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『海底47m 古代マヤの死の迷宮』感想(ネタバレ)…続編だけど続編ではありません

海底47m 古代マヤの死の迷宮

続編だけど続編ではありません…映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:47 Meters Down: Uncaged
製作国:アメリカ・イギリス(2019年)
日本公開日:2020年7月23日
監督:ヨハネス・ロバーツ

海底47m 古代マヤの死の迷宮

かいていよんじゅうななめーとる こだいまやのしのめいきゅう
海底47m 古代マヤの死の迷宮

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』あらすじ

親同士の再婚で姉妹になったミアとサーシャ。友人たちと出会った2人は、マヤ文明の遺跡が眠る海底洞窟を目指すケーブダイビングに誘われ、海に潜ることにする。軽いつもりで潜水してみると、そこには神秘的な海底遺跡が広がり、日常の嫌な生活を忘れるような光景に目を奪われる。その暗い場所に盲目の巨大人喰いサメがいることを彼女たちはまだ知らない…。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』感想(ネタバレなし)

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「続編、作るんですか」シリーズ

有象無象の映画とお付き合いしていると、たまに「え?この映画の続編を作るの?」という事態に出会うことがあります。あまり続編向きではないのにシリーズ化し始めたり、これは続きようがないだろうと思った作品が継続したり…。有名どころだと『猿の惑星』がそうでしたね。

映画制作者側にしてみれば続編の方が企画を通しやすいのか、いけると判断すれば迷いなく続編を投入してきます。そういう意味では恵まれている作品です。それが作品にとっての幸せかどうかは別にして…。

今回紹介する映画も予想外の続編でした。それが本作『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

本作は2017年に公開された『海底47m』の続編です。これはタイトルからはわかりにくいですが、サメ映画であり、イギリス資本の入っている作品。なのでかどうかは定かではないですけど、よくありがちな無数に作られている頭が増えたり、嵐と一緒に飛んだり、属性スキルを身につけたりするB級サメ映画の群れとはわけが違います。この言い方が正しいかどうかは知りませんけど、真面目なサメ映画です。

ただ、詳しく話すと面白くなくなるので控えますが、意外なオチで終わるので、これは一発ネタありきの作品だなと観た時は思ったものです。でも続編があるなら「海底48m」っていうタイトルかな?なんて、私の感想記事でもふざけながら書いてました。

そうしたらなんと本当に続編が来ちゃった…。いや、そこまで望んでいたわけではなかったから、嬉しい!とはならないのだけど、でも来るもの拒まず。しかも、当初はガチで「48 Meters Down(海底48m)」というタイトル案になっていたようで…。ヤバい、製作陣と発想が同じになっている…。じ、自分もサメ映画脳に毒されてきたかもしれない…。

しかし、この『海底47m 古代マヤの死の迷宮』。続編だけど続編ではないのです。前作とは物語につながりはなく、前作のキャラクターもでてきません。サメが登場する以外は別物です。しいていえば、潜るという行為が引き金になるくらいが共通点です。なので、前作を予習する必要性は皆無。

じゃあ、なんで続編にするんだという素朴な疑問が浮かびますが、企画ってこういうものです、ええ。サメ映画の企画のチェックは緩いのかもしれないし…。

監督は前作と同じ“ヨハネス・ロバーツ”で、脚本・撮影・音楽など他の製作チームもことごとく一緒です。こうも同じだとそんなにこの人たちはサメ映画を作りたかったのかと思いますけど…。

今作では海底遺跡を舞台にするという明確なコンセプトがあります。邦題が「インディ・ジョーンズ」風ですが、お宝探し的な要素はないのであしからず。でもそれっぽいアトラクション的な映像感覚はあるのであながち間違っていないのかも。前作よりもエンタメ感がありますね。

メインの俳優陣は前作より増えました。主役は『ぼくたちのムッシュ・ラザール』(2011年)や『やさしい本泥棒』(2013年)などで子役時代から活躍していた“ソフィー・ネリッセ”。共演にはジェイミー・フォックスの娘である“コリーヌ・フォックス”と、シルヴェスター・スタローンの娘である“システィーン・スタローン”という、なぜか2世セレブが揃っています。そして4人目のキャラクターとしてアジア系の“ブリアンヌ・チュー”が仲間に。

人種が多様になっても若い女子をきっちり揃えるサメ映画の鏡。男性キャラも出てくるは出てくるのですが、まあ、お察しのとおりただの餌ですよ。

私は割と前作より今作の方が好きだったのですが、このへんは好みですかね(前作は反則技のオチありきなところがありましたからね)。あなたのサメ映画性癖はあなたにしかわからないのです(そもそもあるのかという話も…)。

サメ映画ファンにとっては必修科目のようなものなので普通に観るとしても、スリルを味わいたい人であればみんなでワイワイと楽しめるのではないでしょうか。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(サメ映画ファン必修)
友人 ◎(スリルで盛り上がる)
恋人 ◯(スリルを共有して仲良く)
キッズ ◯(海に行けなくなるかも)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』感想(ネタバレあり)

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女子高生に混ざりに行くサメ

プールに落とされている女子高生がひとり。彼女の名前はミアであり、引っ越してきたばかりの学校でさっそくイジメのまとになっていました。服も鞄もずぶ濡れになりながら、意地悪な女子同級生に笑われ、その場を去るしかないミア。

そんなミアを、ミアの父親グラントの再婚相手の娘である同年齢のサーシャ、そしてサーシャの友人であるアレクサニコールが心配そうに見つめていました。

ミアはサーシャと車で帰宅。父はミアの傷心をわかっているわけもなく、この慣れない地でひたすらにフラストレーションを溜め込むしかないミアでした。

マヤ文明の遺跡を研究する考古学者の父グラントは、家族揃っての食事中に、ミアにサメの歯を見せて渡してくれます。今は塞ぎ込んでいるミアでしたが、昔は一緒に海を潜ったものであり、その頃の思い出を話題にします。それでも気が晴れるものではなく…。そこで特別な船中からサメを鑑賞する観光ツアーへの参加を姉妹に持ち掛けてきます。サーシャは親友のアレクサとニコールと約束があるのにと若干嫌そうでしたが、ミアのこともあり、渋々納得。

当日、船が出る場所にやって来たミアとサーシャ。しかし、そこにはあの腹の立ついじめっ子もいて、いきなり気分が落ち込むミア。そこに車で現れたアレクサとニコールは、もっとスリリングで楽しい遊びをしようと誘ってきます。いじめっ子の女と一緒にもいることもない…こっちの方がいいだろう…そう考えてミアもその提案に乗りました。

4人で車を走らせ、車内ではしゃぎ、ミアは久しぶりに解放感を味わいます。森に到達し、テンション高めに進んでいく4人。しばらく歩くとついたのは森の中にぽっかりあいた水辺。かなり深い穴場のようなラグーン。ひと目を気にせずに泳ぎ放題です。飛びこんでいき、気持ちよく満喫します。

ひとしきり遊んだ4人。中央に浮かぶ水辺の足場でぼーっとしていると潜水道具を発見します。ここは父も調査している海底遺跡がある場所でした。グラントの助手のベンと一緒に一度訪れたことがあるというアレクサの誘いもあって、ダイビング経験は少ない姉妹でしたが、この場のノリで潜ってみることに。

装備を身に着け、ライト片手に潜水していく4人。横に開いた洞窟へと進んでいくと、そこは自然ではない人工的な壁がある遺跡のような空間。狭く暗い通路を好奇心だけで泳いでいきます。

すると広い空間に出て、調査員が残した装置を押すとライトアップ。それは石像みたいなものがいっぱい並んでいる広場で、4人は日常では見られないエキゾチックな世界に大興奮。きょろきょろと思い思いに見渡します。

そろそろ帰ろうかと思った矢先、ニコールがひとりで探索に行ってしまい、アレクサがついていき、2人もあとに続きます。そこには体が透けている魚が1匹泳いでいました。眺めていると、いきなり魚がこっちに威嚇(なぜか吠えます)。びっくりしてニコールが遺跡の石柱にぶつかってしまい、倒壊。あたりに堆積していた泥などが舞い、視界が完全に消えます。のんびりな世界は一変、パニックになる4人。

しかし、そこで調査員のベンと遭遇。詳しい人の登場にホッとひと安心…と思いきや、話していると横から何かがベンに高速で激突。血まみれで苦しむベン。それはサメ。巨大なホオジロザメです。

再度パニックになる4人。しかも、サメが狭い通路に突っ込んできます。逃げようとした4人の努力も虚しく、遺跡は崩れ、通路の前方はふさがります。退路なし。

この場所は迷路。互いの酸素ボンベはそんなにもうない。そして、狂暴な人食いザメがどこからともなくやってくる。1匹なのか、それ以上なのかも不明。

4人はこの不気味な遺跡の水底で死ぬしかないのか…。脱出劇が始まります。

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やっぱり水中セットは楽しい

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』のコンセプトは「海底遺跡」。「洞窟」ではなく「遺跡」にすることで、いわば実質「インディ・ジョーンズ」風になり、わかりやすいエンタメに進化。

個人的にはこの2作目のアレンジは上手いなと思います。つまり、シリーズの方向性として「潜る」を軸に、あれこれとスリルを拡大していくというわけですから、案外とそこに特化したシリーズは少ないでしょう。それこそジェームズ・キャメロン(『サンクタム』とか)が好きそうなテーマです。

普通、水中シーンは何かと撮影が面倒なので、凡百のサメ映画があるのに水中を重視したものは案外とないです。サメ映画の抜け穴を突いてきた感じですかね。

まあ、海底47mである意味はなくなりましたけど…。ああなってくると深度は関係ないよね…。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』は前作と比べて予算も増えたので(530万ドルから1200万ドルにアップ)、水中セットで豪快に映像を作っており、これが一番の見どころです。

狭い迷路のような通路、広々とした石像も並ぶ意味深な祭壇、螺旋状の暗い階段…。マヤ文明としてのリアリティがあるのかどうかはさっぱりですが、なんだか無条件でワクワクしてくる世界。これがテーマパークのアトラクションだったら、ぜひとも探索してみたい場所です。

もちろんそれは眺めているだけのお気楽な立場だから言えることであり、実際の俳優陣はダイビング経験も浅い中で過酷な水中撮影をこなしているのですから凄いものです。もう一生分の泳ぎは経験しただろうな…。

正直、この海底遺跡を舞台にする設定自体はかなり強引ではあります。しかも、何の変哲もない一般人である女子高生が海底遺跡に遊びに行くというのは無理やり感も。実際のケープダイビングは非常に難易度が高く、プロフェッショナルなダイバーでも(サメ関係なしに)死ぬことがある危険性絶大の行為。それはドキュメンタリー『洞窟探検ダイビング』を観ると嫌でもわかりますが…。

あの調査しているグラントたちですらケープダイビングを舐めているとしか思えない…。なに音楽をガンガン聴いているんだよ…。

その設定上の無理やりさを、学校で浮いている女子高生たちの反抗的な青春劇として、有無を言わせず押し通してしまう度胸が本作のトレードマーク。女子高生が海底遺跡に潜るの!以上です!と高らかに企画書をプレゼンする光景が目に浮かぶ…。なんでこの作品は企画が通ったんだろう…。

やっぱりサメ映画って多少のイレギュラーな現実でもなんでも受け入れてしまう懐の深さってもんがあるんだなぁ…(知ったような顔で)。

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なぜ狭い遺跡に巨大サメがいるのか

そして真の主人公は健康的な眩しいボディを見せる女子高生たち…ではなく、サメ。

ここもツッコミはいくらでもできますよ。あんな閉所の多い遺跡空間にあそこまで巨大なサメは生息できないだろう、とか。一応、目が退化しているので迷い込んだサメではなく、あそこで成長して独自に進化したサメということになっていますからね。どういうことなんだ…。

そんなリアリティはもうこの映画は捨てているのです。暗がりの中からヌッと出てくる巨体。この映像を撮りたかっただけです。海底遺跡に巨大ザメ、これはロマン。なぜ狭い海底遺跡に巨大なサメがいるのかって? いて何が悪い!(そういう答えは望んでいない)

また『海底47m 古代マヤの死の迷宮』はサメ映画にステルス要素を持ち込んだことでまた独自の楽しさが加わっています。基本的にサメは匂いでこちらに来て、視覚情報で狙いを定めて襲ってきますが、今作では盲目なので音に反応。結果、じっとしていればやり過ごせるという、なんだかテレビゲームっぽい仕掛けが生まれました。青白いサメの巨体が伏せている女子高生たちスレスレのところを泳いでいく恐怖。狭い場所だからできるサメの新感覚スリルです。こういう新機軸を編み出しているだけでも本作は褒めていいと思います。

そうしてフレッシュなサメ襲撃描写を見せた後に、ラストで満を持してのオーソドックスな海でのサメ襲撃を見せるという、二段階構えの気持ちよさ。しかも入れ食い状態で来ますからね。このへんも作り手はサービス精神というのをわかっているな、と。

印象的なのは本作(というか前作も含めて)では、サメは倒される存在ではない…ということ。常に絶対的に敵わない相手として君臨しており、ありがちなサメ映画がサメ討伐に最後は走るのとはわけが違います。これは動物愛護団体に配慮したから…という事情でもないと思いますけど、とにかくサメを倒すことができない以上、逃げることに徹したストーリーになってくれるのでスマートな構成になってこれはこれでいいですね。

ラストのフレアガンやサメの歯で反撃するのもサメを撃退するというよりは、サメに立ち向かった姿を他の周囲の人間に見せつけることが大事なのであって…。最後にいじめっ子に無言で自分の勇ましさを見せつけ、相手は何も言えなくなっているという、静かなリベンジ・シーンが個人的には一番好きです。

苦言を言うならば、あの謎の激流展開は要らなかったのではないかと思わなくもない。さすがに唐突ですし、何よりもあのせいで余計にサメがいることの現実感もなくなるし、映画全体が荒唐無稽になってしまうような…。あれは『シャークネード』だけにしてください、ね。

あと、冒頭の無駄に長ったらしいスローモーションとか、透け透け魚が唸って威嚇するとか、あれだけで途端に本作がB級の危なさをチラつかせるのはちょっと…。

ただ、本作で私が何よりもハラハラしたのは前作みたいなオチになったらどうしよう…というものでした。あれは最後まで油断できないですからね。これは前作を鑑賞した人にしかわからない不安。たぶんそのせいでラストまでずっと気が気ではない落ち着かなさが私はありました。

ということでそんなに期待していなかったのに予想を超えて楽しんでいた『海底47m 古代マヤの死の迷宮』。続きがあるのかは知りませんけど、もしさらなる続編、3作目を作るならいくらでもネタはでてきそうです。真面目なサメ映画も作らないと、どんどんヘンテコな珍作に埋め尽くされてしまうので、ここはひとつサメ映画界隈の真面目一派を引っ張る気持ちで頑張ってほしいですね。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 44% Audience 68%
IMDb
5.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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・『ロスト・バケーション』

作品ポスター・画像 (C)THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD

以上、『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の感想でした。

47 Meters Down: Uncaged (2019) [Japanese Review] 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』考察・評価レビュー