密かな企み
Netflix映画『密かな企み』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Secret Obsession
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:ピーター・サリヴァン

密かな企み

あらすじ

何者かに襲われ大怪我を負った後、記憶を失ったまま目を覚ましたジェニファー。覚えている者は何もなく、傍らにいる献身的な夫だけが唯一の頼り。少しずつリハビリをしながら、新しい人生を歩んでいくが、何かがおかしかった。彼女を狙う危険が去ったわけではなく、知らないところでその恐怖が増していく…。

ネタバレなし感想

暇つぶしのための映画は大事

先日、Netflixの決算発表があり、2019年第2四半期のデータを基に、全体の会員数が12万人減少したという情報が出ました。それでも現状の会員数は6010万人もいるので微々たる数ではあるのですが、最近になってDisneyやApple、Warnerが独自の動画配信サービスに参入するという情勢変化が起こることが確定的なため、これまで天下をとってきたNetflixは苦しいのではと心配する声も上がっています。

いちユーザーとして個人的にはそんな悲観的には考えておらず、むしろこの流れは「新人」から「中堅」へのステップアップに過ぎないと思うし、まさに過渡期なのだろうと思っています。おそらく今後はどの動画配信サービスも量より質を重視した戦略に移行するはずです(一昔前は、1万作品配信!とかひたすら数を宣伝するサービスが多かった)。ユーザーにしてみればオリジナルコンテンツを楽しめるのは嬉しいですし、後は自分の気に入ったサービスを財布と相談して選べばいいだけですからね。

その点、Netflixはいち早くその流れを察知してオリジナル作品に投資してきました。2018年は『ROMA ローマ』がアカデミー賞外国語映画賞に輝き、まさに文句なしの魅力を発揮したばかり。映画業界との確執もクローズアップされたりしましたが、たぶん今後はその映画会社すら動画配信サービスに乗り出すので、そういう対立構造も薄れるでしょう(結局はそんなもの)。


ただ、ひとつ心にとめておきたいのは別に“量より質を重視する”といっても賞をとれる映画ばかりがもてはやされるわけではないということ。要するにバラエティが大事。ときには「これ、作品としては穴だらけでツッコミどころ満載だけど、家でテキトーに流し見するには丁度いい」くらいの映画も案外必要です。以前はそういう作品を提供するのがテレビチャンネルのいわゆる「TV映画」だったわけですが、すでにその役割をNetflixも担うようになっています。実際に「TV映画」を作っていたスタッフが手がけるNetflixのオリジナル作品もありますから。

そして今回紹介する『密かな企み』もまさにその往年の「TV映画」スタイルな感じで作られた一作です。

なんといっても監督はTV映画を山のようにプロデュースしてきた“ピーター・サリヴァン”が務めています。本当に関わっている作品数は膨大で、現時点だとプロデューサーとしてクレジットされている作品はIMDbによれば「115」あります。

その“ピーター・サリヴァン”監督の映画である『密かな企み』は、内容は既定路線なサイコロジカル・スリラーで、こうなるだろうと思ったことが実際にそうなるという、とても“観客の想像を裏切らない”作品。これを退屈という意味で悪くとる人もいるでしょうけど、まあ、そういう作品もたまにはいいか…と、気楽に受け止めると良いんじゃないですか。

ひとつ特筆ポイントとしては主演が“ブレンダ・ソング”というアジア系アメリカ人だということ。もともとディズニーチャンネルでよく活躍していた女優でした。アジア系主役のサスペンス映画は『search サーチ』など良作も登場しつつありますけど、まだまだ乏しいですから。アジア系というだけで無条件に応援することにしている私としては、強調しておきたかったところです。


とにかく、過度な期待もせずに、テキトーに気を楽にして観る映画ですので、今日は難しいことも考えたくないからとりあえず時間つぶしだけができる作品が観たいなという人は、ポチっと再生してみてください。

オススメ度のチェック
ひとり◯(暇つぶしにどうぞ)
友人◯(流しながらの雑談でも)
恋人◯(流しながらの雑談でも)
キッズ◯(多少の過激なシーンあり)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

記憶にない夫の献身

とめどなく雨が降りしきる夜中、誰かに追われている女性。公衆電話に駆け込み「911」を押し、コール音を待ちますが、モタモタしている間に車が近づき、建物のトイレへの逃げ込みます。そのトイレに入ってくる怪しい人影。ずぶ濡れになりながら必死に声を漏らさないように口を押える女性に迫る、刃物を持った人間。隙を見て再び外に逃げ出し、そばにあった車の窓を割り、乗り込みます。しかし、エンジンをかけてアクセルを踏んだ瞬間、車は後方へ。ウィンチワイヤーで引っ張られ、このままでは走行不可能なので、急いで降りて道路へ駆け出すと、たまたまそこに通りかかった車と衝突。投げ出される身体。

そのまま病院へ緊急搬送。重体であり、手術が開始。そこへ駆けつけたのは、夫だと名乗るラッセル・ウィリアムズ。妻のジェニファーの容態を心配し、手術室へ駈け込もうとしますが、止められ、廊下で座り込んで待つしかない状況。

通りかかったスタッフに「本人は事故のことを何か言っていましたか?」と尋ねるラッセルですが、逆に脳出血で記憶障害があるかもしれないと告げられます。「愛するラッセルへ」と刻印されたライターをいじりながら、病院の椅子で眠るラッセル。

翌日、手術が終わったと言われ、妻のいる病室へ。意識のないジェニファーに「そばを離れない」と語りかけます。

ところかわって、ペイジ刑事に事情聴取を受けるラッセル。「最後に奥さんを見たのは?」「夕食のための食材を買いに行ったときです」「奥さんとの間に問題は?」「新婚で引っ越ししたばかり。問題はないです」…またジェニファーが使っていたであろう車が消えたことも告げる刑事。とりあえずこれ以上の情報はないため、ここで話は終わります。

ついに目が覚めたジェニファー。しかし、海馬へのダメージが強く、記憶障害も重傷で、夫のことすら覚えていないようでした。気まずい感じで会話をし出す二人。「一緒に乗り越えよう」と語るラッセルは改めて関係を築くために握手をします。

一方、ペイジ刑事はジェニファーを轢いた運転手から、現場で車をレッカーする白いトラックを目撃したとの情報を入手。ペイジはこれはただの事故ではなく、何か裏があると直感。独自に捜査に乗り出します。

病室ではラッセルはジェニファーとの馴れ初めを楽しく語り聞かせます。アルバムを見せながら、会社の同僚同士だった自分たちの食事デートの話をしていると、ジェニファーは両親を話題に出します。しかし、少し神妙に言葉を選びながら、ラッセルはジェニファーの両親は数年前に火事で亡くなったと教えます。ショックを受けるジェニファー。

それでもリハビリを続け、車椅子状態ながらも、生き生きとした姿を取り戻すジェニファーは、一時退院の時が来ました。「ジェニファー・ウィリアムズ」と書類に署名し、病院を出ます。

家は市街地からかなり離れた自然豊かな森の中にポツンとある、なかなか贅沢なウッドハウス。思わず見惚れてしまいます。不幸な目に遭ったけど、ここから人生を取り戻そう…そう思っていると、何か、夫の様子がオカシイことにすぐに気づくジェニファー。

そして自分の大きな過ちと歪んだ妄念を自覚したとき、真の戦いが始まることに…。

殺人鬼なんて…

はい、核心のネタバレ。

犯人は、夫と名乗って現れた男…本名はライアン・ギャリティであり、ジェニファー・アレンとは会社仲間で片想いをしており、ジェニファーの婚約者である本当のラッセル・ウィリアムズを殺害し、ジェニファーの両親さえも殺して、完全に成り替わろうとしていたのでした。

まあ、でも勘が良くなくても、開始10分もしないうちに真相に気づくのも容易かったと思います。なにせあの男以外、怪しい人はいませんから。一応、髭面の男というミスリード用の登場人物も用意はしていましたが…。

そもそも本作の原題が「Secret Obsession」…「obsession」は執念とか妄想という意味ですからね。裏にはそういうものがあるのは自明でした。

でも本作は“犯人はわかっている”ことを前提に観る映画として作られているので、さすがにこれで「私はすぐ犯人わかっちゃった~」と得意げになるのは恥ずかしいだけ。それくらいは私もわかります。

こういうジャンルの映画は二度目の鑑賞時などに、“ああ、なるほど確かにね”と結末を知っているからこその描写の気づきを与えてくれることが面白い部分だと思います。

そんな映画の楽しみ方を得意げに語る私に冷水を浴びせる本作。

そうなんです、ここで問題がひとつ。

『密かな企み』はその面白さがないから、あれっと…。というか、再度鑑賞すればするほど矛盾だらけで困る事態に。私も一応、本作の物語の前半部分のあらすじを前述してザックリまとめましたけど、見れば見るほど変です。

例えば、あの男はジェニファーが偶発的な事故で病院に運び込まれたときの時点では、まだ彼女が記憶障害になるとはわかっていなかったはずなのに、なぜかすでに夫を名乗って病院に行っています。殺害する気だったのかもしれませんが、あまりにも短絡的。しかも、記憶障害だとわかる前にあの男は警察の事情聴取すら受けています。アメリカの警察は身分確認しないのだろうか…。

で、ジェニファーが退院するまでにどれくらいの期間があったのかは知りませんが、その間にあの男は完全な成りすましを確立させるために、準備万端。アルバムの写真を合成ですり替えるほどまでのことを実行。

でも誰でも思うことですけど、絶対にバレますよね。普通、会社の人とかが見舞いに来たりとかしてもおかしくないですし、人の個人証明となるモノを抹消するのって今の時代、相当に大変です。実際に写真も合成忘れのミスをしちゃってるし、新しい殺人事件も犯しちゃうで、どんどんボロがでる状況に。

まあ、でも世の中の殺人鬼がみんな頭脳の高いわけではないですし、こんなものなのか。そうです、殺人する人間なんて基本バカです。そう思っておこう。

密かな企み

頑張って補足してみる

そんな細かい粗探しをしなくてもいいのですが、でもそこが『密かな企み』の話題の種にすべきところなんじゃないかとも思います。

映画ってあるじゃないですか、ツッコミどころが。それはツッコまれることで、初めて輝くんです。漫才のボケとツッコミと同じ。ちゃんとツッコんであげないとね。

なんでジェニファーは足首拘束をほどいた後に、その足に粘着テープを貼ったのだろう、とか。ドウェイン・ジョンソンにでも習ったのかな…。武器を探せばいいのに…。でも、私、子どもの頃、指にセロハンテープを巻いて、ケガをした気分になって感傷に浸ってたことがあるのを思い出した…恥ずかしい。おい、どうしてくれるんだ、凄い黒歴史の記憶がフラッシュバックしたぞ、Netflix。まあ、これはそういうヒーリング効果のあるテープなんですよ。マイナスイオンです、はい。

退院してきたジェニファーが夫風情の男に「私の友達は?」と聞いたとき、「たくさんいたよ」と返答されるシーン。映画の物語上はこの男の苦し紛れの言い訳を示す、フラグの場面なわけですが、なんかこれだと本当にガチの友達がいない可哀想な人みたいで、別の意味で空気が悪い…。これ、オチ云々関係なくジェニファーの事故以来、ろくに見舞いに来た人がいないので、本当に交友関係がない可能性があって、全然笑えないのですけど…。結婚式のあの華やかさはなんだったんだ…。まあ、これは全員が同時多発的な記憶障害になったと考えれば、解決です。

夫風情の男が髭面の男を絞め殺した後、なぜか目立つであろうに、自分の家の庭先に埋めるのはどうしてなのか。周りは森だらけで、人目につかない埋める場所なんて困らないロケーションです。まあ、これはきっと、肥料になると思ったのでしょうね。コイツはなかなか環境意識の高い奴ですよ。

ジャニファーが事実上、軟禁される家ではインターネットに繋げられないように、WiFiルーターのLANケーブルが切られていました。いや、ルーターを壊せよ…。あれ、明らかに無線ルーターだからケーブルなくてもネット接続できるじゃないか…。というかモバイルでネットは見られないのかな。この問題に関しては、う~ん、ちょっと待って…、あれだ、ロシアの陰謀ですよ。あの地域一帯がネット遮断されているから関係ないのです。

ジェニファーは自分の車を車庫で発見し、中で自分のスマホを発見しますが、なぜあの夫風情の男はこのスマホを真っ先に処分しなかったのか。初期化して渡すなりしても良かったのに。これはあれです、これから! これからやろうと思ってたの! ちょっと黙ってて。

家の居場所を突き止めたペイジ刑事もあっさり捕まりますが、冷蔵庫みたい場所に閉じ込められるものの、とくに厳重な拘束もなく、するっと出られます。この夫モドキの男、ジェニファーを縛る時も足首だけだったりと、妙に捕縛することに関して気が緩いです。優しいですね…。

終盤、犯人の男とペイジ刑事が揉みあいをしている最中、ジェニファーが銃を持って男に発砲するのですが、よくペイジ刑事に貫通しなかったな、とか思いませんでした? 男は背中から最初に撃たれるのですが、なんか服の前面に血がついていない? まあ、これはペイジ刑事が実はミュータントだったということで、解決しますけどね。

だいたいこんな感じでフォローできたな、よし(謎の仕事終了感)。

あの、あれだったらこの映画を観たことを“記憶喪失”してもいんですよ。

ROTTEN TOMATOES
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IMDb
4.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

作品ポスター・画像 (C)Hybrid Films