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アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』感想(ネタバレ)…美少女文化をどう褒める?

16bitセンセーション ANOTHER LAYER

美少女キャラ文化をどう褒める?…アニメシリーズ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:16bit Sensation
製作国:日本(2023年)
シーズン1:2023年に各サービスで放送・配信
監督:佐久間貴史

16bitセンセーション ANOTHER LAYER

じゅうろくびっとせんせーしょん あなざーれいやー
16bitセンセーション ANOTHER LAYER

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』物語 簡単紹介

秋里コノハは美少女と美少女ゲームをこよなく愛するイラストレーター。超人気絵師になることを夢見て美少女ゲーム制作会社で奮闘しているものの現実は厳しかった。ソシャゲ全盛期の現代に会社は傾き、サブのイラストレーターとしてモブキャラの後ろ姿を塗る日々。ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことになり、そのパッケージ開くと突如まばゆい光に包まれ…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』の感想です。

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』感想(ネタバレなし)

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美少女ゲームを知るきっかけに

「美少女ゲーム」に触ったことはありますか?

そもそも「美少女ゲーム」って何?…と聞かれるとこれがまた困る質問です。端的に言ってしまえば、その名のとおり、美少女がでてくるゲーム…それが「美少女ゲーム」です。でもそれでは説明になってません。

もう少し具体的に定義するなら、80年代から90年代にかけてPCゲームとして登場したものに源流を持つもので、特定のアニメ調の美少女キャラクターを主体にしたジャンル…とでも言うべきでしょうか。

美少女ゲームだからといって絶対にアダルトゲームであるとは限りません。アダルトゲームとは重ねる部分が多い歴史を持つジャンルなのは確かですが…。

もちろん今も「美少女ゲーム」は存在します。私はあまり数をプレイしたことはありませんが、最近は『Heart of the Woods』というゲームを遊びました。これはアメリカの企業が開発した2019年のビジュアルノベルゲームですが、明らかに日本の美少女ゲームの影響を色濃く受けています(百合モノですが、メインキャラのひとりがトランス女性だったり、LGBTQ表象の取り込みも良い感じでした)。

それでも美少女ゲームの全盛期はやはり1990年代。今やその時代を体感することはできない…。

いや、このアニメシリーズならそんな美少女ゲーム真っ盛り時代の空気を疑似体験できる…かもしれません。

それが本作『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』

本作はもともとは2016年にコミックマーケットにて同人誌として頒布された“みつみ美里”・“甘露樹”・“若木民喜”による同人漫画で、それが2023年にアニメ化となりました。ただの同人からアニメに発展なんて夢ありますね。

同人の中でも業界の歴史や裏側をまとめたタイプの作品で、美少女ゲーム制作会社に入ることになった女の子の視点で描かれています。

これをアニメ化すると、『SHIROBAKO』みたいなお仕事モノになるわけですが、アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』はかなり脚色が加えられ、2023年から1992年にタイムスリップしたイラストレーターの女性主人公に変更し、タイムトラベルSFになっています。だから原作と大幅に違うので「ANOTHER LAYER」という副題がついているんですね。

この改変が非常に面白くて、タイムトラベルSFの定番の楽しさがぎっしり詰まっているだけでなく、美少女ゲームとタイムトラベルが実はめちゃくちゃ相性がいいという…。

想像以上にSFにがっつり突っ込んでいるので、「SFやりすぎでは?」という声もあると思いますけど、同人的なノリの思い切りの良さもある気がする…。

実在の美少女ゲームやメーカーもでてきて、美少女ゲームの業界の様子や、ニッチな業界の当時のテクニックなどもわかります。当時を知る人はノスタルジックに浸れますし、知らない人は当時のことをゼロから学べる…全方向に親切な作品です。

原作者が美少女ゲームで実際に働いていた人で、アニメ化の際はこの業界に詳しいライターに監修してもらっているそうなので、アニメの業界描写の解像度クオリティが素晴らしく高くていいですね。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』自体も、キャラクターやストーリーなどあらゆる要素がそのまま美少女ゲームっぽい構成になっており、メタな仕掛けが満載。アニメになってさらに主題を遊び尽くすボリュームが増した感じ。

アダルトなコンテンツ業界を作品の主題にしていますが、このアニメ自体はとくにアダルトな要素はありません。美少女ゲームの界隈に全然触れてこなかった人でも見やすい、かなり入門的な一作になっていると思います。

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『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』を観る前のQ&A

✔『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』の見どころ
★美少女ゲーム業界を知るきっかけになる。
★タイムトラベルSFの定番の面白さが凝縮。
✔『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』の欠点
☆オタク批評としては踏み込みは弱い。
日本語声優
古賀葵(秋里コノハ)/ 阿部敦(六田守)/ 堀江由衣(上原メイ子)/ 川澄綾子(下田かおり) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:題材に詳しくなくても
友人 3.5:比較的見やすい
恋人 3.5:趣味が合うなら
キッズ 3.0:アダルトな話題があるが
セクシュアライゼーション:わずかにあり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):私の女の子を輝かせたい!

2023年、秋里コノハは美少女ゲーム制作会社「ブルーベル」でイラストレーターとして働いていました。可愛くて元気なヒロインを生み出す超人気絵師…になる予定。

しかし、現実は厳しく…。社内では新規タイトル企画書「いらっしゃいませ!催眠人妻サロン」が上司から命じられます。最近の美少女ゲーム業界は苦境で、ラノベにソシャゲにVTuberに押されっぱなし。この会社もどん底でした。

秋里コノハはサブのイラストレーターとしてモブキャラ、しかも男の後ろ姿の色塗りばかり。メインのイラストレーターはSNSで叩かれて心が折れまくって消沈しているだけ。美少女ゲーム大好きでこの会社に入ったのに…こんなはずでは…。入社初日は輝いていたのですが、リアルはクソゲーです。

仕事終わり、予約していた新作を店で受け取り、SNSの好みなイラストに“いいね”をし、帰宅。部屋はお気に入りの美少女グッズでいっぱい。

秋里コノハが思うままに好きなイラストを描けるのはこの家だけです。いつか自分で生み出した女の子を主役のゲームで大人気にしてあげたい…。

翌日、社内で思い切って自分の提案をすることにします。「最初は戦場から始まって…」と熱く語り続けましたが、「そんな予算はない。大作を作れる時代は終わった」と一蹴されます。

溜息をつきながら昼を買いに行き、寄り道で神頼み。そのとき、偶然見つけた見知らぬ中古ゲーム店に立ち寄ります。地味な品揃えの中にかつての名作美少女ゲームの数々が投げ売りされていました。『Kanon』の初回盤が100円なんて…。

しかし、店主のおばあちゃんには美少女ゲームの知識なんてまるでないようで、秋里コノハは思わず魅力を熱弁。「私、可愛い女の子を見ているとすごく元気がでるんです。ゲームの中の女の子が一番輝いているんですよ!」

そして話を聞いてくれるおばあちゃんに感動して、悔し涙を流す秋里コノハ。やっぱり夢のあるゲームが作りたい…。「いつでもおいで」と声をかけられ、店をでます。

仕事終わりにまた店に行くと、店があったはずの建物は空いていました。こんな短時間で閉店撤収したのか…? 中に入ると紙袋がひとつだけ。「ありがとう」というメッセージが添えられています。

中には『同級生』など名作美少女ゲームがいくつもあります。その『同級生』のパッケージを開くと…。

ふと気が付くと街は一変。何か違います。あれだけ頻繁に目につく人気ソシャゲの看板は1枚もないです。ラジオ会館にはパソコンショップがずらりとひしめき合い、ポケベルの文字まで…。通行人に質問すると、ここは1992年の秋葉原だと言います。

パニックになって大慌てで走っているとひとりの若い男性に激突します。ちょうどそこは「ブルーベル」があった建物の前でしたが、そんな会社も無いです。逆にそこにあったのは「アルコールソフト」という会社でした。

いやそんな超レアなイベントが起きるはずは…。自分はタイムリープしちゃったのか…。

この『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/13に更新されています。
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技術・創作の考証が大活躍

ここから『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』のネタバレありの感想本文です。

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』を見てあらためてわかりましたが、美少女ゲーム業界とタイムトラベルSFの相性は抜群です。

その一番の理由は、やはり美少女ゲームという存在がPCテクノロジーの発達と無縁ではないからです。本作が美少女ゲーム主題アニメだと思ったら、気がつけば“PC-98”アニメになっているのもしょうがない…。

美少女ゲームとPC技術の歴史については、ファミ通にて、本作の設定考証として参画しているライター・翻訳家の“森瀬繚”氏の以下の連載が大変参考になるので読んでみてください。

『痕』『Kanon』『こみっくパーティー』などその年代の名作美少女ゲームのパッケージを開ければ、その発売日にタイムリープし、当時の創作の現場を覗ける。明快な仕組みなので初心者でもすごくわかりやすいです。

技術・創作面での設定考証が最も効果的に発揮されていた2023年の作品だったのではないでしょうか。

本当はアダルト規制の時代変化の要素も深掘りしてほしかったのですけど、このアニメのレーティングを考えるとそれは無理だったのかな…。

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オタク資本主義の問題

考証とタイムトラベルがとても上手く絡み合っていて前半はとても楽しい『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』でしたが、後半はプロットの練り込みの甘さが目立った部分もあったと思います。

観る前からなんとなく予感はありましたが、本作もご多分に漏れず、オタク賛歌で押し切るワンパターンなアプローチです。

個人的に気になったのは美少女キャラ文化の褒め方。別に褒めたり、誇るのは全然いいのです。問題はどう褒めるのかという点で…。

本作はこの主題である美少女キャラ文化について、全体的に「経済に貢献するからスゴイ」とか、「儲かっているスゴイ」とか、「メディアに取り上げられたからスゴイ」とか、「他の業界とコラボレーションしたからスゴイ」とか、そういう考え方が秋里コノハの口からさえもこぼれます。

言ってしまえば、評価の見識が偏っていて、オタク資本主義なのです。これはオタク特有の劣等感(オタク文化をバカにしていた奴らに認められたい)がプロットに染み込んでいます。自分の好きなコンテンツが他人に受け入れられることでしか肯定感を得られない状態になってしまう感じです。

それだけに飽き足らず、終盤では自分の美少女ゲーム「ラスト・ワルツ」をついに作り上げた秋里コノハが2023年に戻ると、秋葉原が一変しており、日本の美少女キャラ文化は衰退し、アメリカに持っていかれていることが判明します

この展開もオタク文化を資本主義の対立でしか捉えておらず、これまた日本オタク界隈によくある「アメリカへのこじらせライバル心」がプロットに滲んでいます。あのアメリカに吸収された美少女キャラのデザインがいかにも日本人が考えるアメリカ風に変わっているというのもステレオタイプです。現実では、冒頭で私が紹介した『Heart of the Woods』というアメリカの美少女ゲームだって、日本とキャラデザはほぼ同じです。本作がアメリカの創作文化をああやって描くのは、アメリカなど海外の美少女ゲーム・クリエイターを小馬鹿にしているノリさえ感じます。

オタク文化を国家対立的にナショナリズムで捉えるのは浅すぎるでしょう。実際、今の日本のオタクキャラ文化を最も吸収し、日本にまで逆輸出に成功させているのはアメリカではなく間違いなく中国です。キャラ系のソシャゲも中国のものが日本で2023年は大ウケしました。このアニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』だって中国の制作会社も参加して作られています。

その事実を日本のオタク文化の衰退みたいに短絡的に繋げる人は、どうしたって排外主義的でしかないはずで…。

コンテンツ至上的な価値観で「対抗タイトルを作れば歴史が変わる!」というのも変ですし、普通に「世界中で多様なオタク文化を愛してくれる人がいて良かったね」でなぜ終われないのかな、と…。

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もっと別の視点に焦点をあてれば…

個人的には『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』はオタク賛歌に走るあまり、資本主義や国粋主義でオタク文化を褒めることに偏ってしまったのが最大の残念ポイントです。

そのオタク文化に滲みよる資本主義や国粋主義こそこの業界の問題点でもあるので、そこを構造的自己批判できればよかったのですが…。『ブラックベリー』くらいのエグい批判性は無理でも、「オタクはオタクを批判することがタブー」という空気を突破してほしかったところ。仕事の愚痴程度ではなくてね。

資本主義や国粋主義に依存せずに美少女キャラ文化の価値を多角的に捉えていくことはいくらでもできたはずで、『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』も当初は若い女性に力を与えるロールモデルとしての「美少女」という視点を垣間見せてはいました。

秋里コノハはキャリアの中で自己実現を探る若い女性の典型例でしたし、オタクでもなかったメイ子や、オタクであってもアダルトな美少女コンテンツに触れることに躊躇があったと語る山田冬夜など、女性同士の連帯もありましたから。

女性がこの業界で働くことでジェンダー・ロールを越えていくという軸を作品の方向性を深めるほうがもっと有意義だったのではないかな。美少女キャラ文化とフェミニズムを絡めた論考などはいくらでもありますしね。『バーチャルで出会った僕ら』のように居場所やアイデンティティを見い出す人にフォーカスするのも今っぽい視点になったでしょう。

ドラマ『神話クエスト』なんか、参考になると思うのだけどな…。

エコーの出番など、その美少女キャラ文化の肝心な部分への言及が、妙にSFでふわっと曖昧に抽象化されておしまいというのは…。作品の題材に対する分析不足が否めない…。

そんな感じで設定のアイディアは最高に可能性に溢れていたのですが、やや物語の進む道に現代や未来を提示できずに、オタクの古いテンプレに留まった…惜しい『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』。オタク批評の考証も必要だったかもしれません。

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』
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シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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日本のアニメシリーズの感想記事です。

・『私の推しは悪役令嬢。』

作品ポスター・画像 (C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT 16ビットセンセーション アナザーレイヤー

以上、『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』の感想でした。

16bit Sensation (2023) [Japanese Review] 『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』考察・評価レビュー