ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説
ドキュメンタリー『ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Behind the Curve
製作国:アメリカ(2018年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:ダニエル・J・クラーク

あらすじ

"地球は平らである"という説がある。科学者や周りからどれだけ否定されようとこの地球平面説を主張し、支持者を世界中に拡大し続けるコミュニティを追う。この説に熱中する者たちを駆り立てるものは一体なんなのか。そして地球平面説を証明する実験の行方は…。

ネタバレなし感想

真実を知りたいですか?

私たち人類が住んでいる星…「地球」。地球は太陽系の惑星の一つで、「回転楕円体」の形をしており、赤道の半径は6378kmにも及びます。365日強で太陽の周囲をぐるっと一周して「公転」し、さらに24時間で1回の速度で「自転」しているため、この動きによって私たちの日々の生活は決まってきます。地軸の周りを回転する自転の動きは遠心力を発生させるので、私たちは引力と遠心力を合わせて「重力」と呼んでいます。また、地球は円に近い楕円形の軌道を描いて太陽の周りを回り、その公転速度は時速約10万7280kmにもなります。

世界初の有人宇宙飛行としてボストーク1号に単身搭乗し、ユーリイ・ガガーリンが「地球は青かった」の言葉を残したのは1961年。ニール・アームストロングが地球の周りを回る月に人類初の着陸をしてその土に足跡を残したのは1969年。この月面着陸は最近も映画になりました。
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はい、でも今述べたことは全部「嘘」です。

いいですか、もう一度、言います。全て真っ赤な嘘、偽りです。

人類が宇宙に行ったことはないし、地球は公転も自転もしていません。そもそも地球は丸くなく、平面なのです。だから「地“球”」と日本語で表現するのは誤り。「地“平”」ですね。

私たちの住む大地は円盤状の平面で、それを取り囲む氷の壁があり、上には星を投影する巨大なドームがあって、その間の空間に太陽と月が回っているのです。そう、プラネタリウムみたいなものです。

えっ、学校ではそんな話、教わっていない? それはそうです。だって教育は政府に都合のいい嘘を教えるものなのですから。地球儀など地球が丸いことを示すアイテムや、番組や映画などのコンテンツは、全てがマインドコントロールを目的としたものです。科学はデタラメであり、科学者は政府の手先であるため、信用は絶対にしてはいけません。

こういう風に書くと必死に論破しようしてくる奴らが湧いてきますが、それがだいたいが無知か、もしくはCIAの工作員です。気にすることはありません。

地球は平面だ!なんて説を信じている人はいるのかって? もちろん存在する。しかもどんどん増えているのです。今では「地球平面協会」という組織だけでなく、多様なネットワーク・コミュニティが作られ、活発な交流が行われています。国際会議まであります。

もはやこの地球平面説は隠すことのできない真実なのです。

地球平面説について興味を持った人、まだ疑っている人…そんな人たちにオススメなのが本作『ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説』というドキュメンタリー。

これを観れば、地球平面説の全貌がわかること間違いなし。地球平面説を広めようとアクションに出る勇敢な者たちの姿をリアルにとらえ、その活動の魅力も伝わるでしょう。そして、虚構に腐敗する科学者たちの苦しい言い訳もいっぱい聞けます。本作を観ればどっちが正しいかは一目瞭然です。

あ、ちなみにこのドキュメンタリーには映画『トゥルーマン・ショー』のネタバレがあるけど、わかっているよね。今こそ、世界の真実を知って目覚める時だ!

「おはよう、そして会えないときのために、こんにちは、こんばんは、そしておやすみなさい!」

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

なんか楽しそうな人たち

うん、前半は地球平面説信者になったつもりで書いてみましたけど、正直に言って、楽しかった…。解放的になれた気がする…地球平面説、最高じゃないか(洗脳済み)。

しかし、地球平面説の信奉者はそんな冗談ではありません、マジです。しかも、余裕の表情すら浮かべているほど。そんな地球平面説を信じる人たちにスポットをあてたこのドキュメンタリーは、彼ら彼女らの知られざる姿を見せてくれます。

さっきも言ったように地球平面説信者はとても余裕の雰囲気。その代表的人物であるマーク・サージェントは、本作冒頭からこう発言します。
「科学者は反論に必死だよ。数字で攻めてくるけど、こっちは“地平線にシアトルが見える”って言えばいい」
リアルでこんなドヤ顔発言する人っているんですね、ネットの中だけだと思ってました。

とにかく彼ら彼女らは100%の確信を“自分の中では”持っているので、セリフの全てが断言です。NASAのウソだ、ほら、「ナサ」はヘブライ語で「欺く」という意味なんだよ…そんな風にああも無邪気に言われるとね…。あと「CIAが裏にいる」説の万能さですよ。「あなたの信用している情報源は?」と聞かれて「私自身よ」とキッパリ言える、その度胸を私も欲しいです…。

一方で、「他の陰謀説とは一緒にするな」と言わんばかりに自分たちは前向きなエネルギーを持っているということをアピールします。確かに本作でメインに取材をしている地球平面説信者の人たちはそこまで陰湿ではない感じです(まあ、この後、ダークサイドに堕ちた奴がでてくるのですが)。純粋に自分たちの活動を楽しんでいるだけで、一見すると、サークル活動のひとこまにも思えます。

そして、この地球平面説信者が意外にたくさんいるというのも不思議。きっと宗教的なものと関係しているのだろうと私も勝手に推察していましたが、実際、宗教信仰者もいるのですが、全然そうではない人も普通にいます。それどころか非常に信者の多様性はバラエティに富んでいたのが驚きです。

陰謀論者というのはインターネットの誕生が大きな武器になっているのは事実。でもこんなリアルでも旺盛だとは…。

もしかしたら知らないだけで、自分の周囲にも地球平面説信者はいるのかも…と考えてしまいますね。

反論する気も起こらない人たち

そんな元気いっぱいの地球平面説信者を無邪気に映しているだけではないこのドキュメンタリー。

一応、反対の立場にいる科学者の人たちも映し出します。この科学者たちは先ほどの地球平面説信者とうってかわってローテンション…というか困惑ぎみ。天文学者、物理学者、精神医学者、元NASA宇宙飛行士、サイエンスライター…揃いも揃って明らかに地球平面説信者のアツさに圧倒されてしまっています。インターネットに溢れる彼ら彼女らの動画を観ながら、「最近、こういう人たち、増えてきているんだよ…」とポカンとしている科学者の顔が個人的にはツボです。

本作は「地球平面説信者vs科学者」を煽るようなドキュメンタリーではありません

それはもちろん「多くの場合は学説とすら呼べないもの。たいていは反証不可能か、すでに反証されている」という作中で語る科学者の言葉どおり、相手にしようがないからなのですけど。

でもそこはさすが科学者。地球平面説信者が盛り上がる現象自体を科学的に分析していました。
「科学者はよくインポスター症候群になる。あるトピックを知れば知るほど自分は専門家ではなく成功に値しないと感じてしまう。対局にあるのがダニング=クルーガー効果。知能が低い人ほど誤った自信を持ち、自己評価が高くなる。証拠は全て揃っていると考えがち」

「心理学でいうところの確証バイアス。信念があればそれを裏付ける証拠ばかり探そうとする。同じ思考の人たちが集まる」
その客観的分析は、残酷なくらい有頂天になっている地球平面説信者を的確に表しています。

念のために言っておきますけど、科学者は決して窮地にはいません。むしろ「地球平面説を証明できるならしてみろ」的な本当の意味での余裕のポーズですよ。

この勝負になっていない感じがまたオカシイです。

ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説

敵はそばにいた(しかもヤバい)

私が本作を素晴らしいと思うのは、単純な視点でこの題材を見ていないことです。こういうネタの場合、できあがるドキュメンタリーはたいてい2種類。「地球平面説信者のプロパガンダ的な宣伝動画」になるか、「地球平面説信者を小馬鹿する説教動画」になるか。極端に言えばどちらかです。本作はそうなっていません。

まず面白いのが、地球平面説支持者の中でも主導権争いが勃発するくだり。そのダースベイダー的存在が、マット・パワーランドという控えめに言ってヤバそうな男。自分を地球平面説・最初の提唱者と豪語し(それは凄いのか?)、マークのような他の人気を集め始めた支持者を誹謗中傷しまくる…まあ、ただの嫉妬です。

で、ここでユニークな一面が明らかになるわけですが、地球平面説信者も陰謀論に苦しんでいて、そのしつこさにウンザリしているということ。過激なマットに「あんたこそCIAの手先」と名指しで批判されたパトリシアの言葉が印象的。
「反論を証明できないのよ。CIAなら偽造できると言われるだけ。打つ手なしよ。彼らはデマを流している自覚があるのかしら?
自分たちが普段言っていることと全く同じロジックを逆に自分たちが受ける側になると、びっくりするくらい客観的になっている…それがまた滑稽で、でも人間ってこういうものなのかもしれないですよね。

科学はだから面白い

対する科学者コミュニティも対立でも呆れでもない懐の広さを見せて、深みのある客観的な視座を提案する人もいます。
「科学者にも責任がある。妄想やクレイジーだと片づけてはいけない」「こうした人たちは社会の片隅に追いやってしまう」「疑問視する力は科学に精通すれば宝になる」「科学者になりえた存在としてみてあげるべきだ」「一緒に探求しよう」「先生になろう」
そんな言葉を言えるのは、地球平面説信者に対してどこかで共通点を見いだせる部分もあるからなんだと思います。なぜならあの姿は科学者の初期の段階に凄く似ていますから。がむしゃらに検証したり、結論ありきでデータを集めちゃったり…そんなのは科学者にとっての反面教師なのです(実際、そういう“自称”科学者もいますしね)。

映像に映る生き生きとした地球平面説信者たちは、自分たちでも言ってましたが、何の変哲もなかった自分が有名になって、他の人に影響を与え、友達もできたことが何より嬉しいし、やりがいになっています。マークとパトリシアがNASAに行くシーンなんか、完全に初デートで浮かれている中学生カップル同然でしたよ。自分たちの小さな出発点が国際会議にまで成長する喜びは純粋なものじゃないですか。

もちろん、政治や科学全般への全否定につながる危険性は楽観視できません。マットのような人格攻撃をする人間はアウトです。でもそれ以外の多くの地球平面説信者たちは、私は嫌いになれないかな。

ジャイロスコープやレーザー実験をする姿は、ちゃんと科学者してました(当人は既存の科学が嫌いかもですが、でもあの光景はまさにサイエンス)。

あのキレのよいラストはまさに科学の面白さを地球平面説信者たちが実感する瞬間という皮肉。

遠くのレーザーの光が普通に見えたら大地は平面、高く持ち上げて光が見えたら大地は曲面…そう自分で仮説を立てて挑んだ実験。

結果は、普通に光は見えず…
「上に持ち上げてみて」
(光が見えるようになる…)
「Interesting. Interesting there. 」…(沈黙)…「That's Interesting」
頑張れ、地球平面説信者の皆さん。いつか歴史上とんでもない科学的な大発見をする日もくるんじゃないか、そんな風に思って、私は陰ながら応援していきたいと思います。

ROTTEN TOMATOES
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IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 9/10 ★★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)DELTA-V PRODUCTIONS