難な男女の二項対立にしか焦点をあてません。
中高年が主題になっているのも、単に典型的なジェンダー役割を固定しやすいからですし、若者を題材にしないのは若者の先進的なジェンダーの感性が邪魔だからに他なりません。1990年代くらいの古い男と女のキャラクターを反転させ、ここでもやっぱり恋愛はさせて、改心したらはい終わり…というのは…。映画1本かけてやることなのか…。
オフィスものにしてしまったせいで、『プラダを着た悪魔2』が公開された2026年に並ぶ映画としては、ものすごくひと昔前の作風になっちゃったのではないでしょうか。

酔えないフェミニズム
私はこの『レディース・ファースト?!』で新しく風刺として到達すべきは、やはり性的マイノリティをどう描くかだと思うのです。
実は元の映画だと性的マイノリティにみえると解釈できる人たちは描かれていました。厳密にはあの世界における性規範に当てはまらない生きかたをする人たちです。あの世界なら性的マイノリティのありかただって変わってくることを示唆する内容だったと思います。
『レディース・ファースト?!』ではその元の映画が踏み込んだわずかなシーンすらもバッサリ無くなっています。一方で、あの企画会議では「女性の視点」は形だけで、ダミアンら男たちは「女装」のアイディアで自己満足に浸っており、これはトランスフォビア的です。そのうえ、その後の言い訳タイムではダミアンは「ストレート男性」の生きづらさをいけしゃあしゃあと語ってみせます。
要するに作中で性的マイノリティの存在に触れはするのに、直接は描かないんですね。男女の反転がわかりにくくなるからなのでしょうけど、そのわかりにくさも風刺してこそ、SFの醍醐味でしょうに…。
実際、最近の男女逆転SFは性的マイノリティまで包括した作品がわりと続々と登場しています。そのSF作品群と比べると、この『レディース・ファースト?!』の風刺が物足りないのは当然でしょう。
また、私が今回の映画で最もダメだなと感じたのは、ギネス・ビールを扱っていることです。
確かにギネス・ビールはフェミニズムによる企業改革に積極的な歴史があります。今回の映画に登場を許可しているのも自信の表れでしょう。
ただ、それはアルコールの女性市場を開拓するためなんですよね。アイルランドの会社であるギネスは、従来はパブで男たちが飲むものだったアルコールのイメージを払拭し、女性ウケを狙うことで市場拡大を成功させました。これはギネスだけでなく、アルコール業界全体がそういう傾向にあり、日本でもアルコールのCMを見ればわかるとおり、当たり前に女性客層をターゲットにしたものが多いです。
それはつまりフェミニズムが商業主義に利用されているだけでしかないです。女性差別でストレスが増す女性たちに、アルコールを売り、一時の気持ちよさを提供し、アルコール依存症の女性が増える(現に増えています)…そしてアルコールはもっと売れる。これがジェンダー平等なのか?って話で…。
本作はこの構造的歪みから目をそらし、広告の表象の話(性差別的な広告が悪いのはそれはそうだけど)にすり替えています。
この映画はそういうフェミニズムが商業に利用されることに無頓着すぎており、最終的にギネス・ビールの宣伝をして終わります。こここそ批判されないといけないですし、まさに「女性を企業利益で利用する当初のダミアン」と同じことをこの映画はラストでやってしまっているのではないか…。
女性CEOもいないNetflixがこんな商業フェミニズム映画を作ること自体が二重三重に白々しいですよ。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『レディース・ファースト?!』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Netflix レディースファースト
Ladies First (2026) [Japanese Review] 『レディース・ファースト?!』考察・評価レビュー
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