カメラを止めるな!
映画『カメラを止めるな!』(カメ止め)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:カメラを止めるな!(ONE CUT OF THE DEAD) 
製作国:日本(2017年)
日本公開日:2018年6月23日
監督:上田慎一郎

あらすじ

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟に集まっていた。そして、カメラが回りだす。

ネタバレなし感想

面白さ至上主義

映画を宣伝する方法は色々あります。予告動画、チラシ、ポスター、TV番組、雑誌、公式ウェブサイト、情報サイト、ブログ、イベント、試写…。それぞれリーチするターゲットが違うので、そのどれもが大事であり、きっと宣伝担当も必死になって取り組んでいるのでしょう。

しかし、現代社会において、一番注目といえる宣伝方法はやはりソーシャルメディア(SNS)。利用者層に偏りがあることも多いですし、場合によっては悪評やデマが流れることもありますが、それでも良くも悪くも今の映画界にとって欠かせない存在になっています。何より拡散力が尋常ではありません。私はそこまで頻繁にSNSを利用しない方の人間ですが、それでも作品がSNSで爆発的に評判が広まる光景には驚かされます。SNS時代だからこそ大ヒットできた映画も今はたくさんあるのでしょうね。

ただ、このSNS。ひとつ特徴があって、短い文章で面白さを表現できる作品ではないと拡散しづらいということです。長々と考察が必要だったり、テーマを読み解くことが前提な作品には、あまり味方にならないことも多々あります。あとは結局、インフルエンサー(中心的に情報を拡散させる人)による数のごり押しなところもあります。だから、宣伝側にはイマイチ予測しづらい方法でもありますね。

そう考えれば、2018年の邦画のダークホースであり、予想外のインパクトを起こした『カメラを止めるな!』はまさにSNS時代にドンピシャな映画でした。

この作品の何か良いかって「面白い」の一言で作品が語れるということ。厳密にはそれ以上語るとネタバレになるので言えないだけなんですが、結果、「面白いけどネタバレになるからとにかく観て!」という、一番未見の観客が気になるキャッチーな宣伝に自然になってしまう。これが良かったのだろうなと。他作品だと、推薦したい欲があるゆえに、インフルエンサー陣があれやこれやと情報過多になりがちな事例も散見されますけど、本作はこのシンプルさが成功の秘訣なのかも。やはり映画は「面白さ至上主義」だと、再実感させられました。そして、この「面白いのが一番だろう!」という概念は本作の根幹のテーマだったりするわけで。

本作の一般公開は6月。ただ、その頃は超限定的な公開だったので、チケット争奪戦になり、都心の人間でさえ観にくい状況。それが「Google Trends」によれば、『カメラを止めるな!』に関する検索数は上映劇場が100館以上に拡大した8月に急増していることからも推察できるように、上映映画館の拡大とインターネット上での高評価の声の拡大がシンクロし、理想的な映画興行を達成しました。これはもう映画プロモーションのひとつのモデルケースですね。

ということでこれだけ話題になってもまだ観ていない人、劇場へGOです。万人にオススメできる作品ですから。「ゾンビ映画らしいけど、普段そんなの見ない自分でも大丈夫?」⇒ 大丈夫です。「子どもでも観れる?」⇒ 大満足できます。私も鑑賞前は「これってジャンル映画なのだから、わかる人にはわかる系のタイプじゃないの?」と思ってましたが、別にそんなことありませんでした。繰り返しになりますが、普遍的に面白い映画です。オススメできない人がいるとしたら、「ゾンビという概念を知らない人」か「映画自体が嫌いな人」くらいですよ。

予告動画

※注意!ネタバレを避けたいなら見ない方がいいです。





↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

世界に通じる面白さ

私の感想は「面白い」の一言で済まそうかな。別に言葉にするのが面倒というわけではなく、この面白さを解説すると途端に安っぽくなる感じがして、あまりいい気分がしないというか…。本作は別に考察なんて必要ないし、観ればじゅうぶん最高のエンターテインメントを満喫できるのでOKなんですよね。トリックもよくよく考えると普通。結果を見せた後に、その過程を見せるだけ。ネタバレしても「へぇ~、そうなの」で終わりそうな中身。でも観ると必死さに思わず拍手したくなる。そういう映画です。

なので、ここからは海外の感想をピックアップしながら、作品を海外の視点を糸口に見ていきます。

とはいうものの、日本と同じように海外でも本作は限りなく絶賛で迎えられています。第22回ファンタジア国際映画祭で審査員特別賞、ファンタスティック・フェスト2018でホラー部門最優秀監督賞&観客賞、第51回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭でBlogos de Oro賞特別賞…受賞経歴は増えるばかり。

映画レビューサイトも高評価の嵐です。アメリカのレビューサイト「ROTTEN TOMATOES」では批評家スコアが100%、一般観客スコアが97%、「インターネット・ムービー・データベース(IMDb)」では10点満点中「8.2」。中国のレビューサイト「DOUBAN」では、スコアは10点満点中「9.0」。韓国のレビューサイト「NAVER」では、スコアは10点満点中「9.16」

これがどれだけ凄いかというと、例えば、中国のレビューサイト「DOUBAN」の最近の高評価を記録した邦画は、『君の名は。』は「8.4」、『万引き家族』は「8.7」です。『カメラを止めるな!』は、ここ最近の邦画ではダントツの評価の高さです。評価的にはジブリ作品や『七人の侍』に並ぶ映画になってしまったわけです。

ヨーロッパでは現時点でまだ公開が始まっていないので評価が確認できないのですが、この流れだと同じような称賛を受けるでしょう。

もちろんこんなのはただの点数です。でも、ただの点数でも高評価を得るのは難しいもの。ましてや海外だと評価軸が違ったりします。それでも全世界的に本作が評価されるのは、やっぱり面白さがわかりやすいからなのではないでしょうか。

カメラを止めるな!

笑いと称賛の声、続々

具体的に、海外の各レビューサイトから感想コメントを部分的に抜粋してみるとこんな感じ。
  • 劇場でこんなにたくさん笑ったのは久しぶり。
  • 劇場が笑いに包まれる現象を目にできます。
  • 長いオープニングを過ぎると、笑い爆弾が爆発する。
  • 37分ワンカットのオープニングより面白いものが次のシーンから始まる。
まずとにかく爆笑したというもの。これも本作の笑いのネタが素直に世界共通で通じるものだからですよね。正直、邦画でもこういう喜劇を描く有名監督さんがいます(とくに誰とは言わないけど)。しかし、たいていは有名俳優を出して、それゆえの笑いをさせるケースがほとんど(「あの俳優がこんなオカシイことしてる!ゲラゲラ」というやつ)。対して、本作は無名の俳優ばかり。これぞ巧みな脚本と演技力の賜物です。
  • 誰かに推薦したくなる映画。99%の人は観ていないと思うから、なおさら。
  • 満点評価を与えたいのでわざわざログインしたくらいの映画です。
海外でも人にオススメしたいと思う人は続出しているようです。鑑賞できる機会が増えるといいのですが、いくら話題になっても上映劇場が少ないと厳しいのですよね…。

韓国ではこんなコメントも多数ありました。
  • 韓国のコメディ映画はこれを見て反省しないといけない。
  • なぜ韓国ではこのような映画を作れないのか。
日本映画を褒めて自国の映画に嘆く傾向が強いのが韓国なのでしょうか。これには『万引き家族』など他の高評価な日本映画が連続していること、2018年の韓国映画で傑作が乏しいと考える韓国映画ファンがいること…などの理由があるようですが。ただ、これらの意見を見て面白いと思ったのは、日本の映画ファンも質の高い韓国映画を観て同じことを言っているんですよね。「なんで日本は韓国映画みたいな作品を作れないのか」と。なんか相思相愛じゃないですか。
  • ポン!
あと、すごくどうでもいいですけど、韓国ではこのコメントも多かったです。ポンポン、書き記してます。ツボにハマったのかな。

映画の愛と苦労が詰まっている

もう少し踏み込んだ感想コメントを見てみると…。
  • 映画制作は血まみれということだね。
  • ジャンル映画の混沌と陶酔を見事にあらわしている。
  • 近年の舞台裏映画としては最も巧妙な構成を持った一作のひとつ。
  • 作品を生み出すアーティストたちの犠牲を分析し、映画産業を痛烈に風刺している。
  • この映画に愛を感じた観客は、他の一般の映画にも感謝するようになる。
映画制作のバックステージを描く作品として優秀だという声は、とくに批評家から多いように思います。映画舞台裏モノといえば、『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』や『映画は映画だ』など、挙げだすとキリがないのですが、本作は単に面白おかしく笑いでみせるだけでなく、しっかり風刺していることが高評価のポイントのようです。

「安く、早く、出来はそこそこ」で仕上げる日暮隆之監督を始め、登場人物の立ち位置や関係組織とのつながりなど、決して日本特有のものではなく、世界の映画業界が抱えているフラストレーションだというのがよくわかりますね。インディーズ映画だけでなく、どんな映画でも苦労はあるものです。

個人的にはこの映画制作の葛藤を、コメディという敷居の低いスタイルで一般層に伝えられたのが嬉しいです。本作を観て、他の様々な映画にもこんな苦戦があると思ってもらえれば、楽しさも広がるはずですから。
  • 父と娘がホラー映画を通して愛を共有する、スカッとする作品。
  • この奮い立たせるような精神は『ロッキー』の勝利と同じだ。
そうした舞台裏劇を笑いとともに見せるだけでなく、最終的にはキャラクターの成長まで描いてみせるあたりは、とくに映画に想い入れのある人にはよりグサッと心に刺さる点。『ロッキー』の名を挙げた人がいるのがまさにで、とくに日暮隆之監督という登場人物の、映画界で鬱屈を溜めていたクリエイティブ魂が破裂するカタルシスは、私も感動しました。

その論点自体は珍しくもなく、むしろ定番。『地獄でなぜ悪い』や『桐島、部活やめるってよ』にも同じようなテーマ性はありますが、本作の場合、何度も言うように普遍的な「頑張ったね」精神なので、万人に理解してもらいやすいのが良いです。要するに、子どもの学校の発表会のメイキングを見ている親のような気持ちになれますから。映画マニアにしかわからないエキセントリックなネタは最小限に抑えているのは逆に凄いなと思います。
  • この監督は天才じゃないか。
  • ジョージ・A・ロメロから始まったゾンビ映画のアーカイブに名を遺す。
本作は正確には「ゾンビの映画」ではなく「ゾンビ映画の映画」なのですが、それでも脈々と続くゾンビ・ムービーの系譜を受け継ぐ一作として世界に認められたということで、素晴らしいですね。ジョージ・A・ロメロ監督にも見てもらいたかったな…。

以上、ざっくりした海外の感想のまとめでしたが、これからも世界で注目される邦画がたくさん生まれるといいなと願ってます。“カメラを止めるな!”の信念があれば、きっと創造できるはずです。もちろん、血まみれになりながら。

ROTTEN TOMATOES 
Tomatometer 100% Audience 97%
IMDb 
8.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 10/10 ★★★★★★★★★★

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