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『X-MEN アポカリプス』感想(ネタバレ)…敗因は「真面目すぎた」

X-MEN アポカリプス

敗因は「真面目すぎた」…映画『X-MEN: アポカリプス』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:X-Men: Apocalypse
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年8月11日
監督:ブライアン・シンガー

X-MEN: アポカリプス

えっくすめん あぽかりぷす
X-MEN アポカリプス

『X-MEN アポカリプス』物語 簡単紹介

はるか昔からミュータントの力を利用して神として世界を支配していたアポカリプスが、数千年の眠りから覚醒した。弱者に厳しいアポカリプスがこの現世に納得いくはずがなく、さっそく支配の一手に乗り出す。アポカリプスは世界に新たな秩序をもたらすため、マグニートーらを従えて世界の破滅を計画。平和を守るプロフェッサーXやミスティークらが率いる若きミュータントたちと対決する…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『X-MEN アポカリプス』の感想です。

『X-MEN アポカリプス』感想(ネタバレなし)

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チャールズ、ついに禿げる

今や日本の国民的漫画といっても差し支えない「ONE PIECE」は、最新巻が400万部以上を世に送り出すバケモノ級ヒット漫画です。

しかし、世界にはこれ以上売れた漫画が存在します。

それが「X-MEN」です。

その数、850万部以上。「ONE PIECE」の2倍以上売れた作品と説明すれば、日本人にも凄さが伝わるでしょう。

「X-MEN」は、ミュータントと呼ばれる突然変異によって超人的能力を持って生まれた存在の活躍を描くアメコミ。バトル漫画としてみてもいいのですが、このシリーズがここまで人気になった大きな理由は、ミュータントたちをマイノリティとして重ね合わせて見られるという点。人種、宗教、LGBTといった代表的なものに限らず、誰しも何かしらのマイノリティ的要素を抱えているものです。だからこそ本シリーズは多くの人から共感を呼んで愛されてきたといえます。

映画化もたくさんされてきました。

・『X-メン』(2000年)
・『X-MEN 2』(2003年)
・『X-MEN: ファイナル ディシジョン』(2006年)
・『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(2009年)
・『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011年)
・『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013年)
・『X-MEN: フューチャー&パスト』(2014年)

そんな「X-MEN」映画の最新作が本作『X-MEN: アポカリプス』となります。

こんなにたくさん映画があると、アメコミに詳しくない人は最新作を観ても理解できないんじゃないかと敬遠したくなるでしょうが、意外とそこまで難しく考えなくても大丈夫です。

たぶん映画製作者もそういう懸念があったのか、前作『X-MEN: フューチャー&パスト』で過去に戻って歴史を変えるという展開が用意されており、ストーリーの時間軸が変わりました。つまり、最も過去の話の『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』と、時間軸が変わった『X-MEN: フューチャー&パスト』の2作だけ観ておけばだいたいストーリーについていけるということです。この2作と本作を合わせて3部作となります。それ以外の作品は別の時間軸の話という扱いです。

最近だと『デッドプール』も「X-MEN」の系譜ですが、これは単体で楽しめるスピンオフ的位置づけなので気にしないで良し。

まあ、といっても本作は3部作の完結編ということもあって、ファン向けであることは否めないですが。

例えば、ポスターで中央の目立つ位置に陣取る“禿げた男”が、本編始まってもなかなか登場しないし、登場したらしたで「X-MEN」を知らない人は「誰?」となるでしょうし…。彼“プロフェッサーX”ことチャールズは、年老いた姿で登場する過去作ではスキンヘッドであるため、この新たな時間軸ではスキンヘッドになる過程が描かれるのが、ファン的見どころのひとつなのです。

彼がどうして禿げたのか、気になる人は観ましょう。

まあ、そんなマニアックなところはさておき、普通にアクションや俳優の魅力で楽しんでください。

俳優陣は、“ジェームズ・マカヴォイ”、“マイケル・ファスベンダー”、“ジェニファー・ローレンス”、“ニコラス・ホルト”、“ローズ・バーン”、“エヴァン・ピーターズ”、“ソフィー・ターナー”、”タイ・シェリダン”、“コディ・スミット=マクフィー”、“アレクサンドラ・シップ”など。

そして今作の悪役を演じるのは“オスカー・アイザック”です。

監督は『X-MEN:フューチャー&パスト』に引き続き、“ブライアン・シンガー”となります。

「X-MEN」はどこまで続くのかな?

↓ここからネタバレが含まれます↓

『X-MEN アポカリプス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):古のミュータント、覚醒

紀元前36世紀、ナイル川流域。巨大なピラミッドがそびえたつこの文明には崇拝の対象となっている者が存在しました。その存在がピラミッド内部に入り、儀式を始めようとします。横になり、自らの老いた体から新しい若い体へ魂を移行させるのです。

しかし、それは直前に中断を余儀なくされます。強大な支配に反感を持った一部の者たちが反乱を起こしたのです。ピラミッドは崩壊し、4人の従者の犠牲も虚しく、その支配者は生き埋めになってしまいます。

こうして最古のミュータントは地中深くに封印されたのでした。

1983年のオハイオ州。1973年にミュータントの存在が公になり、学校でその存在について学ぶのも普通になりました。授業中、スコットは目に異変を感じ、トイレに駆け込みます。そして目から赤いビームを放出。トイレのドアも壁も破壊するも、自分ではどうすることもできません。

東ドイツでは、姿を自由自在に変えることができる能力を持つミュータント「ミスティーク」ことレイヴンが、地下で行われるファイト・クラブで戦う翼が生えたミュータントの「エンジェル」を発見します。相手として戦いを強制されているのは、瞬間移動できる青い獣のようなカート・ワグナー「ナイトクローラー」です。追い込まれたカートはエンジェルを撃退し、羽を黒焦げにします。その瞬間、レイヴンが騒ぎを起こし、カートを救出。

一方、ポーランドではひとりの男・エリック・レーンシャーが工場で働きつつ、家族と静かに過ごしていました。エリックはかつて「マグニートー」と名乗り、特殊な力で世界に危機を招いたことがありましたが、今は平穏な生活に満足しています。

目の異変で日常生活が送れなくなったスコットは、「プロフェッサーX」ことチャールズ・エグゼビアが開く「恵まれし子らの学園」に招かれます。強力なテレパスの使い手であるジーン・グレイと知り合いつつ、兄の「ハボック」ことアレックス・サマーズの戦友で今は教師をしている「ビースト」ことハンク・マッコイを紹介されます。

ここはミュータントと呼ばれる特殊な能力を持つ人間が集う場所。「僕は恵まれているとは思わない」…そう悲観的に言うスコットですが、仲間との交流で心はほぐれていきます。

しかし、そんな日常は激震に揺れることに。

古代エジプトを統べていた古のミュータント「エン・サバ・ヌール(アポカリプス)」が復活したのです。

それはかつてない世界終焉の戦いの幕開けを告げるもので…。

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アポカリプス先生、間違ってます

本作『X-MEN アポカリプス』は決してつまらなくはないけれど、三部作の完結作にしてはエモーショナルな盛り上がりに欠ける…それが所感でした。

その理由は「真面目」。

「X-MEN」映画は登場キャラクターがとても多いのが特徴であり、よく『アベンジャーズ』状態にあります。本作では、それぞれのキャラにちゃんと活躍シーンを用意しているのは良かったです。とくに大爆発するプロフェッサーXの屋敷から子どもたちを救出するクイックシルバーのシーンは、コミカルで楽しい。これぞコミック映画です。

ただ、本作はご丁寧なことに同時並行で描かないのです。あるキャラクターの活躍を描いたら、次の場面に転換して別のキャラクターの活躍を描く…。この繰り返し。なかにはわざわざキャラクターの見せ場のためだけに大舞台を用意しています。

その最たるものが、捕まったミスティークら先輩ミュータントたちを救うため、ジーンたち若手ミュータントたちが基地に侵入する場面。ここは人気の高いウルヴァリン(ウエポンX)をだすためだけのシーンになっていました。ファンはそりゃあうれしいけど、映画のお話しには全く絡まないので必要性は…ない。

あとCIAのモイラが序盤からずっと参加していたわりに活躍がなかったですが、これもラストの記憶を返すシーンのためだけに付いていかせただけでした。

本作のブライアン・シンガー監督は、「X-MEN」過去作映画の監督ということもあり、しっかり「X-MEN」に向き合って本作を製作したことはよーく伝わってきましたが、ちょっと真面目一辺倒すぎる気もします。

ゆえに上映時間144分と長くなっています。

真面目なのは監督だけではありません。

本作の悪役、アポカリプスがそうです。

私のアポカリプスの印象は「政治家みたい」。なんか技量もあって、キャリアも誇れるのに、世間ずれしている政治家を連想しました。大物なのに、平然と失言するタイプですね。まず、律儀に仲間探しに訪ね歩くんですから。しかも、ちゃんと自分の信念を語り、説き伏せる。普通のよくある映画の悪役だったら、強引に洗脳とか脅しとかの手段をとるのに。でも4人しか集めないというウッカリさも兼ね備えていて、もうちょっと増やせよとはツッコミたくなりました。人数不足でセルフ魂移し儀式になっちゃってたのが、なんか可愛い。また、攻撃前に全人類にメッセージを送って知らせてあげるのも、真面目さが表れています。問答無用で攻撃してもいいんだよ?

この真面目さゆえにシーンの尺が伸びる伸びる。

本作ではプロフェッサーXとマグニートーの“イチャイチャ”があんまりなかったのが一番残念だったのですが、そんなことをこの真面目が取り柄のアポカリプスが理解しているわけもなく…。完全に空気の読めない奴でした。きっとアポカリプスははるか昔に周りの人に持ち上げられすぎて勘違いしちゃった奴なんでしょう。

他にもプロフェッサーXとマグニートーも随分あっさり仲直りしたし、ミュータントが社会に受け入れられるのも無理がある気がするし、いろいろ雑です。過去2作から続くこのテーマをメインに描けばよかったのに。

アポカリプスはこの一作で終わるキャラにせず、次の3部作でじっくり描いてほしかったかな…。

『X-MEN アポカリプス』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 48% Audience 65%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
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関連作品紹介

『X-MEN アポカリプス』の続編の感想記事です。

・『X-MEN ダーク・フェニックス』

作品ポスター・画像 (C)2016 MARVEL & Subs. (C)2016 Twentieth Century Fox Xメン アポカリプス

以上、『X-MEN アポカリプス』の感想でした。

X-Men: Apocalypse (2016) [Japanese Review] 『X-MEN アポカリプス』考察・評価レビュー