スパイダーマン ファー・フロム・ホーム
映画『スパイダーマン ファーフロムホーム』(スパイダーマンFFH)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Spider-Man: Far From Home
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年6月28日
監督:ジョン・ワッツ

スパイダーマン ファー・フロム・ホーム

あらすじ

夏休みに学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出かけたピーターの前に、元「S.H.I.E.L.D.」長官でアベンジャーズを影から支えてきたニック・フューリーが現れる。一方、ヨーロッパの各都市には、炎や水など自然の力を操るクリーチャーが出現。危機が迫るなか、ニックは「別の世界」からやってきたという男をピーターに引き合わせる。

ネタバレなし感想

トム・ホランドを見守る会

どうでもいい無駄話。最近、家の中にクモを見つけて、殺すことなくそっと外に逃がしてあげました。良いことしたな~、自分。はい、以上です。

とくにそのクモに咬まれて特別な能力に目覚めたということもないし、そのクモが巨大化して家を潰されたということもないです。別に恩返しくらいしてくれてもいいのですけど、よくよく考えると殺したことのあるクモも多いことに気づく…私はサノスだったんだなぁ。

そんな人に嫌われることの多いクモですが、このクモは大人気。その名も「スパイダーマン」。アメコミに触れたことのない人でも名前は知っているくらい、ものすごい知名度です。

他にも凄いなと思うのはスパイダーマン人気が衰えるどころか、年々上昇しているんじゃないかと思うほどの熱の高まりだということ。それに間違いなく一役買っているのは、演じている俳優の存在でしょう。

2002年から3作品続いたサム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズでは“トビー・マグワイア”、2012年から2作品続いたマーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでは“アンドリュー・ガーフィールド”が、スパイダーマンを熱演し、いずれも大人気となりました。しかし、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に合流した新しい『スパイダーマン』シリーズで大抜擢された“トム・ホランド”の人気は凄まじいものがありますね。

やっぱり“トム・ホランド”自身が持つ根っからの人懐っこい愛嬌が世界中のファンを掴むのでしょう。「トムホランド」とGoogle検索すると「トムホランド ネタバレ」とサジェストされるように、うっかり口が滑って自分の関係する作品のネタバラシをしてしまうことでも有名。それでも共演者からは可愛がられ、製作・配給のソニーはその“トム・ホランド”のネタバレ癖を利用して次回作のタイトル名が流出したかのような宣伝すらするほど。もうどれだけ愛されているんだ、と。私は初期出演作『インポッシブル』の頃から“トム・ホランド”を見ているので、すっかり“親戚の人”か“見守る会”になった気分。

そんな“トム・ホランド”も『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』『スパイダーマン ホームカミング』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ エンドゲーム』、そして最新作『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』と、なんだかんだんで歴代俳優の中でも一番スパイダーマンを演じた作品の数が多い俳優になっています(主演作はまだ2作目だけど)。

その人気も絶好調の“トム・ホランド”がどこまで高みに到達するのかも気になる『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』ですが、MCUファンはストーリー展開も当然に気になるというもの。MCUシリーズ的には前作にあたる『エンドゲーム』ではそれこそ“世界が根幹から変わるほど”の大事件が起きた後の物語。まだファンの皆さんにはあの激動の余韻に浸っている人もいるでしょうけど、あの事件をこのひとりの若き少年はどう受け止め、どう未来を生きるのか。

MCUのフェイズ3を飾る最後の作品が、最も若い主人公で締めくくられるというのも世代交代を意味して感慨深いですし、製作の“ケヴィン・ファイギ”もニクイことをしてくれるな、と。

ただ、さすがに『エンドゲーム』ほどハイカロリーかつ重苦しい映画ではありません(だったらちょっと辛い)。お話自体は『ホームカミング』と同様に全体的に軽めのタッチになっています。オタクたちの代表であり、親友のためにエロサイトを見ていたという汚名すらも被る真のヒーロー「ネッド」を始めとするいつもの面々が揃い、友情あり、恋ありな、青春ライフです。監督も『ホームカミング』と同じ“ジョン・ワッツ”ですから、作品の雰囲気がしっかり継承されています。
『スパイダーマン ホームカミング』感想(ネタバレ)…初々しくて懐かしい新シリーズ開始!
本音を言えば『エンドゲーム』を観たうえで鑑賞してほしいところですが、そうなると必然的にMCU全作品を観てくださいと言っているも同じになってしまうので…まあ、どうして時間がない人は『ホームカミング』だけ鑑賞しておけばいいのかな。

おすすめ PiCKUP!
↑『スパイダーマン ホームカミング』…“トム・ホランド”スパイダーマンの主役作の第1弾。

ただ、本編は思いっきり『エンドゲーム』のネタバレ全開で進行します。世界的大ヒットなんだから当然見ているでしょ?というマーベルの強気をヒシヒシと感じる…。だからやっぱり…MCU作品全部観てください(最終結論)。

なお、念のために書いておきますが、以下に掲載の予告動画や記事後半の感想では『エンドゲーム』に関するネタバレを含みます。

オススメ度のチェック
ひとり◎(ファンなら当然必見)
友人◎(ワイワイと盛り上がる)
恋人◎(エンタメ好きなら)
キッズ◎(子どもでも普通に楽しい)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

これでも真面目に追悼してます

原作からして「スパイダーマン」の物語は基本、“能力に目覚めたばかりのピーター・パーカーが親類のベンおじさんを殺されてしまい、ヒーローになることを決意する”という欠かせない根幹を成すプロットがあります。サム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズも、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズも、ちゃんとその過程を描いてきました。

一方、このMCU『スパイダーマン』シリーズは、そのベンおじさん・イベントが描かれません。最初これはもう散々やってきたストーリー展開だからカットしてもいいだろうという配慮なのかなと思っていましたが、『エンドゲーム』を観た人ならわかるとおり、それは違いました。

今や明白ですが、作品定番の「ベンおじさん」というキャラクターは、MCU『スパイダーマン』シリーズではアイアンマンこと「トニー・スターク」が担っているんですね。自分を導く身近な“隣のおじさん”。そして、案の定、ピーター・パーカーにとってのメンターだったトニー・スタークは、『エンドゲーム』にて死を遂げます。今、思いだしてもあの時のピーターとトニーのやりとりは切ない…。

つまり、『エンドゲーム』後の物語が描かれる『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』は、ベンおじさん・イベント後半パート…ピーターがヒーローになると覚悟する話なのだろうということは、比較的容易に想像がつきます。

実際、そうでした。ところがです。そう簡単には問屋が卸さない。スパイダーマンのお約束をおちょくってきます。

まず『エンドゲーム』での“世界が根幹から変わるほどの大事件”のその後の空気はどうなっているんだと、さぞかし重たくなるだろうなと観客の誰もが思っているところに、あのホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」です。ホイットニー・ヒューストンの名前を知らない今の若者でも、「“エンダぁぁぁー”の曲だよ」と言えば伝わるくらいのインターネット・ミームになっている、もはやギャグ的ですらあるあの定番曲ですよ。それを恥ずかしげもなく流して、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ヴィジョンの追悼動画を流す、ピーターの通う学校の生徒ニュースチャンネル。もちろん制作した当人たちはクソ真面目なのでしょうけど、あまりに、あまりにクオリティが低い

また、それ以外も周りの一般人の話を見ていると、妙に軽いというか、あの“人類半分消失事件”に便乗して不倫されたとか、イチイチしょぼいことが起こっていたことが判明します。『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』では大衆の動向があまり描かれずどう受け止めているのだろうかと思っていましたが、なんだこれ。まあ、でも人間なんてしょせんこんなものかもしれないですけど。

『エンドゲーム』ショックで重々しくなっていた観客の心を、良いのが悪いのかは定かではないですが、完膚なきまでに粉砕です。ちょっとおふざけの度が過ぎているので、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』の直前に『エンドゲーム』を観ない方がいいのではと思うほど。

さすが“ジョン・ワッツ”監督、徹底して悪趣味全開だなぁ。

ヒロインとしてのMJの良さ

それで、じゃあ、当のピーター・パーカーはどうなんだと思えば、もう恋愛に夢中なわけです。ヨーロッパ旅行の中でどうやって意中の「MJ」に告白するかで頭がいっぱい。

しかもなぜだか不思議なことに自分の周囲ではわりといい感じのロマンスがあちらこちらで花咲いているじゃないですか。メイおばさんとハッピーというまさかの組み合わせが良い雰囲気を漂わせ、しまいにはあのネッドでさえ飛行機の席でたまたま隣だった女の子とラブラブ展開。なかば反則的な方法で大人の魅力を手に入れた同級生にMJを奪われそうなフラグもビンビンで、まさかの孤立の危機。

それにしてもこのMCU『スパイダーマン』シリーズにおける“ゼンデイヤ”演じるMJですが、個人的にはとても良いキャラだなと思います。原作や過去映画ではMJはモデル&女優という職業もあって絵に描いた美人という設定で、何人も男性経験のある、言ってしまえば“リア充”感全開のヒロインでした。一方で、このMCU『スパイダーマン』シリーズのMJは、一匹狼スタイルで周囲とあまり馴染まず、でも実は自分の気持ちを素直に表すのが苦手な意識もある、“ツンデレ女子”になっています。要するにあえて偏見的に言うと、すごくピーターのようなオタクが好きそうな女の子ですよね。

この性格変更が功を奏している部分は大きく、それこそディズニーなど歴史を抱える作品たちは旧態依然のヒロイン像をイメージチェンジしようと、昨今は腐心しまくっています。でも本作のMJはそんな加熱するヒロイン問題を冷静にさせてくれるというか。パワフルに戦わせたり、曲を熱唱したり、そんなことしなくても、さりげない存在感でも男性主人公と対等な自立したヒロインになれるというお手本のような。もちろんこれはあのステレオタイプな“男らしさ”なんて全然ないピーターのお相手だからこそできることなんですけどね。

どちらが上でもない、初々しいキスシーンを見ながら、親戚の私はそんなことを思っていたのでした(邪魔者である)。

ラストで一緒にビル群をスイングするシーンで、この行為がたいしてロマンチックでも何でもないことをハッキリ述べるMJは、立派に自分の足で立てるヒロインでした。

そんな恋愛においてワンステップアップしたピーターを差し置いて、ネッドはさらなる大人な恋愛観に到達しているのが笑えますが。

スパイダーマン ファー・フロム・ホーム

あなたもすでに騙されている

青春ライフまっしぐらな『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』ですが、今作の敵はエレメンタルズ…ではなくミステリオこと「クエンティン・ベック」。

正直、原作を読んでいる人はこのミステリオの正体も当然察していたでしょうし、私も実は知っていたので、全てがミステリオのトリックだということは特段驚愕もなかったのですが、知ったうえで最初から映画を観ていると、ちゃんと伏線を張っているのがよくわかってまた別の面白さがありました。

そもそもこのミステリオの一大スケールの“騙し”は、言ってしまうと、私の大好きな映画と同じなんですね。実際にミステリオのチームは映画製作のメンバー構成と同じ。俳優(ベック)がいて、シナリオライターがいて、VFX・SFX担当がいて、衣装担当がいて…。そのチームワークであれほどの巨大な規模で“あり得ない映像”を“あり得るかのように”見せています。これは普段から映画を観ている私たちが経験していることです。

なので本作の物語はすごくメタ的です。『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』というVFX全開の映画で感動した観客に対して、“しょせんは作り物である”という偽善性を見せつけるのですから。本作はそんな“裏方の人たち”による逆襲の物語。

ちなみに“ジョン・ワッツ”監督は、デビュー作『クラウン』で、もともとイーライ・ロス作品だと偽って嘘の予告編動画を作って注目を浴びたことでキャリア出発点となった人であり、すごくミステリオそのものなんですね。

“ジョン・ワッツ”監督作は『クラウン』や『COP CAR/コップ・カー』など、基本、“酷い大人によって子どもが恐怖を味わう”内容なのが特徴で、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』もとことんピーターを虐めに虐めまくっていました。
『COP CAR コップ・カー』感想(ネタバレ)…大人よ、子どもを侮るなよ
映画的なフィクション性へ風刺だけでなく、加えて昨今問題になっているフェイクニュースを皮肉にした物語とも解釈できます。ミステリオはかなりテクノロジーに頼りまくりでしたけど、あんなの騙されるわけないとか思ってしまいますが、リアルで私たちは荒唐無稽な嘘や陰謀論に安易に騙されまくっている日常があるわけじゃないですか。そして、これこそ今のティーンにとっての身近なリスクでもあるわけで。スパイダーマンは常に“隣人の味方”ですが、今回もグローバルな戦いに見えて実はすごく身近な敵(フェイクニュース)と戦っているんですね。作中でも生徒たちが情報の真偽をよく気にするセリフを連発しているのがまた狙いを感じるあたり。

結局、ピーターはラストにて一件落着したかに思いきや、やっぱりフェイクニュースによって一杯食わされてしまい、自分の正体を暴露されてしまいます。自ら正体を明かしたトニーとは完全に違うヒーロー人生のスタートであり、ピーターはこれからどうするのか。どのヒーローさえも直面していない問題に、まさに真価が問われます。まだまだMCU『スパイダーマン』シリーズは続きそうで安心ですけど、どうするんだろう。

とりあえず、またトニーの余計な発明品で世界が酷い目にあうという『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の再来が起こったので、いい加減、トニーの発明品は墓と一緒に永久封印すべきですよ。

恒例、エンドクレジット後のオマケシーンでは、実はこれまでずっと映っていたニック・フューリーはタロスのシェイプ・シフター能力による変身した姿で(だからピーターがキャプテン・マーベルの名前を口にした時に複雑そうな反応をしたんですね)、本物は意外な場所にいることが判明。最後に大仕掛けの観客騙しを用意してきました。これは今後公開予定とされる映画『エターナルズ』への伏線とみていいのかな。やはり次はフューリーは地球ではなく宇宙に自分の組織を設置するのでしょうかね。

ソニーは革命的な扉をこじ開けた『スパイダーバース』シリーズも展開していくので、これからはいろいろなスパイダーマンに目が離せません。いつか全部合流してクロスオーバーしたら、凄いだろうなぁ。
『スパイダーマン スパイダーバース』感想(ネタバレ)…マスクをかぶるだけ

ROTTEN TOMATOES
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IMDb
9.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 Sony Pictures