ロマンティックじゃない?
Netflix映画『ロマンティックじゃない?』(ロマンチックじゃない?)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Isn't It Romantic
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:トッド・シュトラウス=シュルソン

あらすじ

子どもの頃、ナタリーはロマンティック・コメディ映画の世界観に憧れていたが、大人になった今では映画が誇張する恋愛を醒めた目で見ていた。しかし、ひょんなことから気を失ったナタリーは目覚めると周囲がオカシイことに気づく。そこはロマンティック・コメディ映画の中だった…。

ネタバレなし感想

アンチはメンドクサイ

「恋愛映画」は人気のジャンルです。でも世の中にはそれが嫌いな人もいます。

もちろんどんなジャンルでもそれを好きな人と嫌いな人がいるものです。例えば、ホラー映画が嫌いな人は、おそらくホラー描写が生理的に苦手なのでしょう。ヒーロー映画が嫌いな人は、ヒーローに憧れを抱いていない、茶番だと思っているかもしれません。アニメ映画が嫌いな人は、アニメは実写に劣る、幼稚だと公然と主張することもあります。

では恋愛映画が嫌いな人は? その理由はあえて考えるなら2つに分けられると思います。

1つ目。まずそもそも“自分がモテない=恋愛に縁がない”ために…ハッキリ言ってしまえば“嫉妬”に近い感情が恋愛映画への反発の原動力になってしまうパターン。リアルでもカップルを見ると虫唾が走るのに、わざわざ映画でまでも目に映るなんてクソくらえ!みたいなやつ(若干の誇張)。まあ、人間だもの、妬みだってするときはある。

2つ目。こっちはもう少し世間体を気にした(という言い方は棘がありますけど)反論意見。つまり、恋愛映画で描写される恋愛はあまりに現実離れして嘘っぽいから全然感情移入できないというもの。映画やドラマにありがちなコテコテの恋愛描写のお約束にうんざりしている人は多いのではないでしょうか。

別に嫌いなのは構いません。好みの問題です。でも、その“嫌い”をこじらせて「アンチ」になってしまったら、それはそれで困ったもの。それを好きな人の前でも平然と自分の憎悪をばらまいていたら、周囲にしてみれば迷惑でしかありません。

そんな恋愛映画アンチ特有の“面倒くさい泥沼に自らハマって自暴自棄に当たり散らしている姿”をそのままユーモアたっぷりに描いたのが本作『ロマンティックじゃない?』です。

本作は、ラブコメ(映画で言うところの「Rom-Com」)が大嫌いでラブコメ映画好きの同僚にまでそのヘイトをぶちまけるほどこじらせた女性が、ある日、ラブコメ映画の世界に入ってしまうという、異世界系フィクション。「ラブコメだけどラブコメじゃない、でもラブコメ」というなんとも落ち着かない映画ですが、ラブコメあるあるを盛大に風刺した気持ちの良いコメディです。

監督は“トッド・シュトラウス=シュルソン”という人で、過去作では『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』という日本ではビデオスルーになったホラー映画を手がけています。この作品は、ホラー映画嫌いな人がホラー映画の世界に入ってしまうという内容。要するに『ロマンティックじゃない?』はそのラブコメ版ですね。

ラブコメ映画アンチのヒロインを演じるのは、『ピッチ・パーフェクト』で主演のアナ・ケンドリックよりも夢中になった観客もいた、ぽっちゃりキャラでおなじみの“レベル・ウィルソン”です。彼女の体当たり感たっぷりの演技が好きな人は多いと思いますが、本作でも魅力を存分に発揮。本作では製作にも名を連ねています。

他のキャストも個性豊か。雷神でハンマー振り回している兄を持つ“リアム・ヘムズワース”はラブコメ映画に欠かせないイケメン・ポジションで登場。ちなみに“レベル・ウィルソン”も“リアム・ヘムズワース”もオーストラリア俳優なんですね。

ヒロインとペアを組む同僚の男として“アダム・ディヴァイン”も出演。『ピッチ・パーフェクト』に続き、またもや“レベル・ウィルソン”との共演ですが、二人でワンセットみたいなルールでもあるのだろうか…。

他にもすっかりハリウッドで活躍するインド俳優になってしまった“プリヤンカー・チョープラー”も共演。彼女が歌ったり踊ったりするとインド映画に見えてきますね…。

下手にアンチ化する前に予防接種のつもりで鑑賞するのもいいかもしれません。効果があるのかは保証できませんが…。アメリカではワーナーブラザースが劇場公開、でも日本ではNetflixオリジナルとして配信中。90分もない映画なので気軽にどうぞ。

オススメ度のチェック
ひとり◯(気軽に見れる)
友人◯(話のネタになる)
恋人◎(恋愛観を共有する機会に)
キッズ△(下ネタはややある)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

見よ、これがアンチだ

まずは恋愛映画あるあるをひたすらあげつらうことから始まる本作。

冒頭、1990年公開のリチャード・ギアとジュリア・ロバーツ共演の王道ラブコメ映画『プリティ・ウーマン』を夢見るように釘付けで視聴する子ども時代のナタリー。そんな純真な女の子に対して「現実は違う」と冷たく言い放つ母。まあ、そうだよね、リチャード・ギアはもう70歳近いけど、最近、33歳年下の女性と結婚してますが、そんなことができるのは一握りの人間だよね…あ、そういう話じゃないか。

ともあれこの母の言葉が原因かどうかは知りませんが、大人になったナタリーはそれはそれは立派な恋愛映画アンチへと成長していたのでした(アンチはアンチを生むのか…)。

恋愛映画なんてストーリーは同じでしょう? 男をゲットしてハッピーエンド。女の幸せはそれなの? 安っぽい曲を流して、メイクもいつもバッチリで、洋服選びにやたら時間をかける、それの何がいいの? 天然なドジっ子がチャーミングだなんてバカげている。不完全は醜いだけ。それに同僚はいつも宿敵になる。ヒロインを助けるゲイの友達が必ずいる。仕事してるの? ナレーションは押しつけがましいし、スローモーションで最後に走るのはなに? 騙されている。有害よ。それからそれから…。

見よ、これがアンチだ…というお手本のような言動のオンパレード。こういう人、いますよね(恋愛映画に限らず…)。

自分の思ったことをブログとかにつらつらと書き連ねているだけなら無視できます。独り言ですから。でも職場で、しかもラブコメ映画を好きな人の前で、延々と演説してきたら、それはもうウザいの一言。ホイットニーはよく耐えていましたよ。

しかし、ナタリーは知ったことではない様子。日常で恋を芽生える瞬間に直面しているような男女にさえも、無自覚にイライラをぶつけるほど、行動は深刻化。このままだと恋愛禁止法を制定する政治活動とかしそうな勢いです。

注意、PG-13です

そのナタリーはある日、駅でひったくりに襲われ、必死の抵抗。股間パンチを決めて撃退するも、柱に衝突して気を失います。そして、目覚めるとそこは病院のベッドの上。なぜか自分は完璧メイク。やたら明るい内装で、やってきたのはイケメン・スタッフ。おかしい…。

外に出ればニューヨークの街が不自然に華やか。なぜこんなに花で溢れかえっているのか。自分の部屋に戻ってみれば、パステルカラーでおしゃれなマイルームに驚愕。お隣のドニーはゲイっぽい話し方になっているし、うちの犬は芸をするお利口さんに…(犬のくだりは笑ってしまった)。

何もないところですぐに転びそうになる。これはもう、間違いなく、絶対に、明らかに、確信して言える…ここで汚い言葉にもどこからともなくピー音が入ることも判明、ああ、「PG-13のラブコメ映画」だ! ナタリーは絶望するのでした。

恋愛映画好きでなくてもこの展開は小躍りして喜びそうなチャンスです。だって最高の相手とロマンスに興じられるのですから。でもナタリーは子どもの頃から英才教育を受けたアンチ。こんな屈辱的な世界からは早く脱出したい。それには恋を実らせるしかない。そう考えたナタリーは、職場で出会ったブレイク(イケメン金持ち)と結ばれればいい…そうアンチなりに思考します(アンチは嫌いなものに案外詳しい)。

どうせならセックスくらいしておこうと欲を働かせてアタックするも、これは「PG-13」なので規制あり。セックスはできず、残念(PG-13のラブコメ映画はセックスを描写できないのではなく、セックス自体していないというのがユニークですけど)。

ならばもう未練はない、「I love you」の言葉で映画の世界ともおさらば…と思ったら、とくに変化は起きず。アンチ困惑…。

ロマンティックじゃない?

I love me

そうこうしているうちに、自分の相手はブレイクなのではなく、同僚のジョシュなのではないかと考え始めるナタリー。

イケメン金持ちのブレイクか、自分を誰よりも理解してくれているジョシュか。いかにもラブコメみたいなジレンマに悩んでいると、ジョシュがイザベラという女性と結婚するとサプライズ発表。

ここで突然のステージ熱唱タイムが始まりますが、完全に『ピッチ・パーフェクト』。やっぱり歌いまくる“レベル・ウィルソン”は絵になりますね。

結局、「beguiling(字幕では“蠱惑的”と翻訳)」な女性を求めるブレイクと対立したナタリーは、これはジョシュの結婚式を止める筋書きだと直感。スローモーションで走りだし、結婚式に乱入。しかし、ここで本当に自分に必要なのは「自分自身を愛する」ことだと理解したナタリーは、結婚式場を退出。車ですっ飛ばしたところで、激突。目覚めると、そこは汚いいつものニューヨーク。

職場のジョシュが自分に好意を寄せてくれていることを実感し、めでたくカップル成立。最後はみんなでミュージカル。

そこにはアンチから脱却し、自分を解放したラブコメのヒロインがいたのでした。

アンチもラブコメには欠かせない

コミカルな題材でありつつ、とっちらかることなく綺麗にまとまった映画で、風刺もほどよく、さすがの“トッド・シュトラウス=シュルソン”監督。また、アンチ描写をナチュラルにやれる“レベル・ウィルソン”の好演はお見事でした。個人的には終盤に説明的な回答が挿入されるのは気になりますが、勢いの良さで持っていけるのは、この製作陣ならではだと思います。

ただ、もうひと押しほしいところではあります。

なにより恋愛映画アンチの人が観ても「恋愛映画って案外いいもんだな」とは思わないでしょうね。現実のアンチはもっと卑屈…というのは半分冗談にしても、ちょっと本作のテーマ性は老朽化している部分もあります。

本作のネタ題材とするラブコメはいわゆる『プリティ・ウーマン』のような往年の作品。美男美女が出会ってハッピーエンド形式、いわゆる「シンデレラ・ストーリー」です。

でも近年は「脱シンデレラ・ストーリー」が主流ですらあるという現実もあります。『アイ・フィール・プリティ!』など最近の話題作もそうですし、あのディズニーですら脱シンデレラの時代です。
そう考えると、『ロマンティックじゃない?』は「脱シンデレラ・ストーリー」時代のラブコメのマンネリの沼にハマっているとも言えなくはない。

本当に革新的なことをするのなら、「脱シンデレラ・ストーリー」のさらにその先を見せてくれないとダメですが…それが何なのかは想像つきませんけど。

でもひとつだけ本作が提示した良いことがあるとすれば、恋愛映画アンチという存在さえもラブコメの中では定番のキャラクターに見えるんだということ。どんなに反発しようとも、それは自らラブコメ・ワールドに飛び込んでいるようなもの。

恋愛映画を好きな人も嫌いな人もとりあえず鑑賞してみて、その後にあーだこーだと喧嘩すればいいのです。そしたら、ほら、もうその光景はラブコメじゃないですか。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 69% Audience 57%
IMDb
6.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

関連作品紹介

おすすめ PiCKUP!
↑『ピッチ・パーフェクト』…レベル・ウィルソンの爆上げ熱唱ライブパフォーマンスに注目。
作品ポスター・画像 (C)New Line Cinema, Warner Bros. Pictures, Netflix