MEG ザ・モンスター
映画『MEG ザ・モンスター』(メグ)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Meg 
製作国:アメリカ  
製作年:2018年 
日本公開日:2018年9月7日 
監督:ジョン・タートルトーブ 

Plot Summary

人類未踏とされるマリアナ海溝をさらに超える深海が発見され、沖合に海洋研究所を構えた探査チームが最新の潜水艇で調査に乗り出す。幻想的な未知の生物が生きる深海の世界を発見し、心躍らせる一同だったが、その時、巨大な「何か」が襲いかかってくる。

ネタバレなし感想

サメ映画史上、“最大”の問題作

最近のゲーム業界では“あるジャンル”が一部のマニアを中心ににわかに注目を集めています。それが「SPG」と呼ばれているもの。これは「Shark Playing Game」の略。「ロール・プレイング・ゲーム」ではないですよ、シャーク…「サメ」です。つまり、プレイヤーがサメになって人間を襲うゲームです。ゾンビ映画に飽き飽きしたゲーマーたちは、「よし、次はサメだな!」と、新しい刺激を求めているのです。平和ですね。

サメといえば映画業界も負けていません。というか、サメをエンタメの題材にしたパイオニアでした。『ジョーズ』の大成功に始まり、無数にサメ映画が量産されてきました。そして今や百花繚乱のサメ映画の時代ですよ。そこらへんのサメ映画事情を知らない人は想像もつかないでしょうが、とんでもないことになっています。普通のサメなんてもういないのです。頭が3つだったり、陸上移動したり、竜巻で襲ってきたり、宇宙で生存したり、放射能でパワーアップしたり、ゾンビ化したり、幽霊化したり…。正真正銘、カオスな状況。いや、真面目な作品もあるのですけど、気がつけば大変なことになっちゃったな…。

そんな個々の良し悪しはさておきサメ映画大豊作の時代に、何を血迷ったのか、ワーナー・ブラザースがとんでもない問題作を生み出してしまいました。それが本作『MEG ザ・モンスター』です。

本作の売りは馬鹿でもわかるとおり、巨大なサメが襲ってくるという、それだけ。一応、設定上は約1800万年前から約150万年前の海に実際に生息していたサメの一種「メガロドン」の生き残りということになっていますが、作中でのサメの大きさは約23m(メガロドンは最大でも10m)。どう考えてもオーバーです。でも、気にしない。デカけりゃいいのです。

とてつもなくビックなサメが襲ってくるB級サメ映画はこれまでもありましたが、今作は予算も製作規模も巨大なブロックバスターであり、なんでこの企画にGOサインを出したのか謎…。

実は企画自体はかなり前からあり、原作は小説なのですが、1997年にディズニーが映画化権を取得。おそらく『ジュラシック・パーク』の大ヒットをみてパニック映画の製作意欲に火が付いたのではと思われますが、すぐに計画は頓挫。続いて2005年からギレルモ・デル・トロのプロデュースで映画化の話が持ち上がりましたがこれもまた中止。そして、ワーナー・ブラザースに至る…という経緯。

どうして今の時期に映画化できたのかと考えてみるに、きっと昨今の映画界で起こっている巨大モンスター・バブルに便乗したのでしょうね。このジャンルはビックマーケットである中国市場を狙いやすいので、今ではすっかり定番化しています。本作も制作に中国企業がガンガン入っていますし、舞台も中国です(ちなみに原作小説は日本要素が多め)。

ただ、本作は単なる巨大サメ映画ではないのがクレイジーなポイント。なんとそこに“ジェイソン・ステイサム”をミックスしちゃったのだから、さあ、大変。

公式サイトでは以下のように書かれています。
『ワイルド・スピード』シリーズで無敵をアピールした“陸では敵なし”のジェイソン・ステイサムだが、この敵には勝てそうにない。
いや、そうだろうか…。数多のアクション映画に出演し、そのたびに「ステイサムは最強」というイメージを観客の脳内に植え付けるこの男。元水泳の飛込競技選手で、水中の方がホームだと言えなくもないこの人間。どう考えたって、サメの天敵じゃないですか…。メガロドンもたぶん“ジェイソン・ステイサム”主演映画を観ていなかったのでしょうね。観てたら戦いを挑まないですからね。

なので、本作は巨大サメを応援する映画です。「気をつけろ、ステイサムがいるぞ!」とか「ステイサムに睨まれた! ヤバい!」とか、そんなノリでお楽しみください。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

頑張れ、巨大サメ!

とある海の深いところ。この真っ暗で静かな環境の世界に包まれながら、巨大サメは巨大イカやクジラを食べてのんびり暮らしていました。そこへ“陸上”の支配者として比較的最近になって調子に乗り始めた「人間」という生き物がやってきました。この生き物は海底に研究施設を勝手に作り上げ、この平穏な世界を他人事のように眺めている迷惑千万な存在でした。しかし、深海の生き物たちは臆病で意見を主張しようとはしません。そこでみんなの代弁者である巨大サメが「ちょっと人間さん、マナーくらい守ってください」という気持ちを込めて、人間の乗る潜水探査船をどつきました。そこにジョナスという名のヤバい目をした人間の男がやってきて、巨大サメは悪寒を感じました。

一方、海洋研究施設には人間の幼い女の子がひとり寂しく遊んでいました。それを見かけた巨大サメは一緒に遊んであげようと笑顔(※大口を開けることを意味する)で近づいてみます。しかし、「こういうのは変質者だと勘違いされるし、ロリコンだと思われたら困るな」と思い立ち、そっと帰ることにしました。ところがこの行為が人間に問題視されたのか、巨大サメは執拗に襲われることになってしまいます。とくに巨大サメが恐怖を感じたのは、例のジョナスという人間です。コイツはどう考えても普通の人間の平均的な生態に当てはまりません。まず泳ぎが異様に上手いです。毛のない頭部が水中の抵抗を極限まで低減するのか、イルカ並みに俊敏に水泳し、酸素不足に苦しむ気配すらありません。結局、巨大サメの1匹は人間に打ち込まれた毒で死んでしまいます。

その可哀想な巨大サメの亡骸は人間の船に回収されてしまいましたが、別の巨大サメがそれを取り返し、その理不尽な仕打ちに抗議すため、人間のたくさんいるビーチに向かいます。しかし、そこには話のわかる人間はいません。しかたなく、一縷の望みを託してジョナスという人間のもとへ再び行ってみると、ジョナスは高速潜水艇に乗って容赦なく攻撃してきます。最後は生身で襲ってくる恐怖体験をした巨大サメはすっかり委縮。深手を負った巨大サメに安らかな死を与えるため、仲間のサメたちが対応してくれたのでした。

こうして人間と関わってしまった巨大サメは不運な悲劇で生涯を終えました。これを聞いている、サメの子どもたちのみんな、人間には気をつけようね。とくにスキンヘッドの男には絶対に近づいてはいけない。見かけたら必ずお父さん、お母さんに連絡すること。危険人間出没注意情報にも目をくばること。いいね?

サメも中国も気にしない男

こんな風にサメ視点あらすじで紹介すると、“どっちがモンスターだよ”状態な物語なわけですが、本作は人間が楽しむためのポップコーン・ムービー。実にオーソドックスな作りで、エンターテインメントのお手本のようでした。ジャンルとしては「海洋アドベンチャー」プラス「巨大モンスターパニック」の組み合わせ。ちょっと最近観た『ジュラシック・ワールド 炎の王国』を思い出す既視感がありますが、まあ、いいでしょう。
『ジュラシック・ワールド 炎の王国』感想(ネタバレ)…恐竜、ゲットだぜ!
海洋アドベンチャーというジャンルはコケるというジンクスが以前まではありましたが、そんなのは昔の話。本作は中国マネーにものを言わせて、巨大水槽をスタジオに作り上げたり、はたまたVFXをてんこ盛りで投入したりと、やりたい放題。これまで多くのサメ映画が低予算のなかで作品を成り立たせるためにシチュエーションスリラーとして限定的な舞台を設定することが多いなか、今作のフリーダムなスタイルは新鮮です。

とくに終盤の三亜ビーチを巨大サメが襲うシーンはこれぞモンスターパニックだ!と歓喜したくなる豪華な映像。この場面を「怖い…」とガクブルで観ていた人もいるかもしれませんが、私は「楽しい…!」と目を輝かせながら鑑賞していました。あそこまで極端に人でごったがえす海辺にサメが突入していくだけで痛快じゃないですか。このシークエンスは見せ場も凝っていて、海に浮かぶ足場が鎖ごと引っ張られたり、ウォーターバルーンで遊ぶ人が豪快にガブリとされたりと、サメのビーチ強襲シーンとして純粋にパワーアップして楽しませようという作り手の無邪気な心意気が伝わってきます。この場面だけ、映画全体と比べて知能指数が2~3段階は下がっていますよ。冷静に考えると、こんな浅瀬に巨大生物が来たら座礁するだろうとツッコめるのですけど、そこは忘れてください。

言わずもがなですが、本作は全体的に“中国エクスプロイテーション”感が強すぎるきらいはあるのも事実。ハリウッド映画に多数出演した経験を持つ“リー・ビンビン”を筆頭に、中国推しが多め。ただ、現状、中国市場を狙わないとこんなバカ映画は作れないのですよね。なので、今後も巨大モンスター映画はだいたい中国成分濃いめになると思います。

そんな中国尽くしのなかでも、全く存在感を変えていない“ジェイソン・ステイサム”はやはりタダモノではなかった。少し前まで小規模アクション映画の主演を乱発していましたが、最近は1年に1本くらいの大作に出るだけにとどめ始め、自分を安売りしないことにしたのか。でも、やっぱり出る映画では「強いキャラ」という部分は揺るがないんですね。本作なんかも“苦戦しなさすぎ”です。巨大サメが30匹くらいいっぺんに襲ってきても平気ですよね?と思ってしまう、余裕の生身ガチ格闘を見せるので、せっかくの“リー・ビンビン”といった中国勢が霞んじゃって少し可哀想。ここは“ミシェール・ヨー”くらいの腕っぷしのある相棒を用意しないと釣り合わないですよね。そこは“ジェイソン・ステイサム”を出す以上、覚悟すべき副作用ですよ。個人的に“ルビー・ローズ”のアクション面の出番がないのは残念でしたが…。

MEG ザ・モンスター

大人の事情に配慮するサメ

エンタメとして何も考えずに観るのであれば、最高のアトラクション体験になる本作。

しかし、刺激が物足りない気持ちもありました。なにより緊張感がない。確かに襲われるシーンには丁寧にフラグを用意しているし、最低限のサスペンスはあります。でも、「危険」⇒「安心」⇒「危険」⇒「安心」の繰り返しが単調かなと。あれだけ巨大なサメであれば、基本どんな船にいようが、建物であろうが、危ういじゃないですか(陸地を除く)。けれども、本作では登場人物がなんでここでは襲われないと思っているのだろう…と時折疑問に思ってしまう場面もチラホラありました。常に続く緊張感というものは皆無なんですね。

そして、一番ここが惜しい部分ですが、残酷シーンが全然ないということ。もちろんサメに襲われるシーンはありますが、基本はひと飲みなのでグロくもない。さらに殺される相手も想像がついてしまうのも問題で…。ステイサムは論外、女・子どもは無理、黒人は人種多様性に配慮して退場できない、犬さえも殺せない…となると、おのずと男性の他キャラに。ご丁寧にどうでもよさそうなデブキャラから殺していくという無慈悲な消去法になっています。あの大パニックシーンである三亜ビーチでも、絶対に人が殺されているはずなのに死を見せない構成ですし。

実は本作は当初の監督は“イーライ・ロス”で交渉が進んでいたそうです。あの残酷に人を殺すことをためらわない悪趣味バイオレンス映画に定評のある“イーライ・ロス”です。しかし、想像性の相違で降板に…。その理由もきっと察するに…ね…。

わかります。老若男女が楽しめるアトラクションにするにはこうするしかないと。こうしないと売れないという現実も。でも、私の中の飢えた欲望はおさまらない…。せっかくのブロックバスターなのに、その魅力が欠けているなんて、もったいない。

まあ、単純にそれが観たいという欲以外にも、真面目に言うなら、やはりサメが人を襲うのは残酷なことだという部分からは逃げるべきではないです。『ジョーズ』のように、人間の愚かさや命の儚さを大人の事情抜きで描いてこそサメ映画だと思います。案外、サメ映画も深いのです。

ぜひいつか海が真っ赤に染まるような大殺戮サメ映画大作を観てみたいものです(結局見たいだけ)。

ROTTEN TOMATOES ※
Tomatometer 47% Audience Score 53%
IMDb ※
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
※2018年9月7日時点

関連作品紹介

おすすめ PiCKUP!
↑『ロスト・バケーション』…最近のサメ映画の中でも良質な一作。絶体絶命の緊張感と痛々しい描写がたまらない。
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.