そうサメは語る…映画『MEG ザ・モンスターズ2』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ・中国(2023年)
日本公開日:2023年8月25日
監督:ベン・ウィートリー
MEG ザ・モンスターズ2
めぐざもんすたーずつー
『MEG ザ・モンスターズ2』あらすじ
『MEG ザ・モンスターズ2』感想(ネタバレなし)
続編はサメも中国も増量
恐竜が絶滅してから数千年が経過した、約2300万年前から360万年前の前期中新世から鮮新世の頃。この時代の海には多種多様なクジラが泳いでいました。
そのクジラを捕食していたとされるのが「メガロドン」です。ホホジロザメに似た巨大なサメの仲間と言われており、その体長は諸説ありますが、全長は最大10m台はあったのではないかという分析もあります。
このメガロドンは単にデカいだけでなく、「局所的内温動物」と呼ばれる温かい体温を持つ生物だったとされ、冷血動物の他の生き物よりも運動能力面に優れ、その狩りを支えていたという研究も報告されています。
でも鮮新世に絶滅してしまいました。環境変化で食物となるクジラが消えたなどの理由が考えられていますが、まあ、もし現代でもメガロドンが生息していたら、私たち人間はもっと海を泳ぐのに警戒するようになっていたかもしれませんね。
しかし、この映画の中では堂々と生き残っています。
2018年に劇場で大々的に公開された『MEG ザ・モンスター』です。メガロドンが深海の奥深くで生存しており、それが海上に姿を現す…という、誰でもわかる単純明快なサメ・ディザスター映画となっていました。メガロドンの大きさも映画独自解釈でめちゃくちゃ巨大にスケールアップしており、とにかく「デカいサメが襲ってくる」というシーンが見たい人の需要を満たすことに特化していたのがこの『MEG ザ・モンスター』でした。
その勢い任せな『MEG ザ・モンスター』に続編が登場しました。
それが本作『MEG ザ・モンスターズ2』です。
なお、タイトルは「MEG2 ザ・モンスター」ではありません。原題は「Meg 2: The Trench」で、これは原作小説のタイトル「The Trench」からそのまま借用されています。
邦題が「モンスターズ」となったことで察しが付くと思いますが、今回はメガロドンは1匹ではありません。いや、それ以上に大変なことになっていきます。このあたり、予告動画には映ってしまっているのですけど、隠しておいたほうが良かったのではないかな…。
決してメガドロンと主演の“ジェイソン・ステイサム”を合わせて「モンスターズ」と呼んでいるわけでは…ない(たぶん)。
でも今作では日本の宣伝ポスターでは全然わからないのですけど、実は“ジェイソン・ステイサム”以外にもうひとり人間側の主人公がいて、実質「W主人公」なんですね。
そのもうひとりとは、中国映画界の“トム・クルーズ”みたいなスターと言える“ウー・ジン”です。『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』を始め、近年も『1950 鋼の第7中隊』『1950 水門橋決戦』と大作映画に主演し、激しいアツいアクションを披露する、中国映画ではおなじみの俳優。
そもそもこの『MEG』シリーズは、中国資本を大量に投入して制作されており、半分は中国映画みたいなものです。2作目にして“ウー・ジン”を起用してきたことからも、その中国市場狙いの本気度が窺えます。
『MEG ザ・モンスターズ2』の監督は、前作から変わって、『ハイ・ライズ』『フリー・ファイヤー』『レベッカ』の“ベン・ウィートリー”となりました。これまでのフィルモグラフィーの中でも最大級の大作映画を手がけたことになりますが、本人は好きなジャンルらしいので、ノリノリで作っている感じです。
酷暑で疲れたときはサメ映画を摂取しましょう。『MEG ザ・モンスターズ2』はスポーツドリンクの代わりにはなりませんが、デカいサメが泳いでいる姿は冷感効果があります(本当か?)。
『MEG ザ・モンスターズ2』を観る前のQ&A
A:2作目ですが、1作目を鑑賞しないと物語がわからないということもあまりないので、この映画からいきなり観ても問題ないです。
オススメ度のチェック
ひとり | :暑さを吹き飛ばす |
友人 | :気軽にエンタメを |
恋人 | :アトラクション感覚で |
キッズ | :残酷描写は少なめ |
『MEG ザ・モンスターズ2』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):手強すぎる人間が2人だと…?
とある海の深いところで静かに暮らしていた巨大サメのメガロドンは、ある日、人間に捕まってしまい、事情もわからないまま施設に閉じ込められていました。ここには、テレビもWifiも無く、アメニティは最悪でした。
当然、脱出を考えます。しかし、懸念すべき人間がいました。
そのひとりは、ジョナス・テイラーという男。海の守護者みたいなことをきどって、有毒廃棄物のドラム缶を海に投棄しようとしている貨物コンテナ船に潜り込んで証拠をおさえたりしているのですが、たかが人間の癖にヒーローぶっています。そんなドラム缶より、もっと先進国が海を四六時中汚しまくったりしているというのに…。
このジョナスだけでも厄介ですが、もうひとり危険人物がいるのです。
それがジウミン・ジャンという奴で、大富豪ヒラリー・ドリスコルの資金援助で水中用のエクソスーツを開発し、深海探検に夢を抱くという、迷惑千万な人間です。「自分はメガロドンを操れる」と豪語し、あろうことか私のいる水中に潜ってみせるのですが、さすがの私も呆れて襲うことにすら躊躇しました。
結局、私は「ハイチ」と名付けられ、中国の海洋研究所でこうして金魚みたいな生活を送っているというわけです。
そんな中、ジョナスとジウミンは最新の潜水艇で海溝探索に出発するために、海洋プラントの研究所「マナ・ワン」へと移動しました。
これはチャンスです。私はあらかじめ目星をつけておいた脱出ルートで、この施設から脱走することに成功します。事前にダイエットして痩せておいたのも功を奏しました。
「マナ・ワン」ではジョナスとジウミンは2つの潜水艇に分かれて、海溝へと潜っていっていました。そのひとつにジョナスが父代わりで育ててきたメイインも紛れこんできたようです。メイインの叔父がジウミンでもあります。マックとDJは「マナ・ワン」に残り、2機の潜水艇を支援します。
私はさっそく海中でその潜水艇を発見。ちょっと挨拶しに行きます。けれどもジョナスたちは慌てて潜水艇を一気に深く潜らせ、振り払おうとします。
目的地の最深部に到着したジョナスたちですが、私も仲間の2匹と合流し、もう1度紹介がてら接近を試みます。「複数で協力し合う生き物だったのか」と今さら驚いている人間たち。私のことを完全に”ぼっち”でコミュ障な可哀想な奴だと思っていたらしく、こちらのか弱いメンタルが傷つきます。
私もこれ以上付き合ってられないので、静かにこの空間を満喫していたのですが、いきなりの爆音に興ざめです。何やら他の人間がジョナスたちを攻撃しているらしいです。どうしてよりによってここで喧嘩するのか…人間というのは本当に近所迷惑というものを考えない生き物です。
そうこうしているうちにジョナスたちの潜水艇は岩の下敷きになり、操縦不能に陥ります。
やむを得ず、エクソスーツを着用して海底を歩行し、偶然に発見した海底施設に逃げ込むことにしたようです。
私たちはここまで追い詰められたあの人間たちを目にして、今なら勝てるのではないかと思いました。こちらは3匹もいます。
しかし、それは甘い予想でした…。
メグ・ヒト・他多数 南海の大決闘
ここから『MEG ザ・モンスターズ2』のネタバレありの感想本文です。
前作が巨大サメを見せつけるという初お披露目会だとすれば、今回の2作目である『MEG ザ・モンスターズ2』はもう巨大サメをこれ見よがしに見せつけても意味がありません。そこでジャンルとしてよりマニアックに特化するようになっており、これは順当な発展形と言えると思います。
早い話が「海版『ジュラシック・パーク』」です。
まず冒頭からティラノサウルス・レックスが陸地で暴れまわっていると、海岸線でいきなりそれよりもはるかにデカいメガロドンに豪快に食われるという、インパクト大なシーンで始まります。
もちろんこれは前述したとおり、恐竜とメガロドンは同時代に地球にいなかったので大ウソです。でもこれほど潔く嘘を映像化することで「この映画はもうリアリティは捨てました!」という、開幕宣言になっています。
そして次にめちゃくちゃアホな方法でコンテナ船に平然と潜り込んでいる“ジェイソン・ステイサム”演じるジョナスが登場し、こちらも人間離れした身のこなしで豪快に暴れまくります。
このジョナスも「そんなのありか!」という大ウソなシーンです。そうして私たち観客は現実からかけ離れた映像を見ることにいつの間にか慣れさせられていっていきます。わけのわからない水中パワースーツがなぜか地上で機敏に動いていてもスルー。あまりにテキトーすぎるメガロドンの隔離施設を目にしてもスルー。わざわざ生身の人間を乗せて深海探査に行く風景もスルー。
もう何を見せられても許容してしまう体に…。これぞ荒唐無稽サメ映画特有の催眠術。
今作では、陸と水中を両方適応している小型捕食者と、さらに巨大タコまで出現し、一時的に怪獣バトル化するなど、それはもう大賑わいに。
でもジョナスとジウミンは負けません。普通は負けると思うのですけど、なんか勝っちゃいます。
これだけの巨大生物を肉弾戦で倒せてしまう人間がいるとは…そりゃあメガロドンさんも想定していなかったでしょうよ。プロペラの残骸ってああやって使う?
終盤はサメが人々を襲うシーンよりも、突出して異常に強い人間がサメを襲っていくシーンと言っていいんじゃないかな。前作のときも書いたけど、これはサメ視点で見たら、それはもう恐ろしい体験ですよ。
繁殖期ならしかたない
だいたい鑑賞前から想像がついていたとおりの中身だった『MEG ザ・モンスターズ2』なのですが、確かにマニアックなジャンルとしての正統進化は見せましたけど、正直、物足りない部分も多い続編でした。
サメが増えるというのは当然予想されるとおりの展開です。というか、アサイラムのモックバスター『ザ・メガロドン 怪獣大逆襲』(2021年)が一足先に「3匹でてくる」案で映像化してしまい、まさかのモックバスターのマネになってしまうという逆転現象に…。
なお、『ザ・メガロドン 怪獣大逆襲』は米軍と中国軍のミリタリーものになっていますが、『MEG ザ・モンスターズ2』はやはり中国で公開されることを考えている以上、あまり政治的な内容にできません。
なので本作はあの海溝をめぐる言わば資源(レアアース)の奪い合いをしているわりには、アメリカと中国の政治的な火種になる気配はなく、完全にドリスコルという私利私欲の悪者が勝手に自滅するだけで、それ以降も後腐れはありません。
現実ではあれほどピリピリしている米中の緊張感ですが、この本作のやけに和やかな空気は逆に不気味になってくるな…。
そしてこれももしかしたら政治的な忖度の結果なのかもですが、今作も終盤の舞台がリゾートバカンスの海辺になるんですね。「また同じような映像を見せるの?」と思うのですけど(しかも残酷度もそんなに変わらないし)、なんか別の場所を採用はできなかったのだろうか…。
私の中では巨大サメに襲ってほしい場所はいくつも思い浮かぶのだけど…。水族館もいいですよね。空港に近づいて旅客機にサメが飛びかかる…なんて映像も観たいし…。
あと、本作はビジュアルさえ届けられればいいとしか考えていないのが見え見えで、なのでキャラクターの描き方に全然一貫性がありません。
ジョナスは海を保護したいのかと思うのですけど、そのわりには思いっきり希少な野生生物であろうメガロドンを躊躇なく殺しますし、この世界のメガロドンに対する保全的な関心の低さはちょっと目に余るレベル。結果的にジョナスは単に場当たり的に事件に対応するだけの奴になってしまっています。
私としてはこの映画はもう少しジョナスというキャラクターに深みを与えれば、より違ったベクトルで映画の見どころを提供できたのに…と思いますが…。キャラが全体的にコミカルありきな立ち回りしかしないですよね。
その造形の雑さが究極的に光るのがラストで、最後は生き残ったみんなでビーチでまったりとしてエンディングに入るのですが、あそこは一応は結構な数の人が死んだ場所じゃないですか。きっと死体のいくつかも浮かんでいますよ。それなのになんでそんなのんびりしてるんだよ…という…。
本作のキャラクターの倫理観のぶっ壊れっぷりが露呈しまくっていました。
結局、またしてもヒトという生物種に敗北することになってしまったメガロドン。3匹いても約2人の人間に倒されるなら、もう300匹に増えようとも勝利には届かない気がする…。
頑張れ、メガロドン。口から熱線を吐けるようになるまで鍛錬するんだ…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 28% Audience 72%
IMDb
5.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
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サメ映画の感想記事です。
・『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
作品ポスター・画像 (C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved MEGザモンスター2 メグ2
以上、『MEG ザ・モンスターズ2』の感想でした。
Meg 2: The Trench (2023) [Japanese Review] 『MEG ザ・モンスターズ2』考察・評価レビュー