ペット2
映画『ペット2』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Secret Life of Pets 2
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年7月26日
監督:クリス・ルノー

ペット2

あらすじ

マックスとデュークは、飼い主のケイティと一緒の楽しく生活を送っていた。そんな中、ケイティはチャックという心優しいパートナーに出会い、結婚。赤ん坊のリアムが誕生する。新しく増えた家族に、マックスはいろいろと心配事を増やしながらも、懸命に接する。ある日、ケイティたちは家族旅行に行くことになり、その到着先で農場犬のルースターと出会う。

ネタバレなし感想

ニューヨークのペット事情

突然ですが、アメリカを象徴する街「ニューヨーク」と言えば、よくペットが話題になることが多いです。犬や猫などのペットと一緒に大都会で暮らすニューヨーカーという姿がなんとなく思い浮かびます。

実際、ニューヨークにはペットはどれくらい存在するのでしょうか。ニューヨーク市経済開発会社(NYCEDC)のまとめたレポートによれば、少し古いですが2012年のニューヨークにおけるペットの数の推定は、犬が約60万匹、猫が50万匹と算出されています。ニューヨークでは飼育にはライセンスが必要なのですが、実際に正しくライセンス許可を得ている犬や猫は全体の2割程度という計算もあり、残念ながら正確な全容の実態は把握しづらい状況です。

当然、これだけペットがいれば、ペット関連のビジネスも盛んになり、近年もニューヨークのペット業界は急成長しているようです。

このニューヨーク市経済開発会社の報告はなかなかにマニアックなデータも掲載されており、ニューヨークの犬の名前ランキングというのもありました。以下のとおりです。
 メスオス
1位BellaMax
2位CocoCharlie
3位LolaRocky
4位LucyBuddy
5位DaisyLucky
6位LunaBailey
7位PrincessTeddy
8位ChloeToby
9位MollyJack
10位SophieMilo

このポピュラーな名前以外のユニークなネーミングを飼い主につけられている犬も多く、果物、お菓子、架空キャラクター、神話、有名人などなどさまざまな由来に基づく名前がある中に、「Brooklyn」という名前があるのはすごくニューヨークらしいですね(でも混乱しないのだろうか)。

そんなペットを愛するニューヨークの街で暮らすペット当人にスポットあてた、愉快なアニメーション映画、その名もズバリ『ペット』の続編『ペット2』が公開されました。

制作はどこからともなく日本のアニメ映画界で一定の立ち位置を確立してしまったミニオン軍団を有する「イルミネーション・スタジオ」。今回も同時上映で『ミニオンのキャンプで爆笑大バトル』という短編が付いてくるので、ミニオン・ファンも満足。

『ペット』は本当にペットたちを主軸にした物語で、ペット版『トイ・ストーリー』なんて言われ方もされていたくらいですが、続編でもそのコンセプトは微塵も変わりません。2作目だからといって世界観を覆す大事件は起きません(いや、事件は起きるのですけど)。最近のイルミネーションは『グリンチ』といい、子ども向けのファミリー映画にガッツリ重心をかけるスタイルで行くと決めたらしく、『ペット2』も予定調和なベタさ全開ですが、それこそ狙いどおりなのでしょう。


きっと吹替で観る人も多いでしょうが、アメリカのアニメ映画は声を担当する顔ぶれが豪華なので、映画ファンはぜひ字幕で楽しんでほしいところ。今作ではなんと“ハリソン・フォード”がアニメ映画の声を初めてやったことでも話題(初だとは意外)。あまり新キャラがいないので、それ以外は前作と同じメンバーです。ただ、主人公の犬であるマックスの声をあてているのは、1作目では“ルイ・C・K”でしたがセクハラ問題により降板、『レミーのおいしいレストラン』でも有名な“パットン・オズワルト”に交代しました。

いつもどおり、ペット好きなら“あるある”と心から納得できるペットの憎たらしくも可愛らしい挙動がいっぱい詰まった映画ですので、お気軽にどうぞ。1作目は観ていなくてもたぶん問題ないですが、時間あれば事前に鑑賞しておくとさらに楽しめるのではないでしょうか。

おすすめ PiCKUP!
↑『ペット』…シリーズ1作目。マックスとデュークの出会いの物語。
オススメ度のチェック
ひとり△(子ども向け要素が強め)
友人◯(動物やペット好きなら)
恋人◯(動物やペット好きなら)
キッズ◎(素直に楽しい娯楽映画)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

マックスの物語

『ペット2』の物語は大きく3つに分かれ、それらが同時並行で描かれつつ、最終的にひとつの山場に集約していく…そんな構成です。全体として90分ちょっとしかないので、とにかくテンポ重視で、子どもに飽きさせる暇を与えない、キッズ映画のお手本みたいな感じ。さすが『怪盗グルー』シリーズなどイルミネ作品を手がけてきた“クリス・ルノー”監督なだけあって、手慣れています。

第一はマックスの物語。

ケイティに飼われている犬(ジャック・ラッセル・テリア)のマックスは、前作で新しく家族に加わった大きい犬(雑種)のデュークとすっかり仲良し。ところがそんな生活にさらなる変化が。なんとケイティが偶然に出会ったチャックと意気投合し、そのまま結婚。妊娠、出産を経て、赤ん坊のリアムが生まれたのでした。

当然、またもや自分の居場所を奪われたような気分になりますが(このペットと赤ちゃんの愛され合戦…『ボス・ベイビー』と真逆なのがユニーク)、さすがにもう前作の経験を経て成長したマックスは我慢。ハイハイベイビーに困惑しながら、少し成長するとたちまち仲良くなり、歩けるようになって危なっかしいリアムの面倒を見る保護者的なポジションに。

ここでタイトルが出るのですが、ここまでの語り口の手際の良さと、この過程で映画を一本作ればいいのにそれをしないあたりに、イルミネ作品のアイデンティティがあって良いですね。つまり、感動系とか社会問題系にはしない…ドタバタコメディでいくという宣言です。

ストレスのせいか獣医師の診療を受けたマックスは、首回りにエリザベスカラー(ペットコーン)をつけるハメに。そんなイライラの溜まりやすいこと続きの中、みんなで家族旅行に行くことになり、ニューヨークを離れてドライブに。その行先の農場で出会ったのは、全く都会育ちの自分たちとは違う世界で育った犬(ウェルシュ・シープドッグ)のルースター。ルースターに犬としての自信を教えてもらったマックスはまたひとつ成長することに…。

スノーボール&デイジーの物語

第二はスノーボール&デイジーの物語。

前作で観客の心を一瞬でウサギ色(ただの白じゃないか)に染め上げたウサギのスノーボール。今作ではあのクレイジーっぷりはそのままに悪玉から善玉に華麗に変身。もう最初の登場時点から、“変わりすぎだろ”と笑いを誘える存在感。ズルい。

今は飼い主の子どもの影響を受けまくったせいか、スーパーヒーローに憧れるウサギになっていました。ここで恥ずかしげもなく『スーパーマン』パロディを全力で描く思いっきりの良さ(会社、違うのだけどな…)。

スノーボールは犬(シーズー)のデイジーからサーカスに囚われているホワイトタイガーの話を聞き、さっそく救出に向かうことにします。キャプテン・スノーボールの活躍があったのかは微妙なところですが、なんとか檻に閉じ込められたホワイトタイガーを救出。そのままニューヨークのアパートに連れて帰ることに。

このパートは、一番派手さのあるコミカル展開の連続で、もうスノーボールが全編主人公でいいんじゃないかなと思うほど。スノーボールの行動原理がミニオンに近いですよね(悪役に憧れるミニオンに対して、正義に憧れるスノーボール)。

前作では街を徘徊する未登録の動物を捕まる「動物管理局」がヴィランの立場でしたが、今作では「動物サーカス」が悪者ポジションに。これもまあ、ベタと言えばベタ。動物モノって悪役を設定するのが意外に大変で(動物に対して悪いことをする存在が限定されやすい)、バリエーションが限られるのでどうしてもマンネリになるのはネックですよね。「動物管理局」「動物サーカス」「密猟者」…この3大悪人が定番。都会に密猟者は出しづらいでしょうしね…。

『ペット2』は基本は社会風刺も何もない単純明快娯楽作ですが、このパートで描かれるホワイトタイガーのエピソードを見ていると、一応、“異なる他者を受け入れよう”という昨今のアメリカの抱える移民問題へのメッセージを感じ取れなくもない。ちゃんとホワイトタイガーの名前が「フー」で中国系であるあたりとか(だからあのホワイトタイガーは他のペットたちと違って会話できないのかな)。

ペット2

ギジェット&クロエの物語

第三はギジェット&クロエの物語。

もっともしょうもないストーリーかもしれない(正直、いるか?というレベルなのだけど、まあ、それはおいておこう)。白いポメラニアンでマックスに好意を寄せるギジェットは、旅行に出かけるマックスから“ミツバチ”のおもちゃを預かり、留守中に大事に守ろうとしますが、うっかり落として猫だらけの家で“ミツバチ”のおもちゃを失くします。

ここでなぜか“私、猫になる”という展開に(いや、他の知り合いの猫に頼むとか、できないのだろうか…)。ふくよかな真ん丸猫のクロエから猫らしく振る舞うレッスンを受けます。「鳥を食え」とかなかなかにハードな講義を受けつつ(悪い見本)、いざ猫屋敷へ。

このパートは、あえて深読みするなら、“決められた固定観念を越えて違う自分にだってなれる”というダイバーシティなメッセージもあるのかもしれないですが、まあ、基本はギャグですから。そこまで頭を使うことでもなく。というか、猫になるという証が“猫耳をつける”でいいのか。別に犬にも似たような耳があるだろう…。

それよりニューヨークであんなに多頭飼育していいのかな。きっとダメだよね。

ちなみにギジェットの声。日本語吹き替えだと若手ベテランの“沢城みゆき”ですが、オリジナルは女優兼コメディアンの“ジェニー・スレイト”で、彼女は『ズートピア』で羊の副市長のベルウェザーの声を担当していました。

シークレットではないが…

最初『ペット2』を見ている時は、“この3つのパートがどうまとまるのかな…”と半信半疑で眺めていたのですが、最後にかなり強引な方法で合体してきました。

あのギジェットたち猫軍団が外へ行くくだりは、前作のハイジャック暴走を彷彿とさせる、イルミネらしい展開ですし、列車でのバトル展開も現実性度外視の遊びまくりで、これぞフィクション。ペットとしての一線を1歩2歩どころか、1000歩くらい越えている。

結局、なんだったんだろうという感覚も否めませんが、まあ、そういうコメディですから。

本音を言えば、もう少し3つのパートを上手く絡めてほしかったし、さすがにニューヨークを飛び出してしまうと、このシリーズの根幹が行方不明になる気もするので微妙なのですが、ペットたちが飼い主のいない間に好き放題やっているという一点に集中して、ゆる~くコメディするなら、これくらいでいいのかも。前作同様に、人間にバレないように行動するというタイムリミット&サスペンスはゼロに等しいので、原題の「シークレット・ライフ」は返上したほうがいいかもしれませんけど。

それにしても例えキッズ向けの映画とはいえ、CGアニメーションのクオリティは一切の妥協がなく、ほとんど本物の毛並みそっくりの描写が実現できて、それでいてこのシンプルなストーリーを展開するわけですから、なんとも贅沢なものです。日本も子どもを対象にしたCGアニメ映画は公開されていますけど、やはりベーシックとなるグラフィックの基点からして違うのが、嫌と言うほどわかる…。別にリアリティ重視だから良い映画というわけではないですけど、世界ではこれがスタンダードになっているのは間違いなく、日本はCG分野では完全に遅れに遅れたなと痛感するばかり。技術力の問題ではなく、コストベネフィット的にそこのお金をかけなくていいという商業上の判断の結果なのかもしれませんが…。

今後に3作目があるかは知りませんが、興行収入は悪くないですし、最後の1本くらいはあるのかも。次はどうするか…。ニューヨークのペットの半分が突如消えた世界ということにして…(あれ、どこかで…)。

真面目な話、私の希望としては今度は「都会のペットvs都会の野生動物」の全面戦争(ペット・ウォー)をやってほしいなと思っているのですが。どうですか、イルミネさん。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 59% Audience 90%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)Universal Studios.