好きだった君へPSまだ大好きです
Netflix映画『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:To All the Boys: P.S. I Still Love You
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2020年にNetflixで配信
監督:マイケル・フィモナリ

好きだった君へ: P.S.まだ大好きです

あらすじ

ララ・ジーンは男の子を好きになるたび、こっそりラブレターを書くだけで渡すこともなく保存してきたが、妹のせいで出すつもりのなかった秘蔵の手紙がなぜか本人に届けられ、なんとピーターと恋仲になることに成功する。幸せを噛みしめていた彼女のもとに、過去に好きだったジョンが現れて、心が揺れ動くことになるが…。

『好きだった君へ PS まだ大好きです』感想(ネタバレなし)

アジア系はもっともっといける

ハリウッド映画界ではアジア系俳優が蚊帳の外に置かれていた「恋愛」ジャンルへの進出が空前の熱狂を見せている…そう私は別の感想記事で2018年頃に書きました。

2018年といえばあれです。アメリカ映画ながらアジア系オンリーなラブコメ『クレイジー・リッチ!』が公開され、そしてNetflixではありますがアジア系ティーンを主人公にした学園恋愛映画『好きだった君へのラブレター』も配信となり、業界に大きな一石を投じました。


アジア系俳優が恋愛分野でどんな差別や偏見を背負わされてきたかについては『好きだった君へのラブレター』の感想記事で説明しているので、そちらを参照してください。

とにかく「アジア系でも普通に恋くらいしますよ!」ということを“普通に”描く。これができるようになった一歩を踏み出したのが最近の話。

ではそれから1年半が経過し、あれからどうなったのか。もちろん依然としてアジア系への差別は諸々しつこく存在しています。まだまだマイノリティです。でも恋愛映画への浸透は確実に一歩一歩進んでいます。アメリカ内でのアジア系同士の男女の色恋沙汰を描く『いつかはマイ・ベイビー』、アジア系男性が運命の男性のように描かれる『ラスト・クリスマス』…。恋愛とは違いますが、『ハスラーズ』ではアジア系を主人公にセックスワーカーの生き様を前向きに描くことも実現したばかり。『パラサイト 半地下の家族』『フェアウェル』といった賞レースを席巻するアジア系映画の存在感も強く認知され、かつてない目立ち方をしていると思います。

この流れに乗らない手はないです。同じアジア人としての連帯を感じずにはいられません。

そんな中、今のアジア系ムーブメントの先頭にいた『好きだった君へのラブレター』の続編が作られました。それが本作『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』です。邦題からは続編っぽさが全然ないですけど、2作目です。お話もつながっています。

もともとアジア系アメリカ人の作家“ジェニー・ハン”の小説が原作であり、その小説第2弾「P.S. I Still Love You」を今回は映画化。すでに3作目の映画化も決定済み(というか製作に入っている)らしく、いやはや凄い勢いです。

1作目は本当に「アジア系の私でもマジョリティと同じフィールドに立てる!」ということを高らかに誇るような内容でしたし、きっと多くのアジア系ティーンの背中を押せた作品だったと思います。2作目も普通に恋をしまくります。

俳優陣は同じ顔ぶれ。主演は“ラナ・コンドル”。恋人役の男の子は“ノア・センティネオ”。ただ、今回のもうひとりの恋相手として登場する男の子がジョンという名のキャラなのですが、1作目では“ジョーダン・バーチェット”が演じていましたが、今回の続編では“ジョーダン・フィッシャー”に変更となっています(スケジュール的なものかな?)。“ジョーダン・フィッシャー”はブロードウェイ劇「ハミルトン」にも出演するなどすでにかなりキャリアがあるんですよね。

前作でもキュートな引っ掻き回し役だった妹を演じる“アナ・キャスカート”も健在。新キャストだと“ホランド・テイラー”が出演しています。彼女と言えば女優“サラ・ポールソン”との30歳離れた年の差同性カップルでも有名で、そんな世間を気にしないありのままの恋を大事にする“ホランド・テイラー”らしい役回りになっています。

監督は“マイケル・フィモナリ”という人で、もともとは撮影をやられており、『好きだった君へのラブレター』でも撮影を担当していたのですが、実はホラー系の作品の仕事が多め。最近だと『ドクター・スリープ』の撮影もしてました。そんな“マイケル・フィモナリ”の監督デビュー作が『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』になるのは予想外だったけど…。なお、撮影も変わらずやっています。

脚本は前作と同じく“ソフィア・アルバレス”。原作者の“ジェニー・ハン”も製作総指揮でガッツリ関わっており、私は原作を読んでいないのですけど、かなり原作準拠なのかな。

Netflixオリジナル映画として2020年2月12日より配信中ですので、まだ1作目を観ていない人はそちらから鑑賞し、そちらをクリアしたらぜひ2作目の本作を視聴してください。

オススメ度のチェック
ひとり◯(前作も忘れずに)
友人◯(映画好き同士なら)
恋人◯(恋愛映画をおつまみに)
キッズ◯(ティーン向けですが)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





『好きだった君へ PS まだ大好きです』感想(ネタバレあり)

追加の恋愛イベント発生!

高校生のララ・ジーンは脳内恋愛に夢中でした。ケニー、ジョン、ルーカス、ピーター、ジョシュというこれまで出会って心がときめいた男の子へのそれぞれ5通のラブレター。そこには彼女の甘酸っぱい想いが込められており、妄想が膨らむばかり。もちろんそれは自分の頭の中だけであり、現実はカレシのいないただのティーンエイジャーなのですが。

しかし、そんな話すらも昔のこと。今のララは違います。

その自分の妄想用素材でしかなかったラブレターがうっかり(まあ、妹のキティのせいなのですが)相手に送られてしまい、最悪の赤っ恥をかいたのですが、不幸中の幸い、いや棚からぼたもち? いやいや最高の運命によってなんとそのうちのひとりであるピーターと本当に付き合うことに成功。最初は諸事情でカップルのふりをしていただけですが、その関係性は本物の恋に変わり、今のララは脳内ではなく、リアル恋愛に小躍りしていました。

『ベビーシッター・アドベンチャー』をBGMに有頂天な姉に冷たい目線を向けるキティをよそに、ララはワクワクを抑えられません。なぜなら今日はピーターとの初の本格的なデート。そうこうしているうちに玄関にピーターが登場。父コヴィーと妹に見送られながら二人は出かけます。

車で到着したのはカルドナスという高そうなレストラン。そこで楽しくおしゃべり。食事が終われば帰りはララが運転。途中で公園に立ち寄って二人の愛を誓い、玄関前でキスして、名残惜しく別れる…。完璧…。そんな感じで幸せメーターが振り切れそうなララでした。これが空想ではなく現実なんだ、と…。

ところがその幸せの日常にひとつの追加イベントが発生。とある夜、自分宛てに届いた手紙を発見したララ。それはかつて自分がラブレターを書いていたジョンからのもので、なんと彼にもラブレターが郵送されてしまっていたようです。

その気になる手紙の内容は、一緒にツリーハウスでハリーポッターを読んだ思い出など、子ども時代のあれこれが好意的に綴られています。これって…ジョンも私のことが好きだったの? いや、これはお礼の手紙か? いつもの恋愛脳と現実的思考がゴチャゴチャになりつつも、礼儀として返事を書くべきかと思い、ペンをとるも、手紙を書きかけてやめてしまいます。

翌日、学校でピーターにジョンから手紙がきたことを素直に話すことにしました。ピーターは軽い反応で、「俺も友達だったぞ」と言うくらい。なんだ、難しく考えるべきじゃなかった、私にはピーターがいるし…。そう再確認したのでした。

学校の奉仕イベントの一環でララはベルビューの高齢者施設にボランティアに行くことにします。そこで出会ったストーミーという元スチュワーデスだったらしい高齢女性に案内してもらっていると、もうひとりボランティアの人がやってきます。

それはなんとジョン。ジョン・アンブローズ・マクラーレン本人でした。その場はなんとか平静を保った(すっころんだけど)ものの、この予期せぬリアル遭遇で、ララの記憶からジョンとの思い出が蘇り、なんだか感情が湧いて出てきます。

学校はバレンタイン・ムード(余談ですけど、アメリカの学校ってあんなバレンタインの飾りつけするんですか。チョコプレゼント程度の日本よりもはるかにハードモードじゃないですか…)。相変わらずピーターはかなりバレンタインカードをもらっているようで、自分には目立ちすぎる恋人なのかと少し気落ちするララ。

でもピーターは変わらず愛情を示してくれて、ネックレスと詩を贈ってくれます。「月は俺に君の夢を運んでくれる。美しいララ・ジーン。星は君の輝く瞳を感じさせてくれる…」…気持ちをシャキッとさせてボーイフレンドへの愛を受け止めるララです。

けれども恋愛過負荷状態でボーっとしているとストーミーが相談に乗ってくれ、なんとあのピーターの自作の詩だと思っていたものは、エドガー・アラン・ポーのものだと判明。なぜ自作のように偽ったのか。一気に気持ちが下降していく中、ピーターの昔の恋人ジェンの存在の名残もちらつくようになり…。

リアル恋愛の難しさに直面したララはどうこの問題をクリアするのか…。

普通だからいい

『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』は前作以上にド定番です。事態の収拾のつかなさで言えば1作目の方が上なので、この2作目はインパクトも薄いでしょう。

でもそのインパクトのなさも本作においてはむしろ好意的に評価できる部分だと思います。なぜならクドイようですが、これまでのハリウッド映画ではアジア系の恋物語なんて論外だったのですから。普通に恋人をゲットして、普通に新しい恋に悩んでいる…その“普通さ”が何よりも愛おしいところ。

本作シリーズ自体も、わざと恋愛映画(もしくは恋愛ゲーム)みたいなベタなことをやろうとしている節があります。ジョンとの再会シーンで盛大に転ぶ…とかはいかにもです。それは作中で恋愛作品などがそのまま使われていることからもわかりますし、アジア系ティーンを白人中心世界観に対等に並べようという作り手の意志ですね。

ただそう単純にもいきません。ララはピーターが私の恋人として本当にふさわしいのか悩み始めます。それは物語上はよくある足踏みですが、本作の立ち位置を踏まえて深読みするなら、マジョリティと対等に並ぼうとするアジア系なら誰しもが一回は考える「不安」ともいえるでしょう。こういう生き方でいいのかな、と。

なので本作シリーズは、“恋愛という軸”“マイノリティの在り方という軸”が重なるような作りになっていますね。そこが邦画の青春恋愛モノとは全然違う部分です。

最終的にピーターへの想いを再確認し、よりを戻す二人。これは平凡な仲直りではなく、きっとさらなる親密さのアップに間違いなく…。

本作を観ていると、マイノリティがマイノリティではなくなることはそう簡単ではないし、他者の反応だけでなく、自分の意識も大事なのかなとも思いました。着実に一歩一歩のペースで不安を消し去っていく。その先に対等な関係性があるのかな。

好きだった君へ PS まだ大好きです

アジア系という重荷を脇にどけて

『好きだった君へ: P.S.まだ大好きです』は恋愛面だけでなく、アジア系文化を材料したアプローチもされています。

序盤でララとキティは韓国の伝統衣装を着せられて、挨拶に行きます。ちなみに原作者は韓国系アメリカ人で、このララの母もそうなのでしょう。

しかし、当のララは自分がアジア系だからといってアジア系らしい振る舞いをすることにはあまり良い気持ちを持っていません。ララが楽しんでいるのは『ベビーシッター・アドベンチャー』や「ハリー・ポッター」のようなものであり、アジアコンテンツでもないです。

つまり、良い意味でアジア系として変に意識するつもりはないわけです。

話は逸れますが、学校の授業でタコの解剖をしている場面がなんか日本人的にも新鮮でしたね。アジア人にとってタコとか魚は料理するものですからね。文化の違いを感じる…。

話を戻して、本作では「アジア系という見えない重荷」みたいなものの論点を彼女自身の直面する課題としては直接的には描いていません。そもそもララは特別大きなアジア系差別を受けているわけでもないですから。本作はそういう露骨な差別テーマ映画ではないです。

その代わり、周囲の大人の反応で、ララの「アジア系という枠からの脱却」をサラッと描いているように思います。

そのひとつが父の対応。父は亡き妻を忘れられず、ゆえに娘たちに妻のアイデンティティを重ねるような民族衣装をたまに着せて喜ぶのですが、本作では向かいのトリーナと良い感じの関係になる兆しが見え始めます。

ここでキティのバレンタインカード偽装が発揮(もう完全に強引アシストにハマっているのがシュール)。パートナーを亡くした者同士の新しい愛の構築が、静かに見守るように描かれていました。

それは同時にララにとっての「アジア系」というプレッシャーの雪解けでもあって…。こういうふうにさりげなく暗示させる物語作りがこのシリーズは上手いですね。

そして極めつけはストーミーの助けによって美しくドレスアップしたララの終盤シーン。そこにはアジア系という鎖を抱えた姿は何一つありません。恋をしている人は輝きますが、自分らしさを手に入れた人はもっと輝きますね。

他にもルーカス、クリス、ジェンなどとの友人関係性もララのステップアップの物語をしつこくなくサポートしており、良いバランスでした。

私たちの物語はまだ始まったばかり。遠慮なく恋しましょう。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience --%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

関連作品紹介

アジア系の恋愛を描く海外映画の感想記事の一覧です。

・『クレイジー・リッチ!』


・『いつかはマイ・ベイビー』


・『ラスト・クリスマス』


作品ポスター・画像 (C)Overbrook Entertainment, Netflix 好きだった君へのラブレター2