洞窟探検ダイビング
ドキュメンタリー映画『洞窟探検ダイビング』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Takaisin pintaan(Diving into the Unknown) 
製作国:フィンランド・ノルウェー(2016年) 
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信 
監督:フアン・レイナ 

洞窟探検ダイビング

あらすじ

常に危険と隣り合わせでありながら、人を魅了する洞窟探検ダイビング。ノルウェーの水中洞窟で起きた悲劇的な事故により仲間を亡くした生存者達は悲しみにくれる。しかし、危険を理由に公式な遺体回収作業が中止された時、彼らは命を懸けて友人を取り戻すために再びあの洞窟に潜ることを決める。洞窟はあの時と同じまま…。

『洞窟探検ダイビング』感想(ネタバレなし)

この探検で得られるものは…

世の中には、そびえ立つ山脈の頂上を目指す人、広大な大陸を単身で横断しようとする人、無限に広がるかのような大海原を航海する人…さまざまなチャレンジャーがいます。常に危険と共にあるこれらの挑戦は、私にしてみればスポーツというよりは試練のように思えるのですが、ハマってしまった人にしかわからない魅力があるのでしょう。

私は常にできる限り安全コースを渡りたい性分なので、きっとその人の気持ちを一生かかっても理解できないと思うのですが、限界を超えた先の達成感に心躍るというのはなんとなくわかります。他人事であっても見ている人もその達成の瞬間は、なぜだか感無量になったりしますしね。

そんな大自然への挑戦シリーズのなかに「洞窟探検ダイビング」というものがあります。洞窟探検(ケイビング)は観光で一般の人でも気軽にできる場所がありますが、「洞窟探検ダイビング」はもちろん水中。ダイビング経験があっても、簡単にはできないような気がします。

実際、かなりの危険を伴う行為であり、いわゆる一般的な海中ダイビングは観光客なんかがリゾート地で体験で来たりしますけど、本格的な洞窟でのダイビングはベテランでも力量が求められるそうです。真っ暗な狭い空間。上下左右の方向感覚を失いやすく、体が引っかかるものも多い。ひとたびパニックになれば死が待っている…。想像しただけで嫌だ…。私は暗いところも、水のあるところも、狭いところも平気ですが、それが3点セットになったら絶対に遠慮したいですね。

その「洞窟探検ダイビング」を題材にしたドキュメンタリーが本作、その名もズバリ『洞窟探検ダイビング』。もうちょっと邦題、なんとかならなかったのですか、Netflixさん。というか、作品中の字幕では「未知へのダイビング」になってましたが…。

こんな邦題だと「ああ、洞窟探検ダイビングの幻想的な映像をまとめた魅力たっぷりのネイチャーレクリエーション紹介なのかな?」と思うかもしれません。

しかし、全く違います

本作は、洞窟探検ダイビング中に事故で亡くなり取り残された仲間の遺体を回収しにいくダイバーに密着したドキュメンタリーです。洞窟を踏破するぞ!じゃないのです(もちろんその目的ではあったのですが)。最初の時点で死亡が確定済みで、そこからの遺体回収。こんなのっけからテンションの下がるドキュメンタリーはそうそうないです。

洞窟と言っても数十メートルとかじゃない、1キロメートルを優に超えるもの。しかも、ただでさえ危険なのに、目指すのは遺体ですから、楽しさなんてあるわけもなく…。終始、シリアスかつ緊迫感が続く映像となっています。まるで彼らと一緒に洞窟に潜っている気分です。

こんなドキュメンタリーを観て何が楽しいんだと思われてもしょうがないのですが、でも実際に鑑賞して見ると意外な人生の励ましというか、生きることへの希望が見いだせる内容になっているんですね。人間は死に近づくと生のありがたみを知ると言いますが、本作はそれを疑似体験できるようなものなのかもしれません。そう考えるとそんな貴重な体験をこんな動画配信サービスでお手軽に経験できるのですから、ありがたいものです。

あなたが泳げなくても大丈夫。この映像を見続ける勇気さえあれば。

潜っていく彼らがこの探検で得られるものは何なのか、その答えはぜひその目で確かめてください。

本作はNetflixで配信されましたが、別にオリジナル作品ではないので、配信終了している可能性があります。注意してください。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





『洞窟探検ダイビング』感想(ネタバレあり)

あっち側で会おう

ノルウェー北部のプルーダーレン。洞窟探検ダイビングを趣味にするフィンランド人らの集団が、今回、挑戦場に決めたのはこの地にある巨大な洞窟。今までもっと難しい洞窟に挑んだことがあるという彼らは、今回はとくに厳しすぎるダイビングではなかったと振り返ります。しかし、途中、メンバーのヤリ・フオタリネンとヤリ・ウウシマキが洞窟で身動きがとれなくなり、死亡するという非常事態が発生。他のメンバーはやむなく二人のヤリの遺体を洞窟に放置して、洞窟から脱出。警察が編成した国際チームに遺体回収をまかせるのですが、あまりの困難な環境であるため、作業は中止となってしまいます。そして、ついに生存者であるヴェサとカイツは自身で遺体を回収することを決意するのでした。

おそらくこういう海底洞窟ダイビングに限らずでしょうけど、過酷な自然環境の制覇に挑戦する人々は基本は自己責任のもとでその難所に挑んでいます。もちろん死の危険は誰よりも理解しています。富士山にサンダルで登るような一般人とはわけが違います。何かが起これば自分と仲間しか頼れない。その緊張感のもと、最善の準備を整えて、トライしたはずです。

しかし、もともと生存すら危険な場所。何かの拍子で即デッド・エンドが待ち受ける。今作の彼らの失敗もそれを怠慢だと責める人はいないでしょうし、当人も一番によくわかっています。

つまり、本作は海底洞窟ダイビングの是非をウダウダと議論することに時間を使いません。ただひたすらにその世界の一部を何も知らない私たちに覗かせてくれるだけ。

本作はやはり映像のインパクトが強烈です。水中洞窟を潜水するダイバー視点の映像の圧迫感が凄まじく、閉所恐怖症の人は見てられないレベル。いつのまにか観てる私まで息を止めてました。

これ、冷静に考えると撮影のためにわざわざある程度の重さのある機材を持って泳いでいるわけで、ハンデになるのですよね。そこまでしてくれて撮っている映像。貴重とか以前に、よくぞここまでという感じです。

洞窟探検ダイビング

そんな緊迫の洞窟ダイビングで遺体を無事に見つけられるのか…というサスペンスが本作の見どころですが、それと並行して遺体を探す過程で、なぜ自分は洞窟に潜るのかと自問自答していく心理的苦悩が進行していきます。つまり、本作では2つの探求が描かれるわけです。心の葛藤が暗い洞窟を不安だらけで潜っていく姿とシンクロするようにみせる、非常に上手い構成です。

先にも書いたとおり、ダイバーたちが目指すのは遺体であり、その先に楽しさはありません。仲間の遺体と対面したらどんな感情が湧くだろうかと悩みながらの洞窟ダイビングはとても心苦しく辛そうでした。

でも、仲間の遺体を無事に回収してからの彼らの姿は想像以上に清々しさに満ちていました。きっと生き残った彼らもまた洞窟の中に取り残された心境だったのでしょうね。

そして、真の意味で洞窟を脱した彼らが次にすることは…当然、また洞窟に潜ること。「潜らないとパパは不機嫌なんだもん」と家族の後押しもあって、再び潜っていく姿は、やっぱり何があってもチャレンジャーなんですね。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer --% Audience --%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

関連作品紹介

過酷な環境に挑んでいる人たちの姿に迫ったドキュメンタリーの感想記事の一覧です。

・『最後の一息』


・『フリーソロ』

作品ポスター・画像 ©Netflix