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『21ブリッジ(21 Bridges)』感想(ネタバレ)…この人ならマンハッタン封鎖もできる

21ブリッジ

この人ならマンハッタン封鎖もできるのか?…映画『21ブリッジ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:21 Bridges
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2021年4月9日
監督:ブライアン・カーク

21ブリッジ

21ブリッジ

『21ブリッジ』あらすじ

マンハッタンの街並みの暗闇の、ある場所で強盗事件が発生し、銃撃戦の末に警察官8人が殺害された。捜査に乗り出したのは、警察官だった父を殺された過去を持つデイビス刑事。事態は緊急性が高いと判断し、マンハッタンを全面封鎖して犯人の行方を追うが、事件の真相に迫るうちに思わぬ事実が浮かび上がる。孤立無援となったデイビス刑事は、事件の裏に潜むニューヨークの闇に立ち向かうことに…。

『21ブリッジ』感想(ネタバレなし)

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チャドウィック・ボーズマン、見納めか

日本でニューヨークと言うと、ニューヨーク州でもニューヨーク市でもなく、たいていはマンハッタンを指していることも多いです。それくらいニューヨークと言えばマンハッタンというイメージ。

でも「マンハッタンってそう言えば何だっけ?」と漠然と疑問を持ちつつも、知らないとダサいと思われそうで「はいはい、マンハッタンね」と知ったかぶりしていた人もいるんじゃないでしょうか。…私もです。

マンハッタンとはニューヨーク市の地区であり、ハドソン川河口部の中州であるマンハッタン島、あるいはマンハッタン島が大部分を占めるマンハッタン区が該当します。人工の島っぽい感じもしますが、ちゃんと岩盤がある自然の島で、強度の高い雲母の結晶片岩で構成されているので巨大ビルを建ててもへっちゃらです。

ニューヨーク市を構成する5つの行政区の1つであり、他の4区はクイーンズ区・ブルックリン区・ブロンクス区・スタテンアイランド区。ただ、マンハッタンはタイムズスクエアウォール街があったり、商業的にも行政的にもまさしく世界の中心地。ランドマークも挙げきれないほどにいっぱいあります。

Googleマップやストリートビューで立体的に地理を体験すると、直接観光に行かなくても雰囲気がわかるでしょう。個人的にはPS4で発売されているゲーム「スパイダーマン」がオススメ。スパイダーマンになってリアルに再現されたマンハッタンを自由自在にスイングできます。このゲームをしていると自然とマンハッタンの地理感覚も覚えられますし。

そのマンハッタンは島なので、他の地域とはで繋がることになります。マンハッタンにある主要な橋は21個。それは以下のとおりです。

Ed Koch Queensboro Bridge
Robert F. Kennedy Bridge
Willis Avenue Bridge
Third Avenue Bridge
Harlem River Lift Bridge
Madison Avenue Bridge
145th Street Bridge
Macombs Dam Bridge
The High Bridge
Alexander Hamilton Bridge
Washington Heights Bridge
University Heights Bridge
Broadway Bridge
Henry Hudson Bridge
Spuyten Duyvil Bridge
George Washington Bridge
Brooklyn Bridge
Manhattan Bridge
Williamsburg Bridge
Roosevelt Island Bridge
Hell Gate Bridge

全てが車が通れるわけではないそうですが、生活には欠かせない橋です。

今回紹介する映画はそのマンハッタンの橋がタイトルになっています。その名も『21ブリッジ』

でも安心してください。橋の名前を全部理解していないといけないとか、そういうことは一切ありませんので。

『21ブリッジ』はマンハッタンを舞台にしたサスペンス・アクション・スリラー。警官大量殺人事件を引き金にひとりの刑事が陰謀に巻き込まれていきます。

主演は2020年8月に突然の他界でファンは悲しみに沈んだ“チャドウィック・ボーズマン”。日本では彼の姿を見られるのはおそらくこの映画が最後になると思います。私もいまだにショックが大きい…。でも2020年は助演作の『ザ・ファイブ・ブラッズ』、主演作の『マ・レイニーのブラックボトム』が非常に高く評価され、多数の俳優賞にノミネートされていますから、こんなに遺作で輝く人もいないでしょう。きっと天国の“チャドウィック・ボーズマン”も照れくさそうに喜んでいるんじゃないかな…。

他の俳優陣は、『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』『夜に生きる』の“シエナ・ミラー”、『オンリー・ザ・ブレイブ』『アメリカン・アサシン』の“テイラー・キッチュ”、『グローリー 明日への行進』の“ステファン・ジェームス”、『スカイライン 逆襲』の“アレクサンダー・シディグ”など。

『ジャスティス・リーグ』でゴードン市警本部長を演じていた“J・K・シモンズ”が『21ブリッジ』でも警部の役なのでなんだかバットマンが出てきそうな感じですが出てきません(当然)。

製作が“アンソニー・ルッソ”&“ジョー・ルッソ”の『アベンジャーズ エンドゲーム』でおなじみの兄弟ということでも話題。監督はドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のエピソード監督を務めたアイルランドの“ブライアン・カーク”。ルッソ兄弟はあれなのかな、『タイラー・レイク 命の奪還』や『チェリー』でもそうですけど、MCUで培った俳優とのコネで自分のプロダクションの映画を成功させていく戦術をとるのかな。

俳優ファンやシンプルにこの手のジャンルが好きな人はとりあえず鑑賞候補に入れて良しでしょう。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:俳優ファンは必見
友人3.5:ジャンル好き同士で
恋人3.0:恋愛要素は無し
キッズ3.0:暴力描写が多数
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『21ブリッジ』予告動画

4月9日公開『21ブリッジ』予告編_90秒
↓ここからネタバレが含まれます↓

『21ブリッジ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):再び起きる警官殺しの悪夢

一同は悲しみに包まれていました。教会。今日は葬儀です。喪服姿の大勢が追悼しているのは、殉職したデイビス刑事。この街を守った彼は市民に愛されていました。

そのデイビス刑事の息子である13歳のアンドレ少年は、失望に沈む隣の母を見つつ、自身も喪失を受け入れるのに葛藤していました。今は父が横たわる棺をじっと見つめることしかできず…。

19年後。自身もニューヨーク市警察の刑事となっていたアンドレは呼び出されて物々しく深刻そうな人たちの前で質問を受けます。実はアンドレは長年に渡って警官殺しで問題となっていた凶悪犯を追い詰め、その結果、射殺していたのです。今はその行動が正当だったのか、それが問われています。DNAの話を語るアンドレはあくまで自分のすべきことをしたと主張。南北戦争やベトナム戦争の話に話題をそらすも、向こうは真面目にこちらを見透かそうとしてきます。

帰宅。高齢となった母は自分の名前もわからなくなるほどに衰えていました。アンドレは優しく傍に寄り添い続けています。

そんなニューヨークの夜。2人の男が車を走らせ、とあるひと気のない街角に停車します。挙動不審で緊張している様子。顔をマスクで隠して覚悟を決めたように車を出る2人。

銃で警戒しながらある建物へ。そこはワイナリーで、清掃員らしき男に銃をつきつけ、「コカインをいただく」と告げ、どこにあるかを問いただします。鍵をもらい、ひとりは地下に。

その金庫には想像以上の大量のコカインがありました。確かに本物。それも上物です。中止にしようとひとりは言いますが、もうひとりは詰め込んでいきます。

しかし、すぐに警官隊が包囲。突入してきたので2人は銃撃して応戦。ひとりは殺しをためらいますが、もうひとりは警官を容赦なく撃ち殺していきます。それでも今はどんどん来るので逃げるしかありません。

外に出てパトカーに激突し、銃弾を浴びせて突破を試みます。けれども、すぐに他のパトカーに取り囲まれ、八方塞がりに。結局、全員を殲滅。全速力でその場を退散。街では緊急無線が飛び交い…。

アンドレはまだ騒然としている現場に駆け付けました。複数の遺体。マッケナ警部は部下を大勢失って消沈。アンドレに捕まえてくれと感情を高ぶらせながら頼んできます。犠牲者にはアンドレの警察学校時代の知り合いもいました。悲痛な面持ちのアンドレは意志を固めます。

発端は強盗らしく、300キロのコカインがあったとか。麻薬取締局の捜査官であるフランキー・バーンズ刑事と組むことになり、アンドレは渋々承諾。犯人は2人だと推測するアンドレ。ひとりはかなりの殺し屋のようです。

そこにFBIの2人が到着し、捜査を引き継ごうとします。アンドレのことを「トリガー」と呼んでくるそのFBIは、「犯人と銃撃戦で殺したくないからな」と嫌味。どうせ犯人は州外に逃げただろうからこれはFBIの案件だと主張します。

ところがチャイナタウンでBMWが燃えているとの通報。まだ犯人はマンハッタンにいるようです。自分の領分だと認識したアンドレはさっそく指示を飛ばします。

「マンハッタンを封鎖しろ」

本気なのかと周囲は強行すぎる捜査に驚きますが、警官7人殺しは黙っていられないとアンドレも頑な。5時までに逮捕するように命じ、マンハッタン島にある21本の橋、海路、全てを封鎖するべく、一斉に動き出します。タイムリミットは翌日の午前5時。

またもアンドレのトラウマを呼び起こす警官殺し事件。この闇に対処できるのか…。

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橋を作りかけた男、それを壊す社会

『21ブリッジ』は表向きはクライム・アクションとしてのジャンル的な娯楽作になっています。

今回の警察が追うことになる2人組は元軍人ということでアサルトライフルも容赦なく的確に撃ちまくる腕前。序盤なんか「え?そんなに殺しちゃうの?」という暴れっぷりです。

その後にFBIも情け無用で関係者を射殺するし、犯人がいると思われる部屋に投入するときも豪快に突破してくるし、なかなかに映像としてもド派手。

これはあくまでジャンル的な味付けなのだろうと観客も思い込みながら観ていると、それは本作の主題を覆い隠すカモフラージュだったことが判明します。

本作の警官大量殺人、その裏にあったのは不正な汚職、そしてそれを一部の者に罪を擦り付けようとする悪質な陰謀。無論、それはアフリカ系アメリカ人への人種差別という土に根を張っており…。

2020年もジョージ・フロイド事件を発端に警官による黒人への暴力への反対運動は世界に波及。ブラック・ライヴズ・マターは今やグローバルな標語です。本作は2019年の映画ですが、その2020年に大きなうねりを引き起こすブラック・ライヴズ・マターを予見するかのような鋭い内容でした。

終盤、地下鉄の電車内のシーンが印象的です。あそこでアンドレとマイケルはしっかり目を合わせてタイミングを計って電車に乗り、2人きりのシチュエーションを作ります。2人は格好も似ており、まるで別の自分を見ているかのような感覚に。ひとりは亡き父の無念を晴らすべく警官になり、もうひとりは亡き兄の無念を晴らそうともがくうちに犯罪に手を染めてしまっていた…。きっとほんの些細な違いにすぎないはず。それをわかったからこそ、あのとき2人は本当に心を通わせ、銃を降ろすことができた。

しかし、そんな平和の架け橋を踏みにじってくる警察という権力の恐ろしさ。それに打ちのめされるアンドレの表情が辛いです。個人の無力さというのはこういう瞬間にこそ浮き彫りになりますね。

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マンハッタン封鎖できませ…できました!

『21ブリッジ』はそんな深い社会テーマを持っているわけで、それだけを見れば素晴らしい志を持ったジャンル映画なのですが、いかんせんツッコミどころが多すぎるのもたまにキズで…。

何より一番は「マンハッタン、封鎖できちゃうの!?」ってところだと思います。

普通に考えたらマンハッタン島を封鎖するのは相当なハードルです。まず州知事に政治の場で話を通さないとダメだろうし、物流がストップし、場所が場所だけに世界経済にも影響は少なくないでしょうから、大統領にだって話をしておくこともいるかもしれません。

でも作中ではアンドレの現場の即断即決で実施が決まるんですね。なんだ、この世界、アンドレは国王なのか、ワカンダの領土になってたのか…(『ブラックパンサー』の話)。

現実論の話、コロナ禍では死者数が月に1000人近くに上っても州内全域を対象とする都市封鎖(ロックダウン)を実行するか迷うくらいだったわけですから、即座に封鎖は無理でしょう。たとえマンハッタン島だけでも、警官が7~8人死亡したくらいでは…。あり得そうなのは検問くらいかな(それもかなりの難易度だけど)。

終盤で明かされるマッケナの陰謀も、やけに回りくどくて不確実な方法に頼っており、それはそれで破綻するリスクの方が高すぎるという…。

こういう作品の要所要所に大穴があるせいで、シリアスなテーマ性がやや荒唐無稽に混ざり合ってしまって、そこまで真剣になるのもバカっぽく見える、ちょっともったいない構成な気もする…。

作品自体の警察描写とかはリアルなんですけどね。ニューヨーク市警の元警官を技術顧問にして、刑事の振る舞いなどを指導しているそうで、そこはしっかり細部まで作りこんでいました。

舞台も本物同然で、ニューヨーク描写にうるさいニューヨーカーも満足するんじゃないかな。ブルックリンの交差点やチャイナタウンはセットとのことで、おカネと才能は合わさると凄いなって…。日本だとまだまだ流用セットに頼るくらいですからね…。

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やっぱり良い人です

でも個人的なことを言えば『21ブリッジ』は“チャドウィック・ボーズマン”の雄姿を見れただけで満足してしまう自分がいる。

作中でも犯人を追って走ったりとややアクションを披露していましたが、たぶんこの撮影の時点で癌の闘病の真っ最中でしょうし、本人は大変だったろうな…とか。

そんな中、麻薬取締局の捜査官であるフランキー・バーンズ刑事を演じた“シエナ・ミラー”は「正当な報酬を得られれば仕事を引き受ける」つもりだったそうで(女性のギャラは不平等に低く設定されがち)、そこで“チャドウィック・ボーズマン”は自分のギャラを“シエナ・ミラー”に提供したのだとか(本作では“チャドウィック・ボーズマン”は製作にもクレジットされています)。このエピソードだけでも作品とシンクロしているのはもちろん、“チャドウィック・ボーズマン”の人柄が窺えて…。ほんと、なんでこんな良い人が先に亡くなってしまうのか…。

“チャドウィック・ボーズマン”の新規作品をこれからは一生観られないと考えてしまうと絶望的になるのですが、もう心を癒すには時間をかけるしかないですね。

“チャドウィック・ボーズマン”をもっと観たいという人は過去作で見逃しがないかをチェックしましょう。『マ・レイニーのブラックボトム』の演技は賞をとって当然の名演ですし、『ザ・ファイブ・ブラッズ』は本人がまさに死後の世界から語りかけてくるような感触になります。『21ブリッジ』が気に入った人は『キングのメッセージ』がベストでしょう。こっちもクライム・アクションですから。

“チャドウィック・ボーズマン”の作品はずっと永遠に…。

『21ブリッジ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 53% Audience 91%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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関連作品紹介

チャドウィック・ボーズマン出演の映画の感想記事です。

・『マ・レイニーのブラックボトム』

・『ザ・ファイブ・ブラッズ』

・『キングのメッセージ』

作品ポスター・画像 (C)2019 STX Financing, LLC. All Rights Reserved. 21ブリッジス

以上、『21ブリッジ』の感想でした。