打ち切りでも次は「#SaveWarriorNun」の戦いが始まる…ドラマシリーズ『シスター戦士』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2020年~2022年)
シーズン1:2020年にNetflixで配信
シーズン2:2022年にNetflixで配信
原案:サイモン・バリー
恋愛描写
シスター戦士
しすたーせんし
『シスター戦士』あらすじ
『シスター戦士』感想(ネタバレなし)
#SaveWarriorNun
ドラマシリーズは「キャンセル」されることがあります。いわゆる「打ち切り」です。物語はまだ完結しておらず、続いていくはずなのに、諸般の事情でそこで作品が終了してしまうことを意味します。
評価が低かったり、人気が乏しかったりしてキャンセルとなるのは、事情としては理解できます。しかし、中には評価も高いし、人気もあるのにキャンセルされてしまうドラマシリーズも珍しくありません。
なぜなのか。結局のところ、これは配信しているサービス運営側の事情でしかなく、「他の作品の予算に回したい」とか、「もっと人気が高い作品が生まれるかもしれないから、これはここで終わらせよう」とか、そういうビジネス的な思惑に振り回されているだけです。
ただでさえ、今は動画配信サービスの激しい競争時代に突入しており、動画配信サービス側はそこそこのヒット作では満足せず、特大級のヒット作でないと続きのシーズンをやすやすと作らせてくれない傾向が顕著です。作っては打ち切り、作っては打ち切り…その乱造を繰り返し、その中で派手にバズるドラマが生まれたらラッキー…くらいの採算性なのでしょう。
とは言え、そうなってくると打ち切られたドラマシリーズに根付いていたファンはガッカリです。何度も失望を経験していたら、「もう一切のドラマを観るの、やめようかな」とモチベーションがだだ下がりする人だってでてくるだろうし…。
しかし、近頃のファンは黙って失望を実感しているだけでは終わりません。近年のファンダムはこうしてあえなくキャンセルとなってしまったお気に入りのドラマに対し、制作続行を求める運動をSNS上で展開する光景もよく見られるようになりました。むしろキャンセルされてからこうした運動が勃発することで「こんなにファンがいたのか!」と可視化されて驚くことすらあります。
今回紹介するドラマシリーズもそんな熱いファンに囲まれた作品です。
それが本作『シスター戦士』。
ドラマ『シスター戦士』(原題は「Warrior Nun」)は2020年にシーズン1が配信され、2022年11月にシーズン2が続きました。かなり好評でシーズン2で世界観も人間模様もグっと盛り上がり、いよいよ次はどうなるんだ!?という気になるストーリー展開で焦らした後…。そのシーズン2の配信から1か月後に打ち切りの悲しいお知らせが…。
これに『シスター戦士』のファンは立ち上がりました。さっそくSNSで「#SaveWarriorNun」というハッシュタグが生み出され、シリーズ継続を熱望。さらにNetflix本社の前にシリーズ継続を訴える立て看板までだすという戦略も繰り出され、近年のこの手の運動の中でもことさら勢いのあるヒートアップが観察できました。それだけ愛されてるってことですね。
そのドラマ『シスター戦士』、一体どんな作品なのかというと…。
原作は“ベン・ダン”というアメコミ作家の作品で、1993年に「Ninja High School」というコミックの中で初登場します。過去には映画化やアニメ化も企画されたらしいですが、ここにきてドラマ化が実現という、なかなかに長い紆余曲折のあった作品です。
物語は、早い話が「実は戦闘部隊として訓練されていた修道女(シスター)たちが悪い奴を倒す」という、結構ド直球な「ナンスプロイテーション」です(ナンスプロイテーションの意味は『ベネデッタ』の感想で説明したのでそちらを参照)。
この作品での修道女たちは「Warrior Nun(シスター戦士)」として鍛えられており、体術、剣、ボウガン、アサルトライフル、ショットガン…もう何でもありで戦います。そのうえ物語が進むとかなりファンタジーな敵と戦うことに…。
この随分と威勢よくぶっ飛んだ世界観の原作を映像化するにあたって、たぶん製作陣は『キングスマン』とかの成功例を意識したんじゃないかな。ノリは似ています。
ちなみに原作ではシスター戦士はビキニアーマーみたいな感じでやたら露出度高めなんですけど、さすがにそれは今回のドラマ化では改変されています(ドラマではシスターを性的にみせる描写が一切ないです)。一方で女性主体のアクションということで、かなり異彩を放っていますし、同性愛表象もあって、だからこそ熱狂的なファンが沸いたのでしょうね。
アメリカのドラマですが、舞台はほぼヨーロッパで、撮影は主にスペインでやっているそうです。主人公を演じる“アルバ・バチスタ”はポルトガルの俳優だったり、キャスト陣はわりと国際色豊かなのも特徴です。
打ち切りとかそんなの気にしないで、ぜひあなたも『シスター戦士』の世界に入信しましょう。
『シスター戦士』を観る前のQ&A
オススメ度のチェック
ひとり | :アクション好きなら |
友人 | :気軽に見れる |
恋人 | :軽いエンタメ |
キッズ | :やや残酷描写あり |
『シスター戦士』予告動画
『シスター戦士』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):これがシスター!?
スペインのアンダルシア。聖堂の地下、死体安置所に横たわるひとりの若い女性の遺体。名はエヴァ・シルヴァ、19歳。資料によれば死因は空白となっており、聖ミカエル養護施設で彼女の面倒を見ていたシスター・フランシスは多くを語らずに立ち去ります。
それから間もなくして、ヴィンセント神父のもとに苦しそうに呻くひとりの女性が他の複数の似たような恰好をしたシスターのように見える若い女性たちによって担ぎ込まれてきます。その若い女性たちは武装しており、「シャノンは私たちのリーダーで友達よ。見捨てない」とメアリーが強く訴えますが、そのシャノンはそれでも危険を承知で取り出してほしいと何かを頼みます。背後では銃声が聞こえ、敵が迫っているようです。
シャノンを横にして背中を剥き出しにすると、そこには輪のような模様。器具を取り付けて取り出し作業を開始。息絶えそうなシャノンはメアリーに「みんなを信用しないで」と呟き、光り輝く輪が取り出されます。
「継承者は?」「リリスよ」…そんな会話の最中に建物の天井が崩れ落ちてきます。
切羽詰まった修道女はその輪を急いで手近にあったあのエヴァという遺体の内部に取り付けます。
そして遺体はびくびく動き、目を開けます。さらに絶叫。何が起きているのか状況が掴めないエヴァ。床に落ち、修道女が何者かに殺されたのを目撃。必死に立ち上がると、赤いモヤのようなものが男に入り込むのが視認でき、男を手身近なものでぶん殴ると男は消し飛びました。
その場を裸足で逃げ出し、街をうろつくエヴァ。自由になったことを噛みしめていると、男たちが話しかけてきます。吐きかけてしまい、その瞬間車に轢かれるも、吹っ飛ばされて壁をすり抜けます。足は大怪我、けれどもたちまち傷が癒えました。
その場にあった服を身に着け、平静を装いながら再度街を歩き回ります。なぜ自分はこんなことになったのだろうか…。
その頃、初任務のカミラを褒めるシスターたち。ヴィンセント神父は「残りのディヴィニウムの破片は?」と質問。そして例の輪、ヘイローを隠した遺体が消えたことに気づき、メアリーに捜索を指示します。
エヴァは夜の養護施設に戻っており、車椅子が傍にある自身のベッドの隣の少年ディエゴと遭遇。ディエゴも「死んだよね?」と信じられないような顔で驚きつつも喜んでくれます。エヴァも不安を吐露し、とにかく今は逃げることにします。
誰もいない邸宅に忍び込んだエヴァはそこで同じように無人の邸宅に侵入して遊んで過ごしているJCたちと出会い、しばらく一緒に羽目を外すことにします。
ところがそんなJCと連れ立って紛れ込んだアークテックという企業のトップであるジリアン・サルヴィウス主催のパーティーで思わぬ存在と対面してしまうことに…。
シーズン1:ショットガンは最高だ
「シスターが剣とか銃で戦っていたらな~」…とそんな子どもの妄想を具現化したような映像とアクション満載で、『シスター戦士』、端的に言ってめちゃくちゃ最高な設定でした。感想、終わり。
いや、それではダメなので、もうちょっと語ると…本作の主体となる「十字剣修道会(Order of the Cruciform Sword; OCS)」、リアリティとかは全然ないんですけど(まあ、リアルとか以前の問題だしね)、とにかく属するシスターたちがカッコいいのでそれだけで眼福なのです。
どのシスターもバッドアスですが、ひときわ目立つショットガン・メアリーはやっぱり私のイチオシ。いいですよ、あの無駄にショットガン撃つ感じ。容赦なく顔面パンチかますのもグッドです。
そのシスターたちに加わることになるエヴァも、良い意味で規律無視なバッド・ガールで、観ていて危なっかしいですけどそこもこの十字剣修道会とのアンサンブルが楽しくなる。キャラクターの関係性がどんどんスパークしていくのがたまらないですね。
前半はややダルい展開が続くのですが、エヴァが本格的に十字剣修道会に参加して訓練し、いざコンクラーベ中のバチカンへとみんなで入り込んで衣装を脱いで戦闘態勢!ってところがこっちもアガります。
シーズン1で大きな欠点というか、最大の残念な部分は、エヴァの身体麻痺という設定です。エヴァは車椅子生活で動けずに施設で暮らしていて、死亡してヘイローを身に宿して、それでまた身体が完全に自由に動けるようになる…というのが導入でした。ただ、これだと『アバター』と同じような問題点なのですが、障がい者であることが過度に不幸で生きるに値しないように描かれてしまっており、動けることこそが幸せであるという、ディサビリティの観点での偏見が濃すぎるんですよね。
これだったらいっそのことエヴァの身体麻痺の設定は無しの方が良かったですよ。この設定ゆえに第1話はちょっと複雑な気持ちで観ていました…。
シーズン1の終盤は、バチカンの地下に力の源であるアドリエルという大昔の人物の遺体石棺があると睨んで侵入すると、まさかのアドリエル本人ご登場で、こいつが悪だった!という衝撃の結末。サルヴィウスの息子マイケルまでポータルに消えるし…。
だからバチカンはヤバいんだ…『ダ・ヴィンチ・コード』みたいな陰謀論全開だぜ!
そんな続きは…もっと凄いことに…。
シーズン2:神の世界にもこんなクソ野郎がいるのか…
『シスター戦士』のシーズン2は、バイオレンスとイナゴの要素マシマシです。
それは少し言いすぎでしたけど、残酷度は上がっていましたね。翼の生えたリリスなんてもう「X-Men」案件ですよ。今シーズンの瞬間移動アクションの連続技とかも華麗でした。
残念なのはメアリーの不在。あれで死んだのはあんまりだと思いましたけど、製作者の“サイモン・バリー”いわく、メアリー役の“トーヤ・ターナー”が諸事情で出れなくなったらしく、それで出演展開をカットしたそうです。
その代わり、シーズン2での私のイチオシは修道院長ですよ。こんな中年女性アクション、大好物に決まっているじゃないですか。あの会議の反乱に対処する格闘シーンは何度見てもニンマリできる…。
シーズン2でいよいよ本性を現した偽キリスト風情の自称天使アドリエル。その実態は、“向こうの世界”で覇権をとろうとして失敗して追い出され、しょうがないので今度は地上世界で崇められようと画策する、なんかネットとかによくいそうな論客っぽいダメ男でした。こういうやつ、“神”的な世界にもいるんだな…。
世界にはアドリエルの支持者が溢れかえり、一部は「FBC」として狂信化する中、サマリタンズという謎の対抗勢力も登場。その中心にいたミゲルの正体はポータルに消えたはずのマイケルの成長した姿で…。
このシーズン2での最大の話題ポイントはやっぱりエヴァとベアトリスのロマンス(エヴァはバイセクシュアルかパンセクシュアルかな)。何でも本当はシーズン2の第1話からもっと明確に2人の愛が描かれていたらしいですが(実際の完成版ではほんのり示唆される程度)、最終話ではしっかりキス・シーンもあり、ロマンチックにキメてきました。
ベアトリスもシーズン2では実質的に準主役みたいなもんですからね。演じた“クリスチーナ・トンテリ=ヤング”はフィンランド系ニュージーランド人で、親の片方が中国人だそうで、本作で演技は本格的にデビューみたいですが、バレリーナだったキャリアもあってか、アクションが様になっていてカッコいいです。もっと見たいぞ…。
シーズン2の終盤は、大聖堂に乗り込み、アドリエルと対峙。マイケルの遺体を爆破して倒そうとするもアドリエルのウザさはそれでは止まらず。しかし、神の世界のレヤが出現し、アドリエルを高位の悪魔タラスクのフルボッコで爆散させ、一件落着。でもエヴァは瀕死で、やむなくポータルに消えるしか選択肢はなく…。ラストは愛する人を失い、それでも健気に十字剣修道会を去るベアトリスの姿…。
聖戦とかどうでもいい。これはベアトリスとエヴァの関係性を見届けないとダメだ!と多くの視聴者が思ったであろう、その瞬間の打ち切りですよ…。この世に神はいないのか!
くそ…打ち切りを決めた奴には、ずっとイナゴがまとわりついてくる呪いをかけてやる…。
絶対にこの『シスター戦士』、シーズン3があれば人気がさらに伸びていっただろうに…。これは最初にドカーンとバズるタイプじゃなくて、徐々にバズっていくジワジワ系でしょうよ…。
希望は捨てないですけどね。人生、何が起こるかわからないし…。
だから『シスター戦士』を信仰する者たちはこの言葉で再会を誓うしかありません。
「この世か また来世で」
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 69% Audience 95%
S2: Tomatometer 100% Audience 99%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix ウォーリアー・ナン
以上、『シスター戦士』の感想でした。
Warrior Nun (2020) [Japanese Review] 『シスター戦士』考察・評価レビュー