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『ジュラシック・ワールド 炎の王国』感想(ネタバレ)…恐竜、ゲットだぜ!

ジュラシック・ワールド 炎の王国

恐竜、ゲットだぜ!…映画『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(ジュラシックワールド2)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Jurassic World: Fallen Kingdom
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2018年7月13日
監督:J・A・バヨナ

ジュラシック・ワールド 炎の王国

じゅらしっくわーるど ほのおのおうこく
ジュラシック・ワールド 炎の王国

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』あらすじ

恐竜の大脱走という惨劇を起こしたテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を有したイスラ・ヌブラル島に、大噴火の兆候が表れ、恐竜たちをどうするか、人間たちは判断を迫られていた。そんな中、恐竜行動学のエキスパートのオーウェンはテーマパークの運営責任者だったクレアとともに、恐竜たちを救うべく行動を開始するが…。

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』感想(ネタバレなし)

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世界で一番失敗を反省しないテーマパーク

「絶対に危ないとわかっているのに、なんで人間は回避しようとしないのか…」そんなことを最近も自然災害が起こるたびに思うのですが、やはり油断してしまうものなんですね。死亡フラグの危険性を描く映画をどんなに観ても身につかないという、これはもう私たち人間の根本的欠陥なんですよ。

つまり私たちは観なければいけないのです…この『ジュラシック・パーク』最新作を(強引な誘導)。

ということで本作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』。世界で一番失敗を反省しないテーマパークを舞台にした、スピルバーグが生み出した傑作『ジュラシック・パーク』の通算5作目にして、新3部作の2作目となる本作。個人的にはスピルバーグ作品で一番好きな映画はどれ?と聞かれたら、『ジュラシック・パーク』と答えるぐらい思い入れがあるのですが、そこを語りだすと長くなるのでここで強制終了したいと思います。

また恐竜から人が逃げるのか…さんざん見飽きたよ…とか思うかもしれませんが、今回は一味違います。

何が今までにないのか。それは「恐竜が逃げる側」なのです。もう学習しない人間たちが逃げ惑うのはどうでもいいと製作陣も思ったのか、今作では大噴火した島から恐竜が逃げまくります。まさに“(恐竜が)パニック(になる)映画”です。まあ、その過程でやっぱり人間はバカをやらかすのですが…。

監督は前作で大作に大抜擢された“コリン・トレヴォロウ”から変わり、『永遠のこどもたち』『インポッシブル』『怪物はささやく』と、シリアスかつ大人向けな作風を得意とするスペインの奇才“J・A・バヨナ”監督へ。なので作風が少しダークな感じになっていて、前作のいかにもテーマパークらしいエンタメ感は薄まりました。その代わり、「えっ!?」となるようなこれまでにない領域に踏み込んだ、シリーズの中でも挑戦的な一作になっています。ネタバレは一切見ずに鑑賞することを強くオススメします。

みんな大好き“クリス・プラット”が前作と同じく主人公です。「ほっとくとお笑い芸人化してしまうイケメン俳優」だと思ってますが、笑いをどうしてもとりたいのか、今回もユーモラスな演技を見せるシーンが用意されています。“ブライス・ダラス・ハワード”演じるヒロインは、前作よりも性格が丸くなりました。

前作から話が地続きになっているのはもちろん、旧3作からも懐かしい登場人物が出てくるので、余裕があれば過去作を観ておくとより楽しめると思います。基本はシンプルな物語なので、そこまで気にすることでもないですけど。

では恐竜の世界へどうぞ。じゃないと、恐竜の方から行きますよ。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):島へ再び(何度目?)

コスタリカ西方の海にポツンと浮かぶイスラ・ヌブラル島で起こった「ジュラシック・パーク」の惨劇。それは絶滅した恐竜を蘇らせるというものでしたが、人間には手に負えず、痛ましい犠牲者をだしました。それから22年後、今度はマスラニ・グローバル社の主導で恐竜のテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を実現しようという計画が始まり、島に再び恐竜が闊歩しましたが、これも大惨事に発展。観光地は閉鎖され、島は今もコントロール不能な恐竜の巣窟です。

その「ジュラシック・ワールド」事件から3年後の2018年。小型の海中調査船が封鎖された島に侵入します。派遣された傭兵であり、海底に沈んだインドミナス・レックスという恐竜の遺体から牙を回収。途中で陸ではティラノサウルスに、海ではモササウルスに襲われてしまいますが、サンプルはなんとか手に入れました。

「ジュラシック・ワールド」の管理責任者だったクレア・ディアリングは今は恐竜保護を目的とした団体「Dinosaur Protection Group(DPG)」を設立していました。イスラ・ヌブラル島は火山噴火が活発化しており、このままでは島にいる貴重な恐竜たちはみな全滅してしまいます。

この恐竜にも絶滅危惧種の保護を与えるべきか、上院委員会は議論し、20年以上前の島の事件で現場にいたイアン・マルコムは「自然に委ね、絶滅するべきだ」と意見します。しかし、クレアはなんとしてでも救い出したいと考えていました。

そこでパークの創設者である故ジョン・ハモンドの元ビジネスパートナーであったベンジャミン・ロックウッドを訪ね、クレアは支援を取り付けようとします。しかし、条件がありました。ベンジャミンに仕えるロックウッド財団の経営者イーライ・ミルズの依頼でヴェロキラプトルの中でもとくに賢い「ブルー」という個体を捜索してほしいというものです。

この任務をこなせるのはひとりしかいない。元恐竜監視員のオーウェン・グレイディのもとを訪ね、彼を説得して連れて行くことにします。オーウェンもブルーには特別な想いを抱いており、忘れられません。

クレア、オーウェン、そしてDPG所属のフランクリン・ウェブジア・ロドリゲスは、イスラ・ヌブラル島に向かいます。

軽飛行機で久しぶりに見たその島は変わらずの壮大な絶景でした。着陸すると、傭兵のウィートリーらに出迎えられ、さっそく島を探索。

島に悠々と生息する恐竜たちの姿に目を奪われつつ、制御室でシステムの操作を行おうとします。しかし、島の火山活動が激しくなり、状況は一刻を争う事態に…。

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恐竜は人間を襲う(自然の法則)

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』はアメリカ公開時から興収は調子がいいですが、賛否はハッキリ分かれていて、物議を醸していました。で、実際に観てみると、なるほどなと納得。正直、私も本作は良いなと思った部分と、う~ん、ここはどうかな…と思った部分が、極端に分離されるような感想を持ちました。
まず良かった部分から。

すでに述べましたが、序盤で見られた「恐竜が島から逃げる」という従来の立場を逆転したアイディアはやっぱりユニークでした。それはつまり恐竜が絶滅するというイベントをもう一度人類に見せるということであり、シリーズを通しても意味深いことです。最後に粉塵と炎に消えていくブラキオサウルスの姿は哀愁があり、シリーズが築き上げたロマンの終焉を感じて切ない気持ちになりました。

ただ、逆に言えば、恐竜絶滅の展開をこんな序盤の山場で見せてしまったということは、つまり恐竜は絶滅しない…ユニバーサルはシリーズを続ける気満々だということなんですが…。

他に良かったのは、ちゃんと残酷に人が死ぬことです。今作の黒幕イーライ・ミルズ、悪徳販売業者グンナー・エヴァーソル、傭兵ケン・ウィートリー…悪役全員が惨たらしく恐竜に殺されて死ぬのは良いものです。前作からすっかり人間の味方っぽくなってしまったティラノサウルス・レックスも冒頭でしっかり恐怖を見せつけてくれましたし、やっぱり恐竜は人間を襲わないとね(恐竜に対する風評被害)。もっと欲を言えば、さらに悪趣味に襲われる展開が見たかったですけども…。

そして、本作の最大の特徴であり、一番の挑戦だった、メイジーという女の子のエピソード。思いっきりネタバラシしますけど、彼女は実はクローン人間であり、ベンジャミン・ロックウッドが密かに恐竜復活技術を応用して生み出したことが判明します。最後はシアンガスで苦しみ死に絶えようとする恐竜たちを逃がすという決断をしたメイジー。この子こそ、まさに“J・A・バヨナ”監督が起用された一番の理由なんでしょう。メイジーが自分の意義を見出す姿はアツいものがあります(ただ少し展開が急すぎる気もしたのと、最終的な決断の内容には不満もあるのですが、それは後述)。

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インフレと、揺らつく生命倫理

そんな良かった部分の一方で、残念に思った部分もあって…。

そのひとつがまず恐竜保護団体DPGに所属するジアとフランクリンの存在。あまり登場に絶対的必要性を感じないし、かといってシリーズらしく死ぬわけでもない。だったら、もっとメイジーの出番を増やしてあげるほうが、作品のテーマがハッキリするのに…と。

次に“恐竜の強さ”問題。本来、恐竜に強い弱いはないのですが、映画である以上、その判断をしなくてはいけません。前作は恐竜がたくさん出てきて最終的に「歯の数」という非常にわかりやすいキーワードで恐竜の強弱を観客に提示していました。これで生態系における弱肉強食のルールを、嘘ではあるのですが、垣間見せてくれるわけで、上手いなと思ったものです。ところが、今作では何が強さを決めるのか最後まであやふやなまま。新登場した凶悪恐竜インドラプトルも、結局、どう強いのか不明なまま、気が付いたら勝っていたというオチ。これなら前作のインドミナス・レックスのほうがまだ強そうでしたね。

そして、一番の致命的な問題は、設定のインフレです。何作も続いてきたシリーズもこれまではインフレせずにフォーマットを守ってきたのですが、今作はついにそのパンドラの箱を開けてしまったわけで…。いわゆる続編ものにありがちな、“トランスフォーマー”現象ともいうべき、際限のないインフレが始まったなというのが素直な感想。

このインフレで最も犠牲になったのが、シリーズの1作目からテーマにあった生命倫理の問題。本作も序盤から「恐竜をこのまま絶滅させていいのか」という倫理を問う内容でした。でも、ここからすでに個人的にはひっかかっていて。というのも、恐竜を復活させることができた以上、「絶滅」という概念は消えたようなものなわけです。種の保存さえも必要ないわけですから。だからあんなに「噴火で恐竜が…」と心配する必要もないし、もっといえば恐竜を売るより恐竜復活技術を売るほうがいいし、本作のストーリーの根幹が本末転倒な気がしてきます。

そもそも1作目が問いてきたのは「恐竜を復活させていいのか」=つまり「絶滅」という概念の重みが薄れることへの警鐘だったわけで、本作とは真逆。本作の生命倫理の論題は、1作目の時点で存在ごと否定されたようなものでは?

結局、創る→滅ぶ→創る→滅ぶ→創る…というスパイラルに入っているだけ。結果的にジュラシックパークのビジネス思想が、本作シリーズを進めるユニバーサルの商業狙いと図らずも一致してしまい、なんか後味が悪い感じかなと。せっかくのメイジーの決断も、映画会社に都合のいいものにしか思えなかったり。

個人的な願望を言わせてもらうなら、最後のメイジーの選択も「造られた生命を滅ぼす」という方向のほうがインパクトも意義もあった気がします。

まあ、そんなことをグダグダ書きましたが、3作目でどう締めるのかが問題ですけどね。おそらく3部作の最終章は「排除」か「共生」かを問うテーマになっていくのでしょうけど、どうまとめるのかな?

クローン技術によって量産されたオーウェン(複数)とブルー(複数)の軍団と、インドラプトル軍団との熾烈なクローン戦争が勃発し、同一遺伝子を持つクローンを一瞬で死滅させる細菌を閉じ込めた石(ストーン)をめぐって奪い合いに発展する「ジュラシック・ワールド インフィニティ・ウォー」とか。人語を話すアライグマも宇宙からやってきてね。うん、次回作はきっとこうなります。

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 47% Audience 48%
IMDb
6.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)Universal Pictures

以上、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の感想でした。

Jurassic World: Fallen Kingdom (2018) [Japanese Review] 『ジュラシック・ワールド 炎の王国』考察・評価レビュー