アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅
映画『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』(アリスインワンダーランド2)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Alice Through the Looking Glass
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年7月1日
監督:ジェームズ・ボビン

【個人的評価】
 星 3/10 ★★
 

Plot Summary

3年に渡る大航海を終えロンドンに戻ってきたアリスは、喜びもつかの間、父の形見の船を手放さなければならなくなる。途方に暮れる彼女の前に、青い蝶が現れ、かつて訪れたワンダーランドの住人で友だちのマッドハッターの危機を告げる。ハッターを救うため、アリスは鏡を通りぬけて再びワンダーランドへ…。

ネタバレなし感想

またまたやってきた不思議の国

こんな私でも、子どもの頃、絶対に今いる自分の世界とは違う別の世界があると信じていたのです。なんかの拍子に行けるようになると、そこで全く新しい体験ができると、ワクワクしていたのに。どうですか。考えてしまいますよ、子どもから大人になって世界は広がったのか、いや狭くなったのじゃないかと…。そんなセンチメンタルな日々。

ということで本作『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』を見れば、そんな気分も紛らわせることができるのはと期待していました。

2010年に公開された『アリス・イン・ワンダーランド』は、有名な児童小説「不思議の国のアリス」の実写化作品であり、当時は3D作品の真新しさもあって、日米ともに大ヒットしました。


『アリス・イン・ワンダーランド』は原作の忠実な実写化に重きを置いた作品というよりは、遊園地のアトラクションのように世界観を楽しめることが魅力となっていました。なによりも、監督のティム・バートンらしい独特のキャラクターセンスや世界観が全面にでていました。不気味で個性の強すぎる面々。なので、映画『アリス・イン・ワンダーランド』と児童小説「不思議の国のアリス」はかなり作風が違うのです。

『アリス・イン・ワンダーランド』のお話は児童小説「不思議の国のアリス」(その続編「鏡の国のアリス」)の続編という作りになっていました。過去の少女時代に「ワンダーランド」を訪れた経験のある(でも夢だと思っていた)主人公アリス・キングスレーは、19歳になり、ある貴族の若者と半ば強引に婚約させられそうになっていたところ、再びウサギを追って「ワンダーランド」へ…というのが物語の始まりです。

そして、赤の女王が支配する「ワンダーランド」を救い、現実世界に戻って婚約を断り、船旅に出たアリスのその後を描くのが本作『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』。

またまたアリスは「ワンダーランド」に来ます。一体何回「ワンダーランド」を訪れるんだという感じですが、まあ、大人の事情です。ワンダーランドがコンビニ化しているような気もしないでもないですが、気にしないでください。

本作は完全なる“キャラクター”映画です。前作に登場したキャラクターと世界観にもう一度会える以上の楽しさはないと思います。なので、前作を見ていない人や前作が気に入らない人は置いてきぼりをくらうでしょう。まあ、そんな人は手を出さないか…。

あえていえば「ファミリー向けの作品」ともいえますが、主人公が道義的に許されない行動をとるがために、子どもに深くツッコまれると気まずくなるかも。作品には一応、教養的なメッセージはあるのですが…。というか、1作目の時からこの作品は教育とかそんな世間の常識では収まらない立ち位置で暴れていたと思うので、いまさらですかね。

あまり期待せず、軽い気持ちで見ることをおすすめします。

予告動画







↓ここからネタバレが含まれます↓ 





ネタバレあり感想

時間を無駄使いする主人公

公式ウェブサイトで監督が以下のように話しているとおり、本作にはわかりやすい“教養的なメッセージ”が込められています…いや、そうらしいです。
この映画の重要なテーマのひとつは、時間との向き合い方だ。父の死が原因でアリスは時間を敵視しているが、時間は何かを奪うのと同時に、何かを与えてくれる。今回の旅を通して、彼女は今という時間を生きることの大切さを学ぶんだ。 
込められているというよりは、アリスがわかりやすい説明ゼリフで臆面もなく語ってましたが…。

確かにテーマは真っ当なものです。誰もが共感できるテーマでしょう。

しかし、この映画がそれを伝えられているかといえば「NO」。少なくとも私には届きませんでした。その理由は、このテーマと主人公アリス(と仲間たち)がとる行動が矛盾しすぎているためです。

初めて作った父に渡した帽子を偶然発見したことから、突然衰弱し始めたマッドハッター。なんだかんだでアリスは彼を救うために、過去に戻ってマッドハッターの家族に会いに行こうとします。

ここからの行動が問題です。アリスは時を超えるために必要なアイテム「クロノスフィア」を時間の番人「タイム」から盗むわけです。犯罪です。しかも、「クロノスフィア」がないと世界が滅亡するというじゃないですか。ちょっと盗みますねでは済まされるレベルを大きく超えてますよ。そんな危険な行為をアリスとその仲間たちが平然と行う神経を疑います。

その後、過去に戻っても起こったことは変えられないということがわかったりしますが、死んだとされたマッドハッターの家族が実は赤の女王に捕まっていることが明らかになります。それくらい事前に予想してください。マッドハッターの家族が消えたのが赤の女王が反乱を起こした日なら、まず最初にアリスたちがとるべき行動は赤の女王を問いただすことでしょう。それにタイムに聞けばマッドハッターの家族の生死はわかったはずです。

そして怒りがわくのがマッドハッター。なぜか死にかけているマッドハッターにアリスが「家族は生きている、信じてる」みたいなことをいうとあっさり復活。そんな簡単に元気になるのか…

じゃあ、ほんと過去に戻る必要性なんてなかったわけです。時間の無駄でした。なんだこの盛大な回り道…。タイトルの副題は「(無駄に)時間をかけすぎた旅」っていうことだったのかな。

この映画は私たちから大切な時間を奪ってます。どうしてくれる、おいウサギ!(理不尽な八つ当たり)

アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅

謝っても許されないことがある

本作は、最初はマッドハッターの家族を探すことが物語の基本軸となっているのですが、最終的に赤の女王(イラスベス)と白の女王(ミラーナ)の確執と和解にすり替わってしまいます。

確執といっても、赤の女王と白の女王が子どものとき、お菓子を盗み食いしたミラーナがイラスベスに罪を擦り付けたというもので、どう考えても白の女王が悪い。

その確執も、白の女王が赤の女王に謝ることであっさり解決した感じになってましたが…。「それだけ!?」と思ってしまいました。

もちろん謝ることは大切です。子どもたちにも教えたいことです。でも、謝っても許されないことが世の中にはあるんです

本作では全体をとおして、アリスとその仲間たちは迷惑かけすぎです。赤の女王、タイム、そして「ワンダーランド」の住人に誠心誠意謝罪し、罪を償うべきでしょう。基本はもう大人なんですから。

なのになんでアリスは現実世界に戻ったらあんな偉そうに語っているのか…「こいつ反省してないな」と思わざるを得ないです。

映画の終盤はかなり急ぎ足でそのへんのフォローが全くなく、アリスたちの無責任さを強調してしまっており、いかんせん雑でした。

これなら先月公開された下ネタ・残酷描写のあるR15指定映画『デッドプール』のほうがまだ教養的なメッセージがあったと思います。
 
他にもダメなところを挙げだしたらキリがないんですが…。例えば、PVでも印象的に使われている時計の形をしたタイムの城まわりが物語に何も絡まないとか、アリスの船長設定に合わせるかのようなわざとらしい時間移動の波シーンとか、必要ない精神病院シーンとか。映画のビジュアルだけが浮いてしまっていました。

前作以上にこの話を「不思議の国のアリス」の世界でやる必要はなかったですね。とりあえずアリスはもうワンダーランドには来ないでください。

文句が多めになってしまったなぁ。きっとこれも時間を巻き戻せばなんとかなるか、よし。

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