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『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』感想(ネタバレ)…Netflix;ありえないはありうる

ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト

2020年のクリスマス映画のベストはこれ?…Netflix映画『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Jingle Jangle: A Christmas Journey
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2020年にNetflixで配信
監督:デヴィッド・E・タルバート

ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト

じんぐるじゃんぐる まほうのくりすますぎふと
ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト

『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』あらすじ

湧き出るアイディアで生まれた煌めく発明品によって街の人々に幸せを届けていた天才発明家。しかし、愛弟子とのすれ違いにより、夢を失ってしまったことでそのアイディアは枯渇。人生は一転して真っ暗となった。それから年月が経過し、老齢となった元発明家の前に好奇心旺盛な孫娘が現れたことで、かつての情熱と希望が心によみがえる。そして奇跡が命を宿すように動き出す。

『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』感想(ネタバレなし)

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2020年ベスト・クリスマス映画

クリスマスソングの定番曲に「ジングルベル」という歌があります。1857年に牧師のジェームズ・ロード・ピアポントが作詞作曲したそうで、歌詞に宗教要素がないこともあってか、幅広い人たちに愛される歌として瞬く間に定着しました。

ところでこの「ジングル」って何でしょうか。答えは鐘の音の表現です。英語では鐘の音を「jingle-jangle」と表記するそうで、日本語で言うところの「じゃらじゃら」とか「りんりん」みたいなものですね。韻を踏んでいるのがいかにも英語らしいです。

「jingle-jangle」はこれだけでクリスマスを連想する言葉になるようで、「jingle-jangle shopping」と書けばそれはもうクリスマスの買い物を意味します。なんかテンション高そうな感じがする…。

一方で「jingle-jangle」は“おんぼろで”ガタガタした状態を指す俗語でもあるらしく、なかなかに両極端な使われ方です。まあ、でもクリスマスはボロボロに見えるオモチャもなんだかピカピカに輝いて見えますよね。1年で一番オモチャが綺麗に眩しいシーズンですから。私もすっかりクリスマスにオモチャをもらう側の人間ではなくなってしまったですけど、お店に並ぶオモチャたちをこの季節に眺めるのは好きです。

そんなことをつらつらと思いだしつつ、今回紹介する映画を鑑賞するとまた一層クリスマスのオモチャたちが愛しくなってきました。それが本作『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』です。

本作はNetflixで2020年11月13日から配信されたオリジナル作品です。

etflixはこの時期になると独自のクリスマス映画を多数配信するのがすっかり恒例になっており、今年もたくさんの映画がツリーの飾り付けのようにキラキラしています。その中でも本作『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』は2020年のベスト・クリスマス・ムービーであるという評価もあるくらい称賛で迎えられました。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では95%の批評家がポジティブに褒めています。Netflixは2019年も『クロース』で大絶賛を受けましたから、なんだかクリスマス映画でも覇権をとりにきてますね。

物語としては王道でシンプルです。ある過去のせいで人生どん底に落ちてしまったオモチャ職人の爺さんにクリスマスの奇跡が起きる…というのがおおよその流れ。まあ、クリスマス映画なんて基本構成は同じもの。みんなを幸せにする、それだけの目的に特化しています。

ではなぜ『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』はここまで高評価なのかと言えば、オーソドックスながらも全体的なクオリティの高さゆえでしょうか。ミュージカル映画なのですが、その歌とパフォーマンスも素晴らしいですし、世界観のデザインも細部まで綺麗です。

ありきたりな言い方になってしまいますが、老若男女問わず満足できる良質さを確保していることは、クリスマス映画では大事な部分。

そして本作はアフリカ系主体のブラックムービーであるというのも特徴です。黒人主役のクリスマス映画はこれまでもありました。1996年の『天使の贈りもの』、2006年の『ラスト・ホリデイ』、2013年の『最高の贈りもの』、2013年の『クリスマスの贈り物』、2018年の『クリスマス・カレンダー』…。白人主体の作品よりは数が圧倒的に少ないですが、あるにはある。それはクリスマスは人種問わずみんなのものという認識があるからこそですし、クリスマスらしさでもあります。その黒人主役のクリスマス映画史の中でも『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』は定番の一作として記憶に刻まれたと思います。

監督は“デヴィッド・E・タルバート”で、彼は『スイートホーム・クリスマス』(2016年)、『エル・カミーノ・クリスマス』(2017年)とここ近年はクリスマス映画づくし。作品の評判自体はあまり良いというわけではなかったのですが、ここにきてベストを一発当ててきましたね。

主演は『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』や『ブラックパンサー』など大作でも活躍する“フォレスト・ウィテカー”。『Don’t Think Twice 僕たちの成功』の“キーガン=マイケル・キー”もお得意のコミカルさを発揮。

『プリンセスと魔法のキス』でヒロインの声を務めた“アニカ・ノニ・ローズ”、歌手として活動する“リッキー・マーティン”も揃っており、さすがミュージカル映画なだけあって歌が上手い人をキャスティングしてます。

もちろん人種問わず、みんながハッピーになれる映画ですので、この冬は家でのんびり本作を家族鑑賞するのはどうですか。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(明るい気持ちになれる)
友人 ◯(暇つぶしにも最適です)
恋人 ◎(幸せな気分を盛り上げる)
キッズ ◎(クリスマス映画にどうぞ)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』感想(ネタバレあり)

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“ルートありえない”は成り立つ!

少年少女はクリスマスの温かい空気に包まれ、暖炉の前でウキウキしていました。そこへおばあちゃんがやってきていつものように本を読み聞かせてくれます。でも今回は新しい物語です。

「ジェロニカス・ジャングルの発明」そう告げると、仕掛け本がカシャカシャと動き出し、子どもたちは目を輝かせます。「読み聞かせるのは初めて」とそのおばあちゃんは静かに感情を込めて語りだします。

昔々あるところに才能あふれる男がいました。名前はジェロニカス・ジャングル。発明のアイディアが空間に浮かぶように思いつくことができる才能の持ち主で、次々と新しいオモチャを生みだし、街では大評判でした。その「ジャカジャ・ジャングル」という店は今日も大賑わいです。奇想天外な無数のオモチャたちは子どもも大人も飽きさせません。

一方でその店で見習いとして働くグスタフソンという男も自分なりに発明を頑張っていました。でも発明は失敗。クルクルコプターは最初は上手く飛んだかに見えましたが、途中で火花を散らしてあっけなく故障。「弟子は弟子だな」と来店客も離れていきます。

そんな中、ジェロニカスに小包の届け物が。それを見たジェロニカスは興奮を隠せないようで、娘のジェシカに今日は最高の日だと告げます。

小包に夢中なジェロニカスは、発明のアドバイスを聞きたくて迫ってくるグスタフソンに「ジャイロ安定装置は?」などと雑に対応。彼に店番を頼み、さっそく自分の発明に取りかかります。

包みに入っていた液体を一滴たらして、機械が凄まじい音で稼働。すると一滴たらされた小さな人形が滑らかに動き出し、喋りだします

「我こそは闘牛士、ドン・ファン・ディエゴ」

これは命を宿らせることができる魔法のオモチャでした。この世紀の大発明に家族で大興奮。ジェシカに発明家ゴーグルをプレゼントし、ジェロニカスは有頂天です。

遅れてやってきたグスタフソンも命を持った人形に驚愕。ジェロニカスはグスタフソンに人形の世話を頼み、「100万個作って世界中の子どもを驚かせるぞ」と意気揚々と部屋を出てしまいました。

人形のディエゴと部屋に残されたグスタフソン。すると大量生産ではなくオンリーワンの存在として生きたいディエゴは「あの発明のノートは君の成果でもあるだろう」とグスタフソンをそそのかし始めます。「泥棒じゃない、借りるだけだ」

ジェロニカスが帰ってくると、家にディエゴもグスタフソンも、そして発明の全てが記されたノートも消えていました。

その後、ジェロニカスは発明も上手くいかなくなり、客は減り、経営も苦しくなるばかり。あの弟子が世界一のオモチャ職人になっていくのを見ているしかありません。さらに妻ジョアンヌは亡くなり、失望にくれる父といられなくなった娘のジェシカは離れて家を出ることに…。

店は消え、発明はしないと心に誓うのでした。

それから月日が経過し、ジェシカは大人に成長。娘のジャーニーもいました。ジャーニーは発明好きです。祖父に会いたいと思っていましたが、手紙が来ないかぎりダメだと言われていました。しかし、手紙が届きます。

ついに夢にまでみた祖父に会えると単身で外出。しかし、店は質屋になっており、ずいぶんとみすぼらしいです。ジェロニカスにも会えましたが、「泊めるわけにはいかない」と拒絶。この店は資金繰りが苦しく、クリスマスまでにカネを返すか、歴史的な発明でもしないかぎり、銀行に差し押さえられる直前でした。

その頃、称賛を手に入れたはずのグスタフソンも困っていました。ジェロニカスのノートのネタも切れ、新商品の発明に苦戦していたのです。自身のかつての発明品であるクルクルコプターを満を持して披露しますが、やはり失敗。どう改良すればいいのかもわかりません。

なんとかジャーニーはジェロニカスの店に泊めてもらえることになり、そこで勝手に助手気分でいるエジソンという少年と一緒に「バディー」というロボットを発見します。それは「信じる」という力で動く機械で、たちまち空中に浮かぶなど不思議なことが…。

今年のクリスマスは特別なミラクルが起きそうです。

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カラフルな衣装で楽しくなる

『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』成功の勝因は、私は“背伸びしすぎない”ことだと思いました。普通を普通に楽しく描くのは何よりも大事なんだな、と。

本作の“デヴィッド・E・タルバート”監督のフィルモグラフィーを全部チェックしたわけではないのですが、例えば前作の『エル・カミーノ・クリスマス』はクリスマス付近の一夜に起きる田舎犯罪映画であり、切なさとコミカルさが入り混じる独自性がありました。でもなんかまとまりきれていない感じもしたり…。

対するこの『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』は直球のハッピーエンドですし、捻ったことはしていません。案外とそこが良かったんじゃないかなと思います。でもクオリティはじゅうぶんで、その映像品質を後押ししたNetflixのアシストが上手くハマったのだろうと。

世界観がいいですよね。時代設定は不明。国もよくわからない。ただ、ジェロニカスの店は『チャーリーとチョコレート工場』的な摩訶不思議さに溢れており、ちょっとしたテーマパークです。ファンタジーというよりは、スチームパンクに近いですね。

私が本作で一番好きなのは衣装デザインです。全体的にどのキャラクターもクリスマスらしいカラフルな装いで、どこか気品もありつつ、けばけばしさはない、独特のファッションなんですよね。とくにアフリカ系の人たちがこういうファッショナブルなスタイルで堂々としている映画もなかなかないわけです(たいていこういう世界観では執事とか労働者とか脇に追いやられているせいで恰好はいつも地味)。本作のオリジナリティをこの衣装コーディネートで確立させている感じがあります。

コスチュームデザインを担当したのは“マイケル・ウィルキンソン”で、最近だと実写版『アラジン』を手がけた方のようです。ちなみにセット・デコレーターは『ゲーム・オブ・スローンズ』でおなじみの“ロブ・キャメロン”だそうで、どうりで街並みもよく細部までできているわけです。

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ジョンストン夫人のスピンオフ希望

当然この色彩豊かな衣装デザインはミュージカル映画としてのパフォーマンスの華やかさにも繋がってきます。

序盤のジェロニカスに小包の届け物が来た時から街の人全員が踊りだすあたりの壮観さも最高ですし、ひとりひとりにクローズアップしても綺麗です。そこまでアクロバティックな動きはしていないのに、ものすごく映像の見ごたえがあります。

登場人物それぞれも魅力的にパフォーマンスしていました。個人的には独り身で妙にジェロニカスをくどく誘ってくるジョンストン夫人がいいですね。そこまで下品さを出すこともなく、でも割と大胆に求愛してくるあの押しつけがましさが可笑しいですし、そんなギャグ要員に見えてしっかり中高年女性の幸せもクリスマスはカバーしていますという包容力も示しているあたりもナイスです。

あのジョンストン夫人を演じた“リサ・ダヴィーナ・フィリップ”は、ミュージカル劇でキャリアを積んでいることもあって、もしかしたら本作の俳優陣でもトップクラスに歌唱力があるかな。あの歌のパワフルさも素晴らしくて、なんだかスピンオフが見たくもなりました。

一応の敵となるグスタフソンを演じる“キーガン=マイケル・キー”も相変わらず器用です。ちょっと力の入れ具合を間違えれば、すごく嫌な奴になってしまうのですが、そうならない力加減の適切さ。コメディアンとしてのスキルの高さもあって、パフォーマンスしだすと一気に華になるし…あのグリーンの衣装も抜群に似合っています。

そのグスタフソンと半ばビジネス・パートナーになるディエゴの声を演じた“リッキー・マーティン”も良かったです。歌手としての経歴もあるせいか、あの気取った存在感でも自然にハマっていますし、こっちもそんなに最低な奴に見えないバランスをとっていました。

ジェシカを演じた“アニカ・ノニ・ローズ”もさすがの安定感があり、画面に出てくれば物語の室温がまた1度快適になるようです。

主役の“フォレスト・ウィテカー”もやっぱり良い仕事をしています。そもそもこの物語はある種の“落ちこぼれ”ではなく“才能はあったのに輝けなくなった人”を描くもので、嫉妬とか憎悪とかネガティブにいくらでも傾きやすいわけです。でもそうならない主役の誠実さが保証されていなくてはならず、その点、“フォレスト・ウィテカー”はぴったりとそこにフィット。孫にもなんだかんだで優しく、ジョンストン夫人の熱烈アピールもそこまで失礼に罵倒しない。あの根っからの優しさは彼ならではかな。

そして何よりももうひとりの主人公であるジャーニーを熱演した“マダレン・ミルズ”の純粋無垢な魅力も忘れられません。まだ本作が商業映画では初演技くらいでキャリアはほぼないですが、今後が楽しみです。

ということで良いクリスマス・ムービーでした。

2020年は散々な1年で不安もいっぱいだったでしょうけど、世界中の大人と子どもたちが幸せな時間を過ごせますように。

『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 95% Audience –%
IMDb

6.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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関連作品紹介

クリスマス映画の感想記事の一覧です。

・『クリスマスに降る雪は』

・『ラスト・クリスマス』

作品ポスター・画像 (C)Brillstein Entertainment Partners, Netflix ジングルジャングル

以上、『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』の感想でした。

Jingle Jangle: A Christmas Journey (2020) [Japanese Review] 『ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト』考察・評価レビュー