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アニメ『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』感想(ネタバレ)…子どもに見せたいクィア・ホラー

デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ

子どもに見せたいクィア・ホラー…アニメシリーズ『デッド・エンド ようこそ! オカルト遊園地へ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Dead End: Paranormal Park
製作国:イギリス・アメリカ(2022年)
シーズン1:2022年にNetflixで配信
シーズン2:2022年にNetflixで配信
原案:ハミシュ・スティール
LGBTQ差別描写 恋愛描写

デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ

でっどえんど ようこそおかるとゆうえんちへ
デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』あらすじ

有名な女優が題材となっているテーマパークのスタッフに採用されて、初めての仕事に挑む10代のバーニーとノーマ。しかし、このテーマパークはちょっと奇妙な問題を抱えていた。屋敷のどこからか悪魔なのか悪霊なのかわからないヘンテコな奴らが湧いてでてきたかと思えば、バーニーの愛犬は急に喋って魔法を使えるようになる。多感な青春を過ごしている10代の2人は次から次へと起きるトラブルに対処できるのか…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』の感想です。

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』感想(ネタバレなし)

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子どもに届けるのを邪魔しないで…

2023年6月16日、日本では紛糾する中、「LGBT理解増進法」が可決、成立しました。この法律の経緯と問題点は“松岡宗嗣”氏のこちらの記事などでよくまとまっているので、そちらを参照してください。

それに呼応するように日本国内の反LGBTの活動も非常に勢力を増して活発化しており、日本にはこんなに反LGBTの姿勢をとる人たちがいるんだなとあらためて実感できて気が重いです。

こうした日本の反LGBTの主張は、基本的に欧米の反LGBTQの主張をほぼそのまま丸パクリしたような言説ばかりとなっています。

アメリカでも反LGBTQは激化しており、とくに「教育」「創作」の2つへの攻撃が目立ちます。学校教育にLGBTQを持ち込むことを極端に忌避し、また映画などの作品にLGBTQのキャラクターが登場すれば「woke」だと騒ぎ立て、出演者をバッシングする…。

この「教育」と「創作」への攻撃は「子どもの保護」を建前にしているのですが、そこで直撃するハメになるのが子ども向けのアニメーション作品です。子ども向けのアニメーション作品という土台にLGBTQを一滴でも入れようものなら、反LGBTQの人たちは猛烈に罵声を浴びせてきます。それは「indoctrination(教化)」であり、「sexualization(性化)」していると持論を並べ立てて…。とうとうアメリカでは学校でディズニー映画を見せただけで処分される教師さえ登場しましたTruthout

それでも子ども向けのアニメーション作品は本来、全ての子どものためにあるものです。全ての子どもということは、LGBTQの子どもだって含まれます。そんな子どもたちに届けるべく、クィアなアニメーションは作られます。

今回紹介するアニメシリーズは、2022年に「Netflix」で配信されたものであり、現状、最もクィアな子ども向けアニメーションとして寄り添う姿勢を全面にだした作品のひとつです。

それが本作『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』

本作はティーンがとあるテーマパークでオカルトなことに巻き込まれながら働いていく奇想天外なファンタジーホラーコメディです。ホラーと言っても全然怖くないのでご安心を。

この主人公となる2人の10代のうち、ひとりがゲイのトランスジェンダー少年、もうひとりが社交不安を抱える自閉症スペクトラムのバイセクシュアルのパキスタン系の少女となっています。

作中でアイデンティティを語り、家族との付き合いに悩み、友情や恋愛に葛藤する…そんな等身大の姿が描かれていきます。

加えてしだいに明らかになる謎めいた世界観も面白いですが、それは観てのお楽しみ…。

とにかくクィアな10代の心に優しく向き合った作品です。『HEARTSTOPPER ハートストッパー』とかが好みな人にはオススメですよ。

こんな愛らしいアニメでも子どもを脅かすものに見えるんですかね…反LGBTQの人たちは…。

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』はシーズン1・シーズン2ともにそれぞれ10話(1話あたり約25~30分)。

子どもに見せたい”怖くない”クィア・ホラーです。大人も楽しめます。

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『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』を観る前のQ&A

✔『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』の見どころ
★親身に寄り添ったクィアなエピソード。
★ユーモアたっぷりで、ちょっと謎めいた世界観。
✔『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』の欠点
☆シーズン2で打ち切りに…。
日本語声優
石井マーク(バーニー)/ ふじたまみ(ノーマ)/ 伊丸岡篤(バグスリー)/ 斉藤こず恵(コートニー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:クィアアニメ好きに
友人 3.5:友達に紹介しよう
恋人 3.5:同性ロマンスたっぷり
キッズ 4.0:子どもにぴったり
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『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):オー・マイ・ゴースト!

ひとりのドレスアップした金髪の成人女性がずぶ濡れになりながら、雨の中、屋敷に逃げ込んできます。追っ手の気配を感じて、ある部屋のドアを閉めて隠れますが、そこに得体のしれない雰囲気を感じ、照明が点滅し、悲鳴をあげ…。

ところかわって、フェニックス・パークの求人の紙を持って面接のために家をでたバーニー。愛犬のパグスリーも寂しそうだったので連れて行きます。

一方、近所のノーマ・カーンも心配性な母にうんざりしつつ面接へと家から出発しました。

バスで一緒になる2人。バーニーはノーマを同級生だったので知っていますが、不安になっているノーマは距離をとります。

バス車内ではフェニックス・パークの案内動画が流れます。有名女優ポリーン・フェニックスを題材にしており、彼女が出演した作品がモチーフのアトラクションがたくさんあるのです。ノーマはポリーンの大ファンで興奮します。

テーマパークに到着。2人ともアトラクション「デッド・エンド」で面接です。そこに入るとこれまたハイテンションのノーマ。なんでもここはジェニファー・スワン事件で閉鎖されたそうで、ポリーンそっくりの人がここに入って行方不明になったらしいです。実は同じような事件はパーク内で連発していましたが、2人は知りません。

屋敷には誰もいないようです。そのとき、変な赤い奴が現れます。そしてゾロゾロとヘンテコな集団が登場。さらにエレベーターから魔王と呼ばれる存在が物々しく出現し、テメルーカスと呼ばれています。

バーニーとノーマは逃げようとしますが謎の力で拘束され、テメルーカスはどちらの体にしようかと選びだします。どうやら体を乗っ取りたいようで、この採用面接も子分の悪魔のコートニーを中心に仕組んだもののようです。

結局、バーニーが選ばれてしまい、宙に浮かびます。そこへ犬のパグスリーが飼い主を助けるべく間に割って入り、悪魔たちは犬を囲んで何かを唱えだします。

すると憑依に成功したテメルーカス(犬)が恐ろしい形相で喋り出し、飛んでいってしまいます。

このまま愛犬を差し出すしかないのか…。ノーマは妙案を思いつきます。写真を撮って封じ込める作戦です。しかし、スマホを奪われて打つ手なし。

けれども諦めません。犬の習性は残っているようでお座りにも反応させつつ、コースターに乗せて観光用の写真撮影ポイントに誘導。撮影によってパグスリーは元の犬に戻りました。テメルーカスは写真の中です。

バーニーとノーマは散々な日だったと帰ろうとすると、あの子分の悪魔のコートニーが「ここには仕事がある」と2人を誘い、特別警備員にすると言い出します。2人ともその仕事を引き受けることにし、こうしてこのテーマパークのスタッフになることに…。

実は家族のもとに帰りたくなかったバーニーはこのパーク内の屋敷に住むことにします。そしてまだ驚きの出来事が…。

戻ったはずの犬のパグスリーですが、テメルーカスの力が一部に残ってしまっていたせいか、人間の言葉を喋れたのです。

これにびっくりしているようではここでは暮らせません。デッド・エンドはおかしなことだらけ。ここは別の世界と繋がっているのです…。

この『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/07に更新されています。
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トランスジェンダーと悪魔の世界

ここから『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』のネタバレありの感想本文です。

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』はとてもクィアなアニメシリーズなので、後半の子の感想では、クィアの部分を掘り下げていきたいと思います。

まず主人公のひとり、バーニーです。青い髪のこの少年は、第1話の家を出るシーンから何やら家族、とくに祖母のことで気がかりがあることを匂わせていましたが、第2話でしっかり周囲にカミングアウトするとおり、トランスジェンダーです。

バーニーはこのジェンダー・アイデンティティのことでどうやら家族と折り合いが悪く、ある日の夕食時に祖母からトランスフォビアな発言をぶつけられてしまい、それについて両親が味方してくれなかったこともあり、家と距離をとることにしたことがわかってきます(差別発言の内容は直接的描写されないので、視聴者へのメンタル面での配慮が行き届いている)。

シーズン1の最終話ではちゃんと両親と和解できており、そこはめでたしめでたしです。

他にも随所にトランスジェンダーらしい経験がエピソードに盛り込まれており、例えば、シーズン2の第3話でバーニーは悪魔界のジムにハマってレスリングで発散しだすようになります。バーニーはこの悪魔界だとジェンダーの割り当ての視線がないので気が楽だと話しており、悪魔の世界が意外にジェンダーの圧力がない理想となっているのがユニークです。

これは何かと「悪魔化(非人間化)」されやすいトランスの現実に対する皮肉でもありますけどね。

ちなみに、記念すべき初回の第1話では“Cavetown”「Talk To Me」という曲が流れるのですが、この“Cavetown”というイギリスのシンガーソングライターはトランスジェンダー当事者です。

そのバーニーですが新人研修で出会ったローガン(ログス)・グエンにひとめ惚れ。この2人の初々しいデート模様なども微笑ましいところ。

なお、パグスリーの乗っ取りを狙うも頓挫したテメルーカスですが、その妹のザガンというキャラクターは『POSE ポーズ』でおなじみの“MJ・ロドリゲス”が声を担当していて、原案の“ハミシュ・スティール”いわく、ザガンもトランスジェンダーであるとのことです。

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恋と社交不安と復讐と…

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』のもうひとりの主人公、ノーマもクィアなエピソードに事欠きません。

ノーマはシーズン2の後半でようやくバイセクシュアルであると自分で自覚し、納得するようになるのですが、新人研修で出会ったバディヤ・ハッサン(服装からムスリムと思われる)への恋心を意識していきます。

ただ、そこで立ちはだかるのはノーマの別の側面。それは第1話で母にやけに心配されながら家を出ていくシーンからも窺えるのですが、ノーマは自閉症スペクトラムで社交不安を抱えていました

基本的に他人と打ち解けるのが苦手で、当初はバーニーに対してもかなり距離感強めでした。シーズン1の第3話の恐怖を呼び起こすスカルの物語で、ノーマのその社交不安の苦手意識がより浮き彫りになります。

なのでノーマにしてみれば、他人と恋愛的に付き合う関係を構築する一歩を踏み出すのはめちゃくちゃハードルの高いことであり、実際にあたふたすることに…。

しかも、いざ告白してみるとバディヤからは「ごめん、私はストレート(異性愛者)だから…」とあえなく失恋し、バディヤ側は親友でいたいと思ってくれていますが、ノーマの心はぐちゃぐちゃに…。

推しのポリーンがただの強欲な非倫理的行為に手を染めていたというのを知ったのも、ノーマにしてみれば辛い出来事です。母が良き理解者でいてくれるのは幸せですが…。

そんな2人のクィアの人生展開も気になるところですが、作品全体のストーリーは結構とんでもない一大事に膨れ上がっていきました。

コートニーの正体は輪が壊れた堕天使だった! パグスリーは天使のウォッチャーになることが期待される器で、今のウォッチャーも別のパグスリーの成れの果てだった!…そんなこんなの怒涛の事実が発覚しまくります。この作品、すごい犬愛に溢れてるね…。

ここまで見せられて打ち切りだなんて…。Netflix、お前…。

2匹のパグスリーが協力して自分を犠牲にして事態解決したけど、まだパグスリーはどこかに存在しているっぽいし、フィンガーの主は何なんだとか、ノーマはテメルーカスとザガンのもとに向かって天使への仕返しを決意したみたいだけどどうなるんだとか…。

ここまで最高潮のクリフハンガーを見せながらのキャンセルという判断、絶対にNetflix上層部の人はこのアニメ、観てないな…。

どうしてもこの作品の世界観をもっと知りたいという人は、原案の“ハミシュ・スティール”の原作ウェブコミック「Dead Endia」を読むしかないです(ただ、アニメと原作は内容が少し違う)。

そんなシリーズの完結が観られないという悲しい顛末はありましたが、これほど子ども絡みのLGBTQバッシングが激増している今の時代で、このパワフルなクィア・アニメーションが作られた意義は非常に大きかったと思います。

悪に染まった天使みたいな陰険な支配者ぶる大人たちの嫌がらせに屈したりはしませんよ。

『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 100% Audience 83%
S2: Tomatometer –% Audience 90%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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関連作品紹介

クィアな子ども向けのアニメシリーズの感想記事です。

・『アウルハウス』

・『永遠に12才!』

・『キポとワンダービーストの冒険』

作品ポスター・画像 (C)Netflix デッドエンド パラノーマル・パーク

以上、『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』の感想でした。

Dead End: Paranormal Park (2022) [Japanese Review] 『デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ』考察・評価レビュー