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『ヘルボーイ(2019)』感想(ネタバレ)…リブートだけど頑張りました

ヘルボーイ

リブートだけど頑張りました…映画『ヘルボーイ(2019)』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Hellboy
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年9月27日
監督:ニール・マーシャル

ヘルボーイ

へるぼーい
ヘルボーイ

『ヘルボーイ 2019』あらすじ

地獄で生まれ、地球で育てられた悪魔の子ヘルボーイ。超常現象調査防衛局「B.P.R.D.」のエージェントとして活躍する彼に、イギリスを荒らしまわる巨人退治のミッションが下される。暗黒時代に封印されたブラッドクイーンが1500年の眠りから覚めたことを知ったヘルボーイは、さっそく行動を開始するが、自分の過去にも関わる大きな運命が待っていた…。

『ヘルボーイ 2019』感想(ネタバレなし)

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営業を頑張るヘルボーイ

私みたいな映画ファンは毎日毎週映画を観ながらあれこれと感想を垂れ流していればいいというなんとも贅沢なご身分なわけですが、映画をお送りしている側の配給会社は日夜「この映画をどうやって宣伝すればいいのだろう…」と頭を悩ませ議論しているに違いありません。時にはその宣伝が不評を買って、私も文句を言ったりしますけど、基本は“作品を多くの人に届けたい”という善意があるのは理解しています。その仕事が大変なことも。

とくに苦労するのはたいして有名でもない映画を宣伝しないといけないときです。有名作品なら元からあるネームバリューで引く手あまたの余裕しゃくしゃくな立ち回りもできるでしょうし、予算も潤沢でしょう。でもマイナー作品はそうはいかない。映画公開前からすでに劣勢状態で戦いは始まっているのです。

そんな健気な宣伝活動を垣間見ることができた最近の映画として印象に残るのが本作『ヘルボーイ』です。原作は「ダークホースコミックス」から刊行されたアメコミなのですが、昨今のアメコミ一大ムーブメント(歴代興収No1になるわ、国際映画祭で最優秀賞に輝くわ…)とは言ってもその主流にいるのは「マーベル」と「DC」の二強。「ダークホースコミックス」なんて企業は往年のファンしか知らない、その程度の知名度なわけです。

当然この『ヘルボーイ』も一般層からしてみれば「なにそれ?」という冷たい反応。そこで『ヘルボーイ』の日本配給宣伝担当は頑張ったんでしょう。もはや何でもありのタイアップ作戦を展開していきました。

全日本プロレスでヘルボーイをゲストデビューさせてみる…これはわかります。というのも作中で主人公のヘルボーイがレスリングに乱入するシーンがあるので、関連がまだあるんですね。極楽湯とのコラボでサウナ試写会を開催…まあ、作品のキーワードである“地獄”と掛け合わせての企画でしょうし、これもわかる(参加者はヘトヘトだったみたいですが…)。しかし、蒙古タンメン中本、名代富士そば、モンテローザ系列店舗、HOOTERS、ゴーゴーカレー、串かつだるま、AGAスキンクリニック…こうなってくると本当に手あたり次第。正直、映画館に足を運ぶ観客増につながるのか(そしてタイアップ企業にメリットはあるのか)、若干疑問もなくはないですが、ま、いいか。

なんかこうやってヘルボーイ自身が必死に注目を集めるために汗水流している姿を見ると、『シュガー・ラッシュ オンライン』の主人公がYouTuberになって必死になっているあの展開と重なるものがある…(体格も似ているし)。切ない…。

映画本体の話をしましょう。本作の原作である「ヘルボーイ」は映画好きならご存知のようにすでに映画化済み。ギレルモ・デル・トロ監督によって『ヘルボーイ』(2004年)・『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』(2008年)と立て続けに映像化されファンの間では人気を博していました。当然、3作目の製作も望まれていたのですが、諸々の事情で頓挫。それでも少しずつ企画を再検討し、リブート版として再出発することに。そして生まれたのが本作『ヘルボーイ』(2019年)です。

リブートだから本来はベテラン勢なのにこんなに新人のごとく宣伝に腐心するヘルボーイさん、上司の鏡ですよ…。

今回はギレルモ・デル・トロや前回で主人公を演じた俳優などは関わっていませんが、原作者の“マイク・ミニョーラ”が脚本に参加するなど、より原作重視度を高めています。

そしてここが重要ですが「R指定」の作品になりました。なので結構好き放題に残酷描写をぶっこんでいます。これが実現したのも『デッドプール』や『LOGAN ローガン』というR指定アメコミ映画の道を切り開いた先駆者がいたからこそでしょう。まあ、R指定になったことで余計に客足を確保するのが大変になって宣伝で苦戦しているのですけどね(どっかのピエロが羨ましい)。

結果、どういう人にオススメかと言えば、“子ども心を捨てていない”大人の皆さん向きになりました。童心に帰ったつもりで、目の前の敵をグチャグチャのけちょんけちょんにしてやりましょう。会社や家庭でストレスを感じている時に鑑賞するのが最適です。

リブートなので過去作を見ておく必要はないです。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(痛快映像で憂さ晴らし)
友人 ◯(ストレス発散にはなる)
恋人 △(グロくてもいいなら)
キッズ △(大人に許可をもらってね)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ヘルボーイ 2019』感想(ネタバレあり)

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退治する敵はいっぱい

物語の舞台は、西暦512年の暗黒時代。イングランドを混沌に陥れていた邪悪な魔女「ニムエ」の前に現れたのは、もはやフリー素材なんじゃないかと思うほど頻出しがちなアーサー王&マーリン。ニムエというのはアーサー王伝説でいうところの「湖の乙女(ヴィヴィアン)」です。しかし、この『ヘルボーイ』では“ミラ・ジョヴォヴィッチ”です、はい。

暗黒オーラを出しまくるニムエに対してアーサー王の鉄拳制裁が炸裂。こんな時のエクスカリバー。ニムエは斬首され、首だけでもおしゃべりしていましたが、あえなく箱に没収。

ところかわって現代。メキシコのティフアナ。ロサンゼルスから車で3時間ちょっとの場所にあるここで、超常現象調査防衛局(BRPD)に所属するヘルボーイは任務にあたっていました。ターゲットがいるレスリング場へ行くと、なんか流れのままに挑発され、リングにあがることになったヘルボーイ。たぶん観客は彼の見た目的に普通に余興かなんかだと思っていますが、実は戦う相手だった全身スーツの紫野郎…こいつはマスクをとると人間じゃない顔で羽も生えて完全にモンスター化。パニックになる観客。正直、ヘルボーイを見てもパニックにならないのに、なぜこの怪物には反応するのか謎ですが、そこはよし。異形対決の結果、ヘルボーイがその怪物を投げ飛ばしたらリンクの隅の支柱に串刺し、そんなつもりはないのにうっかり殺害してしまいました。さすがにそこには刺さらないだろう、お前の体は豆腐かよ…とも思うのですが、そこはよし(二度目)。

意気消沈しつつもコロラドの超常現象調査防衛局(BRPD)に戻ったヘルボーイは、自分の父親代わりで長年育ててくれたトレヴァー・ブルーム・ブルッテンホルム教授から、イギリス中を荒らし回っている人食い巨人を退治するように指令が下ります。

ゆっくり休む暇もなく、イングランドへ(どうやって飛行機に乗っているんだろう…専用機があるのかな)。そこで自分がこの地球へ来た過去の話を聞かされます。このあたりはギレルモ・デル・トロ監督版『ヘルボーイ』でも描かれたのでかなり割愛気味。

一方、二足歩行イノシシが突如現代に現れ、ニムエの首が入った箱を発見します。この醜いイノシシこと「グルアガッハ」は、イングランドやスコットランドに伝承される妖精「ブラウニー」ですね。子どもを取り換えて成りすます習性もありますし。

そんなこともつゆ知らず、馬に乗って任務へ向かうヘルボーイ。途中で裏切りにあい、電気ビリビリで鹿頭男にやりくるめられるものの、巨人出現で事態は急転。

その後、アリスという実は霊能スキルがある若い女性に助けられ、さらにベン・ダイミョウ少佐という実はジャガー人間である男と合流しながら、ニムエが企む世界崩壊の危機を阻止すべく行動を開始するのでした。

主人公は同じでも、過去作と違ったメンバー、敵、展開で新鮮さを出す新生『ヘルボーイ』。仮に過去作を観ていてもそこまで退屈することなく楽しめたのではないでしょうか。

個人的にはエクトプラズムなアリスを演じた“サッシャ・レイン”はこれまでにない新しい風を呼び込んでいると思いましたし、『アメリカン・ハニー』や『ミスエデュケーション』に続いて活躍の場が増えるといいなと思います。

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残酷殺しショーです

『ヘルボーイ』の世界観の良さはやはりビジュアルで、ギレルモ・デル・トロ監督版『ヘルボーイ』でもそのへんはこだわっていましたが、今作は原作者のチェックも入念にあったせいか、凝りに凝っている感じです。

ヘルボーイ自身はそんな変わりません。まあ、あまり変えようのない完成されたデザインなのですが、今回のヘルボーイに見事なりきった“デヴィッド・ハーバー”。ドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』での好演が記憶に新しい彼ですが、赤い悪魔もぴったりでした。

ニムエを演じた“ミラ・ジョヴォヴィッチ”は…なんかこう、“ミラ・ジョヴォヴィッチ”でしたね(歯切れの悪い文章)。ファッショナブルなスターですから、基本はどんな衣装でも着こなせるわけで、魔女だろうがなんだろうが完璧にモノにしていました。斬新な体バラバラTV鑑賞とか、笑っていいのかわからないシーンもありましたけど…。

ただこの二人はまだ作中でも王道な方で、最も印象に残った奴らはさらにクセが強かったです。とくに悪役の面々。

一番の印象キャラは、バーバ・ヤーガ。あの『ハウルの動く城』風の家の登場シーンからの、奇想天外おもてなし&バーバ・ヤーガ自身のビジュアルが強烈。

そして終盤に街に出現する地獄からの召喚モンスター。なんでしょうか、あの独特のフォルム。そこからのイチイチ残酷な人死にシーンの連発。

この気持ち悪すぎる2者の悪を見れただけでも、本作は元が取れたので私はOKです。OKなんですけど、あのインパクトのせいで、肝心のメインヴィランであるはずのニムエが霞んでいるのは、これで良かったのかと思わなくも…。

残酷演出は絵的な露悪性を狙ったものばかりで、好きな人は大好物でしょうし、ゲラゲラ楽しめたと思いますが、VFX的に多少引っかかるシーンもチラホラ。とくに前半の巨人3体とのド派手バトルの場面は、なんかVFX合成が雑な気がしないでもない。予算の問題なのかな。

ギレルモ・デル・トロ監督版『ヘルボーイ』はVFXは最小限に、極力SFXで魅せるこだわりがあったと思いますが、今回の『ヘルボーイ』は割とそこらへんは気に留めなかった結果、よくあるアクション映画になったという感じでしょうか。

監督は“ニール・マーシャル”で、ジャンル映画を得意とするので、今回もほどよくまとめる仕事ができたのかな。

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ロブスター・ジョンソンがわかる人

ただし、このリブート版『ヘルボーイ』。最大の長所にして欠点があって、それは「マニアのマニアによるマニアのための映画」になりすぎていること。

例えば、作中でナチスの実験でヘルボーイが出現するシーンで、いきなり登場する謎の男。明らかに只者ではない雰囲気を放っていますが、あれは「ロブスター・ジョンソン」というヘルボーイ原作コミックにも登場するキャラクター。ラストにもオマケで登場して、ファンも大熱狂できるサービスになっているのですが、知らない人からすれば「?」です。

また、多用される豪快な残酷描写も、好きな人は手を叩いて喜びますが、やりすぎると単にチープに見えてくるという弊害もあって、考えもの。R指定なのに子ども向けな幼稚さになってしまいます。大規模なスケールで最終的には惨事が起こるのに、主人公がメインでやっていることはこじんまりとしているので、余計にです(このスケールとのギャップは『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』でもみた)。

おそらく製作陣は『デッドプール』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の成功を参考に、今回の『ヘルボーイ』再始動を狙ったのではないかと邪推するのですけど、確かに終盤の義父との愛の物語とか、ラストのワンカット長回しでの痛快チームバトルとか、同じ匂いを感じるシーンは多々あって、ルックだけはマネできています。

でもやっぱり往年のマニアに理解してもらいつつ、新しい客層開拓のために一般人にも魅力を知ってもらうというのは、両立が難しいんだなと痛感する映画でもありました。昨今はそれが大成功している優等生なアメコミ映画が多すぎて、感覚がマヒしていましたけど、本来は簡単じゃないんですよね…。

残念なことに興行的に大失敗してしまったため、続編はなさそうです(続編を匂わせてやる気満々なのが一層虚しい…)。アメコミ映画絶好調だなんだと騒がれがちの世の中、失敗するときは失敗するという、動かぬ事実を教えてくれた映画になりました。

もしかしたら、“ミラ・ジョヴォヴィッチ”がインタビューで言っているように、将来、この作品もカルト映画として人気が出るかもしれないし、わからないですけど。

ぜひ本作を鑑賞した人でまだギレルモ・デル・トロ監督版『ヘルボーイ』を観ていない人は、比較しながら見てみてください。別の楽しさがあります(あっちは子どもでもOK)。また、「ダークホースコミックス」出自のアメコミ映画化としてはNetflixオリジナルで配信された『ポーラー 狙われた暗殺者』がオススメですので、ぜひどうぞ。

『ヘルボーイ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 17% Audience 52%
IMDb
5.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 HB PRODUCTIONS, INC.

以上、『ヘルボーイ』の感想でした。

Hellboy (2019) [Japanese Review] 『ヘルボーイ』考察・評価レビュー