ラブ、デス&ロボット
Netflixシリーズ『ラブ、デス&ロボット』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:LOVE, DEATH & ROBOTS
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
製作総指揮:ティム・ミラー、デヴィッド・フィンチャー

あらすじ

愛があれば、死もある。モンスターがいれば、ロボットもいる。猫もいれば、ヨーグルトもある? あなたの脳細胞を活性化する刺激があらゆる方向からアニメーションという形で飛んでくる。暴力の世界に身を委ねるか、哲学的な問いに思考を委ねるか。それはあなたしだい。

ネタバレなし感想

大人なアニメはいかが?

『デッドプール』で鮮烈な映画デビューを飾った“ティム・ミラー”監督。実は彼は専門分野はVFXなどCG関連で、1995年に「Blur Studio」というデジタルスタジオを設立しています。

例えば、ゲームだと「バットマンアーカムナイト」や「グランド・セフト・オート」、「Halo」シリーズなどのビジュアルムービーを担当。映画だと“デヴィッド・フィンチャー”監督の『ドラゴンタトゥーの女』のオープニングシークエンスや、『アバター』など、意外にたくさんの作品に関わっているスタジオです。

その“ティム・ミラー”率いるスタジオがNetflixのバックサポートのもと、生み出したのがこの『ラブ、デス&ロボット』18篇ものエピソードからなるアンソロジーのアニメーション作品集です。“ティム・ミラー”は製作総指揮と「create」にクレジットされています(ちなみに“デヴィッド・フィンチャー”も製作総指揮)。

重要なのは内容。タイトルのとおり「ラブ」で「デス」で「ロボット」なのですが(全然説明になっていない)、かなり大人向け。いや、子どもは見ちゃダメなやつです。グロ&エロが満載。バイオレンス方面ではぐちょぐちょの残酷なアレもバッチリですし、エロ方面では男性も女性も丸出し(上も下も)。映画館ではあまり見れない映像ばかりで、正直に言いましょう。楽しいです。

エログロだけでなく、映像表現としてもとても革新的でフレッシュです。最近は『スパイダーマン スパイダーバース』がアニメーションの新しい扉を開いてくれましたが、今作も実験的な片鱗を見せてくれるので期待してください。
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短編でひとつひとつは短いですが、18篇もあって、全体で220分くらいあるので全部一気に見るのは想像以上に大変です。少しずつ観ていけば良い暇つぶしになるでしょう。

オススメ度のチェック
ひとり◯(暇つぶしに最適)
友人◯(ネタに盛り上がれる)
恋人△(刺激が欲しいなら)
キッズ✖(大人になろう)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

「ソニーの切り札」(Sonnie's Edge)

凶暴な動物同士を戦わせる地下バトルで、ソニーは連戦連勝。そんな彼女の切り札は、絶対に知られてはいけない…。

「You wanna know my edge?」
いきなり最初のエピソードからエログロてんこ盛りで見せてくれますが、トカゲとサメを合体したような「カーニヴォー」とアルマジロとイノシシを合体したような「ターボラプター」という2体のビースト乱闘を見ていて思うのは、こういう過激描写ありの怪獣映画も見てみたいなと。最近は大手のハリウッド企業がこぞって巨大モンスター映画を作っていますが、たいていはファミリー層狙いなんですよね。だから怪獣バトルも割と平穏。こういう血みどろな感じの方が生物っぽくでやっぱり映えるなと思いました。

「ロボット・トリオ」(Three Robots)

人類が絶滅し、文明が終わりを迎えた世界。3体のロボットは、まるで観光客のように朽ち果てた街を見物して回る。

「Say "terabyte"」
ひとつも共通点がない3体のロボットが荒廃した人間の死体が散らばる街を自由気ままに探索。なんだこれ。前エピソードとノリが違いすぎて困る。でも、なんでしょうか、このピロートークみたいなどうでも良さなのに、ずっと聞いていたい感じ。好き勝手に人間を論評し、猫は爆発することになり、コンピュータゲームを先祖だとからかい、どこをとっても価値のない会話だけど、人間的な価値観なんてもう過去ですから。この3体で映画批評とかしてほしい。

「目撃者」(The Witness)

殺人を目撃した女は、犯人から追われる身となった。現実離れした奇妙な街を、彼女はなりふり構わず逃げ回る。

「Let's just talk」
ストーリーもさることながら、このエピソードが一番アニメーション表現としては驚いたものでした。絵のタッチが独特で、一瞬実写なのかと見間違うほどフォトリアルになったかと思えば、背景が絵画のような1枚絵に見えたりもして、キャラクターが激しく動いたりすると手書き風になったり、不安定さがクセになります。しかも、カメラのセッティングが実写と同じで、アニメ的な撮り方をあえてしないというセンス。そのかいあって、緊迫感も最大限に表されていて、凄い映像でした。

「スーツ」(Suits)

エイリアンが襲来し、農場主達は自作のロボットに乗って出撃。愛する家族を守るため、命懸けの戦いが始まる。

「Fire!」
『クワイエット・プレイス』の続編かな?(違う)…そんな酪農家たちが異形の怪物どもとドンパチ大乱戦する“モンスターファーム”ストーリーでした。多連装ミサイル、ガトリング、レーザー、火炎放射…『スターシップ・トゥルーパーズ』にも負けない、アグレッシブな農家御用達のロボットにはロマンが詰まっていました。絶対にこの企画は映画では通じないですよね。「農場主がトラクターを改造した二足方向ロボットでバケモノと戦うんです」「えっ…今、何て言いました?」まあ、そうなりますよ。

「魂をむさぼる魔物」(Sucker of Souls)

遺跡調査で発掘したのは、血に飢えた恐ろしい魔物だった。懸命に戦う傭兵部隊の最終兵器は…まさかの猫。

「Little pussy here saved our lives」
ガラッとまたもや雰囲気が変わって手描きアニメーションに。基本的に暗い閉鎖空間が舞台になっており、光と影の表現が印象的。キャラ描写、とくに傭兵たちが完全にハードボイルドなノリで、明らかに危機的なのに軽いのが見やすいです。ちょっと日本のアニメ感強めですし。それにしてもこのシリーズは、意地でも下ネタをぶっこむんだなとよくわかる一作。ドラキュラのペニスを描いて、股間ショットガンで破壊するとはね…。とりあえず猫、最強ってことです。

ラブ、デス&ロボット

「ヨーグルトの世界征服」(When The Yogurt Took Over)

研究者達は、偶然にも超高度な知能を持つヨーグルトを生み出した。やがて、ヨーグルトによる人間社会の支配が始まる。

「We. Want. OHIO」
どのエピソードも魅力あるものばかりですが、私個人の感想を言わせてもらえば、この「ヨーグルトの世界征服」がシリーズ中ベストエピソードです。賢すぎるヨーグルトに世界は支配され、無能な人間に代わり、各国の諸問題を解決していく。ヨーグルトって、健康に良いだけじゃなかったんだ! どうしよう、朝にヨーグルト食べる時、人生相談もしておくと良いかもしれない。ヨーグルトに放置されたら人類はこの先どうなってしまうのかという、哲学なのか、バカにしているのか、意味不明な問いかけに、私は深く思案するのです(さ、次は何を食べようかな)。

「わし座領域のかなた」(Beyond the Aquila Rift)

宇宙船の乗務員が目覚めると、船は異常事態に。光速移動中に航路を外れた船は、一体どこまで来てしまったのか。

「Maybe it's fate」
ほぼ実写と同じクオリティの精密なCGで描かれるSF。航路をアップロードし、宇宙を自動航行することにし、自らはスリープモードで眠りにつくクルー。目覚めるとシステムエラー。そこにはかつて想いを捧げたグレタという女性。そして、自分だけに教えてくれた衝撃の秘密…「あなたはまだタンク内にいるのよ」…映像に残酷な真実が映し出され…。『スタートレック』にありがちなタイプのオチですけど、バッドエンディング好きにはたまらないですね。

「グッド・ハンティング」(Good Hunting)

人々を悪霊から守る霊の狩人の息子は、人間に化けることが出来る妖怪と不思議な友情を育むのだが…。

「I need your help」
こちらも手描き。かなり世界観が独創的でした。妖怪退治の達人である父と子が男をたぶらかす女狐妖怪を退治するという、序盤の導入はベタなやつかと思えば。香港に舞台が移ると、少年リアンと女狐妖怪ヤンは成長。産業革命によって機械工学に精通し、すっかり妖怪退治稼業など捨ててしまったリアン。狐の姿になれなくなり、男に体を売るしかなくなったヤン。そこからのスチームパンク的なリベンジ。フェミニズムを内包したカタルシスのある物語で、ぜひ長編化してほしいところ

「ゴミ捨て場」(The Dump)

デイヴにとって、ゴミ捨て場こそが快適な我が家。立ち退きを要求する検査官に、つべこべ言われる筋合いはない。

「Always scrounging for food」
オポッサムの死骸を豪快に踏んづける検査官が、最後には自分が豪快に食べられる…そんな話。これからマンションが傍に建つのでさっさとこの見苦しいゴミ捨て場から退去してくださいと忠告しに来た検査官。それに対して、なぜか余裕な振る舞いで、昔話をする爺さん。ゴミ捨て場で出会った新しい友人は子犬ではなく、猛犬でもない。そのオットーの容赦なさは、ちょっと最近ワルなこともするようになったディズニーではできない“本気のお遊び”でした。

「シェイプ・シフター」(Shape-Shifters)

アフガニスタンの戦場に、超人的な力を持つ海兵隊員のコンビがいた。2人の前に、同じ力を持つ強敵が立ちはだかる。

「See you in the wild, my friend」
これまた実写に近いハイクオリティのCGアニメーション。最初は普通に目が良い程度な特殊能力者だと思ったけど、タイトルが「姿を変える者」なんだから、そんなはずないか。夜の基地を全裸で抜け出してからの狼人間バトルの勃発。あの腕が骨だけでぶら下がっている感じとか、とにかく痛々しさが尋常ではないゴア表現。ここまでやってくれたら言うことありません。戦う相手が爺さん(狼に変身したらわからないですけど)なのも良いポイント。

「救いの手」(Helping Hand)

不慮の事故から、宇宙空間で身動きが取れなくなった宇宙飛行士。酸素が尽きる前に、体を張った決断を強いられる。

「So, you still need a hand?」
あれですかね、これはこのエピソードの製作陣が『ゼロ・グラビティ』を観ていた時、「この手を使えば助かるだろ!」と内心で思っていたのを映像化したんでしょうかね。いや、確かに助かるためには手段を選べないし、これも起死回生の選択肢かもしれないけど。偶然に頼りすぎている『ゼロ・グラビティ』よりは根性勝ちな点で一枚上手かもしれないけど。ティム・ミラーは腕をひきちぎるのがデフォなのかな。

「フィッシュ・ナイト」(Fish Night)

車が故障し、2人のセールスマンは砂漠で立ち往生。夜中に2人が目覚めると、そこには太古の海の風景が広がっていた。

「Hey, come back down here!」
サメだ! サメが出ているから、これはサメ作品ってことでいいよね。コミックタッチの絵で綴られるのは、くたびれた年齢差のある先輩&後輩ビジネスマンのある夜の不思議体験。「この砂漠は海底だった」という言葉が引き起こしたのか、夜に二人を待っていたのは太古の海洋生物の残影。それにしても、常にこの自分のいる世界はサメ作品の中だと思った方がいいですね。だったら、全裸で開放的になるなんて死亡フラグだってわかるのに。

「ラッキー・サーティーン」(Lucky 13)

乗務員の死亡事故以来、軍用機、ラッキー・サーティーンに乗る者はいなかった。この機体が、新人にあてがわれる。

「God, I'm so fucking sorry」
「13」を忌み嫌う文化って一体いつまで続くのでしょうかね。風評被害も甚だしいというか、「13」を忌み嫌う文化自体が鬱陶しい感じもしないでもない。このエピソードはそんな呪いの数字を実力で変えるというお話。主人公がアフリカ系で女性ということを考えれば、偏見に打ち勝つという意味合いも込めているのでしょう。『キャプテン・マーベル』を鑑賞していても思いましたが、やっぱり女性パイロットはカッコいいなぁ。

「ジーマ・ブルー」(Zima Blue)

世界中から注目を集める芸術家、ジーマ。最後の作品を公開する前に自ら語る、謎に満ちた過去と驚くべき歩みとは?

「This was where I began」
本シリーズの中のSFモノで言えば、この「ジーマ・ブルー」の物語が一番好きです。伝説化しているアーティストが創作美術に常に描いている青い模様。その色は「ジーマ・ブルー」と呼ばれており、理由は不明。しかし、全身をサイボーグ化しているそのアーティストの口から語られたのは、とある女性が造ったプール掃除ロボットの存在。それはバージョンアップを重ね、ついに。労働から芸術は生まれ、芸術は労働に帰る…そんなところでしょうか。

「ブラインド・スポット」(Blind Spot)

サイボーグの盗賊団は、重警備の輸送車を襲撃。素早く仕事を終わらせるつもりが、予期せぬ事態が待っていた。

「Hey, Rookie, your balls dropped yet?」
なんか懐かしいアニメ感がある。やたらと強固なセキュリティ・反撃システムを持つ護衛車を強襲するのは軽めのサイボーグ盗賊集団チーム。前のエピソードではもの悲し気なサイボーグの心情が語られていたのに、打って変わってハイテンション。みんなガンガン死んでいくけど、大丈夫。バックアップをとっているからね…うん、バックアップは大事。そうだ、自分のパソコンもちゃんとバックアップをとっておこう…。

「氷河時代」(Ice Age)

若いカップルが入居したアパートの部屋には、古ぼけた冷蔵庫が。その中には、なんと小さな文明社会があった。

「Order out for pizza」
変化球のアニメーション作品。いや、アニメって言っていいのかな。引っ越ししてきた部屋にあったのはやけに旧型の冷蔵庫。氷でびっしりの中にあったのは、もうひとつのスモール・ワールド。どんどん文明が発達していく姿を「シムシティ」のようなシミュレーションゲームを眺める感覚で見ていると、唐突な核攻撃。冷蔵庫世界は核の炎に包まれ…。ピザを食べながら文明の復興を待つ姿に、人間社会の相対的な小ささを皮肉っていて可笑しなユーモアでした。

「歴史改変」(Alternate Histories)

もしもヒトラーが、あり得ない死に方をしていたら? その様子と結末を見てみよう。マルチヴァーシティへようこそ!

「First squid on the moon 2,973,412」
歴史改変アプリだって? よっしゃ、じゃあ、ヒトラーの歴史を変えよう! なんでいつもヒトラーはネタキャラなのか…。6つのシナリオで子ども時代のヒトラーの運命の変化から、人類社会、さらには地球の未来まで、激変を視覚的に楽しめます。だんだん酷いを通り越して意味不明に死んでいくヒトラーが可哀想になってきますが、まあ、いいか。2番目はリアルで起こりうるからわかるとして、3番目のゼリーに包まれて窒息死からもうあり得ないですもの。あと、やっぱりイカです

「秘密戦争」(Secret War)

シベリアの古代の森を奥深く進む赤軍の精鋭部隊。おぞましき邪悪な怪物と遭遇し、凄惨な死闘が幕を開ける。

「We die here!」
最後を飾るエピソードは誰が予想したであろうソ連が主役。黒魔術の儀式で生まれた暗黒モンスターと戦う赤軍。これはハリウッドなら絶対にやりたがらない企画です。こういう群集をCGで表現する技術は今では定番になりましたが、ほんの少し昔だとあり得なかったんですよね。テクノロジーの進歩は本当に凄いですよ。こういうグログロなモンスターパニック映画ももっと見たいものです。『ワールド・ウォー Z』は惜しいことしたなぁ…。

結論。過激な表現の映画がもっと観たい。

ROTTEN TOMATOES
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IMDb
9.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Blur Studio, Netflix