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『ロン 僕のポンコツ・ボット』感想(ネタバレ)…友達は故障していてもいい

ロン 僕のポンコツ・ボット

友達は故障していてもいい…映画『ロン 僕のポンコツ・ボット』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Ron’s Gone Wrong
製作国:アメリカ・イギリス(2021年)
日本公開日:2021年10月22日
監督:ジャン=フィリップ・バイン、サラ・スミス

ロン 僕のポンコツ・ボット

ろん ぼくのぽんこつぼっと
ロン 僕のポンコツ・ボット

『ロン 僕のポンコツ・ボット』あらすじ

学校で浮いていた孤独な少年バーニーは今流行りのパーソナル・ロボットが欲しかった。その最新式ロボット型デバイス「Bボット」はインターネット、写真、通話、テレビ、ゲームなどあらゆるデジタル機能に加えて乗り物としても使用でき、所有者の最高の友達になるもので、今では子どもならみんな所有している。しかし、バーニーのもとについに届いたのは、オンラインにすら接続できない不良品Bボットだった。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』感想(ネタバレなし)

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ポンコツだけどこのロボットなら…

最近、何か電子機器が壊れたりしましたか?

私はこの2021年最初の正月三が日、自分のノートパソコンが壊れて使用不可になるという最悪のトラブルに見舞われて新年早々気分は最低だったのでした(結局買い替えた)。家電製品や電子機器が何の前触れもなく唐突に故障すると不便になるだけでなく、精神的にダメージを受ける…。

いや、そんな機器に依存した生活をしているのも良くないのですが、一応はこれでもあまり多くの機器を利用しないように最小限に抑えているつもりなのですけど、現代社会で生活するのには無くてはならないものもあって…。

世の中は便利になったけど、自分自身の“生きる力”はどんどん脆弱になっている気がする…。誰か私を最新版にアップデートしてくれませんか…。

そんな古い欠陥品みたいな私がこんな映画を観るのもどうなんだろうか。でも今回紹介するアニメーション映画は故障したロボットと出会った子どもの物語です。

それが本作『ロン 僕のポンコツ・ボット』

まず本作を語るなら制作したアニメーション・スタジオから説明しましょう。本作を手がけたのは「ロックスミス・アニメーション(Locksmith Animation)」というところ。聞いたことがない? それもそのはず、何せ本作『ロン 僕のポンコツ・ボット』はロックスミス・アニメーションが制作した第1号の映画になのです。

ロックスミス・アニメーションはイギリスのスタジオで、2014年に設立されました。『ひつじのショーン』シリーズでおなじみの「アードマン・アニメーションズ(Aardman Animations)」で働いていた“ジュリー・ロックハート”と、『アーサー・クリスマスの大冒険』を監督した“サラ・スミス”が創業者であり、2021年6月には「ミニオン」でおなじみの「イルミネーション」の元最高執行責任者である“ナタリー・フィッシャー”が最高経営責任者に就任しています。ちなみにこのロックスミス・アニメーションに資金援助したのは、映画『スキャンダル』でも登場していましたFOXコーポレーションの親玉であるルパート・マードックの次女の“エリザベス・マードック”です。

そのロックスミス・アニメーションの記念すべき第1作となった『ロン 僕のポンコツ・ボット』ですが、当初はパラマウントと提携していたものの縁が切れてしまい、今度は20世紀フォックスと契約したものの今度は20世紀フォックスがディズニーに買収され、紆余曲折ありつつ、なんとか劇場公開に至りました。なので日本ではディズニー配給になっていますけど、制作したのはディズニーではないので勘違いしないように。

物語は人間のパーソナル・パートナーになってくれる最新ロボットが普及した世界。主人公の少年は念願叶ってそのロボットを買ってもらうのですが、なんとその購入したロボットは欠陥品で…という始まり。そのポンコツなロボットと主人公が繰り広げるドタバタ劇です。

それにしても「ポンコツ」って日本語、いかにもポンコツですよね…。擬音が由来らしいですけど、私はこういう日本語の響きは好きですよ。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』の監督は、スタジオ創業者である“サラ・スミス”と『ひつじのショーン』シリーズを手がけた“ジャン=フィリップ・バイン”の2人です。

本作の魅力は何と言ってもポンコツなロボットの愛嬌であり、子どもも大人も笑わせるコミカルな展開が連発します。まあ、実際に電子機器があんなふうに故障したら笑っている場合ではないと思いますけど、そこはアニメーションならではのリアリティの緩さでゴリ押ししているので。

映画館では超大作や不気味なホラー映画や人気俳優出演の話題作が目白押しですが、『ロン 僕のポンコツ・ボット』みたいな目立たないけど心を癒してくれる作品もたまにはいいと思います。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:大人も癒される
友人 3.5:暇つぶし気分で
恋人 3.5:子ども向けではあるけど
キッズ 4.0:子どもも笑える
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ロン 僕のポンコツ・ボット』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ベストフレンド?

巨大テック企業の「バブル(Bubble)」社は新製品発表を大々的に実施していました。大勢の聴衆を前にステージに立ったのは若きCEOのマーク。その隣にはCOOのアンドリューもいます。

マークは純真な言葉で今回の新製品のコンセプトを熱弁。それは単なるインターネット接続機器ではない。SNSでも動画配信でも音楽再生でもない。全く新しい「友達」になってくれるデバイスだ、と。

そして会場からひとりの子どもを選出し、その製品を披露します。現れたのは子どもよりひとまわり小さい白い丸みのある物体。その機器に子どもが手をかざすと、個人の趣味嗜好を反映してお好みの姿に変化し始め、それはロボットとして多彩な動きを見せます。これぞ最新式のロボット型デバイス「Bボット」でした。

その画期的なニュー・フレンドの存在は話題沸騰。瞬く間にそのBボットは大人気になり、今ではみんなが持っている必需品に。欠かせないパートナーです。

でもバーニーは違いました。この少年はBボットを持っておらず、学校でも完全に浮いてしまっていました。他の子はみんなBボットを所有しており、それぞれにぴったりの姿に変化して楽しそうです。バーニーはもともと友人がおらず、かろうじてクラスメイトのサバンナが優しくしてくれるだけ。

帰宅すると、バーニーの父グラハムと祖母ドンカが自分の誕生日のお祝いをしてくれました。手編みの変な帽子を貰い、ごちそうも用意してくれましたが、肝心の一番欲しいアレはありません。玄関にBボットが届いたと思ったらリッチたち同級生のイタズラでした。ガッカリです。そこで父は初めて息子の欲しいものを知るのですが…。

やっと欲しいものがわかった父と祖母はバブルストアまで急いで買いに行くことに。

翌日、バーニーのもとについにあの喉から手が出るほど欲しかったBボットが。バーニーは大興奮。息を整え、ゆっくりと手をかざすと…。

ブー。反応しない。何度かやるとピコンと認識音。

何かおかしいです。強引にこじあけると、インストールが5%、しかも全然進まない…。叩くと一気に起動し、アクティブになります。

「ハーイ! 登録ユーザー名。ボクはきみの、きみの、きみの…ボクは…」「ボクは登録ユーザー名のつながるベストフレンド。登録ユーザー名はボクの親友。ボクをバブルネットに繋いで」

スタートの音声が流れるも、やっぱりおかしい。ネットにすら接続できず、音声認識も変だし、挙動が意味不明…。それは明らかに壊れている様子でした。あげくには勝手に外に飛び出してしまい、トラックに轢かれても平然としています。

とりあえず部屋に放置。バーニーは学校へ。でももう自分はBボットを持っている側の人間です。

しかしこの故障Bボットは予想外のトラブルを起こし、世界的な一大事に発展することに…。

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ロボット(ザック・ガリフィアナキス)

『ロン 僕のポンコツ・ボット』の魅力は繰り返しますけどやっぱりロボット「Bボット」…バーニーの保有する機器はモデル番号を短縮して「ロン」と呼ばれます。

このBボットは白い丸みのあるフォルムでいかにも最新のオシャレ機器という感じですが、顔がついており、デフォルトでは白い球面に黒いつぶらな瞳。この顔つきは『ベイマックス』を思い出させます。まあ、これはパクリとかそういうのではなく、アニメーションとしてデザインを突き詰めていくと最終的には似たような感じに落ち着くんだと思いますが…。ちなみに『ベイマックス』もアニメシリーズ版では小さいベイマックスが登場しており、それはこのBボットにもっとかなり似ています。

ただこのBボットは『ベイマックス』と違うのは、ユーザー個人のプロフィールや趣味を読み取ってオリジナルの個性的な見た目に変化すること。それがもうとにかく多彩で、それがどう日常的に利便性があるのかはともかく、「他者と違うこと」を追い求めるのが難しくなっている昨今において、こういう究極的にパーソナルな機器は確かに未来の方向性なのかなと思います

しかし、主人公のバーニーのBボット「ロン」は完全に壊れていました。それもちょっと不具合があるとかではなく、ほぼ本来の製品の価値を損なうほどに滅茶苦茶に…。

このロンのぶっ壊れっぷりがずっと楽しい映画なのですが、このキャラクターの愛嬌に一役買っているのがオリジナルで声を担当している“ザック・ガリフィアナキス”でしょう。

“ザック・ガリフィアナキス”と言えば、『ハングオーバー!』シリーズでのあのハチャメチャなキャラクターで強烈な印象を与えるコメディアン俳優。ひたすらに空気が読めず、ひたすらにアホで、ひたすらに社会に適応できず、ひたすらにトラブルを起こし続ける…そういう存在感でした。

この『ロン 僕のポンコツ・ボット』はまさにその“ザック・ガリフィアナキス”がそのままロボットになったらどうなるかを映像化してしまったようなもので、彼無しでは実現できません。

『ウォーリー WALL-E』でも壊れたロボットはでてきたりしますが、今作の『ロン 僕のポンコツ・ボット』は喋るんですよね。その淡々とした機械音声ながらもときおり危険すぎることを平然と実行したり、その状態で無感情に笑い声をあげたりするので、もはやサイコパスです。“ザック・ガリフィアナキス”の声がここでも魅力を発揮します。

可愛いポイントであるはずのつぶらな目も片方がガクッと下にズレたり、自由自在に(それこそ股間あたりでも)目が移動したりするので、ちょっとしたホラーだし…。

このキュートなスタンダード素体に徹底してヤバそうなものを詰め込むというアイディアが『ロン 僕のポンコツ・ボット』のキャラクターの成功だったのかなと思います。

ロンは見事にキャラクターとして魅力100点なので、これはロックスミス・アニメーションのマスコットとしてずっと重宝していいんじゃないでしょうか。イルミネーションのミニオンみたいにスタジオのロゴに毎回出したりしてね。

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テーマはもっと追及してほしかったけど

キャラクターは魅力満載でしたが『ロン 僕のポンコツ・ボット』の物語の方は新鮮味にはやや欠けます。

冒頭のいかにもありがちなIT企業の新製品発表といい、つい最近も『ミッチェル家とマシンの反乱』でアシスタントロボットが騒動を起こす展開を見たばかりですからね。終盤の家族でIT企業に乗り込んでいく展開までそっくりです。

孤独な主人公のポジションは同じ監督の『アーサー・クリスマスの大冒険』にもかなり似ているのですが、それ以上にこの『ロン 僕のポンコツ・ボット』のプロットに近いのは『チャイルド・プレイ』かもしれません。

故障したIT機器と孤独な少年が友達になり、波乱を巻き起こしていくのは同一で、後は殺人が起こるかどうかの違いです。『ロン 僕のポンコツ・ボット』だってあれほどのパワーを持ったロボットなのですから死亡者が出ていてもおかしくはない…。

個人的には本作の終盤はやや甘すぎるオチに思えもしたので、もう少し尖った着地でも良かったのかなとも思います。

本作は最終的には故障したロボットを個性として受け入れ、ロンのデータをアップロードすることで全てのロボットに独自性が強化されるというラストを迎えます。

これはこれで確かに温かいエンディングではあるのですけど、企業モラルとしてはどうなんだとは思いますよ。ただでさえあのバブルという会社は今回のロボットだけではなく、どうやらあらゆるインターネット・サービスを手がけている寡占企業みたいですし、今の時代はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれるビッグテックへの規制が厳しくなっていますから(おそらく今後はもっと厳しさを増す)。もう少し将来を先読みした結末を考えてもいいんじゃないかなとも思ったり。

例えば、作中でサバンナが自分の恥ずかしい動画を拡散されてショックを受けていましたが、作中ではそれはロンの動画をあげてしまったことへの自業自得みたいに片付いていますけど、そこはそんな不本意な情報拡散の温床になっているサービス側の責任もあるわけですから。悪い奴はアンドリューでした!では済まない企業全体の責任。

それを題材にするとなるともっとリアルな設定に踏み込まないといけないですし、いろいろ難しいと思いますが、こういう巨大化しすぎたテクノロジーの責務をどう描くかは今後の映画の最難関のミッションですかね。

ロックスミス・アニメーションは今後もどんどん映画を制作する予定だそうで(次からは配給はワーナーになるとのこと)、新しいアニメーション映画を待っています。

『ロン 僕のポンコツ・ボット』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 81% Audience 96%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved. ロンズ・ゴーン・ウォロング ロン僕のポンコツボット

以上、『ロン 僕のポンコツ・ボット』の感想でした。

Ron’s Gone Wrong (2021) [Japanese Review] 『ロン 僕のポンコツ・ボット』考察・評価レビュー