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インド映画『ロボット2.0』感想(ネタバレ)…スマホの電源を切って鑑賞必須!

ロボット2.0

スマホの電源を切って鑑賞必須!…インド映画『ロボット2.0』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:2.0
製作国:インド(2018年)
日本公開日:2019年10月25日
監督:シャンカル

ロボット2.0

ろぼっとつー
ロボット2.0

『ロボット2.0』あらすじ

インドからスマートフォンが消え、携帯業者や通信大臣がスマホに殺されるという謎の殺人事件が発生した。消えたスマホの行方を追っていたバシー博士と助手のニラーは、おびただしい数のスマホがとんでもない現象を起こしていることを突き止める。この異常事態から人類を守るため、バシー博士は封印された伝説のロボット「チッティ」の復活を思い立つ。

『ロボット2.0』感想(ネタバレなし)

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インド映画は多機能に進化中!

みんなが持っているスマートフォン。少し前まではどんな機能が登場するんだろう…と新機種のたびにワクワクしたものですが、今やその進化も行き着くところまで行ってしまったのか、どのメーカーのスマホもだいたい同じでコモディティ化してしまいました。きっと「iPhone19」くらいでも同じ形と機能なんじゃないだろうか…。

一方でスマホのマナーはなかなか進化しません。映画館での上映中のスマホの光にイラっとする映画ファンは多いですし、歩きスマホも、運転中スマホも、以前として問題化。もはやスマホが私たちの社会全体に蔓延し、社会そのものがスマホ依存症になっているせいで、マナー以前に感覚がマヒしている感じさえします。

そんな偉そうにスマホ社会を批評している風な文章を書いているこのブログも、スマホからの閲覧者が多いわけで、スマホ利用者に頼った運営をしている…もう切り離しようがないですね。

しかし、このスマホに支配された世界に対して、あまりにもエキセントリックな映像とストーリーセンスで挑んでくる猛者が疾風のごとく現れました。そう、インドから…。

インドが世界に突きつける超大作映画『ロボット2.0』はまさにそういう作品なのです。たぶん。

本作は『ロボット』という映画の続編です。まずは1作目の『ロボット』の説明からしないといけません。2010年に公開されてインド国内で異例の大ヒットを記録したこの映画は、バカでもタイトルを見ればわかりますが、ロボットを題材にした作品です。ある日、博士によって作られた超高性能ロボットが大波乱を巻き起こす…というあらすじ自体はよくありがちな雰囲気ですが、なにせこれはインド映画。普通で終わるはずありません。恋敵にダンスで張り合うわ、蚊と会話して謝罪させるわ、群体フォーメーションで戦うわ、あらゆる既存のロボット映画に当てはまらない独自性をこれでもかと見せつける…。思わず「なんだこれは!」と口にしてしまう映像の連続。「Robo Da, Robo Da…♪」の音楽が耳から離れない…(聴きたい人は以下の公式動画を参照)。

とにかく「滅茶苦茶」という言葉を捧げるのにふさわしい、良い意味で振り切った映画でした。

その『ロボット』に続編ができるとは…。しかも、インド史上最高額の製作費を投入しているとか…。インド人、大丈夫なのだろうか…。

けれどもこの『ロボット2.0』、コモディティ化なんてさせません。前作と全く同じ中身の二番煎じではなく、しっかり新しい前代未聞の機能を追加して観客を驚かせようと考え抜かれていました。

前作は表面上はコミカルなスーパーヒーロー映画にしつつ、裏ではロボットに関するテクノロジー倫理の問題を追求していくというスタイルでした。

しかし、2作目の『ロボット2.0』はさらに上乗せ。

まずは先ほどから強調しているように、スマホに関するテクノロジー倫理の問題に焦点をあてています。ロボットからスマホに変わったことで、より身近なテーマになった感じです。そしてその描き方が前作からその傾向がありましたが、やりすぎなくらい過剰なんですね。新たな「スマホ・ホラー」と呼んでもいいかもしれません。ホラー映画でスマホなどITが演出に使われる作品は多々ありますけど、『ロボット2.0』はダイレクトすぎてビビります(観ればわかる)。

そして『ロボット2.0』は怪獣映画になっています。え?というキョトン顔が見えそうですが、はい、そのとおりです。怪獣映画です。日本の往年の怪獣作品を彷彿とさせるスペクタルもあり、間違いなく特撮ファンは大満足できるのではないでしょうか。インドが怪獣映画を作ってくれるなんて、感無量だなぁ…。2019年は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の後を継ぐ怪獣映画は『ロボット2.0』ですよ(本気です)。

監督は前作から続投して“シャンカル”ですし、主演ももちろん“ラジニカーント”。今回は新たに『パッドマン 5億人の女性を救った男』での好演も印象的な“アクシャイ・クマール”が“ラジニカーント”に負けじと相当に奇抜なかたちで登場します。

インド国内の興行収入ランキングでは『ダンガル きっと、つよくなる』を超えて第2位を記録(1位は不動の『バーフバリ 王の凱旋』)した『ロボット2.0』。盛り上がりすぎだぞ、インド映画。

本作を観る時は、もちろんスマホの電源を切りましょう。でないと気まずい思いをしますよ。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(前作も観よう!)
友人 ◯(インド映画入門にお誘い)
恋人 ◯(インド映画入門にお誘い)
キッズ ◎(子どもは楽しい)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ロボット2.0』感想(ネタバレあり)

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もしもスマホが飛んだら

まずは前作の簡単なおさらい。

インドでも一流のロボット工学の技術者であるバシーガラン博士(バシー)はついに自分の持てる全ての結晶として「チッティ」というヒューマノイドロボットを完成させました。ロボット開発に夢中ですっかり放置気味だった恋人のサナにも報告し、学会では研究者を驚かせるチッティの能力。それは人命救助にも大活躍する、まさにスーパーヒーローでした。しかし、チッティには感情という概念が欠けており、ゆえに命を軽視したり、人の心を傷つけることも躊躇ありません。そこでチッティに感情を導入させるために苦心。なんとかチッティが感情を理解できるようになったと思ったら、今度はチッティがサナに恋をしてしまうという事態に。バシー博士とチッティに亀裂が入り、結局、チッティを破棄してしまいます。ところが、バシー博士の技術を欲したボラ博士がチッティを回収、復元したことで殺戮に目覚めたチッティは、そのボラ博士さえも抹殺し、自分のレプリカを製造して軍隊を作り上げてしまいます。かくして殺人兵器チッティとの大激闘が開始。悪の回路を抜き取ることに成功し、チッティは元通り。そしてチッティは自ら自分を分解し、機械の役割を終えるのでした。チッティのパーツは博物館に展示され、20年後、見学の生徒たちに眺められながら…。

こんな感じで前作は明らかにこれで綺麗に終わるつもりのエンディングだったと思うのですが、『ロボット2.0』はたぶんそのへんは諦めたんでしょうね。新しいことやっちゃうぜ!のノリで開き直っています。もう『ロボット2.0』のエンディングを見る限り、前作のエピローグに繋がりそうにはありませんから。

相変わらずメカメカしいOPクレジット。『ロボット2.0』はまたバシー博士が主軸なわけですが、アシスタントとして二ラーというヒューマノイドロボットがラボで一緒に働いています。全然、前の事件を反省していないじゃないか…。今回はアシモフの三原則に準拠しているみたいだけど、前作はそういう問題でもなかったし…。

まあ、今回はロボット云々はどうでもいいのです。ニラーもヒロイン枠ですからね(前作のサナは声のみの登場)。

事件が起きるのはロボットではありません。突如、あらゆる場所の市民のスマホがどんどん上空へ跳んでいくという異常事態が発生。インドだってスマホ依存社会。スマホの消えた市民たちは大混乱。しかも、携帯業者や荘電波塔の所有者、通信大臣などスマホ絡みの人が惨たらしく殺される事件が多発。バシー博士はスマホに謎の手がかりがあると推測し、飛んでいった追跡します。

すると、とある場所に行き着き、そこで驚愕の光景を目にします。スマホが虫の大群のように飛び回り、鳥の足のかたちに変化したかと思いきや、近くの送電塔を破壊したのです。

これは人智を超えていると事態の深刻さを痛感したバシー博士は、政府の緊急会議でスーパーパワーが必要ですと訴え、チッティの復活を提案。そこではボラ博士の息子に却下されてしまうも、博物館に侵入して密かにチッティを回収。

そうこうしているうちに、スマホの群れが軍隊を襲い、さらには巨大な怪鳥となって街を強襲する大パニックが発生。そこへ、待ってました、チッティ登場。住民を華麗に救助。伸縮自在のスマホ鳥と、重力無視の縦横無尽のチッティ。「スマホ怪物vsおっさんロボ」の前代未聞の対決が始まりました。

最初は調子が良かったものの、電池切れに苦しみ、絶体絶命になるチッティ(この欠点、いい加減克服できないものなんですか)。ところが偶然にスマホ鳥の弱点が発覚。それをもとに再リベンジ。激しいエネルギーの吸収綱引き合戦の末、崩壊したスマホ鳥が現れたもの。それはスマホでできた人型の存在。かつて鳥類学者だったパクシという男でした。

そして、パクシの悲しい過去が語られていき…。

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想像の斜め上をいく展開の連続

『ロボット2.0』は前作よりもコミカル度が薄めになった気がしますが、相変わらずアホ全開の荒唐無稽さはいつもどおりで、むしろパワーアップしています。コミカルな印象が減った気がする理由は、前作のロボット製造&恋愛ドタバタ劇と、唐突すぎるミュージックビデオ風のダンス音楽演出が無くなったからでしょうね(今作ではMV風の演出はエンドクレジットのみ)。

まず特筆すべきは序盤のスマホ・ホラー描写。そのままのとおりですが、スマホが群体生物のように人に襲いかかり、あげくに体に侵入してぶち破るなんて、よく思いついたな、と。こういうスマホなど現代機器が媒介となってパニックが起こる映画といえば『キングスマン』がありましたけど、滅茶苦茶な方向での勢いでいえば、完全にアレを超えています。バイブが鳴るだけで恐怖を感じさせるとか、この極端さはありそうでなかったものですし…。確かにスマホが道路一面や樹木と一体化したり、部屋のように囲まれたりしたら、怖いなんてレベルじゃない。スマホ恐怖症になります…。

そこからの怪鳥に変化しての大暴れはまさしく怪獣映画。ちゃんと軍隊を出す(歯が立たないけど)、ビル群のある街中を舞台にするあたりを見るかぎり、製作陣はきっと日本の怪獣映画も参考にしていそうです。

そしてチッティ登場からのバトル展開は、もうね、ツッコミすらも無効化するレベル。完全に「クレヨンしんちゃん」の映画版とかと同じ勢いですよね。

バシー博士を乗っ取られ、バラバラにされて大敗したチッティを二ラーが「2.0」のファームウェアを導入することで、前作の悪だったダーク版チッティとして復活。この“悪には悪を”の発想と、スタジアムでのチッティ軍団vs怪鳥の大バトルは、小学生も大喜びの大サービスです。サッカースタジアムだからというギャグも兼ねての円形射撃で対抗する姿は、すでに市民への巻き添えとか一切気にしないスタイル。そこからのスマホの巨大人間化に対して、チッティも巨大化しての「ヘイ、バードマン。アイアンマン」からの、ウルトラマン風なジャイアント肉弾戦。お腹いっぱいだよ…。

しかし、この『ロボット2.0』、まだ追加のおかわりを用意してくれています。鳥に乗って登場したのはマイクロボット3.0のミニ・チッティ。数の暴力には数の暴力で勝負ということで、捨て身の自爆攻撃に敵のパクシもヘロヘロ。

忘れていませんか。今、戦っているのはスマホです。スマホの集合体です。そんなにスマホはそもそも頑丈じゃないだろうとか思ったりもしなくはないですが、ほら、最近のは耐水機能もいいし…(意味不明な擁護)。この映画のスポンサーになってくれるスマホメーカーはいるのかな。少なくともAppleは「我が社の機器は完璧なのでこんな事態にならない」とマジレスで激怒しそうだ…。

ちなみに現時点でのインドのスマホシェアでトップのメーカーは中国の「Xiaomi」だそうです。

とにかく『ロボット2.0』のこのエンタメ方面でのアホさは、観客としても開き直るしかないですが、開き直れば最高に楽しいバカ騒ぎなのです。

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相変わらず話の解決は雑

エンタメ方面でひたすらにふざけまくっているのかと思ったら、この『ロボット2.0』、中盤でいきなりシアリスに色を変えてくるので戸惑います。

パクシというスマホ大騒動の諸悪の根源となるヴィラン。その隠された真実。それは自然を愛する者の切実な想いと、罪のない鳥たちを苦しめる人間のテクノロジーの暴走への怒りでした。『ロボット2.0』は冒頭からパクシの自殺シーンで始まり、スマホ社会が自然を犠牲にしていることを鮮烈に訴えかける、非常に社会的なメッセージ性の強い作品です。善悪の二元論では語れない、パクシの苦悩は心をうちますね…。

と、こちらもシリアスな顔で語りたいところですが、一応、明言もすべきですし、書いときますけど、本作で描かれる「電波のせいで鳥がバッタバッタと落ちて死ぬ」というのはさすがに科学的にも過剰で、現実的ではありません。もちろん鳥が電波の影響を受けることは研究でも報告されていますが、それがスマホとの関連性があるかは断定できず、少なくとも作中のような大量死にはつながりません。つい最近も「5Gの電波のせいでムクドリが大量死した」というデマが日本のメディアで流されたこともあり、なにかと陰謀論で騒がれやすい題材ではあります。

じゃあ、『ロボット2.0』はデマを増長する“悪い映画”なのかという意見もあるでしょう。実際、本作はインドでは携帯業界から苦情込みの批判がされたようです。

でも私は少なくとも本作のスタンスはこれでいいと思います。映画なんですから多少の脚色でオーバーに社会問題を描くのは普通です。それにテクノロジーの発展が自然破壊につながるリスクを抱えているのは大きい視野ではそのとおりなので、子どもにその怖さを教えるためにも、こんな映画があってもいいんじゃないでしょうか。

個人的に本作が問題だなと思うのはそこではなく、むしろ後半のシリアス展開がまるで無かったかのようなバカ・アクション大作への変貌であって、これにはさすがにパクシに同情したくなる…。

前作もそうだったのですけど、このシリーズ、最終的な風呂敷の畳み方が雑極まりないですよね。前作のあれだけ大量虐殺を引き起こしたのにバシー博士にお咎めなしなのは(ストーリー上の説明はありましたけど)いくらなんでも強引すぎますし…。『ロボット2.0』に至っては人の死も気にしていない風なので、今さら鳥の死もあったもんじゃないです。

そんな強引なところも含めてなんか嫌いになれないのは“ラジニカーント”の魅力にハマった証拠かな。『3.0』でも『4.0』でも、何度でも続編が見たい気分。

チッティ、次は何と戦うのかなぁ…。

『ロボット2.0』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 59% Audience 74%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2018 Lyca Productions. All rights reserved.

以上、『ロボット2.0』の感想でした。

2.0 (2018) [Japanese Review] 『ロボット2.0』考察・評価レビュー