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『チャーリーズ・エンジェル(2019)』感想(ネタバレ)…天使、3度目の再臨!

チャーリーズ・エンジェル

天使、3度目の再臨!…映画『チャーリーズ・エンジェル3』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Charlie’s Angels
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2020年2月21日
監督:エリザベス・バンクス

チャーリーズ・エンジェル

ちゃーりーずえんじぇる
チャーリーズ・エンジェル

『チャーリーズ・エンジェル』あらすじ

国際機密企業チャーリー・タウンゼント社の女性エージェント組織=通称「チャーリーズ・エンジェル」のメンバーのもとに、「新開発のエネルギーが兵器化される」という情報がもたらされる。それを黙って見過ごすことはできない。その企みを阻止すべく仲間と連携しながら華麗にミッションに挑む。たとえどんな陰謀があろうとも…。

『チャーリーズ・エンジェル』感想(ネタバレなし)

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今回の天使は誰と誰と誰?

英語で「angel」という単語は、ご存知のとおり「天使」を意味します。

では天使の性別は? 天使というのは私たち人間とは異なる存在なので、根本的な話、性別を問うこと自体がナンセンスかもしれません。ただ、なぜか聖書では男性風に描かれていることが多いです。

一方で「angel」という言葉は、英語圏では「子どもや愛する女性への呼びかけ」として使われることがあり、これまた宗教内でのニュアンスとは異なる雰囲気を醸し出しています。親密な間柄において使用されますが、少なくとも成人男性に「angel」と使うケースはあまりないでしょう。

なぜこんなふうに男女逆転しているのか、私は言語学者でも宗教学者でもないのでさっぱりなのですが、言葉って不思議ですね。

まあ、「angel」という言葉で勝手なイメージを押し付けられるのも嫌ですから、変に「天使のような可愛らしさ」みたいな強調をむやみやたらにするのはやめてほしいですね。

でもこの世には世間のエンジェルな固定観念を華麗にぶっ壊す、自由気ままな“エンジェル”がいるのです。映画界のスーパーエンジェルが大活躍する映画、それが『チャーリーズ・エンジェル』でした。

『チャーリーズ・エンジェル』はもともと1976年から1981年にかけてアメリカのABCネットワークで放映されたテレビドラマで、それが映画化されたのが2000年の『チャーリーズ・エンジェル』です。この作品はヒットしたため続編も作られ、2003年には『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』が公開されました。

チャーリーという声しか登場しない謎のリーダーのもと、女性たちで構成される「エンジェル」があれこれと事件に挑み、巻き込まれ、でも解決していく…。私は当時にリアルタイムで鑑賞していないのでわからないのですが、今の感覚で観れば明らかに「おバカ作品」的な雰囲気がある、なんとも軽~いノリです。映画版も変わらずで劇場バージョンで派手になったせいで、余計におバカ成分がアップした気もします。監督があの“マックG”だったのも大きいでしょうね。最近の“マックG”監督作も、『ザ・ベビーシッター』や『リム・オブ・ザ・ワールド』など良い意味で突っ切った映画ばかりです。

そんな『チャーリーズ・エンジェル』が2019年になって再度映画化されました。それが本作『チャーリーズ・エンジェル』です。

タイトルが全然変わっていませんが、一応リメイクでもリブートでもなく、これまでのシリーズに連なる続編なのだそうで…。だから3作目といえるのかな。まあ、この作品の世界観は割とゆるゆるなので何でもありなのですが…。

せっかくの久しぶりのスクリーン・カムバックなのに、残念ながら本国ではヒットとならずコケてしまったのですが、もともとそういう前兆はありました。大半の人は覚えてもいないかもしれませんが、実は2011年に『新チャーリーズ・エンジェル』というリブート版のドラマシリーズが放映されたのですけど、それは視聴率が低くて打ち切りに。やっぱりコンテンツ自体の古さがあるんですかね。

最近のソニーは『メン・イン・ブラック インターナショナル』といい、過去の停滞したシリーズ群を引っ張ってきて再度フランチャイズ化することができないか試している感じがしますが、どれも良い結果を生んでいない気がする…。あ、でも『バッドボーイズ フォー・ライフ』は上手くヒットしたか。

とりあえずこの2019年版『チャーリーズ・エンジェル』、評価はどうであれ、このシリーズを知らないという世代も少なくないと思いますし、そんな初見の人たちにもオススメしやすいエンジェル入門編な一作だと思います。続編といっても過去作を観る必要性はほぼ皆無ですし。

気になるエンジェルを演じる3人(3人が基本)は、まず1人目が“クリステン・スチュワート”。『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』や『パーソナル・ショッパー』など最近は小規模作に出ている印象でしたが、ここにきて思いっきりエンタメ作にもやってきました。

2人目は“エラ・バリンスカ”。知名度は低く、大作はまさにこの『チャーリーズ・エンジェル』が初。大抜擢ですね。ロンドン出身で、ポーランドとジャマイカ人の血があるらしく、独特の美貌が個性的。

続く3人目が“ナオミ・スコット”。彼女はもう言わずもがな、実写映画『アラジン』のジャスミン役で飛躍したので、見たことのある人は多いでしょう。その前は『パワーレンジャー』でヒーローしてましたし、エンタメ作品に立て続けに出ており、キャリアは順調な様子。なお、“ナオミ・スコット”はインド系です。

ということは、1作目の映画版の3人は白人(ヒスパニック系の血を継ぐ)・白人・アジア系で、今回はそこからさらに白人割合は減った感じに。まあ、日本人的にはアジア系がメンバーからドロップアウトしたのはちょっと寂しいですけど…。

監督は『ピッチ・パーフェクト』シリーズの製作や監督を手がけた“エリザベス・バンクス”。そこまで積極的に監督業しているわけでもなく、本業はやはり女優ですが、『チャーリーズ・エンジェル』の監督として白羽の矢が立つのもわからないではない。作中でも重要キャラを演じています。

また、女性以外の俳優陣だと“パトリック・スチュワート”も出演。まだまだ元気に頑張ってほしいです。

前述したとおり、これが初エンジェルな人もぜひ本作からお入りください。そこから過去作を観てみるのもいいですよ。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(過去作ファンもお気軽に)
友人 ◯(難しく考えずに楽しめる)
恋人 ◯(気楽なアクション映画を満喫)
キッズ ◯(子どもも観れないわけでは…)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『チャーリーズ・エンジェル』感想(ネタバレあり)

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エンジェル、活動中

今日もエンジェルたちはどこかで仕事についている…。

夜。高級そうなビルの上層階。ブロンドの美しい女性が男とトークの真っ最中。ムーディな雰囲気が漂い、女はセクシーな色気を放ち、余裕そうなアジア系の男もすっかり鼻の下を伸ばして油断中。女は足を伸ばし、さらに男の上に乗っかり、大胆に接近。カーテンを男にくるくる巻きつけ、女はアクロバットにパフォーマンス。まだ男は見惚れているだけ。ボディーガードも遠巻きに見ているだけ。

しかし、さすがになんかおかしいぞと気づいたときには身動きがとれないほどに拘束されていました。すぐさまボディーガードが武器を取り出しますが、エレベーターが到着。そこには拘束された別のセキュリティ…。と、その瞬間、ボディーガードの背後に全身黒な女がいきなり現れてバッサバッサと敵をなぎ倒していきます。ブロンドの女もそれに加勢。素手殴りを容赦なくかまし、最後は会話していたその男にヘッドバット。ノックダウンです。

片付いたところで、またエレベーターが到着。乗っていた老人ジョン・ボズレーは、ジョニー・スミスを捕まえた彼女たちに声をかけます。ブロンドの女サビーナと黒服の女ジェーンは仲間たちとそのビルから鮮やかなに撤収するのでした。

この男たちをいとも簡単に圧倒する女たちは、世界各地に拠点を置き、ボズレーと呼ばれる指示役のもとで、隠密に活動して悪を成敗したりする「チャーリーズ・エンジェル」。今回、そのボズレーの中でも最も老齢で長年さまざまなチャーリーズ・エンジェルをずっと支えてきたジョンは引退することになり、他のボズレーたちの労いのサプライズ・パーティを受けていました。

一方、全く別の場所。ここでも仕事についている女性がいます。ただし、上手くは全然いっていません…。

エレーナはエンジニア兼プログラマーとしてIT企業を起業したアレクサンダー・ブロックのもとで働いていました。自らが開発に携わったエネルギー装置「カリスト」に良からぬ不具合があることを突き止め、その問題性を上司のフレミングに相談しますが、こちらの必死の訴えの言葉も遮られ、話になりません。しかし、この装置の危険性は深刻で、なんとかしないといけない。

そういう正義感に突き動かされ、独りでは何もできないのでタウンゼント探偵社に頼み込むことにしたエレーナ。実はこの探偵社こそチャーリーズ・エンジェルを抱える組織そのものなのですが、エレーナは何も知りません。カフェで探偵社のエドガー・ボスレーに不正の証拠を渡そうとしたそのとき、トラブルが勃発。突然の大混乱。何者かの襲撃なようです。近くで待機していたサビーナとジェーンはすぐさま行動開始。

エドガーとエレーナを乗せてジェーンは車で逃走。敵もしつこく追いかけてきて、カーチェイスに発展。銃撃やら、ガトリングやら、派手な攻撃が炸裂し、最終的には横から追突され、ジェーンたちの乗った車は川に豪快に転落。ジェーンとエレーナは水から上がれましたが、エドガーは亡くなり、証拠もダメになってしまいました。

途方に暮れるジェーン、サビーナ、エレーナの3人。そこへ現れたのはレベッカ・ボズレー。今度は彼女の指示のもと、次なる一手に動き出します。

証拠がないならまた手に入れればいい…の理論で再度、問題の企業に潜入することになった一同。今度はエレーナも参加させます。彼女はチャーリーズ・エンジェルではないですし、ろくな訓練も受けていないので、プロフェッショナルな二人に圧倒されっぱなし。各自が変装を駆使しながら、目的を達成していく中で、それは上手くいくかに見えましたが…。

チャーリーズ・エンジェル(+一般人)はこの事態を乗り越えていくことができるのか。そして裏で暗躍する首謀者とは…。

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プリキュアと同じです

エンジェル入門編な一作だと紹介しましたが、まさしくストーリー的にもそのとおりな映画でした。

これまでの映画版2作ではすでに現役バリバリで大活躍するチャーリーズ・エンジェル3人組が大暴れする内容であり、初っ端からフリーダムです。ほんと、好き放題やってたなぁ…。

一方、この2019年版の『チャーリーズ・エンジェル』はサビーナとジェーンは現在進行形でエンジェルしてますが、そこにエレーナという一般女性が加わるという、いわば新米モノになってきます。この要素はなぜか予告動画とか公式のあらすじでは隠されているんですよね。事前の宣伝ではいかにも以前どおりな『チャーリーズ・エンジェル』です!というアピール全開でした。なんで隠したのだろう…。

まあ、とにかくこのプロットである以上、いつものプロフェッショナルな3人が揃って何かするという展開はほぼ最後まで起きないことになってきます。ここに物足りなさを感じた人もいたでしょう。

ただその代わり、初心者への易しい導入にはなっており、作り手がこの若干古さもあるシリーズに若い子、とくに女の子を呼び込もうと知恵を絞っている感じが伝わってきます。

それは冒頭からとてもハッキリ示されていて、あの世界の女の子(女性)の映像集みたいなオープニングからして、本作のメッセージは明確です。

つまり「誰でもチャーリーズ・エンジェルになれる」ということ。

「誰でも」が大事。今回のその代表になったエレーナは、企業で働いてはいるし、卓越したスキルもあるものの、偏見などの理由で自分の能力を正当に評価されていない女性。要するに、どこの国にもいる、ありがちな状態にいる女性です。

そんなエレーナが、チャーリーズ・エンジェルというある種のステレオタイプを完全に跳ね飛ばしている女性の存在を知り、最終的に目覚めていく。いわば私なりの“フォースの覚醒”ですよ。

いや、日本的に言えば、プリキュアと同じかもしれません(ちょっと対象年齢が違うけど)。日本にとってプリキュアがいるのならば、アメリカにはチャーリーズ・エンジェルがいるのです。

ゆえにフェミニズムなメッセージ性は極めて凡庸。まだプリキュアの方が挑戦的だと思うくらいです。でも、まあ、チャーリーズ・エンジェルってこんなものだしなぁ…という感じでしょうかね。

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日常のシーンも最高で…

メイン3人は単体でも良かったですし、コラボレーションもすごくハマっていました。

“クリステン・スチュワート”演じるサビーナのいかにも男が好きそうな“セクシー・ブロンド”という冒頭の見た目からの、本来の短髪ボーイッシュなスタイルにチェンジする気持ちよさ。ついていっていいですか!姉御!…ってなる。

対する“エラ・バリンスカ”演じるジェーンはサビーナとは別ベクトルでのクールさがあり、アクションシーンでも常にカッコいいです。元MI6という肩書ゆえなのか、本作では人一倍アクション多めで、ちゃんと俳優本人が頑張ったようです。

そして“ナオミ・スコット”演じるエレーナ。今作では少しコメディリリーフなポジションでしたけど、3人のバランス感としてもピッタリだし、なによりも“ナオミ・スコット”がこんなにも愛嬌豊かにスクリーンで解放されているのを見ると、この女優にはまだまだ引き出しがあるなと思わせます。

その3人がチームアップすれば、そりゃあ面白くないわけがない。ミッション中もいいですが、任務が終わって3人がホッとまどろむシーンが最高ですね。もともと緩急の激しい映画ですが、この自然な“静”というか、何気ない日常の場面は、過去作よりも良かったかも。

さらにエンジェルのリーダーとなる“エリザベス・バンクス”演じるレベッカ・ボズレーの安心感といいますか。同性だからこその“わかっている”という暗黙の信頼を感じさせます。 過去作のボズレーはずっと男性でしたし、こういう雰囲気は出せませんでしたから。

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もっと“おバカ”でいてください

ビギナーに最適な『チャーリーズ・エンジェル』ですが、あくまで別に初心者でもない私の気になった本作の欠点を言わせてもらうと、まずお話がプロローグすぎる…というのがあります。

たぶん大方の観客は思ったと思うのですけど、あのエンディングまわりのエレーナがチャーリーズ・エンジェルの実技テストを受けてキャッキャやっているあの場面をじっくり見せて欲しかったですよね。そしてそのデビューとしてプロとしての初ミッションに挑む…そういう展開はお預けなんですか、と。完全に予告動画詐欺じゃないですか。

理想は『キングスマン』みたいな新米モノだったのですが、この『チャーリーズ・エンジェル』はストーリーテンポがかなりゆったりというか、回り道が多くて、肝心の“見たい部分”を見せてくれないモヤモヤが残ります。

どうせ『チャーリーズ・エンジェル』シリーズは主軸になる事件とか雑なんですから、もうそこはテキトーでいいんです。むしろエンジェルたちのイチャイチャがメインディッシュ。その成分はもっと欲しかった…。

加えて本作に欠けているのは、あれです、“おバカ”要素。もちろん本作にもコミカルなシーンもありますし、恒例の変装もあるのですけど、過去作ほどの狂っているレベルの“おバカさ”はないな、と。

例えば、1作目にあった日本文化をひたすらに勘違いしたギャグ展開みたいな。あれもおそらく“マックG”監督はわかったうえでわざとやっているのでしょうけど、日本人の私から見ても「他国文化を全然理解していないアホな白人」という点で大いに楽しめるものですし、愉快でした。

今回も突っ切ってアホにしてくれても良かったのですけど、全体的にカッコよさを前にだしたせいか、逆に作品の個性が薄れて平凡に見えてしまっているのは残念なポイント。

理想は、チャーリーズ・エンジェルたちがプロフェッショナルだけどアホに大活躍し、大真面目を装う大人どもをギャフンと言わせる、そういう展開かな。

本作は過去作と比べてもスケールが小さいのですが、それは製作費が1作目が9300万ドル、2作目が1億2000万ドルなのに対して、本作3作目が4800万ドルと1作目の半分程度になっているという、致し方無い事情もあります。

でも“おバカさ”はカネがなくてもできる最高の武器なのですから、そこはガンガン利用してほしかったですね。「ルース・ベイダー・ギンズバーグ」なんかを持ち出すなら、古今東西のあらゆるフェミニストがなぜか集結して大乱闘する…とか、ほんと、そういうアホなノリで良かったかな、個人的には。

次回作は厳しいかもしれませんが、次があるなら“おバカさ”を最大レベルに引き上げられるエンジェルの救援を求めたいところです。

『チャーリーズ・エンジェル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 52% Audience 78%
IMDb
4.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures チャーリーズエンジェル

以上、『チャーリーズ・エンジェル』の感想でした。

Charlie’s Angels (2019) [Japanese Review] 『チャーリーズ・エンジェル』考察・評価レビュー