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『X-MEN ダーク・フェニックス』感想(ネタバレ)…さらば20世紀FOX-MEN

X-MEN ダーク・フェニックス

さらば20世紀FOX-MEN…映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』(エックスメン ダークフェニックス)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Dark Phoenix
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年6月21日
監督:サイモン・キンバーグ

X-MEN ダーク・フェニックス

えっくすめん だーくふぇにっくす
X-MEN ダーク・フェニックス

『X-MEN ダーク・フェニックス』あらすじ

X-MENのリーダーであるプロフェッサーXの右腕として、メンバーからの信頼も厚い優等生のジーン・グレイだったが、宇宙でのミッションで起きた事故をきっかけに、抑え込まれていたもうひとつの人格「ダーク・フェニックス」が解放されてしまう。ジーン自身にも制御不能なダーク・フェニックスは暴走をはじめ、かつてない危機が訪れる。

『X-MEN ダーク・フェニックス』感想(ネタバレなし)

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X-MEN、会社ごと終わるってよ

なんかいろいろなビッククラスの人気シリーズ作品の終わりがいっぺんに訪れているような気がして寂しい今日この頃。

『アイアンマン』から始まる「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」もこの前の『アベンジャーズ エンドゲーム』、そして『スパイダーマン ファー・フロム・フォーム』で一区切りがつきます。新3部作を熱狂と共にスタートさせた『スター・ウォーズ』シリーズもこの12月の公開の新作で根幹を成してきた主人公「スカイウォーカー」の物語を終わらせると製作陣は語っています。ドラマシリーズ作品の常識を打ち破って偉大な歴史を築いた『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズも第8シーズンでついに大団円を迎えました。

どの作品も進行中は熱中しているので終わりのことなんて考えないのですが、やっぱり走っていればゴールテープには必ず到着するものなんですね。今は、ある種の映画史におけるひとつの時代の転換点なのかもしれません。

そしてこのデカイ作品群も終わりの時が来てしまいました。『X-MEN』シリーズです。

振り返れば歴史は本当に長いものです。出発点は2000年の『X-メン』。この作品の成功はとにかく意義深く、なにせこれが上手くいったからこそ、後の『スパイダーマン』シリーズも、『ダークナイト」シリーズも、MCUシリーズも続くことができたのですから。まさしく偉大なる先人です。

そこから2003年の『X-MEN2』、2006年の『X-MEN: ファイナル ディシジョン』と一応の3部作が続き、続いて心機一転するかたちで2011年に『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』が開始。と思ったら、2014年の『X-MEN: フューチャー&パスト』で過去3部作と現シリーズを物語設定上、融合させて新機軸を作るという荒業を披露。そこから2016年の『X-MEN: アポカリプス』で新生X-MEN誕生を描きました。

それだけではありません。人気キャラであるウルヴァリンことローガンを主軸にしたスピンオフも展開。2009年に『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』を始動させ、2013年には日本人困惑の日本舞台の『ウルヴァリン: SAMURAI』という衝撃作を挟み、2017年には『LOGAN ローガン』がアメコミに厳しい批評家からも大絶賛を受けたことで、幕を閉じました。

さらに最近は、アメコミの新しい潮流である自由奔放なコメディスタイルに特化した『デッドプール』シリーズも2016年の1作目から成功させます。R指定でもアメコミはいけることを証明し、2018年の『デッドプール2』は意外といったら失礼なほど下品だけど感動の映画に仕上げていました。

こんな風に語り始めるとものすごく長くなる『X-MEN』シリーズなのですが、ついに本作『X-MEN ダーク・フェニックス』で完結です。

しかもこの完結…ちょっと他作品の完結とは重みというか、意味が違っているのですよね。映画通の方はご存知のとおり、ずっと制作・配給を手がけてきた20世紀フォックスは2019年をもってディズニーに買収され、会社ごと完結したのでした。まさかこんな終わりを迎えるとは…当初は想定すらできなかったです。

まあ、とはいってもディズニーに買収されたから、今回、『X-MEN ダーク・フェニックス』で終わりになるわけではなく、長らく製作に関わってきた“サイモン・キンバーグ”いわく、もともとそのつもりだったそうで、どっちにせよ区切りのつく作品だったのでしょう。

「ダーク・フェニックス・サーガ」という人気コミックシリーズを題材に満を持して持ってきて、“サイモン・キンバーグ”自ら監督に乗り出しているあたりで、その本気が窺えます。

『X-MEN』シリーズを追いかけてきた人はもしかしたら結構な古株のアメコミファンかもしれませんが、最近のMCUから入った新参者の人でも、これを機に『X-MEN』シリーズに触れてみるのもいいのではないでしょうか。ラストチャンスかもしれないですから。

そんな時間ないよという方は最低限『X-MEN: アポカリプス』一作を観ておけば、たぶん大丈夫なのでご安心ください。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(アメコミファンは必見)
友人 ◯(趣味の合う同士で観よう)
恋人 ◯(このジャンル好きならOK)
キッズ ◯(アメコミ好きの子どもと)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『X-MEN ダーク・フェニックス』感想(ネタバレあり)

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10年で成長しました

物語は1975年から開始。8歳のジーン・グレイが少女時代、両親と一緒に車に乗っていると、能力が暴走。車は交通事故で派手にクラッシュし、ジーンは親と離ればなれに。そこにやってきたのは、まだ髪の毛があまりまくっているほどフッサフサのチャールズ・エグゼビア。後に「プロフェッサーX」となる彼は特殊な能力を持つゆえに社会から孤立するミュータントを助けており、ジーンを「恵まれし子らの学園」に連れていくのでした。

そして月日は流れ、1992年。ちなみに前作『X-MEN アポカリプス』は1983年の出来事だったので、新生X-MENが誕生してから約10年が経過していることになります。その間、姿を自由に変えられる歴戦のミュータントである「ミスティーク」ことレイヴン・ダークホルムの指導のもと、すっかりチームとしてまとまりができている新世代X-MEN。

スペースシャトル「エンデバー」が打ち上げられ、アメリカが湧いている日。トラブルは起こります。太陽フレアらしきものの異常のせいで、コントロール不能に陥ったスペースシャトルのクルーたち。この緊急事態を助けられるのは、X-MENしかいない。いつもの飛行機に乗り込み、さっそくチームで宇宙へ向かいます(もうX-MENがNASAで宇宙作業やればいいんじゃないかな)。

余談ですがこのエンデバー。1992年には日本人初の宇宙飛行士である毛利衛氏も搭乗していたんですよね。作中のアレにも乗っていたのかな。

例によって例のごとく、空間移動ができる「ナイトクローラー」ことカート・ワグナーと、高速移動ができる「クイックシルバー」ことピーター・マキシモフという、ほぼチートレベルの能力者の活躍もあって、破壊寸前のシャトルからクルーを着々と救出する一同。しかし、最後までシャトルの崩壊を抑えていたジーンが太陽フレアの放射線による異常なエネルギーの直撃を受けてしまいます。

なんとか無事に目を覚ましたジーンは、チームとともに地球に帰還。盛大な歓声とともにX-MENの活躍を抱える民衆たち。『X-MEN フューチャー&パスト』や『X-MEN アポカリプス』の時は、まだミュータントへの世間の差別意識が目立っていましたが、『X-MEN ダーク・フェニックス』の時代はそういうネガティブな認識も消え、完全にヒーローとして確立しているようですね。

しかし、この宇宙での一件をきっかけにジーンの中で「ダーク・フェニックス」という別人格が覚醒。大切な家族であるはずのチャールズ含む学園の仲間と対立し、ジェノーシャというミュータントのコミュニティを作って暮らしていた「マグニートー」ことエリック・レーンシャーとも決裂。さらにはその強大な力をめぐって「D’Bari」という宇宙種族のリーダーであるヴォルグが人間の女性の姿で接近。自分の存在に悩み苦しむジーンを中心として壮絶な戦いが始まります。

ファンにとってはいよいよ待ちに待った「ダーク・フェニックス・サーガ」の映画化であり、これまで歴史を積み重ねてきたキャラクターたちそれぞれの終着点が用意される物語。『X-MEN』シリーズはやたらと時代が10年間隔くらい飛んで作品が作られることが多いので、そのぶんの成長も見られるのが一番の醍醐味かもしれませんね。

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ジーンに主体性はあるのか

一方で、作品世界観の深く没入しているファンであればある程度の補完が自分でできるので気にしないかもしれませんが、純粋に物語として見ると、いろいろと粗雑な点も私は気になる映画でした。
とくに3人の女性キャラクターに着目するとわかりやすいかなと。

ひとりはもちろん本作のメインである「ジーン」です。これまでの『X-MEN』シリーズは群像劇スタイルではあるのですが、基本は「プロフェッサーX」と「マグニートー」もしくは「ウルヴァリン」を主体にストーリーを引っ張っていました。ところが今回は「ジーン」に主軸を置き、これもイマドキらしい女性ヒーロー映画と呼んでもいいのかもしれません。

しかも、偶然だとは思いますが、同じくマーベルの女性ヒーロー映画である『キャプテン・マーベル』とすごく物語プロットが似通っているのですよね。まず主人公が不慮の事故で特殊なエネルギーを浴びて力を手に入れる女性だということ。敵がシェイプ・シフターという姿を自由に変えて潜伏できる能力を持っていること。主人公の前に現れる敵か味方かわからない強大な存在が女性だということ。最後に主人公が自分の力を解放して敵を圧倒すること。正直、似すぎなくらいです。

でも、同じ要素を多数持ち合わせているわりに、なんというか『キャプテン・マーベル』ほどカタルシスも何もないこの消化不良感…。なぜなのか。

私なりに考えると、ジーンにだけ焦点を絞った話になっていないから…というのが最大の原因かもしれないです。

そもそも過去作『X-MEN: ファイナル ディシジョン』でも実は「ダーク・フェニックス・サーガ」の要素が挿入されており、ジーンをめぐるドラマもかなり似通っています。なので、一種の作り直しに近いとも言えます。結果、ジーンを主体にする部分は一層強化されました。本作の原題が「Dark Phoenix」で「X-Men」の単語がシリーズ初めて無いのも、ジーンがメインですよという強いアピールなのかも。

それでもやっぱりジーン以外の要素も目立ちますよね。相変わらずチャールズとエリックは喧嘩という名の“イチャイチャ”をするし、ジーンに好意を寄せる「サイクロップス」ことスコット・サマーズの視点にもなるし、ある重要なキャラクターの死も描かれるし(後述)、その死を嘆いで関係にヒビの入る「ビースト」ことハンク・マッコイの苦悩も描かれるし…。

もちろん過去作以上に整理整頓された物語だったと思います。ウルヴァリンは完全に出てきませんし、他の若かったX-MENメンバーも戦闘に加わる程度で前には出てきません(まあ、実はエリックの息子であるクイックシルバーの件はどうなったんだと思いましたけど)。

しかし、やはりジーンの主体性は他の女性ヒーロー映画と比べたらかなり減退しているのは否めません。

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いろいろとハードルは高かった

あと2人の問題となる女性キャラクターは「ミスティーク」と「悪役のあの女」です。

『X-MEN ダーク・フェニックス』ではシリーズを通して重要な存在だったミスティークが死亡してしまいます。この死が物語を進めるうえでの都合のための感じがして、なんか雑なような…。

あんな吹き飛ばされて、たまたまそこに体にぶっ刺さるものがあって、それで死にました…というのも。今まで同じ吹き飛び方をして、割と普通に生きている登場人物がたくさんいたのに、今回は死にますというのもどうなのか。

ファンにとって思い入れのあるキャラの死はとても大事なこと。だからこそ『LOGAN ローガン』や『アベンジャーズ エンドゲーム』ではあそこまで徹底的に寄り添ってひとりの死を丹念に描いて弔うわけじゃないですか。『X-MEN ダーク・フェニックス』は葬儀はするものの、妙に事務的に死が台本の1ページのように流されすぎな面も。

そして「悪役のあの女」。小物だった…。前作のアポカリプスも案外“小物臭”がありましたけど、今作はさらに輪をかけてあれだった。もうちょっと魅力的な悪役は作れなかったものか。ちなみに登場する「ミュータント制圧部隊」が「MCU」なのはちょっと好き。

ジーンも、ミスティークも、悪役のあの女も、演じているのは素晴らしい実力のある女優ばかりです。ジーンを演じた“ソフィー・ターナー”は『ゲーム・オブ・スローンズ』の名演を知っている人なら言わずもがなですし、他の二人を演じる“ジェニファー・ローレンス”“ジェシカ・チャステイン”なんて最強クラスですよ。でもこの3人が揃っているのに、全然魅力を引き出せずに終わったかなと。

それ以外だと、細かい部分ですが良かった点はあります。能力の暴走で何もできず大切な人を死に至らしめてしまった序盤の交通事故に対して、終盤の列車大回転クラッシュでは能力を駆使して大切な人を守っている…この対比でジーンの成長を見せるとか。「Jean Grey School」に変わっての世代交代とか。やっぱりチャールズとエリックのチェスで幕を閉じるベタさとか。このチェスは実質セックスですよ、ええ(何を言っている)。

ただやっぱり世代交代のスピード、早すぎる…。前作で新生X-MEN誕生したばかりなのに。

でもわかりますよ。『X-MEN ダーク・フェニックス』はいろいろとハードルが高くなっているだろうということは。『アベンジャーズ エンドゲーム』という贅沢三昧の至れり尽くせりフルコースを観客は食べたばかりです。そりゃあ、舌も肥えてますよ。『X-MEN』シリーズ完結作を期待すると、う~んとなるのもね…(同情)。

まあ、あれやこれやと書きましたが、でもあれでしょう。みんな、「X-MEN」がMCUに組み込まれてどんな活躍をするのか、そっちの方が気になっているのでしょう。そうですよね。でも少し先の話にはなりそうですけど、フル新規キャストで描かれる「X-MEN」のリニューアルに早くもワクワクしてしまうのは、やっぱりこの世界の魅力ゆえです。

あと、忘れられていますが、『ニュー・ミュータンツ』という映画が、一応、現時点でも劇場公開予定にはなっています。すでに撮影済みで予告動画まであるのに、凄まじく公開延期しまくっていることで、ディズニー買収以前から話題だった作品なのですが、大丈夫なのかな…。

もちろん、『デッドプール』最新作も、きっとたぶんおそらくある…に違いない。

「X-MEN」はこれからも発展し続けます。終わりは始まりですよ。

『X-MEN ダーク・フェニックス』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 23% Audience 64%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

以上、『X-MEN ダーク・フェニックス』の感想でした。

Dark Phoenix (2019) [Japanese Review] 『X-MEN ダーク・フェニックス』考察・評価レビュー